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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B41F
審判 全部申し立て 2項進歩性  B41F
管理番号 1035807
異議申立番号 異議1999-74532  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-08-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-02 
確定日 2001-03-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第2901082号「印刷機」の請求項1ないし5に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2901082号の請求項1ないし5に係る発明の特許を取り消す。 
理由 [手続の経緯]
本件特許第2901082号の請求項1〜5に係る発明の出願は、平成1年12月22日に特許出願され、平成11年3月19日にその特許の設定登録がなされ、その後、その特許について海保洋一より特許異議の申立がなされ、当審において取消理由の通知がなされたところ、その指定期間内である平成12年9月18日に特許異議意見書が提出されたものである。


[異議申立]
【1】請求項1〜5に係る発明
本件特許第2901082号の請求項1〜5に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1〜5」といい、それらをまとめた場合、「本件発明」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1〜5に記載されたとおりのものであり、その請求項1〜5に記載された事項を構成要素毎に分説して記載すると、以下のとおりである。(但し、符号(A)〜(G),(A-1)〜(A-3)は、異議申立書の異議申立理由の記載に基づいて当審において付した。)
「【請求項1】
(A)ドラム部上の使用済みのマスターを排版し、新規マスターをドラム部に巻き付ける製版プロセス(A-1)と、給紙部からの用紙にマスター上に形成された画像を印刷する印刷プロセス(A-2)とを操作部により選択実行する印刷機(A-3)において、
(B)ドラム部に巻回されたマスターを検知する検知手段と、
(C)前記操作部から製版プロセスが選択された場合、前記検知手段によって前記ドラム部に使用済みマスターが巻回されていることを検知したときには、排版動作を指示する制御手段と、を備えたことを特徴とする印刷機。
【請求項2】
(D)前記制御手段は、前記操作部から製版プロセスが選択され、前記排版動作が完了した後、ドラム部にマスターが残っていないことを検知したときには、製版動作を指示することを特徴とする請求項1記載の印刷機。
【請求項3】
(E)前記制御手段は、前記排版動作後にまだ使用済みマスターが巻回されていることを検知したときは警告表示を行うとともに製版動作が停止させることを特徴とする請求項2記載の印刷機。
【請求項4】
(F)前記制御手段は、前記操作部から印刷プロセスが選択された場合、前記検知手段によって前記ドラム部にマスターが巻回されていることを検知したときには、印刷動作を指示することを特徴とする請求項1記載の印刷機。
【請求項5】
(G)前記制御手段は、前記操作部から印刷プロセスが選択された場合、前記検知手段によって前記ドラム部にマスターが巻回されていることを検知できなかったときには、警告表示を行うとともに印刷動作を停止させることを特徴とする請求項1記載の印刷機。」

【2】取消理由(特許法第29条第1,2項違反)
〔1〕取消理由の概要
当審が平成12年6月28日付け取消理由通知書で通知した取消理由は、刊行物1〔特開平1-217369号公報(異議申立書の甲第1号証)〕,刊行物2〔特開昭57-15967号公報(同、甲第2号証)〕,刊行物3〔実願昭61-19663号(実開昭62-131854号)のマイクロフィルム(同、甲第3号証)〕,刊行物4〔(社)日本印刷学会編,技報堂出版(株),昭和58年5月1日発行,「印刷工学便覧」,「17.3.2 謄写印刷」の項参照(同、参考資料)〕を引用し、
本件発明1は、刊行物1に記載された発明と実質的に同一のもの(刊行物4の記載事項を参酌、以下同様。)と認められ、また、本件発明2は、刊行物1に記載された発明と実質的に同一のもの或いは刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、また、本件発明3は、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、さらに、本件発明4,5は、刊行物1に記載された発明と実質的に同一のもの(刊行物3の記載事項を参酌。)と認められるから、
本件発明1〜5は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、或いは、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、本件発明1〜5に係る特許は、取り消されるべきものであるというものである。

〔2〕各刊行物の記載事項
(1)刊行物1〔特開平1-217369号公報〕
