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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1038577 |
審判番号 | 不服2000-4058 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-10-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-03-23 |
確定日 | 2001-05-10 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第 73203号「磁気抵抗効果型磁気ヘッドの製造方法」[平成 6年10月18日出願公開、特開平 6-290424]拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願請求項に係る発明 本件審判の請求に係る特許願(以下、「本願」という)は、平成5年3月31日に出願されたものであって、本願請求項にかかる発明は、平成11年9月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものと認める。 「基板の上に非磁性絶縁層を設け、前記非磁性絶縁層の上に媒体から磁気データを読み出す磁気抵抗効果素子と、下部及び上部磁性層を磁気ギャップを介して積層し、しかも前記下部及び上部磁性層の間にコィル層とを有する記録ヘッドを設けた磁気抵抗効果型磁気ヘッドの製造方法であって、基板の上に非磁性絶縁層を形成した後に、前記非磁性絶縁層表面を研磨加工し、前記非磁性絶縁層上に磁気抵抗効果素子と記録ヘッドを形成したことを特徴とする磁気抵抗効果型磁気ヘッドの製造方法。」 2.刊行物の記載 これに対して、原査定の理由で引用された特開昭63-23216号公報(以下、刊行物という)には、 ・「基板(1)上に形成した絶縁層(6)上に、薄い金属膜(10)をスパッタ又は蒸着等で形成した後、磁気抵抗素子(2)を形成し、その上部に該磁気抵抗素子(2)の磁気特性を制御するシャント膜(3)を形成し、さらに絶縁膜(7)を形成し、その後シールド層(4)を上部に形成することを特徴とする薄膜磁気ヘッドの製造方法。」(特許請求の範囲) ・「従来のMR膜の形成方法では、基板1上の絶縁膜6がスパッタで形成されている為、絶縁膜6の表面が粗い。この粗い絶縁膜6上にMR膜2を形成していたため、磁気特性が悪いことがわかった。この原因は、表面が粗いと細かな磁区が多数発生し、これがHcを大きくすると推定される。」(第2頁右上欄第7〜12行) ・「第6図は従来の磁気ヘッドの実験結果を模擬的に書いたもので、 ・・・ ・・・ 途中略 ・・・ ・・・ 感度の悪いMR膜となる。」(第2頁右上欄第13〜18行) ・「第1図はフェライト基板を使用したシールド型シャントMRヘッド製造工程である。 (1)フェライト等の基板1の上に絶縁膜6をスパッタで形成する。(図a) (2)薄い金属膜(チタンTi膜(膜厚100Å以下))10をスパッタで形成する。(図b) ・・・ 途中略 ・・・ 上記のように構成したMRヘッドは、MR膜2の下地膜である絶縁膜6の谷の部分を、薄い金属膜(・・・)10で埋める形となり、絶縁膜6表面の凹凸が抑制され滑らかになる。」(第2頁右下欄第14行〜第3頁右上欄第1行) ・「以上説明したように本発明によれば、MR膜の下地膜の絶縁膜表面の凹凸を抑制することによりMR膜の磁気特性を良くすることが出来る。」(第3頁右上欄第16〜18行) 以上の記載を各図面を参照して、整理すると、結局、刊行物には、以下のとおりの発明が記載されているものと認める。 「フェライト基板の上に絶縁膜をスパッタで形成し、この絶縁膜上に薄い金属膜(チタンTi膜(膜厚100Å以下)をスパッタ又は蒸着等で形成して絶縁膜表面の凹凸の谷部に前記薄い金属膜で埋め込んで凹凸を抑制して滑らかとし、さらにこの上にMR膜を磁場中で蒸着することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。」 3.対比・判断 [対比] 本願請求項に係る発明と刊行物記載の発明とを対比する。 いずれの発明も、磁気抵抗効果素子を使用した磁気ヘッドの製造方法に関するものであって、磁気抵抗効果膜を形成する際、その下地となる絶縁膜表面の粗さを小さくして特性への影響を少なくしようとする点で共通するものである。 両発明は、以下の点での一致及び相違が認められる。 [一致点] 「基板の上に非磁性絶縁層を設け、前記非磁性絶縁層の上に媒体から磁気データを読み出す磁気抵抗効果素子を設けた磁気抵抗効果型磁気ヘッドの製造方法であって、基板の上に非磁性絶縁層を形成した後に、前記非磁性絶縁層表面を滑らかに加工し、前記非磁性絶縁層上に磁気抵抗効果素子を形成したことを特徴とする磁気抵抗効果型磁気ヘッドの製造方法。」 [相違点] (1)製造の対象となる磁気ヘッドが、本願請求項に係る発明では、記録のためのヘッドも備えたものであって、磁気抵抗素子の形成後に、更に、下部及び上部磁性層を磁気ギャップを介して積層し、しかも前記下部及び上部磁性層の間にコィル層とを有する記録ヘッドを設けたものであるのに対して、刊行物記載の発明では、磁気抵抗効果素子を使用した読み出し用磁気ヘッドのみを対象としている点 (2)基板上に形成した非磁性絶縁層の表面を滑らかに加工する手段として、本願請求項に係る発明では、研磨加工を用いているのに対して、刊行物記載の発明では、薄い金属膜をスパッタ又は蒸着して、絶縁層表面の凹凸を埋めている点 [相違点についての判断] 以下、相違点について検討する。 [相違点1について] いわゆる薄膜磁気ヘッドにおいて、基板上に設けた磁気抵抗効果素子を用いた読み出し用ヘッドに、更に、ギャップを介した上下の磁性層及び上下磁性層の間のコイル層からなる記録用ヘッドを積層構成するものは刊行物を引用するまでもなく、ごく周知のものである。 しかも、刊行物記載の発明は、薄膜磁気ヘッドの製造方法において、磁気抵抗効果素子を形成する際の絶縁層からなる下地処理に関する課題を解決しようとするものであり、更に記録ヘッド部を積層構成するものにおいても同様の課題が生じることは当然に予想し得るものと考えられ、記録ヘッドを有する磁気抵抗効果型磁気ヘッドの製造方法においても格別の困難性もなく必要に応じて適宜に採用し得るものと認める。 [相違点2について] 刊行物記載の発明における磁気抵抗効果素子の下地処理は、下地となる絶縁層表面の凹凸を他の物質で埋め込んで凹凸を滑らかにしようとするものではあるが、部材表面の凹凸を少なくして表面を滑らかにしようとする際、研磨加工はごく普通に採用される周知の加工手段であり、薄膜磁気ヘッド等の磁気ヘッドの製造方法にも多用されている加工手段でもあることからみて、刊行物記載の発明における埋め込みによる方法に変えて、これを採用することに、格別の困難性は認められない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項に係る発明は、刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明し得たということができるので、本願請求項に係る発明については、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-07 |
結審通知日 | 2001-03-13 |
審決日 | 2001-03-26 |
出願番号 | 特願平5-73203 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中村 豊 |
特許庁審判長 |
高瀬 博明 |
特許庁審判官 |
犬飼 宏 相馬 多美子 |
発明の名称 | 磁気抵抗効果型磁気ヘッドの製造方法 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 坂口 智康 |
代理人 | 内藤 浩樹 |