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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H01J |
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管理番号 | 1035784 |
異議申立番号 | 異議2000-74150 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-05-22 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-11-14 |
確定日 | 2001-04-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3041403号「荷電ビーム断面加工・観察装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3041403号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 特許第3041403号の請求項1ないし3に係る発明についての出願は、平成2年10月12日に特許出願され、平成12年3月10日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1ないし3に対して、特許異議申立人株式会社日立製作所より特許異議の申立てがなされたものである。 2.特許異議申立てについて (ア)本件発明 特許第3041403号の請求項1ないし3に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】試料表面に集束イオンビームを走査させる集束イオンビーム照射系と、前記試料表面に電子ビームを走査させる電子ビーム照射系と、前記試料を移動させる試料ステージと、前記集束イオンビーム又は前記電子ビーム照射時に前記試料表面から放出される二次電子を捕らえる二次電子検出器と、前記二次電子検出器の出力を画像として表示する画像表示装置と、前記集束イオンビーム照射系からの集束イオンビームと前記電子ビーム照射系からの電子ビームとのビームを切り替えるビーム切替器から成る荷電ビーム断面加工・観察装置において、前記集束イオンビーム照射系と前記電子ビーム照射系とを互いにその照射軸を90度より狭い角度に配置し、前記集束イオンビーム及び前記電子ビームのビーム毎に前記二次電子検出器から出力される信号処理を最適な状態に設定可能な二次電子制御系とを備え、前記ビーム切替器と前記二次電子制御系とを連動させ、前記集束イオンビームと電子ビームとを前記ビーム切替器で切り替えると同時に、前記二次電子制御系の設定が切り替わり、前記集束イオンビームによる試料表面画像と前記電子ビームによる断面画像とを前記画像表示装置に画像表示することを特徴とする荷電ビーム断面加工・観察装置。(以下、「本件発明1」という。) 【請求項2】前記信号処理は、主増幅器の前におかれるSIM用前置増幅器とSEM用前置増幅器によってなされ、前記ビーム切替器によりイオンビームと電子ビームが切り替えられると同時に連動して切り替えられることを特徴とする請求項1記載の荷電ビーム断面加工・観察装置。(以下、「本件発明2」という。) 【請求項3】前記二次電子検出器内の光電子倍増管高圧電源をSIM用とSEM用別々にして、前記ビーム切替器によりイオンビームと電子ビームが切り替えられると同時に連動して切り替えられることを特徴とする請求項1又は2記載の荷電ビーム断面加工・観察装置。(以下、「本件発明3」という。)」 (イ)特許異議申立ての概要 特許異議申立人株式会社日立製作所は、証拠として甲第1号証(特開平2-123749号公報)、甲第2号証(田中敬一外1名編「図説走査電子顕微鏡(生物試料作製法)」(1980年2月25日)株式会社朝倉書店、第8〜17頁、第34〜45頁)、甲第3号証(K.Nikawa外5名「NEW APPLICATIONS OF FOCUSED ION BEAM TECHNIQUE TO FAILURE ANALYSIS AND PROCESS MONITORING OF VLSI」、1989年、IEEE/IRPS、第43〜52頁)を提出し、本件発明1ないし3は、甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1ないし3の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。 (ウ)甲各号証記載の発明 上記甲第1号証には、 「試料面を走査照射するイオンビーム照射系と電子ビーム照射系、各ビーム照射時に試料から放出される2次電子を捕らえる検出器、上記検出器の出力を表示する像表示装置、および、ビーム切換器とからなり、上記イオンビーム照射系と上記電子ビーム照射系は互いにその照射軸を90度または90度より狭い角度に配置され、試料上の同一点にイオンビームおよび電子ビームを走査照射できるように、同一試料室に装着されており、上記ビーム切換器は、上記イオンビームと電子ビームとを交互に切換えるものであり、上記像表示装置は、上記切換器の切換え動作に応じて上記検出器の出力を試料表面像および断面加工像として表示するものであることを特徴とする断面加工観察装置。」(特許請求の範囲の請求項1)、 「本発明は半導体、特に超微細加工によりSi等のウエハーに高密度に集積されたLSIのプロセス評価に用いようとするもので、半導体製造プロセスの問題点を発見するための断面加工観察装置に関する。」(第1頁右下欄第4〜8行)、 「第3図は本発明の概念図である。図中の1はイオン源、2はコンデンサレンズ、3はビームブランキング、4は対物レンズ、5はXY偏向電極、6は試料7から発生する二次電子を捕らえる検出器で、以上1から7までで走査イオン顕微鏡を構成する。8は電子銃、9はコンデンサレンズ、10はビームブランキング、11は対物レンズ、12はXY偏向電極で、以上8から12までで走査電子顕微鏡筒部を構成し、試料7に細くしぼった電子線を照射し試料から放出される二次電子を検出器6で捕らえる。試料から出る二次電子はイオンビーム励起の時も電子ビーム励起の二次電子も区別が付かないから走査像を得ようとする場合は、イオンビームと電子ビームを同時に照射することは出来ない。このため13に示すビーム切換器を用い、走査像を表示するために、イオン照射系と電子照射系との切換を行う。また、14は像表示用ディスプレイで、この実施例では制御用コンピュータのCRT、15,16はディスプレイ中に設けられた夫々の像を表示するエリアである。」(第2頁右下欄第6行〜第3頁左上欄第7行)と記載されている。 