刊行物1には、光学系3,複写部4,製版部5,印刷部6等から構成され、原稿画像からの画像信号に基づき版用紙に該原稿画像に対応する穿孔を形成して印刷用版を作成する、即ち、製版プロセスを実行する製版手段と、穿孔された印刷用版を用いて印刷用紙に印刷動作を行う、即ち、印刷プロセスを実行する印刷手段とを備えた印刷装置に関する発明が記載されており、そして、製版プロセスを実行する製版手段、印刷プロセスを実行する印刷手段、及び、印刷装置全体の制御手段に関して、詳細には、次の事項が図面とともに記載されている。
〈製版プロセスを実行する製版手段に関して〉
(ア)「(1)光学系3 光学系3は、原稿台311上に載置される原稿を露光走査して、その像を感光体ドラム401に伝送する機構である。光学系3は、露光ランプ301、第1ミラー302、第2ミラー303、第3ミラー304、レンズブロック305、第4ミラー306、及びディジタル系とアナログ系とを切り換えるための切り換えミラー351を有する。・・・かかる光学系3によると、原稿台311上に載置され、原稿台カバー312で覆われた原稿の原稿像は、第1ミラー302、第2ミラー303、第3ミラー304で順次反射された後、レンズブロック305を通過し、第4ミラー306で反射されて感光体ドラム401の表面に至り、結像する。なお、切り換えミラー351が図の一点鎖線の位置にあるとき(ディジタル系選択時)は、伝送された光像は該ミラー351で反射されて、CCDイメージセンサ551(以下、CCD551と記す)に至り結像する。」(2頁右下欄8行〜3頁左上欄20行)
(イ)「(3)製版部5 製版部5は、CCD551から送信される画像信号・・・に基づいてサーマルヘッド552を駆動し、原稿画像に対応する穿孔を版用紙に形成するための機構である。製版部5は、製版用紙を収納する用紙収納カセット501、該カセット501から版用紙を引き出すためのローラ502、用紙をサーマルヘッド552-プラテン504間へ所定のタイミングで送出する第1タイミングローラ対503、画像を穿孔された版用紙を印刷ベルト531へ所定のタイミングで巻きつける第2タイミングローラ対505、版用紙の通過を検出するセンサ521、印刷ベルト531を駆動する印刷ドラム532、インキングを行うインキングローラ533、版用紙を印刷ベルト531から分離する分離爪534、使用済の版用紙を収納する収納ボックス535を有する。」(3頁左下欄5行〜右下欄4行)
(ウ)「(3)CPU3(第6図) CPU3は製版部5を制御するCPUであり、例えば電源のONにより処理をスタートし、まず初期状態を設定し(S41)、また、入出力をアクティブとする(S43)。ステップS45で内部タイマをスタートする。次に、製版モード表示LED103bがONされて製版モードが設定されていることを条件として(S47;YES)、自動露光読取処理サブルーチン(S49)、製版動作処理サブルーチン(S51)をコールする。また、その他の処理を実行する(S53)。その後、前記ステップS45でセットした内部タイマの終了を待って(S55;YES)、ステップS45に戻り、処理を繰り返す。各サブルーチンステップS49、S51については、後述する。」(5頁左下欄16行〜右下欄12行)
(エ)「(4)自動露光読取処理(第12図) 自動露光読取処理は、CPU3の処理でコールされるサブルーチン(第6図;S49)であり、製版モードの設定を条件として(第6図;S47参照)、実行される処理である。・・・即ち、光学系が走査を実行していないことを条件として(S411;NO)、ディジタル光学系を選択する(S413)。具体的には、感光体ドラム401の前方に配置されている切り換えミラー351を、第1図の一点鎖線の位置に起こすべく、該ミラー351を作動するアクチュエータ・・・の駆動回路への制御信号を発生する。また、光学系3を制御するCPU2へ送信すべきスキャン信号を発生する(S415)。・・・次に、光学系を制御するCPU2からのタイミング信号のONエッジが検出される(S417;YES)と、CCD551による画像サンプリングを開始する(S419)。・・・その後、光学系を制御するCPU2からのリターン信号のONエッジが検出される(S421;YES)と、CCD551による画像サンプリングを終了する(S423)。・・・さらに、製版開始フラグをセットして製版動作に備えるとともに、製版予備走査フラグをリセットする(S429)。」(8頁左下欄10行〜9頁左上欄16行)
(オ)「(5)製版動作処理(第13図) 製版動作処理は、CPU3の処理でコールされるサブルーチン(第6図;S51)であり、製版開始フラグのセットを条件として(第12図;S407,または、S429参照)、実行される処理である。製版開始フラグがセットされている場合(S501;YES)は、まず、版無し警告表示LED104cを判定する(S503)。版無し警告表示LED104cがOFFであれば(S503;YES)、旧版の廃棄を開始し、タイマH1をスタートし、廃棄中フラグをセットし、また、版無し警告表示LED104cをONする(S505)。タイマH1は、旧版の廃棄動作の継続時間を規定するタイマである。ステップS507では、タイマH1の終了を判定し、終了した場合(S507;YES)は、旧版の廃棄動作を終了し、また、廃棄中フラグをリセットする(S509)。廃棄中フラグがリセットされた場合(S511;YES)は、ディジタル光学系を選択するとともに、製版開始フラグをリセットする(S513)。ディジタル光学系の選択は、具体的には、感光体ドラム401の前方に配置されている切り換えミラー351を、第1図の一点鎖線の位置に起こすべく、該ミラー351を作動するアクチュエータ・・・の駆動回路への制御信号を発生することによって行う。