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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01J
管理番号 1035789
異議申立番号 異議2000-74528  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-12-19 
確定日 2001-04-18 
異議申立件数
事件の表示 特許第3064933号「陰極線管」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3064933号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続きの経緯
特許第3064933号に係る発明についての出願は、昭和61年7月2日に出願した特願昭61-154027号の一部を平成8年12月26日に新たな特許出願としたものであって、平成12年5月12日にその発明について特許の設定登録がなされた後、その特許について、特許異議申立人ルシリエ キャラより特許異議の申立てがなされたものである。

(2)異議申立てについて
ア.本件発明
特許第3064933号の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
【請求項1】陰極線管用バルブを構成するパネルガラスと漏斗状のファンネルガラスとをフリットガラスを介して組合せ、前記ファンネルガラス下端部のネックガラス管内に電子銃を挿入し封着してなる陰極線管において、前記パネルガラスにシールされる前記ファンネルガラスの開口端の内周壁側エッジ部に、内周壁の延長面と90°未満の角度で交わる傾斜面を設け、さらに前記開口端の下部の外周壁側にアライメント・パッドを配置し、このアライメント・パッドの上部にシール面とほぼ平行な面に対し40°〜50°の角度で交わる傾斜面を設け、かつアライメント・パッドの前記傾斜面とアライメント・パッドの側壁面とによる角部は鈍角であることを特徴とする陰極線管。

イ.申立ての理由の概要
特許異議申立人は、証拠として甲第1号証(特開昭50-111112号)、甲第2号証(実願昭58-125857号(実開昭60-33746号)のマイクロフィルム)を提出し、請求項1に係る発明の特許は、第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、請求項1に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。

ウ.申立人が提出した甲号証の説明
申立人が提出した甲第1号証には、次の事項が第1図、第2図及び第3図とともに記載されている。
(1)「カラーテレビ用ブラウン管はプレス成形したファンネルとパネルのガラス部品の封着面を互いに相対して封着するが、封着を良好ならしめるため通常封着面を研磨するが、研磨したものは封着面の端縁が鋭いナイフエッジ状になって部品の運搬や封着作業中に欠け易く破壊不良となることがある。
すなわち従来の形成装置を第1図及び第2図によって説明すれば、…
研磨後の封着面には鋭い端縁6’を生じ運搬時等に受けるショックに極めて弱い。従って封着面6を削り出したあと更に端縁を研磨機によって研磨し面取りを行うといった煩雑な工程を要した。また…薄いはみ出し部分7を生じることがあり、このはみ出し部分7が欠けて研磨後もファンネル4にこの欠け7’が残留するとわずかな衝撃によってもこの部分からクラックが発生することがある。」(第1頁左欄第14行〜第2頁右欄第1行)
(2)「即ち第3図に示すように本発明にかかるシェルリング8及びプランジャ9は中空ガラス製品の端面を形成する型面のそれぞれに封着面11に対して角度θがおよそ45°の傾斜計12及び13を形成したものである。同図(b)に示すファンネル14は…端面15を平滑に研磨して所定の封着面11を削り出す。…
しかしてファンネル14の端縁12’及び13’は予め傾斜部を形成してテーパー状になっているから別段の面取り工程が不要であり、また、たとえシェルリング8とプランジャ9の接合面の位置にはみ出し部分16を生じ、これが欠けて微小クラックとなっても封着面11から比較的離れた位置にあるため上記の欠陥は端面15の研磨とともに削除されて残留しない。」(第2頁左欄第8行〜同右欄第5行)

この記載事項によると、甲第1号証には、
「カラーテレビ用ブラウン管(陰極線管に相当。)用バルブを構成するパネル(パネルガラスに相当。)とファンネル(漏斗状のファンネルガラスに相当。)とを組合せてなるカラーテレビ用ブラウン管において、前記パネルに封着(シールに相当。)される前記ファンネルの開口端の端縁13’(内周壁側エッジ部に相当。)に、内周壁の延長面とおよそ45°(90°未満に相当。)の角度で交わる傾斜部(傾斜面に相当。)を設けたことを特徴とするカラーテレビ用ブラウン管。」
が記載されていると認められる。

