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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A61L |
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管理番号 | 1035886 |
異議申立番号 | 異議1999-71127 |
総通号数 | 18 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-01-18 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-03-24 |
確定日 | 2001-04-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2804200号「湿潤時に潤滑性表面を有する医療用具及びその製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2804200号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.経緯 本件特許第2804200号は、平成4年3月13日の出願に係り、平成10年7月17日に設定登録された後、テルモ株式会社からの異議申立てがあり、取消理由通知に対し訂正請求がなされ、これに対して平成12年2月14日付の訂正拒絶理由通知がなされたものである。なお、上記訂正拒絶理由に対して特許権者は何らの応答もしていない。 2.訂正の適否 上記訂正請求における訂正事項においては、特許明細書の請求項1において、医療用具の表面の高分子材料を膨潤する極性溶媒について、該高分子材料に対しては、非溶剤であって、同高分子材料を膨潤可能な極性溶媒である旨訂正し、同明細書の段落番号0007の記載を上記訂正後の請求項1の記載と同様に訂正するとともに、段落番号0016において、その効果にする記載を加入し、また、同段落番号0010の記載中、例示された溶媒について、使用する高分子材料に応じて選択する旨及び高分子材料を膨潤しても溶解させるようなものは不適切である等の記載をさらに加えるものである。 しかし、上記のような医療用具表面の高分子材料に対して非溶剤であって、該材料を膨潤可能な極性溶媒を使用すること、また、該高分子材料を溶解させるものは不適切であること、あるいは高分子材料に対して非溶剤である極性溶媒を使用することによる効果については特許明細書に全く記載がなく、これらの訂正事項は、特許明細書の記載から直接的かつ一義的に導き出せるものではない。したがって、本件訂正は願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものではないから、平成6年法律第116号附則第6条の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項により準用する同法第126条第1項ただし書きの規定に違反するので、当該訂正は認めることはできない。 3.異議申立てについて 上記のとおり、本件訂正請求は認めることができないものであるから、本件請求項1〜4の発明は特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたとおりの以下のものである。 「[請求項1] 高分子材料の表面を有するカテーテル、ガイドワイヤ一等の医療用具の製造方法において、下記の工程を含むことにより、高分子材料の表面に物理的に捕捉された親水性高分子化合物のみで湿潤時に潤滑性表面を有する医療用具の製造方法。 1. 医療用具の表面の高分子材料に対しては、非溶剤であって同高分子材料を膨潤可能な極性溶媒で膨潤する工程 2. 前記極性溶媒中に溶解させた親水性高分子化合物を前記膨潤した高分子材料に含浸させることにより、医療用具の表面内部に化学結合を伴わないで物理的に捕捉させる工程。 3. 前記親水性高分子が捕捉された医療用具の表面を水と接触処理することにより物理的に捕捉された親水性高分子化合物のみで潤滑性を得る工程。 [請求項2] 高分子材料がポリウレタン、ポリウレタン-ナイロンエラストマー、塩化ビニルーウレタン共重合体のうち少なくともその一つである請求項1記載の湿潤時に潤滑性表面を有する医療用具の製造方法。 [請求項3] 親水性高分子化合物は、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、及びこのエステル化合物共重合体、ポリビニルピロリドン化合物、ヒドロキシプロピルセルロースのうち少なくとも一つから選ばれているものである請求項1記載の湿潤時に潤滑性表面を有する医療用具の製造方法。 [請求項4] 高分子材料の表面を有するカテーテル、ガイドワイヤ一等の医療用具において、親水性高分子化合物が、医療用具の高分子材料に含浸されて、医療用具の表面内部に対して前記親水性高分子化合物の化学結合を伴わないで、物理的に捕捉され、水と接触処理されていることにより、高分子材料の表面に物理的に捕捉された親水性高分子化合物のみで湿潤時に潤滑性表面を有する医療用具。」 これに対して 、上記取消理由通知において引用した刊行物1、3および4においてはポリウレタン等の高分子材料をその表面に有する医療用具において、親水性ないし水溶性高分子物質を該高分子材料表面にコーテイングして湿潤時に易滑性ないし潤滑性を付与せしめたものについて記載され、易滑性ないし潤滑性を付与せしめるコーテイング物質としてポリビニルピロリドン等が記載されている(刊行物1における比較例3及び刊行物4における比較例2も参照)。さらに刊行物1および4においては、親水性ないし水溶性高分子物質を該高分子材料表面にコーテイングした後、水と接触させることも記載されてされている。 ただ、これら刊行物においては、本件請求項1の発明における、親水性物質を医療用具表面の高分子材料を極性溶媒で膨潤させ、該極性溶媒中に溶解させた親水性高分子物質を上記膨潤した高分子材料に含浸させる点については記載がない。 しかし、同じく取消理由通知に引用した刊行物2においては、医療用具の血液接触部に抗血栓物質をコーテイングする際、コーテイング物質の溶剤として、該血液接触部を構成する高分子化合物と共通の溶媒もしくは共通する溶剤を含む溶剤を用い、血液接触部の一部が僅かに接触もしくは膨潤する条件でコーテイングすると、きわめて強力にコーテイングできることを示す記載があり、血液接触面構成高分子材料として、ポリウレタン等が挙げられ、また、抗血栓物質としてビニルピロリドン等の重合体(ポリビニルピロリドンと同じ。)等が挙げられている。そして、このコーテイング法は、上記コーテイング物質を血液接触部に含浸しており、化学結合を伴わないものであって、また、ポリウレタン及びポリビニルピロリドンは極性溶媒に溶解することも従来からよく知られていることである。してみると、刊行物1〜4における医療用具表面の高分子材料およびコーテイング物質の共通性からみれば、刊行物1、3及び4のコーテイング手段に代え、この刊行物2のコーテイング手段を採用する程度のことは当業者なら容易にできるものであり、親水性物質を医療用具表面の高分子材料を極性溶媒で膨潤させ、外局性溶媒中に溶解させた親水性高分子物質を上記膨潤した高分子材料に含浸させることは刊行物1〜4の記載から当業者が容易に想到できたものとせざるを得ない。したがって、本件請求項1の発明は刊行物1〜4に記載に基づき当業者が容易に発明できたものである。 請求項2における高分子材料及び請求項3における親水性高分子化合物もそれぞれ刊行物1〜4に記載されたものと重複するものであるから,これら請求項の発明も刊行物1〜4に記載された発明から当業者が容易に発明できたものである。また、請求項4の発明における医療用具は、請求項1の製造方法により当然得られるものであるから、請求項1の製造方法が刊行物1〜4に基づき当業者が容易に発明できたものである以上、この請求項4の発明も刊行物1〜4に基づき当業者が容易に発明できたものである。 2.むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1〜4の発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第113条第2項に該当し、取消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-02-02 |
出願番号 | 特願平4-89923 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZB
(A61L)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 佐野 整博 |
特許庁審判長 |
吉村 康男 |
特許庁審判官 |
深津 弘 宮本 和子 |
登録日 | 1998-07-17 |
登録番号 | 特許第2804200号(P2804200) |
権利者 | ダイメック株式会社 株式会社クリニカル・サプライ |
発明の名称 | 湿潤時に潤滑性表面を有する医療用具及びその製造方法 |
代理人 | 恩田 博宣 |
代理人 | 渡辺 望稔 |
代理人 | 三和 晴子 |
代理人 | 恩田 博宣 |