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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 D04B 審判 全部申し立て 2項進歩性 D04B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 D04B |
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管理番号 | 1035712 |
異議申立番号 | 異議2000-70881 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-08-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-02-29 |
確定日 | 2001-03-03 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第2941803号「シ―ムレス経編地の製造方法」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2941803号の請求項1ないし10に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第2941803号の発明は、平成11年2月12日に特許出願され、平成11年6月18日にその特許の設定登録がなされたが、その後、日本マイヤー株式会社及び株式会社タケダレースより特許異議の申立てがなされ、平成12年7月4日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年9月14日に特許異議意見書が提出されたものである。 2.本件発明 本件特許第2941803号の発明は、その特許請求の範囲請求項1〜10に記載された下記のとおりのものと認める。 【請求項1】ラッシェル編み機を用いて経編地を形成する方法において、前記編み機に糸を供給する際に、供給糸の積極送り装置を4機以上用い、前記積極送り装置のうちの少なくとも2機から送り出される糸をジャガード筬に供給するとともに、前記積極送り装置のうちの少なくとも2機から送り出される糸を鎖編み・乱止め組織の編成部に供給し、編み目の進行方向に沿って、鎖編み・乱止め組織からなる生地部と、レース部とを一体的に連結して編成することを特徴とするシームレス経編地の製造方法。 【請求項2】生地部の幅がレース部の幅の3倍以上である請求項1に記載のシームレス経編地の製造方法。 【請求項3】レース部を編み目の進行方向に沿って複数形成する請求項1に記載のシームレス経編地の製造方法。 【請求項4】経編地が、非弾性糸を用いた編地(リジット組織)、一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ組織)及び二方向に弾性糸を用いた編地(ツーウェイ組織)から選ばれる少なくとも一つの編地組織である請求項1に記載のシームレス経編地の製造方法。 【請求項5】ワンウェイ組織またはツーウェイ組織に用いる糸が、弾性繊維糸に非弾性繊維糸を巻き付けたカバード糸である請求項4に記載のシームレス経編地の製造方法。 【請求項6】生地部が無地又は無地柄の編地である請求項1に記載のシームレス経編地の製造方法。 【請求項7】生地部がシングル編み組織または二重編み組織である請求項1に記載のシームレス経編地の製造方法。 【請求項8】レース部が、柄又は細幅レースの編地である請求項1に記載のシームレス経編地の製造方法。 【請求項9】レース部が隣接する少なくとも一方の生地部との境界部の編み組織から糸抜きして経編地の端部を形成する請求項1に記載のシームレス経編地の製造方法。 【請求項10】生地部とレース部との単位面積あたりの重量(目付)が異なる請求項1に記載のシームレス経編地の製造方法。 (以下、請求項1の発明を、「本件発明1」といい、請求項2以降の発明を順次「本件発明2」などという) 3、特許異議申立ての理由の概要 (1)はじめに 本件特許に対して、2名より特許異議の申立てがなされている。 すなわち、異議申立人は日本マイヤー株式会社(以下、「申立人」という)と株式会社タケダレースである。 両者の主張及び提出した証拠を検討すると、両者の主張はまったく同じであり、また、証拠においては、甲第12号証と甲第13号証において、申立人のものが「証明書」であり、特許異議申立人株式会社タケダレース提出のものが「証明願とその証明」が一体となっている書面であるが、それらの記載内容は実質的に同一のものである。 そこで、本件特許異議は、申立人の申立を基にして検討し、特許異議申立人株式会社タケダレースの申立において、申立人の申立と相違する部分については言及する。 (2)申立人の主張の概略 申立人は、証拠として甲第1〜31号証を提出し、概略次のような主張をしている。 本件明細書の記載には不備があり、本件発明1は、特許法第36条4項及び第6項第2号の規定に違反して特許されたものであり(主張1)、本件発明1〜10は、甲第8〜31号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(主張2)から、本件発明1〜10に係る特許は取り消されるべきものである。 4、申立人が提出した甲号証の記載事項 甲第1号証:「広辞苑」 617頁 新村出編 1991年11月15日 (株)岩波書店発行 「きじ ・・・布・織物などの地質。また、布、織物。などの加工を施すための材料織物。・・・」 甲第2号証:「JIS工業用語大辞典 第4版」 2034頁 1995年11月20日(財)日本規格協会発行 「レース lace 糸をより合わせ、組み合わせ、結び、編み合わせ、又は生地にししゅうするなどして作った透孔のある布地及びこれに類する布地の総称」 甲第3号証:「広辞苑」 2719頁 新村出編 1991年11月15日 (株)岩波書店発行 「レース【lace】糸を編み、組み合わせ、より合わせるなどして、種々の透かし模様を作った布地や編地。・・・」 甲第4号証:「ラッセル入門」 220頁、227頁及び239頁 昭和37年12月20日(株)絹人絹特報発行 「1枚おさの編地は薄く、伸縮性が大で、ほぐれやすい性質があるので、衣料としては適さない。しかしラッセル・レースの地組織に用いられることが多い。」(220頁下から7〜5行) 「3枚おさを使用するものは、3枚のうち2枚のおさで地組織を編み、他の1枚で立毛をつくり起毛して用いる。」(227頁18〜19行) 「ラッシェル編機でよこ入りするには、少くとも2組のガイド・バーが必要で、この内1組でよこ入れを行う。」(239頁18〜19行) 甲第5号証:「JIS用語辞典 繊維編」 160頁、付図及び199頁 1987年7月15日(財)日本規格協会発行 「2-19 鎖編 くさりあみ 毎コース(1-10)同一針にラッピング(4-14)させた鎖状の編目(1-2)のたて編の組織。付図2-14」(160頁 繊維用語メリヤス部門) 「404 地糸 じいと 糸レースの地を構成する糸。」(199頁 繊維用語レース部門) 「407 鎖編 地組織 じそしき 地糸の組織。」(199頁 繊維用語レース部門) 甲第6号証:「経編全集」 58頁 昭和57年10月1日 (株)繊維技術ジャーナル発行 「4.5.1 鎖編(ピラーステッチ、チェーンステッチ) 毎コース、同一のニードルにオーバーラップしてチェーン状のループを形成する編地の構成単位であり、単独では平編地を構成しない(図4-20)」(第58頁) 甲第7号証:本件特許公報の図1〜図7 甲第8号証:「LIFESTYLE AND LACE [暮らしとレース]」 1996年10月5日 全日本レース商業会発行 「Classification(レースの区分)・・・巾や大きさによってリバーレース、ラッセルレース、トーションレースいずれもだいたい同じ様な用途に利用されています。・・・ <柄や模様構成による呼び名>●オールオーバーレース、ボーダーレース、スポットテース・・・」(第2頁右欄) 「ラッセルレース ラッセルレースはリバーレースに類似した製品ですが、ラッセルレース機は経編機の一種で、柄模様は編み組織からできています。同じ糸レースでも撚り合わせ組織のリバーレースとは、まったく異なったものです。ラッセルレース機は近年急速な技術開発が行われ、柄出しの範囲が著しく広がるとともに、繊細で高品位なレースが作られるようになりました。(第17頁) 「下着の写真及び●落下板ラッセルレース・・・地組織はくさり編みですが、柄糸を地組織に編込まず、両端のみで止めることによって柄糸を浮かせたラッセルレースのことです。」(第21〜22頁) 甲第9号証:カタログ「Multibar-Jacquard-Raschelmashinen fuer elastische und unelastishe Spitzen, MRSEJF31/1/24, MRSEJF53/1/24」、1991年9月1日 カールマイヤ一社発行 1993年3月2日改訂、1993年11月3日改訂 「伸縮性及び非伸縮性のレースのための多枚筬ジャカードラッシェル機で品番MRSEJF31/1/24及びMRSEJF53/1/24の技術説明」 甲第10号証:「Multiba-Jacquard-Raschelmashinen fuer elastische und unelastishe Spitzen, MRGJF28/1/24,MRSEJF31/1/24」、1991年9月1日カールマイヤー社発行、1993年3月2日改訂 「伸縮性及び非伸縮性のレースのための多枚筬ジャカードラッシェル機で品番 MRGJF28/1/24及びMRSEJF31/1/24の技術説明」 甲第11号証:「コンピューター柄出し機構付き超多枚筬レースラッシェル機 タイプ MRSEJF53/1/24 テクストロニック マルR」 1993年10月 カールマイヤー社・日本マイヤー(株)発行 「超高級エラスチック及びノン・エラスチックレース地 生産用テクストロニック マルRMRSEJF53/1/24型レース機は、伝統的リバーレース調の超高品質レース地及び細巾レースを生産するために特に開発された機種である。 