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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1038576 |
審判番号 | 不服2000-1594 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-01-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-02-10 |
確定日 | 2001-05-10 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第165941号「磁気ディスク」[平成 5年 1月22日出願公開、特開平 5- 12645]拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願請求項に係る発明 本件審判の請求に係る特許願(以下、「本願」という)は、平成3年7月5日に出願されたものであって、本願請求項にかかる発明は、平成11年12月6日付け及び平成12年3月9日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1〜請求項13に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1の記載は、以下のとおりである。 「【請求項1】以下のことを特徴とする磁気ディスク。 (イ)ディスク基板は、プラスチック基板よりなる。 (ロ)上記プラスチック基板の上には、チタン、チタン合金、またはチタン化合物よりなる被覆層が形成されている。 (ハ)上記被覆層の上には、主としてCo、Ptよりなる磁性層が形成されている。 (ニ)上記被覆層を形成することにより、上記磁性層の磁気特性が良好となる。」 2.刊行物の記載 これに対して、原査定の理由で引用された特開平2-73511号公報(以下、刊行物という)には、「本発明は上述の課題を解決して成膜時の基板温度を高めることなく充分高い飽和磁束密度或いは(及び)高い保磁力を得ることができる磁性薄膜を提供する。」としてなされた、磁気記録媒体に関する発明について、以下の記載がある。 ・「CoPt系、或いはCoPt0系で、それぞれBまたは下記元素MIの少なくともいずれか一方を含む磁性薄膜を有する磁気記録媒体において、 上記磁性薄膜を、下記元素MIIの1種以上より成り、厚さ1x10〜・・・Åの下地層上に形成することを特徴とする磁気記録媒体。 MIは、Ti、Zr、Cr、 ・・・ ・・・ ・・・ 途中略 ・・・ のうちの1種以上。 MIIは、Ti、Zr、V、 ・・・ ・・・ ・・・ 途中略 ・・・ 及び希土類元素のうちの1種以上。」(特許請求の範囲の欄) ・「[作用] 上述の本発明構成によれば、その磁性薄膜(1)として、BまたはMIの少なくともいずれか一方を含むCoPtBMI系の構成としたことと、上述のMIIを含む下地膜(2)を設けたことが相俟って例えば室温程度の基板温度で、これの上に各膜(1)及び(2)をスパッタリングによって形成して高い垂直保磁力Hc⊥ないし面内保磁力Hc〃、或いは垂直磁気異方性Hk〃の向上をはかることができた。」(第2頁左下欄第14行〜同頁右下欄第3行) ・「実施例7 実施例3において、それぞれ ・・・ ・・・ 途中略 ・・・ の関係の測定結果を第8図に□印をもってプロットした。 比較例2 実施例7において下地膜を省略した。 ・・・ ・・・ 途中略 ・・・ 第8図からわかるように、下地膜を設ける場合、特に低いPo2領域でのHc⊥の向上がみられる・」(第4頁右上欄第2〜14行) ・「尚、上述の各実施例においては、基板としてスライドガラス板を用いた場合であるが、そのほかポリイミド樹脂基板、結晶化ガラス基板を始めとして、PET基板等各種基板を用いることもできる。」(第4頁左下欄第9〜12行) ・「[発明の効果] 上述の本発明による磁気記録媒体は、成膜時の基板温度を高めることなくまた、例えば5000Åという膜厚においても、下地膜の形成によって、より垂直磁気記録媒体として、また長手磁気記録媒体としてすぐれた磁気特性を示す媒体を得ることができた。 更にまた、室温程度での成膜が可能であることから、PET等の低廉な基板を用いることができるなど、実用上大きな利益を有する。」(第4頁左下欄第13行〜同頁右下欄第3行) そして、実施例3による磁気特性の測定結果を示した第4図と実施例3において下地層(2)の形成を省略した比較例1による磁気特性の測定結果を示した第10図、実施例7による磁気特性及び実施例7において下地膜を省略した比較例2による磁気特性の測定結果を示した第8図よりみて、下地層の形成により磁気特性の向上が見られることは明らかであるから、結局、刊行物には、実質的に、以下のとおりの発明が記載されているものと認める。 「ポリイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂からなる基板と、 基板上に形成したチタンからなる下地層と、 下地層上に形成したCoPt系、或いはCoPt0系で、それぞれBを含む磁性薄膜とを有し、 下地層の形成によって、磁気特性を良好とした磁気記録媒体。」 3.対比・判断 [対比] 本願請求項1に係る発明と刊行物記載の発明とを対比する。 いずれの発明も、磁気記録媒体に関するものであって、室温(常温)程度の温度で、プラスチック基板上に磁性層を形成できるようにしようとするものである点で共通するものである。 結局、両発明は、 「以下のことを特徴とする磁気記録媒体。 (イ)基板は、プラスチック基板よりなる。 (ロ)上記プラスチック基板の上には、チタン、チタン合金、またはチタン化合物よりなる被覆層が形成されている。 (ハ)上記被覆層の上には、主としてCo、Ptよりなる磁性層が形成されている。 (ニ)上記被覆層を形成することにより、上記磁性層の磁気特性が良好となる。」点で一致し、磁気記録媒体が、本願請求項1に係る発明では、磁気ディスクであって、したがって、基板がディスク基板であるのに対して、刊行物記載の発明では、具体的に規定していない点での相違が認められる。 [判断] 以下、相違点について検討する。 磁気記録媒体として、磁気ディスクは周知のものであり、刊行物記載の発明が、特に、磁気ディスクへの適用を阻害する要因を有しているとも認められず、刊行物記載の発明の磁気記録媒体を磁気ディスクとすること、それにしたがって、基板をディスク基板とすることは、格別の困難性もなく、適宜になし得るものと認める。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たということができるので、本願請求項1に係る発明については、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-13 |
結審通知日 | 2001-03-13 |
審決日 | 2001-03-26 |
出願番号 | 特願平3-165941 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 広岡 浩平、中村 豊、山下 達也 |
特許庁審判長 |
高瀬 博明 |
特許庁審判官 |
犬飼 宏 相馬 多美子 |
発明の名称 | 磁気ディスク |
代理人 | 松隈 秀盛 |