また、用紙カセット501からの新しい版用紙の給紙を開始するとともに、タイマH2をスタートする(S515)。タイマH2は、スキャン信号の発生時刻を規定するタイマである。タイマH2の終了で(S517;YES)、光学系を制御するCPU2へのスキャン信号を発生する(S519)。CPU2では・・・該スキャン信号に対応して、走査処理が開始される(第5図;S27、S29参照)。次に、光学系を制御するCPU2からのタイミング信号のONエッジが検出される(S521;YES)と、製版タイミングローラ503のクラッチをONして給紙を開始するとともに、サーマルヘッド552をONし、また、CCD551からの画像信号・・・の転送を開始する(S523)。その後、CPU2からのリターン信号のONエッジが検出される(S525;YES)と、画像信号の転送を終了し、サーマルヘッド552をOFFし、また、製版タイミングローラ503のクラッチをOFFする(S527)。一方、版先端検出センサ521のONエッジ(S529;YES)で、印刷ドラム532の駆動を開始し、また、タイマH3をスタートする(S531)。タイマH3は、インキングの開始時刻を規定するタイマである。」(9頁左上欄19行〜右下欄13行)
〈印刷プロセスを実行する印刷手段に関して〉
(カ)「(4)印刷部6 印刷部6は、印刷用紙を収納する用紙収納カセット601、該カセット601から用紙を引き出すためのローラ602、引き出された用紙を搬送するローラ対603、搬送された用紙を所定のタイミングで印刷ベルト531-圧接ローラ605間へ送出するタイミングローラ対604、画像を印刷された用紙を印刷ベルト531から分離する分離爪607、分離された用紙を外部へ排出するローラ対606、排出された印刷用紙を収納するトレイ608を有する。」(3頁右下欄5〜15行)
(キ)「(4)CPU4(第7図) CPU4は印刷部6を制御するCPUであり、例えば電源のONにより処理をスタートし、まず初期状態を設定し(S61)、また、入出力をアクティブとする(S63)。ステップS65で内部タイマをスタートする。また、印刷動作処理サブルーチン(S67)をコールし、その他の処理を実行する(S69)。その後、前記ステップS65でセットした内部タイマの終了を待って(S71;YES)、ステップS65に戻り、処理を繰り返す。サブルーチンステップS67については、後述する。」(5頁右下欄13行〜6頁左上欄5行)
(ク)「(6)印刷動作処理(第14図) 印刷動作処理は、CPU4の処理でコールされるサブルーチン(第7図;S67)であり、印刷部6での動作を制御するルーチンである。ステップS601では、印刷ベルト531上に版が有るか否かが判定される。印刷ベルト531上に版が無い場合(S601;NO)には、版無し警告表示LED104cをONする(S603)。印刷ベルト531上に版が有り(S601;YES)、かつ、印刷モードが設定されている場合(S605;YES)には、スタートフラグを判定する(S607)。ステップS607での判定の結果、スタートフラグがセットされている場合には、スタートフラグをリセットするとともに、印刷開始フラグをセットする(S609)。印刷開始フラグのセットに対応して、印刷用紙の給紙口として、カセット601の給紙口を選択する(S613)。ステップS615で、印刷処理を実行する。」(10頁左上欄5行〜右上欄5行)
〈印刷装置全体の制御手段に関して〉
(ケ)「第2図は、上記実施例にかかる複写印刷装置の操作パネルの説明図である。操作パネル100は、実施例装置の原稿台311の近傍に配置されている。パネル100上には、・・・製版モードの設定を指令するための製版指令キー103、該キー103が押されたことを表示する製版指令表示LED103a、製版モードが設定されたことを表示する製版モード表示LED103b、印刷モードの設定を指令するための印刷指令キー104、該キー104が押されたことを表示する印刷指令表示LED104a、印刷モードが設定されたことを表示する印刷モード表示LED104b、印刷モード時に版が無し場合に警告する版無し警告表示LED104c、・・・複写(製版、印刷、予備走査)動作の開始を指令するためのスタートキー161・・・等が配置されている。」(3頁右下欄17行〜4頁右上欄15行)
(コ)「{制御回路の説明} 第3図は、上記実施例にかかる複写印刷装置の制御回路の概略構成を示すブロック図である。制御回路は、CPU1、CPU2、CPU3、CPU4、RAM1、RAM2を主体として構成される。各CPU及びRAMは、双方向バスによって接続され、相互に通信を行ないつつ各種制御を実行する。・・・CPU3は、製版部5の作動を制御するCPUであり、製版部5の各所に設置されたセンサ(センサ521等)からの信号、及びCCD551からの信号・・・を入力するとともに、版用紙の給紙ローラのクラッチの駆動回路、印刷ドラムの駆動回路等、製版部の各種アクチュエータの駆動回路群への制御信号を出力する。CPU4は、印刷部6の作動を制御するCPUであり、印刷部6の各所に設置された各種センサからの信号を入力するとともに、印刷用紙の給紙ローラ等の各ローラのクラッチの駆動回路、圧接ローラ605の上下動を支配する駆動回路等、印刷部の各種アクチュエータの駆動回路への制御信号を出力する。」(4頁右上欄16行〜右下欄15行)
