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審決分類 審判 判定 同一 属さない(申立て成立) B09B
管理番号 1035967
判定請求番号 判定2000-60108  
総通号数 18 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許判定公報 
発行日 1996-04-30 
種別 判定 
判定請求日 2000-07-24 
確定日 2001-04-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第3046703号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 (イ)号図面及びその説明書に示す「生ごみ処理機、およびそれに適した分解促進材の使用方法」は、特許第3046703号発明の技術的範囲に属しない。 
理由 1.請求の趣旨
本件判定の請求の趣旨は、イ号図面及びその説明書に示す生ゴミ処理機の使用方法(以下、「イ号方法」という。)は、特許第3046703号の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属さないとの判定を求めるものである。
2.本件特許発明
本件特許発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりのものであり、分説すると次のとおりである。
a,「略全面に亘って通気性の円弧状通気性底板と外郭胴部の両側部とにより縦断面略U字形となる混練胴部を形成する如くしてなる微生物活性処理槽を備え、」
b,「前記混練胴部内の混練物の撹拌は、撹拌翼付きアーム杆が分散配置されてなる横軸型回転軸が横設されるものにより行うことを特徴とする略完全消滅生ごみ処理機」
c,「に適した分解促進材であって、無処理の籾殻に適量のゼオライトあるいは焼成ゼオライトの粉末体あるいは粒状体を混入したものであるものの使用方法。」
3.イ号方法
これに対して、イ号方法は、平成13年2月20日付けの上申書により補正されたイ号図面及びその説明書の記載からみて、次のA〜Cに分説するのが相当である。
A、多数の通気孔が形成された円弧状のパンチングメタル6により底部が形成され、その下方側には貯水槽7がパンチングメタル6の両端に連通接続されており、前記底部と該貯水槽接続部位に続く直立部分とによって縦断面がU宇形の微生物活性処理槽1が構成され、
B、前記処理槽1内には水平な回転軸4が設けられ、この回転軸4には、処理槽1内の生ごみを混棟するために、各々撹拌翼51を先端に備えた4本の撹拌アーム5が周方向に90度づつ位相をずらして設けられると共に、4本の撹拌アーム5は回転軸4の長さ方向に間隔をおいて並んでおり、処理槽1内の生ごみは、微生物により実質完全に水と二酸化炭素とに分解される生ごみ処理機であり、
C、処理槽1内に、生ごみ、籾殻、微生物、中和剤である石灰及び臭気抑制剤である活性炭を投入して使用する方法。
4.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、本件特許発明とイ号方法とを対比すると、イ号方法は、本件特許発明の上記構成要件a及びbは充足するが、上記構成要件cを充足しないとし、その理由として、イ号方法では、ゼオライトも焼成ゼオライトも使用していないし、イ号方法で使用する石灰、活性炭はいずれもゼオライトとは異なるものである点を挙げ、さらに、本件特許発明の出願手続の経緯からみて、分解促進剤として「ゼオライトあるいは焼成ゼオライト」を使用しないイ号方法は、本件特許請求の範囲から意識的に除外したものである旨の主張をしている。
(2)被請求人の主張
被請求人は、本件特許の構成要件cについて、「エッセンシャルズ 化学辞典」(第1版第1刷 1999年3月10日株式会社東京化学同人、発行、第298頁)を提示して、イ号方法の構成Cにおける「中和剤である石灰及び臭気抑制剤である活性炭」が[本発明の「ゼオライト」の概念に含まれるか、少なくとも同等なものである。]旨を述べ、さらに、本件特許に係る特許出願手続の経緯についての請求人の主張に対して、[本件の場合には、籾殻にゼオライトが混入することが特定してある請求項に限定したに過ぎないから、籾殻に対してゼオライトを混入することが意識的限定を構成することは認められないはずである。]旨の主張をしている。
5.対比・判断
イ号方法の構成が、本件特許発明の各構成要件を充足するか否かについて検討する。
(1)構成要件aについて、
イ号方法の構成Aにおける「円弧状のパンチングメタル6」により形成された「底部」は、本件特許発明の「略全面に亘って通気性の円弧状通気性底板」に相当し、同様にイ号方法の「貯水槽接続部位に続く直立部分」は、本件特許発明の「外郭胴部の両側部」に相当し、上記「底部」及び「直立部」により縦断面がU字形に構成される「微生物活性処理槽1」は、本件特許発明の「混練胴部を形成する如くしてなる微生物活性処理槽」に相当する。
してみると、イ号方法の構成Aは、本件特許発明の構成要件aの全てを具備しており、イ号方法は、本件特許の構成要件aを充足している。
なお、請求人は、イ号方法が本件特許の構成要件aを充足している点について認めており、この構成要件aについては争いがない。
