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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  F28D
審判 一部申し立て 特29条の2  F28D
管理番号 1035850
異議申立番号 異議2000-72272  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-04-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-31 
確定日 2001-04-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第2989783号「流動層からの熱回収装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2989783号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2989783号の請求項1に記載された発明についての出願は、昭和61年5月21日に特許出願した特願昭61-114661号の一部を平成9年5月22日に新たな特許出願とし、平成11年10月8日にその発明についての特許権の設定登録がなされた後、その特許について、特許異議申立人 川崎重工業株式会社より特許異議の申立てがなされたものである。

2.本件発明
特許第2989783号の請求項1に記載された発明(以下、「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「1.底部から上方に向けて吹き込む流動化ガスにより流動媒体を流動化せしめる流動層を、上部および下部に連通口を有する仕切壁によって熱回収部と燃焼部とに区分し、該燃焼部の少なくとも前記仕切壁近傍における単位面積あたりの流動化ガス吹込風量を前記熱回収部の単位面積あたりの流動化ガス吹込風量より大きくし、前記熱回収部に受熱流体を通じた伝熱面を配備し、前記燃焼部に燃焼物供給装置を設け、熱回収部下面を不燃物取出口へ向けて傾斜させ、前記燃焼部から前記熱回収部上部に流動媒体を流入せしめると同時に前記熱回収部下部の流動媒体を燃焼部に還流せしめるようにしたことを特徴とする流動層からの熱回収装置。」

3.特許異議申立ての概要
特許異議申立人 川崎重工業株式会社は、証拠として甲第1号証(特開昭58-183937号公報)、甲第2号証(特公昭56-16846号公報)、甲第3号証(特開昭52-118858号公報)、甲第4号証(特開昭54-55826号公報)、甲第5号証(特公昭57-43299号公報)、甲第6号証(特開昭51-61182号公報)を提出し、本件発明は、これら甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、同じく甲第7号証(特開昭62-213601号公報)を提出して、本件発明は、本件特許出願の日前の他の特許出願であって当該特許出願後に出願公開された前記甲第7号証に相当する特願昭61-55897号の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であると認められ、しかも本件発明の発明者は特願昭61-55897号の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明の発明者と同一でも、本件出願時において、その出願人が上記他の出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであるから、本件発明についての特許は、取り消されるべきものである旨主張している。

4.甲号各証に記載された発明
特許異議申立人が提出した、甲第1号証には、急速流動化ベッド式反応方法及び反応炉に関して、図面とともに、「5.前記反応炉の下方領域に存在する前記粒状の材料の少なくとも一部を、前記下方領域の上部と連通する上方開口を介してあふれ出させて、前記下方領域に隣接して配置される別の第2の流通化ベッドの中に流入させ、粒状の材料の一部を前記第2の流動化ベッドから、前記下方領域の下部と連通する下方開口を介して前記反応炉の下方領域内へ導く工程をさらに含み、前記第2の流動化ベッドは泡形成方式で流動化され、その内部には熱を取除くための熱交換表面が浸漬されている特許請求の範囲1項に記載の急速流動化ベッド式反応方法。」(第2頁上段左欄第7行〜同第12行)であること、「22.前記反応チェンバの下方領域に隣接して配置され且つ泡形成方式で流動化される第2の流動化ベッドと、前記第2の流動化ベッドから熱を取除くために前記第2の流動化ベッド内に浸漬される熱交換手段とをさらに具備し、前記第2の流動化ベッドは、前記下方領域の上部と連通し、前記粒状の材料の一部をあふれ出させて前記第2の流動化ベッドに流入させるための上方開口と、前記下方領域の下部と連通して、前記粒状の材料の一部を前記下方領域に戻す下方開口とを有する特許請求の範囲第19項に記載の急速流動化ベッド式反応炉。」