(サ)「また、キー103のONエッジが検出された場合(S109;YES)は、製版指令表示LED103aを点灯し、複写指令表示LED101a、自動指令表示LED102a、印刷指令表示LED104aを消灯する(S111)。なお、キー104のONエッジが検出された場合(S113;YES)は、版無し警告表示LED104cを判定し(S115)、印刷用の版が装着されている場合(S115;NO)には、印刷指令表示LED104aを点灯し、複写指令表示LED101a、自動指令表示LED102a、製版指令表示LED103aを消灯する(S117)。一方、ステップS115の判定の結果、印刷用の版が装着されていないとされた場合(S115;YES)には、版無し警告表示LED104cを点滅して警告する(S119)。なお、該版無し警告表示LED104cの点滅状態は、キー101、キー102、キー103のいずれかのキー入力によって解除される(S121、S123)。」(6頁右上欄5行〜左下欄4行)
(シ)第8図(A)の「キー入力処理ルーチン」において、キー103(製版モード設定)のONエッジが検出され、版有りで版無し警告表示LED104cが点滅しない場合には、リターン処理(解除)されること、また、キー104(印刷モード設定)のONエッジが検出され、版無しで版無し警告表示LED104cが点滅した場合には、リターン処理(解除)されること、第13図の「製版動作処理ルーチン」において、製版開始フラグのセット時に旧版がある場合、「廃棄中フラグ」がリセットされた後に製版動作が行われること、及び、第14図の「印刷動作処理ルーチン」において、印刷ベルト531に印刷用版が巻きつけられていなければ版無し警告表示LED104cがONしてリターン処理(解除)されること、等が記載されている。
上記記載事項(ア)〜(シ)から、刊行物1からは、本件発明の各構成に対応する、以下のような構成が記載されているものと認められる。
1.本件発明1の構成(A)((A-1)〜(A-3)),(B),(C)について
a.構成(A-1)の「ドラム部上の使用済みのマスターを排版し、新規マスターをドラム部に巻き付ける製版プロセス」の構成に対応する、「印刷ドラム532により駆動する印刷ベルト531上の使用済みの旧版を分離爪534により分離して収納ボックス535に収納し、製版部5においてCCD551から送信される画像信号に基づくサーマルヘッド552の駆動により原稿画像に対応する穿孔を形成して製版した新規版用紙を印刷ベルト531に巻き付ける製版プロセス」の構成。(記載事項(イ)(オ)参照。)
b.構成(A-2)の「給紙部からの用紙にマスター上に形成された画像を印刷する印刷プロセス」の構成に対応する、「用紙収納カセット601からの用紙に版用紙上に形成された画像を印刷する印刷プロセス」の構成。(記載事項(カ)(ク)参照。)
c.構成(A-3)の「(製版プロセスと印刷プロセスとを)操作部により選択実行する印刷機」の構成に対応する、「(製版プロセスと印刷プロセスとを)操作パネル100に配置された製版モードの設定を指令する製版指令キー103と印刷モードの設定を指令する印刷指令キー104との選択押下によりCPU3或いはCPU4を介して選択実行する複写印刷装置」の構成。(記載事項(ウ)(キ)〜(ケ)(サ)参照。)
d.構成(B)の「ドラム部に巻回されたマスターを検知する検知手段」の構成に対応する、「印刷ベルト531に巻回された使用済み或いは新規の版用紙が無いことを版無し警告表示LED104cを介して警告表示するための手段」の構成。また、版無し警告表示LED104cとの関係は明記されていないが、製版部5及び印刷部6の各所に各種センサを設置したことが記載されている。(記載事項(オ)(ク)(ケ)(コ)参照。)
e.構成(C)の「操作部から製版プロセスが選択された場合、検知手段によってドラム部に使用済みマスターが巻回されていることを検知したときには、排版動作を指示する制御手段」の構成に対応する、「操作パネル100から製版モードの設定による製版プロセスが選択された場合、使用済みの旧版有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのときには、使用済みの旧版の廃棄を開始する制御手段」の構成。(記載事項(イ)(オ)参照。)
2.本件発明2の構成(D)について
構成(D)の「制御手段は、操作部から製版プロセスが選択され、排版動作が完了した後、ドラム部にマスターが残っていないことを検知したときには、製版動作を指示する」の構成に対応する、「制御手段は、操作パネル100から製版指令キー103の押下により製版プロセスが選択されたとき、製版開始フラグのセットを条件として版無し警告表示LED104cを判定し、使用済みの旧版有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのときには、使用済みの旧版の廃棄動作が完了した後、切り換えミラー351がディジタル光学系選択時の状態になって製版開始フラグがリセットし、用紙カセット501からの新規版用紙の給紙を開始するとともに光学系を制御して製版部5において製版する」の構成。(記載事項(イ)(オ)参照。)
3.本件発明3の構成(E)について
構成(E)の「制御手段は、排版動作後にまだ使用済みマスターが巻回されていることを検知したときは警告表示を行うとともに製版動作が停止させる」の構成に対応する、「制御手段は、操作パネル100から製版指令キー103の押下により製版プロセスが選択されたとき、製版開始フラグのセットを条件として版無し警告表示LED104cを判定し、使用済みの旧版有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのときは、使用済みの旧版の廃棄動作が完了した後に廃棄中フラグのリセットにより、製版開始フラグがリセットされ用紙カセット501からの新規版用紙の給紙を開始するとともに光学系が制御され製版部5において製版する」の構成。(記載事項(イ)(オ)参照。)