エラスチック及びノン・エラスチック細巾レースは、ジャカードシステムを備えたこの新しいレースラッシェル機の潜在的柄の可能性及びその汎用性の幾つかのアイデアが表現できる。 機械は全く新しいものであり。又、柄の開発も極めて初期の段階にあることから、この新しい機械は、女性用アンダーウェア及びアウターウェア市場に極めて大きなポテンシャルを提供できるものと期待されている。(中略) 3基のコンピューター給糸システムEBA(2×地糸+1×スパンデックス糸)が糸の給糸に用いられる。 -機械仕様- 給糸装置:3基のエレクトロニックレットオフ装置(EBA)(後略)」 甲第12号証:谷口正義の証明書及び取扱説明書2通 「添付されているMRSEJF53/1/24取扱説明書及びEBA6取扱説明書は、本件出願前に公然頒布されたものであり、その記載から、経編機MRSEJF53/1/24は、次の構成を有している。 (1)給糸用の積極送り装置を取り付けるためのプレート座が5個設けられている。 (2)各プレート座に積極送り装置を取り付けると、5機の積極送り装置のうち2機から送り出される糸がジャカード筬に供給される。 (3)また、積極送り装置の他の3機のうち2機から送り出される糸が地組織を編成する筬に供給される。(他の1機から弾性糸編成用の筬に供給される。) 該経編機MRSEJF53/1/24においては、各1枚のジャカード筬、地筬に対しそれぞれ2機の積極送り装置から糸が供給されるので、このような経編機を用いて経編地を編成すると、当然に、編目密度が異なる2つの編地部分が編幅方向に隣接してなる経編地を一体に編成することができる。」旨を証明するとしているもの。 <特許異議申立人株式会社タケダレースの提出した甲第12号証:武田寿一の証明願及び谷口正義の証明及び取扱説明書2通 内容は申立人の提出した上記甲第12号証と同じ> 甲第13号証:谷口正義の証明書及び部品カタログと取扱説明書 「経編機MRGJF31/1/及びMRSEJF28/1/24」に関して、上記甲第12号証と同趣旨の内容。 <特許異議申立人株式会社タケダレースの提出した甲第13号証:武田寿一の証明願及び谷口正義の証明及び部品カタログと取扱説明書 内容は申立人の提出した上記甲第13号証と同じ> 甲第14号証:実公昭62一11992号公報 「帯状素材の一側をレース組織に、他側を、ゴム状繊維を波状に浮き出させた滑り止め組織に、且つ前記レース組織と前記滑り止め組織間にすかしを形成するように、全体を前記素材の長手方向に伸縮自在に編成した婦人下着類用縁素材。」(実用新案登録請求の範囲) 「これによってレース組織と滑り止め組織を別個に作製する必要がなく、しかもガードル主材への縫い付け作業もその工程を半減できるという利点をもたらしたのである。」(第1頁左欄26行〜右欄1行) 甲第15号証:登録意匠第648964号公報 意匠に係る物品 細巾レース地 <特許異議申立人株式会社タケダレースは、甲第15号証に係る「細巾レース地」の検証を申し出ている。当合議体において特許庁保存の登録意匠第648964号「細巾レース地」の原本を参照したので、検証は実施しない。> 甲第16号証の1:「Tntimo piu mare」 1993年1月号 表紙、中表紙、奥付、40頁、54頁 甲第16号証の2:「BFIA」 1994年11月号 表紙、奥付け、13頁 甲第16号証の3:「Tntimo piu mare」 1993年6月号 表紙、中表紙、奥付、その他の写真の頁2枚 これら甲第16号証には、「レース部分を有するショーツ、ボディスーツ、スリップ等」の記載が認められる。 甲第17号証:「ブリュッセル王立美術歴史博物館所蔵、ヨーロッパのレース」1987年 京都国立近代美術館発行 6頁、9〜16頁、115頁、117頁、119〜120頁、123〜125頁、128〜129頁、134頁、168頁 「レース及びレース製の衣料品」の記載が認められる。 甲第18号証:「kettenwirk-praxis」90〜91頁 1996年4月〜6月号 カールマイヤー社発行 「レースのカーテン」の記載が認められる。 甲第19号証:「kettenwirk-praxis」85〜86頁、89〜92頁 1996年7月〜9月号 カールマイヤー社発行 「レースのカーテン」の記載が認められる。 