(第3頁下段左欄第4行〜同第15行)であること、「一次空気は、支持表面13全体に形成される複数個の開口12を介して1つの流れとして供給される。」(第9頁下段左欄第2行〜同第4行)こと、「燃焼器1は、燃焼チェンバ10の下方領域11に入口17を介して可燃性の物質を供給する手段をさらに含む。この実施例においては、供給手段は適切な従来の機械的供給機構、すなわち空気圧式供給装置20から成る。可燃性の物質は、有効直径がかなり大きい粒子(たとえば2.5cm程度の石炭片又は約5cmの木片)であり、急速流動化ベッドの内部又は上方に導入される。」(第9頁下段左欄第18行〜同右欄第6行)こと、「第1図に示す実施例において、燃焼工程中に形成される灰及び燃焼しなかった燃料は当然、燃焼器1の内部に堆積するので、下方領域11のベッドの高さは絶えず増し続ける。このため、このような個体を導管16を介して頻繁に排出する必要がある。」(第11頁上段右欄第11行〜同第16行)こと、「本発明は、木くず、市町村廃棄物、炭素質の物質(たとえば石炭)等の多くの不均一な可燃性粒子状個体材料に適用できるが、液体燃料や気体燃料に適用しても良い。」(第13頁上段右欄第15行〜同第18行)こと、「第2図に示される実施例は、燃焼チャンバ10の下方領域11にすぐ隣接して配置され且つ下方領域11と連通するあふれ開口41を有する(熱交換器付き)冷却流動化ベッド40を含む。冷却流動化ベッド40は、粒状の材料から成る通常の(すなわち気泡形成)流動化ベッドであり、熱交換表面を含む。この実施例では、熱交換表面は熱交換管機構として示され、水又はその他の冷却流体、たとえば蒸気、圧縮空気等がこの管機構内に入っている。熱交換管42に入る流体は従来のボイラの蒸気ドラム(図示せず)から供給するのが好ましい。冷却流動化ベッドは、支持表面の複数個の開口44を介してプレナムチェンバ43から供給される三次加圧空気により流動化される。この開口はノズルとして形成されていても良い。 冷却流動化ベッド40は、以下に説明するように、下方領域11から開口41を介してベッド40内にあふれて入る粒状の材料及びその他の個体から成る。熱交換器機構42は、冷却流動化ベッド40を冷却する冷却コイルとして作用する。冷却された個体は、下方領域11に収容される急速流動化ベッドから冷却流動化ベッド40を分離する仕切76の底部を貫通して設けられるオリフィス75を介して冷却流動化ベッド40から排出され、再び燃焼チェンバ10の下方領域11に入って、そこで再び流動化される。その結果、熱交換管機構42を通過する流体は加熱される。加熱された流体を、従来のボイラドラム(図示せず)等に送るのが好ましい。 冷却流動化ベッド40から燃焼チェンバ10の下方領域11の急速流動化ベッドに向かう固体の動きは、特別の向きに形成された三次空気噴射ノズル44と、監視空気噴射ノズル77とによりさらに促進される。監視空気噴射ノズル77には、別個のプレナムチェンバ78から空気を供給しても良い。これらのノズル44及び77は、第3図に示すように、各ノズルのテーパされた端部が下方領域11に向かってある角度をなすように(第2図も参照)構成するのが好ましい。」(第14頁上段左欄第9行〜同下段左欄第11行)こと、が記載されている。
そして、第2図には、急速流動化ベッドと冷却流動化ベッド40とを仕切76で分離した急速流動化ベッド式反応炉の縦断面図が示されている。
同じく、甲第2号証には、流動床の温度制御技術に関して、図面とともに、「2.耐火性粒状物の流動媒体からなる第1および第2の流動床を具備し、仕切りの両側に上記第1、第2の流動床をこれらがほぼ水平な位置になるように配置し、かつ第1、第2の流動床を異なる流動化風量で操作する手段、および上記第1の流動床の所望温度レベル以上あるいは以下の温度に第2の流動床の作用温度を上昇あるいは下降させる装置を備え、さらに第2の流動床の直上部に壁を設け、上記仕切りの下方および上方で第1、第2の流動床を連通させ、上記手段により仕切りの下方で第1の流動床から第2の流動床へ流動媒体の移動をはかると共に、上記仕切りの上方で第2の流動床のフリーボードへ流動媒体をほぼ水平に溢流させての移動をはかるようにしたことを特徴とする流動床の温度制御装置。」(第1頁第2欄第20行〜同第34行)であること、「なお、上述の要旨でいう第1、第2流動床をほぼ水平な位置に配置するとは、これらの下方のガス分配器上面が第1、第2流動床間で若干上下に喰違った場合、および上記分配器上面が幾分傾斜した場合を含むものとする。」(第2頁第4欄第26行〜同第30行)こと、「容器21は、固形耐火物22によって区画され、内部仕切り23を備え、この仕切り23によって内部空間を各側部に並ぶ2個の区画室24,25に分割してある。各区画室の床は、多孔板26よりなり、耐火性粒状物からなる流動媒体27が上記床26で支持されて各区画室内に収容されている。排ガスを放出する筒道28は区画室24から容器外に延び、そして、塵埃などの廃棄物はホッパー29およびスクリュー式フィーダ30によって区画室24内に導入される。