4.本件発明4の構成(F)について
構成(F)の「制御手段は、操作部から印刷プロセスが選択された場合、検知手段によってドラム部にマスターが巻回されていることを検知したときには、印刷動作を指示する」の構成に対応する「制御手段は、操作パネル100上の印刷指令キー104の押下により印刷プロセスが選択された場合、印刷ベルト531上に印刷用の版が有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのときには、スタートフラグセットの判定により、スタートフラグをリセットするとともに、印刷開始フラグをセットし、それに対応して印刷用紙の給紙口としてカセット601の給紙口を選択して印刷処理を実行する」の構成。(記載事項(ク)〜(サ)参照。)
5.本件発明5の構成(G)について
構成(G)の「制御手段は、操作部から印刷プロセスが選択された場合、検知手段によってドラム部にマスターが巻回されていることを検知できなかったときには、警告表示を行うとともに印刷動作を停止させる」の構成に対応する、「制御手段は、操作パネル100上の印刷指令キー104の押下により印刷プロセスが選択された場合、印刷ベルト531上に印刷用の版が無しと判断したときには、版無し警告表示LED104cを点滅表示して警告するとともに、リターン処理(解除)する」の構成。(記載事項(ク)〜(サ)参照。)
(2)刊行物2〔特開昭57-15967号公報(同、甲第2号証)〕
刊行物2には、版胴にマスタがセットされているかどうかを検知して給排版を制御するようにした印刷機における給排版制御装置に関する発明が記載され、特に、版胴6にマスタ7が巻回されているときには、マスタ検知信号発生部材11,21からマスタ検知信号を発生し、この状態で給版指令信号が発生しても給版作動部材2には信号が入力せず給版作動が行われず2重に給版されることがなく、同状態でエンドサイクル指令信号が発生したときに排版動作を含むエンドサイクル作動を行うが、それにより排版されない場合には排版ミス検知部材5に信号が入力して運転が停止され、また、版胴6にマスタ7が巻回されていないときには、マスタ検知信号発生部材11,21からマスタ検知信号が発生せず、この状態で給版指令信号が発生すると給版作動部材2に信号が入力して給版作動が行われるが、エンドサイクル指令信号が発生しても排版ミス検知部材5に信号が入力せず運転が停止されることなく排版動作を含むエンドサイクル作動が行われる印刷機における給排版制御装置が図面とともに記載されている。(2頁左上欄4〜6行、同頁左下欄18行〜3頁左上欄16行、第1図参照。)
(3)刊行物3〔実願昭61-19663号(実開昭62-131854号)のマイクロフィルム(同、甲第3号証)〕
刊行物3には、謄写輪転機用版胴の外周面に捲着された孔版原紙を確認する装置に関する発明が記載され、特に、版胴2の外周面に孔版原紙3が捲着されているときには、センサ4からの出力信号により制御部5を介して版胴2の回転を可能にし、孔版原紙3が捲着されていないときには、センサ4から出力信号が発生せず制御部5を介して版胴2の回転を規制する孔版原紙の捲着確認装置が図面とともに記載されている。(1頁13〜14行、3頁10〜18行、6頁10行〜7頁11行、第1,3図参照。)
(4)刊行物4〔(社)日本印刷学会編,技報堂出版(株),昭和58年5月1日発行,「印刷工学便覧」,「17.3.2 謄写印刷」の項(同、参考資料)〕
1101〜1102頁には、輪転式謄写印刷機に関する技術が記載されており、その「b.印刷機」の項において、輪転式謄写印刷機には構造上、本件発明のような単胴式(図-17.20)と、刊行物1に記載された発明のような複胴式(図-17.21)とがあることが記載されている。

〔3〕本件発明1について
(1)刊行物1に記載された発明
上記〔2〕(1)1.「本件発明1の構成(A)((A-1)〜(A-3)),(B),(C)について」の項、a.〜e.の記載からみて、刊行物1には、
「印刷ドラム532により駆動する印刷ベルト531上の使用済みの旧版を分離爪534により分離して収納ボックス535に収納し、製版部5においてCCD551から送信される画像信号に基づくサーマルヘッド552の駆動により原稿画像に対応する穿孔を形成して製版した新規版用紙を印刷ベルト531に巻き付ける製版プロセスと、用紙収納カセット601からの用紙に版用紙上に形成された画像を印刷する印刷プロセスとを操作パネル100に配置された製版モードの設定を指令する製版指令キー103と印刷モードの設定を指令する印刷指令キー104との選択押下によりCPU3或いはCPU4を介して選択実行する複写印刷装置において、
印刷ベルト531に巻回された使用済み或いは新規版用紙が無いことを版無し警告表示LED104cを介して警告表示するための手段と、
前記操作パネル100から製版モードの設定による製版プロセスが選択された場合、版無し警告表示LED104cを介して警告表示できるようにするための手段によって前記印刷ベルト531に使用済みの旧版有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのときには、使用済みの旧版の廃棄を開始する制御手段と、
を備えたことを特徴とする複写印刷装置。」が記載されているものと認められる。
(2)本件発明1と刊行物1に記載された発明との対比・判断