申立人が提出した甲第2号証には、次の事項が第1図、第2図、第4図及び第6図とともに記載されている。
(1)「カラー陰極線管は、ネック部に電子銃を収容する漏斗状のファンネルと、カラー蛍光体面を有するパネルとからなり、両者は別個に製作され、その後組立封合して製作される。高い精度で封合するため、第1図に示すようにファンネルFには開口端部Sの側壁上にファンネルの中心軸線から所定の距離に形成された基準面Aを有する3つの突起Bが設けられる。この突起Bの基準面Aを基準にしてパネルとファンネルとが封合される。
かかる突起を有するファンネルは、第2図に示すようなプレス成形装置により成形される。すなわち、シェルリング10を備えたボトムモールド11内に溶融ガラスを投入後、プランジャ12を下降して前記ガラスを押し拡げファンネルFを成形する。突起Bはボトムモールド11に取り付けた調節可能な成形部材13により開口端部Sの側壁上に、それの基準面Aがファンネルの中心軸線から所定距離の位置にあるように調節して成形される。」(第1頁第13行〜第2頁第12行)
(2)「第4図はかかるファンネルFの突起付近を示した部分拡大図である。…突起Bの端縁Eにモールドの接合線Mがあって角張っていたり、またガラスのハミ出しがあるので該端縁にカケ(記号Dで示す。)やヒビが入る。」(第3頁第8行〜第4頁第3行)
(3)「第5図は本考案にかかるファンネルを形成する調節機構を示した平面図である。本考案では突起Bの基準面Aから外れた所に調節可能な成形部材13とボトムモールド11との接合線Mが位置するようにしている。しかも従来問題であった基準面Aの端縁Eは丸味をもって成形してある。この実施例では接合線Mを側壁に位置させているが、ガラスのカケの発生し易い基準面Aの端縁Eを外した所の突起Bの出っ張りの中間に、或いは、出っ張りの基部付近に位置させてもよい。第6図は、このようにして成形された本考案になるファンネルの突起B付近を示す部分拡大図である。…該端縁は鋭い角やガラスのはみ出しのない機械的衝撃に対して強い状態に形成され、ためにパネルを封合する場合等において突起の基準面の端縁がカケて破損したりヒビが入ったりする問題が解消される。」(第4頁第11行〜第5頁第11行)

(4)対比・判断
請求項1に係る発明と申立人が提出した甲第1号証記載の発明とを対比すると、カラーテレビ用ブラウン管において、パネルとファンネルとをフリットガラスを介して組合せ、ファンネル下端部のネックガラス管内に電子銃を挿入し封着することは技術常識であるから、両者は、
【一致点】
「陰極線管用バルブを構成するパネルガラスと漏斗状のファンネルガラスとをフリットガラスを介して組合せ、前記ファンネルガラス下端部のネックガラス管内に電子銃を挿入し封着してなる陰極線管において、前記パネルガラスにシールされる前記ファンネルガラスの開口端の内周壁側エッジ部に、内周壁の延長面と90°未満の角度で交わる傾斜面を設けたことを特徴とする陰極線管。」
で一致し、
【相違点】
請求項1に係る発明では、開口端の下部の外周壁側にアライメント・パッドを配置し、このアライメント・パッドの上部にシール面とほぼ平行な面に対し40°〜50°の角度で交わる傾斜面を設け、かつアライメント・パッドの前記傾斜面とアライメント・パッドの側壁面とによる角部は鈍角であるのに対し、
甲第1号証記載の発明では、このことについての記載がない点、
で相違する。

そこで、上記相違点について検討すると、
甲第2号証には、開口端部S(開口端に相当。)の下部の側壁(外周壁に相当。)側に突起B(アライメント・パッドに相当。)を配置し、この突起Bの上部に設けられた面(以下、これを上部面と呼ぶ。)が、第6図、第4図及び第2図に見られるものの、第6図では、該上部面は、開口端部S面(シール面に相当。)とほぼ平行な面に対し傾斜しているかのように見え、第4図及び第2図面では、該上部面は、開口端部S面とほぼ平行な面に対し傾斜していないかのように見える。つまり、上部面の開口端部S面に対する傾斜については、第6図、第4図及び第2図の間で一貫性がない。さらに、甲第2号証の明細書を参照しても、該上部面が、開口端部S面とほぼ平行な面に対し傾斜しているとの記載も示唆もないし、ましてや、その傾斜角が40〜50°であるとの記載もない。
したがって、甲第1号証に記載のファンネルの開口端の下部の側壁側に、甲第2号証に記載の突起Bを配置し、この突起Bの上部にシール面とほぼ平行な面に対し40°〜50°の角度で交わる傾斜面を設け、かつ突起Bの前記傾斜面と突起Bの側壁面とによる角部を鈍角とすることは、当業者が容易なし得ることではない。

そして、請求項1に係る発明は、その技術的事項により明細書記載の効果を奏するものと認められる。

(5)むすび
したがって、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-03-26 
出願番号 特願平8-347144
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H01J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 江塚 政弘小松 徹三須原 宏光  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 山川 雅也
杉野 裕幸
登録日 2000-05-12 
登録番号 特許第3064933号(P3064933)
権利者 日立デバイスエンジニアリング株式会社 株式会社日立製作所
発明の名称 陰極線管  
代理人 西森 浩司  

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