上記区画室24の底部には燃焼による灰および廃棄物中の非可燃物が周期的に除去できる出口がある。熱交換器は、ボイラーチューブ32の管束の形になっていて、区画室25内に設置され、流動媒体が流動される時、上記区画室中の流動媒体の熱移動に関与している。そして、加圧空気が多孔板26下に供給され、区画室24および25中の流動媒体に対して力の及ぶ限りで、区画室24および25内に第1、第2の流動床を形成して、これらの流動床を流動することになる。」(第2頁第4欄第36行〜第3頁第5欄第12行)こと、「2つの区画室間の流動媒体の移動は、区画室25への空気供給の増大により上記区画室25内の第2の流動床の流動程度が増大することによって増大され、これによって、流動床を膨張させ、流動媒体の若干を区画室25から区画室24内の第1の流動床のフリーボードにほぼ水平に溢流する。同時に、区画室24から熱い流動媒体が仕切り23下方を流れて区画室25に入る。」(第3頁第3欄第28行〜同第35行)こと、「第2図にみられるこの発明の実施例では、区画室24の多孔板26は区画室25内の多孔板26の方向に下向きに傾斜されており、上記傾斜多孔板26の直下の空間は、横に並置された多数の区分33、34および35に分けられ、各区分はそれぞれ独自の空気供給手段を具備している。異なった容量で空気が各区分33,34,35に供給され、そして区分35の空気供給は区分34のそれより高い流量であり、区分34のそれは、さらに区分33のそれより高い流量である。この異なった空気流量は区画室24内の流動媒体を攪拌状態に置き、矢印36によって示されるように連続的に循環させる。」(第3頁第6欄第3行〜同第15行)こと、「上記流動媒体の循環は区画室25内の流動媒体に影響し、熱い流動媒体が区画室25内に連続的に仕切り23の下方から移行し、かつ冷たい流動媒体が仕切り23の頂部を越えて区画室24内に水平に溢流して拡散する。」(第3頁第6欄第22行〜同第26行)こと、が記載されている。
同じく、甲第3号証には、流動化火床を包含する熱反応装置に関して、図面とともに、「本発明によって、炉体と、前記炉体内にあって第1隔室と第2隔室とを前記炉体内に画成する隔壁と、第1隔室内に第1火床を形成する粉粒体材料と、第2隔室内に第2火床を形成する粉粒体材料と、第2火床の上部区域を第1火床の上部区域以上の程度に流動化する手段と、前記第2隔室より上方にあって反応装置の使用中に流動化された粉粒体材料の流れを第2火床から第1火床の上部を横切ってそらせるそらせ手段と、反応を受けるべき材料を炉体外部から炉体内へ供給するための少なくとも1個の導入口と、不燃性生成物及び/又は火床材料を排出するために前記第2隔室基部に設けた少なくとも1個の導出口と、炉体からの煙道出口とよりなり、前記第1隔室と第2隔室とが前記隔壁の上下両区域又はその近辺に於て互いに連通していることを特徴とする熱反応装置が供給される。炉体内に於て固体材料が反応を受けるべき場合は、導入口から第1隔室に材料を供給する。」(第2頁下段右欄第16行〜第3頁上段左欄第14行)こと、「この焼却装置の使用中、加圧空気が空気箱14,16から隔室6,8内の火床材料に供給され、両火床A、Bは流動化されるが、火床Bの方が火床Aの程度以上に流動化される。例えば、火床Aの流動化は1〜4Gmf程度でよく、火床Bの流動化は燃焼の条件にもよるが、4〜40Gmfである。ここでGmf(質量速度)とは、火床の粉粒体材料を流動化させるのに必要な最低の流動化空気又はガス媒体の質量速度をKg/m2・hrで表したものである。」(第4頁上段右欄第7行〜同第16行)こと、「廃棄物中の不燃性成分と固形の燃焼生成物とは、隔室8の下方の排出管12内に落下し、周期的に焼却装置から除去される。」(第4頁下段左欄第16行〜同第18行)こと、「第4図、第5図に示す本発明の実施例に於ては、廃棄物の燃焼により、発生する熱によって、例えば水蒸気の発生や地域暖房を可能にするものである。これらの図面に於て、第1図に対応した機能を有する部には100をプラスした番号を使用した。従ってその部分についての説明は第1図の実施例の説明を参照すれば理解出来るものである。この例に於てはもう1個の隔離32(これは場合により省略できる又、第4図に於ては事実省略されている)が隔壁108の中心部に第3の隔壁34を画成している。前記第3隔壁34は、隔室32の上方と下方とに於て隔室108と連通している。熱交換管36の束が第3隔壁34内に、それの軸方向に或いは隔壁108内に直接延長して設けられている。前記缶36内を循環する流体は、焼却装置内に発生する熱によって加熱され、かつ必要な場合には、火床B(ひいては火床Aも)の作動温度を制御するためにこの流体を使用することができる。矢印Cは低温流体、矢印Hは加熱流体の流れを示す。」(第5頁上段右欄第12行〜同下段左欄第11行)こと、が記載されている。