1.刊行物1に記載された発明の「用紙収納カセット601」,「操作パネル100」,「複写印刷装置」,「使用済みの旧版」,「製版部5においてCCD551から送信される画像信号に基づくサーマルヘッド552の駆動により原稿画像に対応する穿孔を形成して製版した新規版用紙」が、本件発明1の「給紙部」,「操作部」,「印刷機」,「使用済みのマスター」,「新規マスター」に、それぞれ、相当し、
また、刊行物1に記載された発明の「使用済みの旧版を分離爪534により分離して収納ボックス535に収納し、製版部5においてCCD551から送信される画像信号に基づくサーマルヘッド552の駆動により原稿画像に対応する穿孔を形成して製版した新規版用紙を巻き付ける製版プロセス」,「用紙収納カセット601からの用紙に版用紙上に形成された画像を印刷する印刷プロセス」の構成が、本件発明1の「使用済みのマスターを排版し、新規マスターを巻き付ける製版プロセス」,「給紙部からの用紙にマスター上に形成された画像を印刷する印刷プロセス」の構成に、それぞれ、相当し、
さらに、刊行物1に記載された発明の「操作パネル100に配置された製版モードの設定を指令する製版指令キー103と印刷モードの設定を指令する印刷指令キー104との選択押下によりCPU3或いはCPU4を介して選択実行する複写印刷装置」の構成が、本件発明1の「操作部により選択実行する印刷機」の構成に相当するから、
本件発明1と刊行物1に記載された発明とは、後述するようにマスターを巻き付けるマスター担持手段(本件発明の「ドラム部」と刊行物1に記載された発明の「印刷ベルト531」をこのように総称した。以下同様。)の点で構成上の相違があるものの、ともに同様の製版プロセス及び印刷プロセスを実行できる印刷機である。
2.ところで、刊行物1に記載された発明の「印刷ベルト531に巻回された使用済み或いは新規版用紙が無いことを版無し警告表示LED104cを介して警告表示するための手段」の構成について詳述すると、マスター担持手段(印刷ベルト531)に巻回されたマスター(使用済み或いは新規版用紙)が無いことを版無し警告表示LED104cを介して警告表示する際に、マスター(使用済み或いは新規版用紙)が装着されているか否かを判定するステップ(例えば、第14図のステップ「S601」,記載事項(ク)参照。)を経るものであるから、マスター担持手段(印刷ベルト531)に何らかの検知手段を備えることが必須であると認められるところ、
製版部5及び印刷部6の各所に設置された各種センサのうちの何れかが該検知手段に該当するか否かについて刊行物1には明記されていないが、マスター担持手段に検知手段を設けてマスターのセットを確認する程度のことは当該技術分野では普通に行われていることであるし(例.刊行物2を参照。)、また、刊行物1に記載された発明は、各種センサからの信号を製版部の作動を制御するCPU3と印刷部の作動を制御するCPU4とに入力するようになっており、しかも、両制御に版無し警告表示LED104cが関わるものであるから、各種センサのうちの何れかが該警告表示させる前段階におけるマスター(使用済み或いは新規版用紙)の検出手段として機能していることは当業者にとって明らかであるから、
刊行物1に記載された発明は、該「警告表示するための手段」としての検出手段を実質的に備えているものと認められ、刊行物1に記載された発明の「印刷ベルト531(マスター担持手段)に巻回された使用済み或いは新規版用紙が無いことを版無し警告表示LED104cを介して警告表示するための手段」の構成は、本件発明1の「ドラム部(マスター担持手段)に巻回されたマスターを検知する検知手段」の構成に相当する。
3.そして、刊行物1に記載された発明の「操作パネル100から製版モードの設定による製版プロセスが選択された場合、版無し警告表示LED104cを介して警告表示できるようにするための手段、即ち、旧版或いは新規版用紙(マスター)が装着されているか否かの検出を行う検出手段によってマスター担持手段(印刷ベルト531)に使用済みの旧版有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのときには使用済みの旧版の廃棄を開始する制御手段」の構成において、「旧版の廃棄を開始する」は「排版動作を指示する」と同義であるから、該構成は本件発明1の「操作部から製版プロセスが選択された場合、検知手段によってマスター担持手段(ドラム部)に使用済みマスターが巻回されていることを検知したときには、排版動作を指示する制御手段」の構成に相当する。
4.したがって、本件発明1と刊行物1に記載された発明とは、「ドラム部上の使用済みのマスターを排版し、新規マスターをマスター担持手段(ドラム部)に巻き付ける製版プロセスと、給紙部からの用紙にマスター上に形成された画像を印刷する印刷プロセスとを操作部により選択実行する印刷機において、マスター担持手段(ドラム部)に巻回されたマスターを検知する検知手段と、前記操作部から製版プロセスが選択された場合、前記検知手段によって前記マスター担持手段(ドラム部)に使用済みマスターが巻回されていることを検知したときには、排版動作を指示する制御手段と、を備えたことを特徴とする印刷機。」の点で構成が一致し、マスター担持手段が、本件発明1は「ドラム部」であるのに対して、刊行物1に記載された発明は「印刷ドラム532により駆動する印刷ベルト531」である点で構成が相違する。