甲第20号証:「kettenwirk-praxis」99〜100頁 1996年10月〜12月号、カールマイヤー社発行 「レースのカーテン」の記載が認められる。 甲第21号証:「kettenwirk-praxis」91頁、93頁、95頁、99頁 1997年1月〜3月号 カールマイヤー社発行 「レースのカーテン」の記載が認められる。 甲第22号証:特開昭60-65162号公報 「ほつれにくい経編レース地」と題する発明が記載されている。 甲第23号証:登録意匠第735051号公報 甲第24号証:「経編全集 Warp Knitting」79頁 昭和57年10月1日 (株)繊維技術ジャーナル発行 甲第25号証:特開平7-70893号公報 甲第26号証:特開平9一119046号公報 甲第27号証:特公昭62-60490号公報 甲第28号証:実公平8一394号公報 甲第29号証:実公昭53-8784号公報 甲第30号証:実開昭62-162283号公報 甲第31号証:実公昭63一11196号公報 5、対比・判断 (1)主張1に対しての判断 a.申立人は、本件発明1に記載されている「生地部」と「レース部」は、甲第1号証などに記載されている「生地」と「レース」の定義からみて、それらの技術的な意味が不明である旨の主張をしている。 しかしながら、本件発明1における「生地部」と「レース部」は、「ラッシェル編み機を用いて形成されたシームレス経編地」における「生地部」と「レース部」であって、これらに甲第1号証などに記載されている一般的な「生地」と「レース」の定義を単純に適用することは合理的でない。 そして、本件発明1に記載されている「生地部」と「レース部」は、本件の発明の詳細な説明及び図面(第1〜4図)の記載からみて、シームレス経編地において、地組織にレース模様を形成した部分が「レース部」であり、レース模様がない部分、すなわち地組織の部分(地組織部)が「生地部」であることは明確であるから、本件発明1における「生地部」と「レース部」の技術的な意味が不明であるとはいえない。 b.また、申立人は、本件発明1に記載されている生地部を構成する「鎖編み・乱止め組織」は、甲第5号証などに記載されている「鎖編み」の定義からみて、また「乱止め組織」なる語が経編技術の分野において使用されていないから、その技術的な意味が不明である旨の主張をしている。 しかしながら、本件発明1における「鎖編み」は、「ラッシェル編み機を用いて形成されたシームレス経編地」における「鎖編み」であって、これに甲第5号証などに記載されている「鎖編み」の一般的な定義をそのまま適用することが合理的であるとはいえない。 そして、本件発明1に記載されている「鎖編み・乱止め組織」は、本件の発明の詳細な説明の項に、「前記において、鎖編み組織とは通常の経編地のプレーン(平坦)な編み組織のことであり、また乱止め組織とは例えば編み目のループの一つに引っかけができてもその破壊が伝播しない組織をいい、」(段落【0005】)と明確に定義されているから、その技術的な意味が不明であるとはいえない。 したがって、本件明細書の記載には、申立人の主張するような不備があるとはいえない。 (2)主張2についての判断 (本件発明1に対して) 申立人は、本件発明1は、甲第8〜22号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件発明1に係る特許は取り消されるべきものであると主張しているので検討する。 本件発明1は、ラッシエル編み機を用いて経編地を形成する方法において、「ラッシエル編み機に糸を供給する際に、供給糸の積極送り装置を4機以上用い、前記積極送り装置のうちの少なくとも2機から送り出される糸をジャガード筬に供給するとともに、前記積極送り装置のうちの少なくとも2機から送り出される糸を鎖編み・乱止め組織の編成部に供給すること」を要件(以下、この要件を「本件積極送り装置要件」という)の一つとするものであるが、甲第8〜22号証には、本件積極送り装置要件については記載されておらず、それを示唆する記載も認められない。 すなわち、甲第8号証には、「ラッセルレース」について記載され、ラッセル編み機の部分的な写真がある(同号証第19頁及び第20頁)けれども、編み機についての説明は記載されておらず、これらの写真が、本件積極送り装置要件を示唆するものであるとは認められない。 甲第9号証及び甲第10号証には、伸縮性及び非伸縮性のレースのための多枚筬ジャカードラッシェル機で品番MRGJF28/1/24,MRSEJF31/1/24及びMRSEJF53/1/24のものの技術説明がなされているけれども、積極送り装置についての記載はなく、したがって、本件積極送り装置要件を示唆するものであるとは認められない。 申立人は、甲第12号証及び甲第13号証の谷口正義の証明書を提出して、伸縮性及び非伸縮性のレースのための多枚筬ジャカードラッシェル機で品番MRGJF28/1/24,MRSEJF31/1/24及びMRSEJF53/1/24のものは、本件積極送り装置要件を備えるものである旨主張しているので検討する。 