同じく、甲第4号証には、流動床燃焼装置に関して、図面とともに、「作業に際して、該物質床は支持体22を経て入る空気により流動化され、燃焼すべき物質が該流動床に送り込まれ、その中で燃焼せしめられ、その際燃焼生成物は煙道27を通って出て行く。表面23から供給される空気の分配は該床の物質が第1図の平面を通して延びるほぼ水平の軸線の回りに循環するように制御される。この循環は好適には第1図に示す如く反時計方向とし、従って表面23の長手方向にほぼ下方への流れが生じる。前記表面は第1図に示す如く第1図の右方へ下向きに傾斜するように配置される。灰樋28が床支持体22の下縁に沿って設けられて、該床内の燃焼で生じた灰、その他の不燃焼物質を集めるようになす。該床の上述の循環は灰樋28内にかかる物質を集めるのを助ける働きをする。」(第3頁下段左欄第4行〜同第18行)こと、「灰樋は中心出口孔34を備え、この孔はちょう形弁35を備え、この弁は、開いたとき、灰導管36と前記孔を連通せしめる。」(第3頁下段右欄第12行〜同第14行)こと、「そらせ体40はほぼ垂直の平面内で延びて床支持体22の両側に設けられている。間隙41が表面23上でそらせ体の下に残され、そらせ体は床が作業中に流動化せしめられたとき該床のレベル26の直下の個所まで上向きに延びる。」(第3頁下段右欄第17行〜第4頁上段左欄第2行)こと、「床が流動化されると必然的に幾らか上昇する床26のレベルはそらせ体の頂縁より上になり、その結果物質は矢印44で示す如く、前述の床の主循環方向を横切る方向にそらせ体40上を循環する。従って鎮静区域42内の床物質は間隙41を通って該床の流動化部分の底へ循環して戻る。傾斜側面43はこの作用を助ける。」(第4頁上段左欄第10行〜同第16行)こと、「追加の水管は96で示す如く該床の流動化部分を通して水ジャケットハウジング90の対向側から延びることができる。」(第5頁下段左欄第8行〜同第10行)こと、が記載されている。
同じく、甲第5号証には、都市ごみ、その他の廃棄物などの焼却或いは熱分解を、流動層を用いて行なう流動床式熱反応炉に関して、図面とともに、「本発明は、上部に被処理物投入口と排ガスの出口とを有する炉体を備え、該炉体の内部の下部は、上下縁が前記炉体の内面の各部と隔離されている縦方向の隔壁により少なくとも二つの区画に仕切られ、一方の区画は、その床面に流動用ガスを上向きに噴出せしめる流動ガス機構を備え、上部に、上昇ガス流を他の区画の上部に向けて偏向せしめる偏向機構を有する流動層区画を形成し、他方の区画は、上部が開放され、その床面は、前記流動層区画の床面との接続部に向かって下り勾配を有し、かつガス噴射を行なわない連続の傾斜床を備えて沈降する移動層区画を形成し、前記傾斜床の傾斜角度が20〜50度であることを特徴とする流動床式熱反応炉である。」(第2頁第4欄第40行〜第3頁第5欄第9行)こと、「特に傾斜床16の作用により、移動層区画8の床面に静止層を生ずることなく、殆どの流動媒体が円滑に移動し、従ってクリンカの発生を防ぐことができ、移動層から流動層への流動媒体の流れが安定して流動層内において良好な燃焼を行なうことができる。しかも構造が極めて簡単であり、クリンカの除去の手間も不要となる。」(第4頁第8欄第12行〜同第19行)こと、「その床面は、前記流動層区画の床面との接続部に向かって下り勾配を有し、かつガス噴射を行なわない連続の傾斜床を備えて沈降する移動層区画を形成し、前記傾斜床の傾斜角度が20〜50度であることにより、移動層の下部に静止層が生ずるこうを防止し、これによりクリンカの発生を防止し、移動層から流動層への流動媒体の流れを円滑にかつ安定に行ない、良好な燃焼または熱分解を行なうことができ、しかも構造が極めて簡単で、保守も容易な流動式熱反応炉を提供することができ実用上、廃棄物処理上極めて大なる効果を有するものである。」(第5頁第9欄第10行〜同第10欄第6行)こと、が記載されている。
同じく、甲第6号証には、都市ごみ等を流動床を用いて焼却あるいは乾留分解する際に、流動床内に蓄積する不燃物を取り出す装置に関して、図面とともに、「傘型整流板の円周端7に集積した不燃物19は、傘型整流板6を押し上げて生じる傘型整流板6と流動床本体5との間隙を通して落下させる。」(第2頁下段左欄第4行〜同第6行)こと、「落下した不燃物(乾留分解では炭化物の一部も含む)は一時不燃物取り出し管9に貯え、断続的にストッパー10、11および流動媒体返却ガス(空気等)14を連動させ、不燃物は系外に、流動媒体(乾留分解では炭化物の一部を含む)は流動媒体返却ガス14によって、返却管12を通して流動床に返す。」(第2頁下段左欄第16行〜同右欄第2行)こと、が記載されている。