5.そこで、上記構成の相違点について検討すると、刊行物4には、輪転式謄写印刷機において、マスター担持手段には単胴式と複胴式とがあることが周知慣用である旨記載されており、これによれば、マスター担持手段として本件発明1のようなドラム部とするか刊行物1に記載された発明のような印刷ベルトとするかは当業者が随時選択しうる事項であると認められ、当該構成の相違は周知慣用技術相互の置換にすぎないものであって、しかも、これにより新たな効果を奏するものではない。
(3)結論
結局、本件発明1は、刊行物4の記載事項を参酌すれば、刊行物1に記載された発明と実質的に同一のものと認められるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。
(尚、刊行物1に記載された発明における検知手段の存在について、特許権者は特許異議意見書中において「推測に基づくもの」であることを前提として検知手段が不存在である旨述べているが、上記(2)2.で述べたとおり、刊行物1に記載された発明には検出手段を実質的に備えていると認められるから、このような特許権者の主張は採用できない。)

〔4〕本件発明2について
(1)本件発明2は、本件発明1における「制御手段」の構成を、「操作部から製版プロセスが選択され、排版動作が完了した後、ドラム部にマスターが残っていないことを検知したときには、製版動作を指示する」(構成(D))旨限定したものである。
(2)而して、刊行物1には、本件発明1と実質的に同一の発明が開示されていることは前述したとおりであり、また、上記〔2〕(1)2.「本件発明2の構成(D)について」の項の記載からみて、「制御手段は、操作パネル100から製版指令キー103の押下により製版プロセスが選択されたとき、製版開始フラグのセットを条件として版無し警告表示LED104cを判定し、使用済みの旧版有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのとき、即ち、巻回されていることを検知したときには、使用済みの旧版の廃棄動作が完了した後、切り換えミラー351がディジタル光学系選択時の状態になって製版開始フラグがリセットし、用紙カセット501からの新規版用紙の給紙を開始するとともに光学系を制御して製版部5において製版する」との構成が開示されており、該構成は、本件発明2の上記限定された構成(構成(D))に相当するから、本件発明2は刊行物1に記載された発明と実質的に同一のものと認められる。
(3)ところで、刊行物1に記載された発明においては、使用済みの旧版の廃棄動作の完了を検知手段により検知するか否かは明記されていないが、該検知手段による検出は、〔3〕「本件発明1について」の項での検討を参酌すれば、当然に行われているものと認められ、仮に、そうでなくても、刊行物2には、上記〔2〕(2)の記載からみて、印刷機における給排版制御装置であって、版胴6上にマスタ7がセットされているか否かをマスタ検知信号発生部材11,21が検知し、マスタ7がセットされているときは排版動作を行い、排版動作が完了した後に版胴6上にマスタ7がセットされていないことを検知したときに給版作動が行われる構成が開示され、排版動作の完了後にマスタ検知信号発生部材11,21により版胴6上のマスタ7をが検知し、その後に次の動作が行われる旨の技術が開示されており、刊行物1に記載された発明と刊行物2に記載された発明とはともにマスターを検知してその有無によりその後の動作を制御する印刷機に関するものであって、刊行物2に記載された発明の技術を刊行物1に記載された発明に適用することは当業者にとって容易に想到しうることと認められるから、本件発明2は刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。
(4)結局、本件発明2は、刊行物4の記載事項を参酌すれば、刊行物1に記載された発明と実質的に同一のものと認められ、また、そうでなくても、刊行物1に記載された発明に刊行物2,4に記載された発明の技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、或いは、同法第29条第2項の規定に違反するものであり、特許を受けることができない。

〔5〕本件発明3について
(1)本件発明3は、本件発明2における「制御手段」の構成を、「排版動作後にまだ使用済みマスターが巻回されていることを検知したときは警告表示を行うとともに製版動作が停止させる」(構成(E))旨限定したものである。
(2)而して、刊行物2には、本件発明2の限定された構成(構成(D))と実質的に同一の構成が開示されていることは前述したとおりであり、刊行物1に記載された発明に対する刊行物2に記載された発明の技術の適用容易性の判断についても、上記〔4〕4.で述べたとおりである。
(3)ところで、刊行物1には、本件発明1と実質的に同一の発明が開示されていることは前述したとおりであり、しかも、上記〔2〕(1)3.「本件発明3の構成(E)について」の項の記載からみて、「制御手段は、操作パネル100から製版指令キー103の押下により製版プロセスが選択されたとき、製版開始フラグのセットを条件として版無し警告表示LED104cを判定し、使用済みの旧版有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのとき、即ち、巻回されていることを検知したときは、版無し警告表示LED104cを表示させず、使用済みの旧版の廃棄動作が完了した後に廃棄中フラグのリセットにより、製版開始フラグがリセットされ用紙カセット501からの新規版用紙の給紙を開始するとともに光学系が制御され製版部5において製版する、即ち、廃棄中フラグがリセットしなければ製版動作が行われない」の構成が開示されており、該構成において、「版無し警告表示LED104cを表示させず」は「警告表示を行う」と同義であり、「製版動作が行われない」は「製版動作を停止させる」と同義であるから、該構成は、本件発明3の上記限定された構成(構成(E))に相当する。
