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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D21H
管理番号 1035729
異議申立番号 異議2000-72891  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-09-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-24 
確定日 2001-02-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3003372号「電子写真用転写用紙」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3003372号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3003372号(平成4年2月20日出願、平成11年11月19日設定登録)の請求項1ないし3に係る発明は特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおり以下のものである。
請求項1:「全パルプ中に70%以上の古紙パルプを含有し、メカニカルパルプの比率が30〜80%であり、紙の横方向の伸縮率が0.60%以下であることを特徴とする電子写真用転写用紙」
請求項2:「超音波パルスの縦波伝播速度比が1.40以下である請求項1記載の電子写真用転写用紙」
請求項3:「紙を離解したパルプ懸濁液のろ水度が200ml(CSF)以上である請求項1記載の電子写真用転写用紙」
2.申立人 秋山武の申立理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証(特開平4-18188号公報)、甲第2号証(特開平4-11098号公報)及び甲第3号証(紙パ技協誌、第32巻、第12号、昭和53年12月1日発行、第54〜59頁)、さらに、参考資料1(最新抄紙技術、昭和59年5月2日、有限会社製紙科学研究所発行、第18〜21頁)及び参考資料2(紙及びパルプ 製紙の化学と技術 第3巻、昭和58年4月30日、有限会社中外産業調査会発行、第448〜450頁)を提出して、本件請求項1ないし3に係る特許は甲第1〜3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし3に係る発明は特許法29条第2項に規定する発明に該当するから、特許を取り消すべきものと主張している。
3.申立人が提出した甲1〜3号証の記載事項
(1)甲第1号証
ア.「原料として機械パルプを含有する古紙再生パルプ或いはバージン機械パルプを含み、機械パルプの含有率が20%以上であり、かつ白色度が70%以上78%以下で密度が0.73g/cm3 以下であることを特徴とする電子写真用転写紙」(第1頁、特許請求の範囲)
イ.「本発明の目的は機械パルプを含み、電子写真式複写機での複写後のカールが小さく、走行性及び作業性が極めて良好な転写紙を提供することにある」(第2頁右上欄第15〜18行)
ウ.「パルプ原料として白色度68%、フリーネス200ml(カナダ標準フリーネス、C.S.F)の新聞古紙再生パルプとフリーネス400ml(C.S.F)の広葉樹晒パルプを80:20の重量割合で配合して用いた」(第3頁右上欄第16〜20行)
(2)甲第2号証
エ.「クロス方向の脱湿収縮率が0.12%/%水分以下であることを特徴とする転写用紙」(第1頁、特許請求の範囲、第1項)
オ.「超音波パルスの縦波伝播速度比が1.26〜2.00であることを特徴とする特許請求の範囲第1項に記載の転写用紙」(第1頁、特許請求の範囲、第2項)
カ.「本発明の目的は、容易に製造することができる、熱定着後カールを小さくした転写用紙を提供することにある」(第2頁左下欄第12〜14行)
キ.「複写機、プリンターなどで紙面上のトナー像を熱定着する際、紙の片面から熱が加わるため、加熱面からの脱湿により、紙がカールし、紙詰まり、排紙トレイ収容性不良、ソーター収容性不良等のトラブルが発生する。熱定着後カールは、複写機プリンター等の紙走行性能に大きく影響を与える。」(第1頁左下欄下から2行〜右下欄第4行)
ク.「合成繊維を配合した場合は、耐熱性が低下し、熱定着時の変形(シワ、波打ち)、収縮が問題となる」(第2頁右上欄第10〜12行)
ケ.「本発明の目的は、容易に製造することができる、熱定着後カールを小さくした転写用紙を提供するにある」(第2頁左下欄第12〜14行)
コ.紙のクロス方向脱湿収縮率と熱定着後カール曲率の関係を示すグラフ(第8頁、第4図)
(3)甲第3号証
サ.C.S.Freeness(ろ水度)とMoist-Expansivity(伸縮率)との関係を示すグラフ(第59頁第5図)
4.対比・判断
本件請求項1に係る発明(前者)と甲第1号証に記載の発明(後者)とを対比すると、両者とも古紙パルプの含有率(記載事項ウ)とメカニカルパルプの比率(記載事項ア)は同程度であり、走行性及び作業性の良い電子写真用転写紙を得ることを目的としている点で一致している。
一方、前者(本件請求項1に係る発明)は、紙の横方向の伸縮率が0.60%以下であるのに対し、後者(甲第1号証に記載の発明)は、紙の横方向の伸縮率に関しては記載されていない点で相違している。
そして、甲第2号証には、複写機等で用いられる転写用紙のクロス方向の脱湿収縮率を0.12%/%水分以下とすることにより、転写用紙の熱定着後カールを小さくし、走行性を改善し、紙詰まり等のトラブルを防止することが記載されている(記載事項エ、カ、キ、ケ、コ)。
しかし、前者は、新聞古紙を含有するリサイクル紙は高湿環境下でコピーする場合、開封した用紙を積み重ねたまま放置すると周辺部の吸湿が速くなり波打ちが大きくなってシワが発生するため、そのようなシワの原因となる紙の波打ちを小さくするために紙の横方向の伸縮率が0.60%以下とするものである。
そして、コピーする際の紙詰まり等のトラブル防止を目的とする点では、前者と甲第2号証記載の発明とは類似するものの、トラブルの発生は異なる要因によるものであるから、甲第2号証に転写用紙のクロス方向の脱湿収縮率を適切な範囲とすることが記載されていても、甲第2号証が解決しようとするトラブルとは異なる要因により発生するトラブルを防止することを目的として甲第1号証に記載された発明に甲第2号証に記載された紙のクロス方向の脱湿伸縮率に関する限定を適用することは当業者といえども容易に想到し得たものということはできない。
また、甲第3号証は、ろ水度と伸縮率との関係を示すものであり、参考文献1及び2は、相対湿度と紙の水分との関係について示されているのみである。
したがって、本件請求項1に係る発明は上記甲第1〜3号証に記載のものから容易に発明することができたものとはいえない。
そして、本件特許は特許明細書に記載された作用・効果を奏するものである。
また、本件請求項2ないし3に係る発明は、請求項1記載の電子写真用転写用紙を、超音波パルスの縦波伝播速度比が1.40以下(請求項2)、紙を離解したパルプ懸濁液のろ水度が200ml(CSF)以上(請求項3)とそれぞれさらに限定したものであるので、上記した理由と同様の理由により、甲第1〜3号証に記載のものから容易に発明することができたものとはいえない。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1ないし3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-01-30 
出願番号 特願平4-70380
審決分類 P 1 651・ 121- Y (D21H)
最終処分 維持  
特許庁審判長 山口 昭則
特許庁審判官 寺本 光生
蔵野 雅昭
登録日 1999-11-19 
登録番号 特許第3003372号(P3003372)
権利者 富士ゼロックス株式会社
発明の名称 電子写真用転写用紙  
代理人 萩原 亮一  
代理人 内田 明  
代理人 安西 篤夫  

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