同じく、甲第7号証に相当する特願昭61-55897号の願書に最初に添付された明細書又は図面には、気泡流動層を形成した多重循環燃焼ボイラに関して、「本発明の多重循環燃焼ボイラは、燃焼炉内下部の気泡流動層を、下端および中間部に開口部を設けた鉛直方向の隔壁を設置して一次燃焼領域と熱交換領域とに分割し、前記熱交換領域に伝熱管を配設し、燃焼炉からの排ガス導出経路途中にサイクロンの捕集粒子を前記一次燃焼領域へ戻す還流経路を設け、前記対流伝熱部および集塵装置の捕集粒子を前記一次燃焼領域および熱交換領域の少なくとも何れかへ戻す還流経路を設け、かつ気泡流動層への流動化用空気供給経路および熱交換領域通過空気を含めたフリーボード部への二次空気供給経路を設けたことを特徴とするものである。」(特願昭61-55897号の公開公報である特開昭62-213601号公報第2頁上段右欄第19行〜同下段左欄第10行参照)こと、「上記構成において、燃焼炉内の気泡流動層が一次燃焼領域と熱交換領域に分割されて、燃焼領域の層温を調整して、低温でかつ十分燃焼できる最適温度に設定するとともに、それぞれの領域の流動化速度を最適化できる。すなわち、一次燃焼領域において、層内に伝熱管が配設されていないため、当然伝熱管の摩耗の問題は無く、また混合が良好となるため層内温度が均一で、良好な燃焼状態が保たれる。一方熱交換領域においては、燃焼を行なわないため空気量の制限が少なく、低速で流動化させることが可能で、層内に伝熱管を配設しても摩耗は軽微で、また流動層熱交換はその性能があまり流動化速度に依存せず本来の高効率吸熱は損われない。さらに一次燃焼領域と熱交換領域とで流動化状態に差が生じ、おのずと層を形成する粒子が両領域間を循環し、そのため流動化速度等を制御することにより粒子の循環量を変化させて層温を調整し、広い負荷変化に対応することができる。」(同じく第2頁下段左欄第12行〜同右欄第10行参照)こと、「次にサイクロンで捕集した高温の粒子を気泡流動層の一次燃焼領域の内部あるいは上部に戻すことにより、・・・(中略)・・・すなわち気泡流動層から飛散した未燃粒子の燃焼を完結させて、燃焼効率を改善し、石炭などによる脱硫もこの部分で効率的に行なわせることができ、・・・(中略)・・・さらに、集塵装置で捕集した冷却された粒子を気泡流動層へ戻すことにより、粒子リサイクル比(粒子循環量/燃料投入量)を5以上にでき、・・・(中略)・・・負荷変動に速やかに対応することができる。」(同じく第2頁下段右欄第11行〜第3頁上段左欄第9行参照)こと、「燃焼炉11内の下部に鉛直方向に隔壁12が設けられ、燃焼炉11内下部に形成される気泡流動層13が、一次燃焼領域14と熱交換領域15とに分割されている。隔壁12の下端と分散板16との間および中間部すなわち流動層13内の表面付近に開口部17a、17bが設けられ、熱交換領域15内の流動粒子18が通過し得るように形成されている。前記熱交換領域15には伝熱管19が配設されて、熱交換が行なわれ、熱が外部へ取出される。石炭、石灰20は、スプレッダ等の公知の装置により気泡流動層13の上部に供給される。」(同じく第3頁上段左欄第19行〜同右欄第10行参照)こと、「さらに燃焼炉11内底部の分散板16の下部に形成されている空気室32へ流動化用空気を供給する流動化用空気供給系路33が、ファン34との間に空気予熱器35を介して設けられ、」(同じく第3頁下段左欄第4行〜同第7行参照)ていること、「燃焼炉11内下部の気泡流動層13が、上記のごとく隔壁12により空気不足で燃焼を行なう一次燃焼領域14と伝熱管18で熱交換を行なう熱交換領域15に分割され、それぞれの領域に対して独立に流動化速度を制御できる。一次燃焼領域14は、通常の気泡流動層よりやや速い空塔速度1〜3m/secで流動化させ、熱交換領域15は1m/sec以下の低速で流動化させる。この両領域の流動化速度差により、熱交換領域15の方が高密度となり、一次燃焼領域14上部の隔壁12中間部の開口部17bからオーバフローした粒子18(主として粗大粒子)は熱交換領域15を下降し、隔壁12下端の開口部17aから再び一次燃焼領域14へ戻り、循環する。この気泡流動層13内での粒子循環量は、流動化速度により制御されるが、循環を促進するため熱交換領域15の底面に傾斜を設けたり、冷却された粒子18を層内に戻すための空気流を利用したりすることができる。」(同じく第3頁下段左欄第13行〜同右欄第10行参照)こと、「気泡流動層13内を循環する間に粉砕されたり、一次燃焼領域14上部に供給される石炭および脱硫用石炭20に含まれる微細な粒子18は、気泡流動層13上部のフリーボード部21に飛散するが、この粒子の大部分18aはサイクロン23により分離捕集され、粒子ホッパ28を経て高温のまま還流経路29により一次燃焼領域へ戻される。サイクロン23で捕集されなかった粒子18bは・・・(中略)・・・還流経路31により投入されて、・・・(中略)・・・なお集塵器25の後部25bで捕集された粒子は灰28として外部へ排出される。」(同じく第3頁下段右欄第11行〜第4頁上段左欄第6行参照)こと、が記載されている。
そして、第1図には、多重循環燃焼ボイラの概略構成図が示されている。

5.対比・判断
5-1.特許法第29条第2項の規定違反について
本件発明と特許異議申立人の提出した甲第1号証乃至甲第6号証記載の発明と対比し、検討する。