(4)結局、本件発明3は、少なくとも、刊行物1に記載された発明に刊行物2,4に記載された発明の技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、特許を受けることができない。

〔6〕本件発明4について
(1)本件発明4は、本件発明1における「制御手段」の構成を、「操作部から印刷プロセスが選択された場合、検知手段によってドラム部にマスターが巻回されていることを検知したときには、印刷動作を指示する」(構成(F))旨限定したものである。
(2)而して、刊行物1には、本件発明1と実質的に同一の発明が開示されていることは前述したとおりであり、しかも、上記〔2〕(1)4.「本件発明4の構成(F)について」の項の記載からみて、「制御手段は、操作パネル100上の印刷指令キー104の押下により印刷プロセスが選択された場合、印刷ベルト531上に印刷用の版が有りと判断して版無し警告表示LED104cがOFFのとき、即ち、巻回されていることを検知したときには、スタートフラグセットの判定により、スタートフラグをリセットするとともに、印刷開始フラグをセットし、それに対応して印刷用紙の給紙口としてカセット601の給紙口を選択して印刷処理を実行する」の構成が開示されており、該構成において、「印刷処理を実行する」は「印刷動作を指示する」と同義であるから、該構成は、本件発明4の上記限定された構成(構成(F))に相当する。
(3)また、刊行物3には、上記〔2〕(3)の記載からみて、謄写輪転機用版胴の外周面に捲着された孔版原紙を確認する装置であって、センサ4により版胴2の外周面に孔版原紙3が捲着されていることを検知したときには、版胴2の回転を可能にし、センサ4により孔版原紙3が捲着されていないことを検知したときには、版胴2の回転を規制する旨の構成が開示されており、該構成は、本件発明4の上記限定された構成(構成(F))と同等の構成であり、従来周知技術であると云える。
(4)結局、本件発明4は、刊行物3,4の記載事項を参酌すれば、刊行物1に記載された発明と実質的に同一のものと認められるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。

〔7〕本件発明5について
(1)本件発明5は、本件発明4における「制御手段」の構成を、「操作部から印刷プロセスが選択された場合、検知手段によってドラム部にマスターが巻回されていることを検知できなかったときには、警告表示を行うとともに印刷動作を停止させる」(構成(G))旨限定したものである。
(2)而して、刊行物1には、本件発明1,4と実質的に同一の発明が開示されていることは前述したとおりであり、しかも、上記〔2〕(1)5.「本件発明5の構成(G)について」の項の記載からみて、「制御手段は、操作パネル100上の印刷指令キー104の押下により印刷プロセスが選択された場合、印刷ベルト531上に印刷用の版が無しと判断したとき、即ち、巻回されていることを検知できなかったときには、版無し警告表示LED104cを点滅表示して警告するとともに、リターン処理(解除)する」の構成が開示されており、該構成において、「点滅表示して警告する」は「警告表示を行う」と同義であり、「リターン処理(解除)する」は「印刷動作を停止させる」と同義であるから、該構成は、本件発明5の上記限定された構成(構成(G))に相当する。
(3)結局、本件発明5は、刊行物3,4の記載事項を参酌すれば、刊行物1に記載された発明と実質的に同一のものと認められるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、特許を受けることができない。


[むすび]
以上のとおりであるから、本件発明1,4,5は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し、また、本件発明2は、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当し或いは同法第29条第2項の規定に違反するものであり、さらに、本件発明3は、特許法第29条第2項の規定に違反するものであり、それぞれ、特許を受けることができない。
したがって、本件発明1〜5についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-01-26 
出願番号 特願平1-331151
審決分類 P 1 651・ 121- Z (B41F)
P 1 651・ 113- Z (B41F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 南 宏輔  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 小泉 順彦
伊波 猛
登録日 1999-03-19 
登録番号 特許第2901082号(P2901082)
権利者 株式会社リコー
発明の名称 印刷機  
代理人 橘 昭成  
代理人 七篠 耕司  
代理人 武 顕次郎  

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