甲第12号証に記載された証明内容において、多枚筬ジャカードラッシェル機で品番MRSEJF53/1/24には、「(1)給糸用の積極送り装置を取り付けるためのプレート座が5個設けられている。(2)各プレートに積極送り装置を取り付けると、・・・」と記載されており、この記載はMRSEJF53/1/24にプレート座が5個設けられていることについて証明しようとしているものであって、積極送り装置が実際5機設けられていることを証明しようとするものとは認められない。 しかも、申立人の提出した甲第11号証には、甲第12号証に記載されているのと同じ多枚筬ジャカードラッシェル機(品番MRSEJF53/1/24)には「EBA」、すなわち「積極送り装置」が3基設けられていることが明記されていて、5基設けることについてはなんらの記載もない。 これらのことから、甲第12号証をもってしては、多枚筬ジャカードラッシェル機で品番MRSEJF53/1/24のものが、本件積極送り装置要件を備えるものであるとは認められない。 同様に、甲第13号証をもってしても、多枚筬ジャカードラッシェル機で品番MRGJF28/1/24及びMRSEJF31/1/24のものが、本件積極送り装置要件を備えるものであるとは認められない。 したがって、申立人の多枚筬ジャカードラッシェル機で品番MRGJF28/1/24,MRSEJF31/1/24及びMRSEJF53/1/24のものは、本件積極送り装置要件を備えるものであるとの主張は採用できない。 <特許異議申立人株式会社タケダレースは、谷口正義を証人とする証人尋問の申し出を行っているけれども、上記のとおり甲第12号証及び甲第13号証をもってしては、多枚筬ジャカードラッシェル機で品番MRGJF28/1/24、MRSEJF31/1/24及びMRSEJF53/1/24のものが、本件積極送り装置要件を備えるものであるとは認められない以上、この証人尋問の必要を認めない。> さらに、甲第14〜22号証には、レースやレース部分をもつ各種繊維製品が記載されているけれども、これら繊維製品がどの様な編み機を用いて製造されたかについてはいずれにも記載されておらず、当然、本件積極送り装置要件について示唆する記載はみられない。 そして、本件発明1は、本件積極送り装置要件を含む特許請求の範囲請求項1記載の要件を備えたことにより、本件特許明細書記載のとおりの効果を奏し得ているものと認められる。 したがって、本件発明1は、甲第8〜22号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (本件発明2〜10に対して) 申立人は、本件発明2〜10は、上記甲第8〜22号証に加え甲第23〜31号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているけれども、本件発明2〜10は、本件発明1の「シームレス経編地の製造方法」に対して、さらに技術的な限定を付加した発明であるから、申立人の提出した甲第23〜31号証を検討するまでもなく「本件発明1に対して」の項に記載したのと同様の理由により、甲第8〜31号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 6、むすび 上記のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜10の発明に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜10の発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-02-14 |
出願番号 | 特願平11-33848 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(D04B)
P 1 651・ 537- Y (D04B) P 1 651・ 536- Y (D04B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 真々田 忠博 |
特許庁審判長 |
藤井 彰 |
特許庁審判官 |
石井 克彦 喜納 稔 |
登録日 | 1999-06-18 |
登録番号 | 特許第2941803号(P2941803) |
権利者 | 豊栄繊維株式会社 |
発明の名称 | シ―ムレス経編地の製造方法 |
代理人 | 蔦田 正人 |
代理人 | 黒田 茂 |
代理人 | 蔦田 璋子 |
代理人 | 乕丘 圭司 |
代理人 | 鎌田 耕一 |
代理人 | 池内 寛幸 |
代理人 | 佐藤 公博 |
代理人 | 蔦田 璋子 |
代理人 | 蔦田 正人 |
代理人 | 辻丸 光一郎 |