上記記載事項からして、甲第1号証に記載されたものは、「空気圧式供給装置20から燃焼チェンバ10の下方領域11に可燃性物質を供給する手段と、燃焼による灰と燃焼しなかった燃料を燃焼チェンバ10の下方領域11から排出する導管16と、支持表面13の開口12から一次空気が供給される燃焼チェンバ10の下方領域11の急速流動化ベッドと熱交換管機構42を有する冷却流動化ベッド40とを分離する仕切76と、を備えて、該仕切76の上部開口41から燃焼チェンバ10の下方領域11からあふれた粒状材料を冷却流動化ベッド40に入るとともに、該仕切76の底部を貫通して設けられるオリフィス75を介して粒状材料を冷却流動化ベッド40から再び燃焼チェンバ10の下方領域11に入って流動化されるように構成された急速流動化ベッド式反応炉。」であって、冷却流動化ベッド40に熱交換管機構42を設けて、流動層から熱を回収するものということができる。
してみると、甲第1号証に記載された、「支持表面13」、「一次空気」、「粒状材料」、「上部開口41およびオリフィス75」、「仕切76」、「冷却流動化ベッド40」、「下方領域の急速流動化ベッド」、「熱交換機構42」、「空気圧式供給装置20から燃焼チェンバ10の下方領域11に可燃性物質を供給する手段」、「下方領域11から排出する導管16」、「急速流動化ベッド式反応炉」は、その機能からして、それぞれ本件発明の、「底部」、「流動化ガス」、「流動媒体」、「上部および下部連通口」、「仕切壁」、「熱回収部」、「燃焼部」、「受熱流体を通じた伝熱面」、「燃焼物供給装置」、「不燃物取出口」、「流動層からの熱回収装置」に相当するものといえるから、両者は、
「底部から上方に向けて吹き込む流動化ガスにより流動媒体を流動化せしめる流動層を、上部および下部に連通口を有する仕切壁によって熱回収部と燃焼部とに区分し、前記熱回収部に受熱流体を通じた伝熱面を配備し、前記燃焼部に燃焼物供給装置を設け、不燃物取出口を有し、前記燃焼物から前記熱回収部上部に流動媒体を流入せしめると同時に前記熱回収部下部の流動媒体を燃焼部に還流せしめるようにした流動層からの熱回収装置。」
である点で一致しているものといえる。
しかし、次の点で相違している。
(イ)流動化ガスの吹込風量について、本件発明は、「該燃焼部の少なくとも前記仕切壁近傍における単位面積あたりの流動化ガス吹込風量を前記熱回収部の単位面積あたりの流動化ガス吹込風量より大きくし、」としているのに対して、甲第1号証に記載されたものには、何等記載がされていない点。
(ロ)本件発明は、「熱回収部下面を不燃物取出口へ向けて傾斜させ、」ているのに対して、甲第1号証に記載されたものは、熱回収部に相当する冷却流動化ベッド40の支持表面13が、第2図に示された装置の縦断面図からみて水平になっているというべきで、不燃物取出口へ向けて傾斜しているとはいえない点。

そこで、この相違点(イ)、(ロ)について検討する。
・相違点(イ)について
甲号各証に記載されたものを検討すると、甲第2号証に記載された流動床を用いた燃焼炉において、本件発明の「燃焼部」に相当する「区画室24」へ供給する空気供給流量が、区分35,34,33の順に従って流動化風量を高めているということは記載されてはいるが、本件発明の「熱回収部」に相当する「区画室25」へ供給する空気供給量についての記載はないばかりか、区画室24へ供給する空気供給量とを対比した記載も示唆も認められない。また、図面の第1図〜第3図に示された矢印の空気流量の流れは、区画室25から区画室24に向かっていることから、区画室25の空気流量が区画室24の空気流量に比べて多いことが分かり、本件発明の燃焼部と熱回収部とに供給される流動化ガス吹込風量の大小とは異なっているものといえる。
また、甲第3号証に記載された流動化火床を用いた熱反応装置においては、「流動化火床を備えた焼却装置を使用することによって、不燃性生成物を火床を介して火床の上(フライアッシュ用)及び下(非流動化灰用)の適当な取り出し点まで移動させながら、燃焼を火床内で行なわせることができる。」(第2頁下段左欄第8行〜同第12行)と記載されていること、熱交換管36が設けられた第4図に示された実施例をみても、熱交換管36で熱回収を行なっている火床Bの流動化空気速度が火床Aに比べて大きくするように記載されてこと、から「火床A」も「火床B」も、共に「燃焼部」であると解することが相当であって、「火床B」が、本件発明の「熱回収部」のように特許明細書の段落【0013】に記載されいる作用効果を奏するものということはできない。
さらに、甲第4号証乃至甲第6号証に記載されたものを検討しても、これら甲第4号証乃至甲第6号証に記載されたものは、いずれも燃焼部と熱回収部とを仕切壁によって区分したものではないし、流動化ガス吹込風量についての記載も示唆もされていない。