甲第2号証には、走査電子顕微鏡に関し、 「普通のSEMでは、コントラスト調整に光電子増倍管の電圧(300〜600V)を変化させることで代用させている。つまり、コントラストを高く望むには、信号の利得を増し、かつコントラストに関係しない直流分をカットする方法がとられる(p.10、図14参照)。図5および図6は、コントラスト(つまり映像信号の幅)と明るさのレベルをそれぞれ独立に変化させた場合の映像信号と、それぞれに対応した画面の様子を示したものである。しかし、一般にコントラストを増すと、直流分も増加するので、明るさのレベルも増加する。したがって、コントラストを増すことと明るさのレベルの調整を同時に行わねばならない。上記の操作は、いささかわずらわしいものであって、最近はこの操作を電気的に調節する’オートブライネス・コントラスト・コントロール’(自動画調)方式が多く採用されるようになってきた。これを装備すると、上記の操作の手間がはぶけるのみでなく、倍率を変えて試料の明るい視野から暗い視野を選んだ場合などにも、常に適切なコントラスト・レベルが得られ具合がよい。」(第39頁第6行〜第40頁第5行)と記載されている。 甲第3号証には、集束イオンビーム技術のVLSIの欠陥解析およびプロセスモニターへの新応用に関し、 「従来の断面観察方法との比較・・・SEM(Scanning Electron Microscope)とTEM(Transmission Electron Microscope)とが広く用いられている。FIBによる方法はこれら従来の方法より多くの利点を有している(表1参照)。」(第46頁右欄第1〜11行参照)と記載されており、第47頁の表1には、下から4段目の欄に「金属被覆領域での像のコントラスト」として、FIBの場合「非常に強く」、SEMの場合には「弱い」と表示されている。 (エ)対比・判断 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、甲第1号証記載の「イオンビーム照射系、電子ビーム照射系、検出器、ビーム切換器、像表示装置」は、それぞれ、本件発明1の「集束イオンビーム照射系、電子ビーム照射系、二次電子検出器、ビーム切換器、画像表示装置」に相当する。また、甲第1号証には、照射軸を90度より狭い角度に配置することも記載されている。したがって、両者は、「試料表面に集束イオンビームを走査させる集束イオンビーム照射系と、前記試料表面に電子ビームを走査させる電子ビーム照射系と、前記試料を移動させる試料ステージと、前記集束イオンビーム又は前記電子ビーム照射時に前記試料表面から放出される二次電子を捕らえる二次電子検出器と、前記二次電子検出器の出力を画像として表示する画像表示装置と、前記集束イオンビーム照射系からの集束イオンビームと前記電子ビーム照射系からの電子ビームとのビームを切り替えるビーム切替器から成る荷電ビーム断面加工・観察装置において、前記集束イオンビーム照射系と前記電子ビーム照射系とを互いにその照射軸を90度より狭い角度に配置し、前記集束イオンビームと電子ビームとを前記ビーム切替器で切り替えると同時に、前記集束イオンビームによる試料表面画像と前記電子ビームによる断面画像とを前記画像表示装置に画像表示する荷電ビーム断面加工・観察装置」である点で一致し、次の相違点で相違する。 相違点:本件発明1は、集束イオンビーム及び電子ビームのビーム毎に二次電子検出器から出力される信号処理を最適な状態に設定可能な二次電子制御系とを備え、ビーム切替器と前記二次電子制御系とを連動させ、前記集束イオンビームと電子ビームとをビーム切替器で切り替えると同時に、前記二次電子制御系の設定が切り替わるものであるのに対し、甲第1号証には、該記載がない点。 上記相違点について検討するに、甲第2号証に記載されたオートブライネス・コントラスト・コントロールは、本件発明1の二次電子制御系に対応するといえるものの、甲第2号証記載のオートブライネス・コントラスト・コントロールは単独の走査電子顕微鏡におけるものである。また、甲第3号証記載の表1は、単独のFIBにおけるコントラストと単独のSEMのコントラストとの比較を単に示したものであり、二次電子制御系に関する記載もない。してみれば、甲第2、3号証記載の発明はいずれも単独のビームを用いた装置に関するものであるから、甲第2、3号証記載の発明を、集束イオンビームと電子ビームとをビーム切替器で切り替える方式の甲第1号証記載の発明と組み合わせても、「集束イオンビーム及び電子ビームのビーム毎に二次電子検出器から出力される信号処理を最適な状態に設定可能な二次電子制御系とを備え、ビーム切替器と前記二次電子制御系とを連動させ、前記集束イオンビームと電子ビームとをビーム切替器で切り替えると同時に、前記二次電子制御系の設定が切り替わる」という具体的構成を導くことはできない。 そして、本件発明1は、試料の目的の場所の断面像を、加工作業中必要に応じて、リアルタイムにイオンビームと電子ビームを切り換えて、鮮明な像を表示出来るので、微小な異物や異状形状を直ちに発見できるという顕著な効果を有するものである。 よって、本件発明1は、甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 次に、本件発明2は、本件発明1を引用してさらに限定したものであり、本件発明3は、本件発明1または2を引用してさらに限定したものであるから、本件発明2、3は、上記本件発明1と同様の理由により、甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (オ)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件発明1ないし3についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1ないし3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-03-22 |
出願番号 | 特願平2-273526 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H01J)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 江成 克己、榎本 吉孝 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
杉野 裕幸 榮永 雅夫 |
登録日 | 2000-03-10 |
登録番号 | 特許第3041403号(P3041403) |
権利者 | セイコーインスツルメンツ株式会社 |
発明の名称 | 荷電ビーム断面加工・観察装置 |
代理人 | 高田 幸彦 |
代理人 | 竹ノ内 勝 |