(2)、構成要件bについて
イ号方法の構成Bにおける上記微生物活性処理槽1内の「水平な回転軸4」は、本件特許発明の横軸型回転軸に相当し、この回転軸4に、撹拌翼51を備えた4本の撹拌アーム5が周方向に90度づつ位相をずらして、間隔をおいて並んでいることから、イ号方法における上記微生物活性処理槽1内の混練物の撹拌は、本件特許発明と同様に「撹拌翼付きアーム杆が分散配置されてなる横軸型回転軸が横設されるものにより行う」ものであり、また、イ号方法で使用される生ごみ処理機は、これにより「生ごみは、微生物により実質完全に水と二酸化炭素とに分解」されるとするものであるから、本件特許発明の「略完全消滅生ごみ処理機」に相当する。
してみると、イ号方法の構成Bは、本件特許発明の構成要件bの全てを具備しており、イ号方法は、本件特許発明の構成要件bを充足している。
なお、請求人は、イ号方法が本件特許の構成要件bを充足している点について認めており、この構成要件bについては争いがない。
(3)、構成要件cについて、
イ号方法では、生ごみ処理処理機に投入するものは、上記構成に示されている生ごみ、籾殻、微生物、中和剤である石灰及び臭気抑制剤である活性炭であり、「適量のゼオライトあるいは焼成ゼオライトの粉末体あるいは粒状体」を使用するものではない。
ところで、ゼオライトは、被請求人が提出した上記「エッセンシャルズ 化学辞典」によると、沸石ともよばれるものであり、その一般式は、M2/nO・Al2O3・xSiO2・yH2O(M=Na,K,Ca,Ba、nは価数、x=2〜10、y=2〜7)であり、(Al、Si)O4四面体が頂点を共有してつくる三次元網目構造中の空孔にアルカリ・アルカリ土類金属、水分子の入った構造のものであって、代表的なものは方沸石、リョウ沸石等であって、工業的に合成され、分子ふるい、触媒、吸着剤、廃水処理等に用いられるとされるものである。
被請求人は、上記「エッセンシャルズ 化学辞典」を引用して、「ゼオライトというものは、要するに3次元網目構造を備えるものの総称である。」と述べ、[問題となるのはその組成ではなくて構造であり、機能である。本発明のゼオライトは、消臭及び微生物活性処理槽のコンディション調整剤として機能している。したがって、イ号方法の構成Cにおける「中和剤である石灰及び臭気抑制剤である活性炭」が[本発明の「ゼオライト」の概念に含まれるか、少なくとも同等なものである。]と主張する。
しかしながら、ゼオライトは、上記「エッセンシャルズ 化学辞典」にみられるように、その吸着作用等を利用して、吸着剤、分子ふるい等の用途に利用されるものではあるが、前段の一般式で示される一定の組成と特有の三次元網目構造を有する特定の物質であって、吸着作用を有する点で共通していても他の組成と構造を有する物質とは区別されるものである。
さらに、本件特許明細書においても、「焼成ゼオライトとしては、例えば、「イタヤ・ゼオライト」(商品名、製造、販売元ジークライト株式会社)等として市販されている直径2〜3mm程度の活性処理されたゼオライト粒状体が望ましいが、その他、従来から土壌改良剤等として市販されているゼオライト砕石を粉砕、加工しただけのゼオライト粉末体あるいは粒状体でも微生物の繁殖、活性化のための有利な環境つくりにそれなりの効果を上げることができる。」(0024段落)として、「ゼオライトあるいは焼成ゼオライト」は、吸着作用を有する物質の総称ではなく、一定の組成、構造を有する具体的な特定の物質として説明されている。
結局、本件特許発明の構成要件cの「ゼオライトあるいは焼成ゼオライト」は、一定の組成及び構造を有する特定の物質であり、吸着作用を有する物質の総称ではない。
してみると、イ号方法の構成Cにおける「中和剤である石灰及び臭気抑制剤である活性炭」は、「ゼオライトあるいは焼成ゼオライト」とは明確に区別される物質であるから、イ号方法が、「中和剤である石灰及び臭気抑制剤である活性炭」を使用するとしても、本件特許発明の構成要件cの「適量のゼオライトあるいは焼成ゼオライトの粉末体あるいは粒状体」という構成要件を具備しているとはいえない。
したがって、イ号方法は、本件特許発明の構成要件cを充足しない。
6.均等論の適用について
イ号方法の構成Cにおける「中和剤である石灰及び臭気抑制剤である活性炭」が、本件特許発明の構成要件cの「ゼオライト」と同等のものである旨の被請求人の主張について、以下に検討する。
本件特許発明の構成要件cについて、本件特許明細書には次の記載がある。
「・・・この発明の生ごみ処理機は、勿論オガクズ等の木質細粒その他を分解促進材として用いても十分その機能を発揮できるが、次のような分解促進材に限定した使用をすることにより、その機能はさらに充実される。即ち、脱穀済みのままで何等の処理も施されていない無処理・・・の籾殻に、適量のゼオライトあるいは焼成ゼオライトの粉末状あるいは粒状体を混入したものを、生ごみ処理機の微生物活性処理槽に応じた量だけ充填して・・・生ごみ処理機に適した分解促進材の使用方法とするものである。この分解促進材およびその使用方法は、前記したこの発明の生ごみ処理機の機能を最も効果的に作用させる上で、最も望ましいものであるが、・・・微生物活性処理槽の組み込まれたその他の構造の生ごみ処理機についての採用も可能である。」(第0013〜0014段落)