この点について、特許異議申立人は、「(この構成は)周知・慣用の技術手段であって、当業者であれば容易に想到し得るものである。」こと、「なお、甲第1号証には「下方領域11に収容される急速流動化ベッド」、「冷却流動化ベッド40」と記載されており、「急速流動化ベッド」の流動化ガス速度の方が「冷却流動化ベッド」の流動化ガス速度より大きいことが示唆されている。」こと、を主張しているが、特許異議申立人の提出した、甲第1号証乃至甲第6号証に記載されたものをみても、相違点(イ)の構成が周知・慣用技術ということはできないし、また、甲第1号証の「急速」という用語の内容についても、甲第1号証には、「流動ガスの速度が泡形成のレベルを越えると、ベッドは「乱流」と呼ばれる状態になり、最終的には「急速」すなわち「循環」状態となる。」(第6頁上段左欄第8行〜同第10行)、「本発明の流動化ベッド式反応炉は「循環」すなわち「急速」流動化方式で流動化されるが、」(第11頁上段左欄第13行〜同第14行)、と記載されているように、「急速」とは、「循環」を意味しているだけであって、「急速流動化ベッド」と「冷却流動化ベッド」との流動化ガス速度を比較したものではなく、「急速流動化ベッド」の流動化ガス速度が「冷却流動化ベッド40」の流動化ガス速度より大きいということを示唆しているということはできず、特許異議申立人の主張は採用することができない。
・相違点(ロ)について
甲第2号証には、「上記分配器上面が幾分傾斜した場合を含むものとする。」との記載があるが、これは、その前の文章の、「ほぼ水平な位置に配置する」ことの技術的な内容の範囲を説明しているものであって、「幾分傾斜」させてあるものでも「ほぼ水平」の範囲であるということを言っているにすぎないから、本件発明のように「熱回収部下面を不燃物取出口へ向けて傾斜させ」ていることが記載されているということはできないし、また、この構成を示唆しているということもできない。
また、甲第3号証に示された第4図から、熱交換管36を設けた火床Bの下面が、不燃性成分と固形の燃焼生成物を排出管12に向けて傾斜させているということが窺えるが、甲第3号証に記載された「火床A」および「火床B」は、上記したように本件発明の「燃焼部」に相当するものといえるから、この傾斜は燃焼部下面における傾斜であって、本件発明のように、燃焼部と熱回収部とを区分して、その熱回収部下面を不燃物取出口に向けて傾斜してあるということはできない。
さらに、甲第4号証乃至甲第6号証を検討しても、いずれも流動床燃焼装置の燃焼部下面が不燃物取出口に向けて傾斜してあることが示されているだけで、本件発明のように、燃焼部と熱回収部とを区分して、その熱回収部下面を不燃物取出口に向けて傾斜させてあるような記載も示唆もされていない。

そうすると、特許異議申立人の提出した、甲第1号証乃至甲第6号証に記載されたものには、上記相違点(イ)、(ロ)の構成の何ら記載されておらず、また、それを示唆する記載も見当たらないから、甲第1号証乃至甲第6号証に記載されたものに基づき、本件発明が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

そして、本件発明は、特許明細書に記載された発明の効果を奏するものということができる。

・5-2特許法第29条の2の規定違反について
特許異議申立人の提出した甲第7号証に相当する先願のである特願昭61-55897号(特開昭62-213601号)の発明(以下、「先願発明」という。)について検討する。
上記したように、先願発明は気泡流動床を形成した多重循環燃焼ボイラであって、その明細書又は図面には、
「石炭、石灰20をスプレッダ等の公知の装置により燃焼炉11の気泡流動層13の上部に供給し、燃焼炉11内を隔壁12によって、一次燃焼領域14と伝熱管18で熱交換を行なう熱交換領域15に分割し、分散板16の下部の空気室32から流動化空気を供給し、一次燃焼領域14は、通常の気泡流動層よりやや速い空塔速度1〜3m/secで流動化させ、熱交換領域15は1m/sec以下の低速で流動化させて、一次燃焼領域14から隔壁12の開口部17bを通って熱交換領域15に降下させた粒子が、隔壁12の下端開口部17aから再び一次燃焼室14へ戻るように循環するようにするとともに、熱交換領域15の底面を傾斜させた多重循環燃焼ボイラ。」
が記載されているといえる。
そして、先願発明も熱交換領域15の流動層から伝熱管18によって熱回収するものであるし、また、気泡流動層の空塔速度が速ければ単位面積あたりの流動化空気風量は大きくなるといえるから、先願発明の明細書又は図面に記載された、「分散板16」、「流動化空気」、「粒子」、「気泡流動層」、「隔壁12」、「一次燃焼領域14」、「熱交換領域15」、「一次燃焼室14は、通常の気泡流動層よりやや速い空塔速度1〜3m/secで流動化させ、熱交換領域15は1m/sec以下の低速で流動化させて」、「伝熱管18」、「石炭、石灰20をスプレッダ等の公知の装置により燃焼炉11の気泡流動層13の上部に供給し」、「熱交換領域15の底面を傾斜させ」、「一次燃焼領域14から隔壁12の開口部17bを通って熱交換領域15に降下させた粒子が、隔壁12の下端開口部17aから再び一次燃焼室14へ戻るように循環する」、「多重循環燃焼ボイラ」は、その機能からして、それぞれ本件発明の、「底部」、「流動化ガス」、「流動媒体」、「流動層」、「仕切壁」、「燃焼部」、「熱回収部」、「燃焼部の少なくとも仕切壁近傍における単位面積あたりの流動化ガス吹込風量を熱回収部の単位面積あたりの流動化ガス吹込風量よりも大きくし」、「伝熱面」、「燃焼部に燃焼物供給装置を設け」、「熱回収部下面を傾斜させ」、「燃焼部から熱回収部上部に流動媒体を流入せしめると同時に熱回収部下部の流動媒体を燃焼部に還流せしめる」、「流動層からの熱回収装置」に相当しているものといえるから、両発明は、
