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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G01M
管理番号 1035940
異議申立番号 異議2000-70346  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-04-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-26 
確定日 2001-05-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第2926943号「漏れ試験方法および装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2926943号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第2926943号(平成2年9月14日出願、平成11年5月14日設定登録)の請求項1,2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という)は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりのものである。
「【請求項1】少なくともプローブガスを含む気体が封入された被試験物を外周容器に収納し、被試験物の周囲を真空排気し、外周容器内部と真空排気手段を結ぶ流路中の気体を発光分光し、その発光スペクトルを分析することにより前記気体中に含まれるプローブガスの量を測定し、この測定結果から被試験物の漏れの有無を判定することを特徴とする漏れ試験方法。
【請求項2】少なくともプローブガスを含む気体が封入された被試験物を収容する外周容器と、該外周容器内部を真空排気する手段と、該外周容器内部と真空排気手段を結ぶ真空排気路と、該真空排気路の途中に設けられて内部の気体の成分元素を励起発光させる手段と、前記気体が発光した光線を分光する手段と、前記分光された光線を分析する手段と前記真空排気路の圧力を測定する圧力計と、前記圧力計の測定値と前記分析手段の分析結果とから漏れ量を演算する演算部とからなる漏れ試験装置。」

2.申立て理由の概要
特許異議申立人ライボルト ヴァークウム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングは、証拠として甲第1号証(特開昭52-131780号公報)を提出し、本件発明1,2の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張している。

3.引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由に引用された刊行物1(甲第1号証)には、「光学的分析により圧力を測定し漏洩を表示する装置及び方法」に係る発明が記載され、具体的には
(1)第458頁右下欄18行〜第459頁左上欄20行の発明の目的において、「本発明の方法及び装置はガス特定動作モードでもガス不特定動作モードでも漏洩検出を行うことができる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
スペクトル放射原理と極めて高い差動感度を実現するための平衡回路とを用いて真空容器及び圧力容器における漏洩を測定しその位置探索を行うことも本発明の目的である。」と記載され、
(2)第459頁右上欄19行〜右下欄19行の第1図の説明において、「ガス及び蒸気の電気的励起は、例えば以下に更に説明されるようなペニング放電セル・・・などのような適当な励起装置3によつて遂行される。その励起は励起装置電源4によつて維持される。原子、分子及びイオンの系の励起復元によって導出される電磁放射は、フィルタ若しくはその他の波長選択装置5に当り、このような選択された放射の強度が適当な検出器6によつて感知される。この検出器6は、波長選択器の通過帯域内の放射の強度に比例する大きさの信号を発生し、この応動信号は増幅器7に送られ、それから表示装置への出力のために利用できる。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・接点Bは全圧に対する分圧の比の対数を与え、或いは線型増幅器が使用される場合には全圧と分圧の差を与える。」と記載され、
(3)第460頁左上欄2行〜右上欄5行の第2図の説明において、「円筒状の金属ハウジング18が、フランジ19によつて、図示されていない試験用真空系に完全密封されるようになつている。特定の型の励起装置3は、U字型カソード20(第4図も参照)及び円筒状金属アノード21から成り、それらは、各別の導体22及び23並びに各別の絶縁され完全密封された給電貫通部24及び25によつて、ハウジングの内部によつて支持される。・・・・・・・・・・・・・ペニング放電セルの内部で放出された光は、ガラス又はその他の光透過性物質の窓30を通してハウジングから射出し、選ばれた波長域がフイルタ32により透過され、それから通常のフオトマルチプライアー33の上に当る。」と記載され、
(4)第464頁左下欄19行〜右下欄12行の第11図の説明において、「言い換えれば、単一ガスでプローブ探索する時には、そのガスの分圧の変化が測定されてプローブ・ガスだけの圧力の変化を表す信号を与え、或いは、ブローブ・ガスの分圧の変化とが共に測定され且つ互に相関されて、増大した感度を与える。フイルタ112及び検出器113は、例えばN2などのような漏洩の結果生ずる顕著な残留ガスを特徴づけるスペクトル線を検出するように選ばれる。フイルタ102及び検出器103は、フイルタ112によつて選択される上述の漏洩ガス以外のガスであつてその漏洩する容器の外界には通常存在しないような任意のプローブ・ガスを特徴づけるスペクトル線を検出するように選ばれる。」と記載されている。

4.対比・判断
(本件発明1)
本件発明1と刊行物1のものとを対比すると、本件発明1の「外周容器」は、刊行物1のものの「ハウジング」に相当し、「プローブガスを含む気体を発光分光して判定する漏れ試験方法」の点で両者は共通している。ところが、本件発明1における「外周容器内部と真空排気手段を結ぶ流路中の気体を発光分光し」という点に関し、刊行物1のものでは「外周容器内部の気体を発光分光し」ており、両者は相違している。そして、かかる相違点により、本件発明1は、気体の体積が小さく、励起状態とするための装置を小型化することができるという効果を奏する。
(本件発明2)
本件発明2と刊行物1のものとを対比すると、本件発明2の「外周容器」は、刊行物1のものの「ハウジング」に相当し、「プローブガスを含む気体を発光分光する手段を有する漏れ試験装置」の点で両者は共通している。ところが、本件発明2における「真空排気路の途中に設けられて内部の気体の成分元素を励起発光させる手段」という点に関し、刊行物1のものではそれが「外周容器内部の気体の成分元素を励起発光させる手段」であり、両者は相違している。そして、かかる相違点により、本件発明2は、気体の体積が小さく、励起状態とするための装置を小型化することができるという効果を奏する。
したがって、本件発明1,2は、刊行物1に記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたものとすることができない。

5.以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件発明1,2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1,2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-03-30 
出願番号 特願平2-245440
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G01M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 江成 克己  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 志村 博
阿部 綽勝
登録日 1999-05-14 
登録番号 特許第2926943号(P2926943)
権利者 ヤマハ株式会社
発明の名称 漏れ試験方法および装置  
代理人 久野 琢也  
代理人 渡部 敏彦  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  

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