この記載からみて、本件特許発明において、籾殻と「ゼオライトあるいは焼成ゼオライト」とを組み合わせた分解促進材を選択することにより、籾殻と他の成分の組合わせや籾殻単独の分解促進剤を使用した場合に対して、より優れた作用・効果を発揮できるとしたことが理解できる。
してみると、その優れた作用・効果を発揮するための構成要件cにおける上記「ゼオライトあるいは焼成ゼオライト」は、本件特許発明の技術的特徴を構成するものであり、上記構成要件cは、本件特許発明の本質的部分である。
次に、本件特許に係る出願手続の経緯について検討する。
平成11年11月17日付け拒絶理由通知において、種々の吸着剤を含み得る上位概念である「多穴性無機質粒体」を含む「有機物分解微生物着床剤」が記載された刊行物(特開平4-4084号公報)が引用され、その「引用例1に記載された発明における有機物分解微生物着床剤は、本願請求項5に係る発明における分解促進材に相当するものである。」から特許法第29条第2項違反である旨の指摘があり、これに対して、平成12年1月11日付けの意見書において、「通知された拒絶理由に係る補正前の請求項」を削除した旨を述べると共に、同日付けの手続補正書により、分解促進剤として、「籾殻に適量のゼオライトあるいは焼成ゼオライトの粉末あるいは粒状体を混入したもの」を特定していない請求項を削除する補正を行ったことが認められる。
してみると、上記出願手続では、進歩性を有しないという拒絶の理由を回避するという特段の事情の下で、意識的に上記補正がなされたというべきである。
結局、本件特許に係る出願手続において、上記構成要件cの「ゼオライトあるいは焼成ゼオライト」を含まないイ号方法の分解促進材の使用を意識的に除外する特段の事情があったものである。
したがって、本件特許発明の構成要件cは、本件特許発明の本質的部分であり、しかも、イ号方法は、本件特許発明の出願手続において特許請求の範囲から意識的に除外されるという特段の事情があったものであるから、均等を判断するための他の要件を検討するまでもなく、イ号方法が本件特許発明の範囲に記載された要件と均等なものであるとすることはできない。
7.むすび
以上のとおりであるから、イ号方法は、本件特許発明の技術的範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
 
別掲 [イ号図面の説明]
イ号図面の図1は、生ごみ処理機の全体を示す断面図であり、図2は生ごみ処理機の底部の洗浄の様子を示す断面図である。図面中1は、生ごみが投入されて処理される、底部が円弧状の処理槽であり、その円弧状の底部の両端からは壁が垂直に伸びていて、縦断面形状がU状に形成されている。
処理槽1内に投入される生ごみの表面よりも上側位置には、処理槽1内のガスを排気するための排気管2と微生物の増殖に必要な水分を補給するための撒水管3とが設けられている。また処理槽1内には、4本の撹拌アーム5を備えた水平な回転軸4が設けられ、各撹拌アーム5は先端に撹拌翼51が設けられている。
そして4本の撹拌アーム5は、回転軸4の周方向に沿って90度づつ位相がずれて設けられると共に、回転軸4の長さ方向(紙面の表裏方向)に互いに間隔を置いて並んでいる。
前記処理槽1の円弧状の底面は孔径1mm程度の孔が開いたパンチングメタル6により構成されている。処理槽1の下方側には前記パンチングメタル6を介して貯水槽7が連通接続されている。前記貯水槽7には、給水管81、常用排水管82及び強制排水管83が接続されると共にバブリング手段9が設けられている。
この生ごみ処理機においては、処理槽1の中に生ごみに担持させた微生物、籾殻、中和剤である石灰及び臭気抑制剤である活性炭を上から投入して蓋を閉じ、図示しないヒータにより処理槽1内の温度を所定温度に保つと共に、回転軸4を回転させて撹拌アーム5により所定時間間隔で撹拌し、更に撒水管3から所定の時間間隔で処理槽1内に水を供給する。処理槽1内に投入された生ごみは前記微生物により実質完全に水と二酸化炭素(CO2 )とに分解され、水はパンチングメタル6の孔を通って貯水槽7内に落下する。
一方図2に示すように貯水槽7内には常時水を溜めておき、バブリング手段9により常時空気を供給してバブリングを行い、これにより空気をパンチングメタル6の孔を介して処理槽1内に供給すると共に、液面Sが上下に激しく変動することによりパンチングメタル6の目詰まりを防いでいる。なお給水管81から所定の時間間隔で貯水槽1内に給水し、排水管82からオーバーフローさせている。

[添付イ号図面]


 
判定日 2001-03-12 
出願番号 特願平5-342174
審決分類 P 1 2・ 1- ZA (B09B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 斉藤 信人杉江 渉  
特許庁審判長 加藤 孔一
特許庁審判官 野田 直人
西村 和美
登録日 2000-03-17 
登録番号 特許第3046703号(P3046703)
発明の名称 生ごみ処理機、およびそれに適した分解促進材の使用方法  
代理人 正林 真之  
代理人 井上 俊夫  

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