「底部から上方に向けて吹き込む流動化ガスにより流動媒体を流動化せしめる流動層を、上部および下部に連通口を有する仕切壁によって熱回収部と燃焼部とに区分し、該燃焼部の少なくとも前記仕切壁近傍における単位面積あたりの流動化ガス吹込風量を前記熱回収部の単位面積あたりの流動化ガス吹込風量よりも大きくし、前記熱回収部に受熱流体を通じた伝熱面を配備し、前記燃焼部に燃焼物供給装置を設け、熱回収部下面を傾斜させ、前記燃焼部から前記熱回収部上部に流動媒体を流入せしめると同時に前記熱回収部下部の流動媒体を燃焼部に還流せしめるようにした流動層からの熱回収装置。」
であることで一致しているといえる。
しかし、次の点で相違している。
(イ)本件発明は、「不燃物取出口」を設けてあるのに対して、先願発明には、このような取出口が示されていない点。
(ロ)熱回収部下面の傾斜について、本件発明は、「熱回収部下面を不燃物取出口へ向けて傾斜させ、」ているのに対して、先願発明では、その明細書には何も記載されていないが、図面の第1図から一次燃焼領域14の水平な分散板に向かって傾斜しているように窺える点。
そこで、この相違点(イ)、(ロ)を検討する。
・相違点(イ)について
先願発明における未燃焼物質、不燃物、燃焼生成物(灰)などが、どこから取り出されているかを検討する。
先願発明は、燃料として石炭20を使用し、一次燃焼領域14の気泡流動層から飛散した未燃焼粒子は、サイクロン23で捕集されて一次燃焼領域14に戻すことによって燃焼を完結させるとともに、サイクロン23で捕集されなかった粒子は、対流伝熱部24、集塵器25の前部25aで捕集して一次燃焼領域14および熱交換領域15に還流させるようにして、粒子リサイクル比を高めて燃焼させるようにした多重還流燃焼ボイラであって、最終的に捕集されなかった灰は、集塵器25の後部25bで捕集し灰28として外部に排出するようにしたものであるということができる。
したがって、先願発明は、燃焼によって発生した粒子を循環させ流動媒体として利用してリサイクルするものであるから、捕集されなかった燃焼生成物(灰)のみを集塵器25の後部25bから排出するものであって、燃焼物(燃料)が、本件発明のように、「都市ごみ、産業廃棄物、石炭その他の燃焼物」とあるように不燃物の発生を想定したものと違い、石炭としていることからも、不燃物の取出口が燃焼炉11に設けられているということはできない。また、例えば、燃焼炉11に、点検等のために気泡流動層13にある物質の取出口が設けられているとしても、それを不燃物取出口ということもできないし、その場所も特定することができない。
よって、先願発明の明細書又は図面には、「不燃物取出口」が記載されているということはできない。
・相違点(ロ)について
上記相違点(イ)で検討したように、先願発明には、「不燃物取出口」が設けられているということができないから、先願発明の第1図に示されている熱交換領域15の分散板16の傾斜が、不燃物取出口へ向けて傾斜させてあるということはできできず、本件発明の相違点(ロ)の構成が先願発明の明細書又は図面に記載されているということはできない。

そうしてみると、本件発明は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された特願昭61-55897号の願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明と同一であるということはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件の請求項1に記載された発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1に記載された発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件の請求項1についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認められない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-03-26 
出願番号 特願平9-147041
審決分類 P 1 652・ 16- Y (F28D)
P 1 652・ 121- Y (F28D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 熊谷 繁嶋矢 督千壽 哲郎  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 岡田 弘規
櫻井 康平
登録日 1999-10-08 
登録番号 特許第2989783号(P2989783)
権利者 株式会社荏原製作所
発明の名称 流動層からの熱回収装置  
代理人 塩出 真一  
代理人 塩出 洋三  

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