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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1038580
審判番号 不服2000-6780  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-08 
確定日 2001-05-10 
事件の表示 平成5年特許願第203128号「注射針及びその製造法」拒絶査定に対する審判事件[平成7年2月28日出願公開、特開平7-51371]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 〔1〕手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年8月17日の出願であって、平成12年5月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1、2に係る発明は、本願の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】ポリエーテルサルホン,ポリサルホン,ポリアミドイミド,ポリエーテルイミド,ポリイミド,ポリカーボネート,ポリエステル,ポリアミド,ポリプロピレン,ポリアリレート,ポリメチルペンテン,変性フェニレンオキシド及び液晶ポリエステルよりなる群れから選ばれる1種以上を含有し、ロックウェル硬さ(M法)65以上、曲げ弾性率20,000kg/cm2以上である合成樹脂組成物からなり、先端刃が、針型に射出成形後に針管部を延伸処理し、延伸処理部分をウオータージェット法で切断することにより形成されたことを特徴とする注射針。」

〔2〕引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前の出願に係る引用例1(特開平4-221570号公報)には、カテーテル集成体に関して、図1〜6とともに以下の事項が記載されている。
(1)「本体部分とそれに接続された中空ニードル部分を含み,前記ニードル部分が尖端を有し,前記本体部分と前記ニードル部分の少なくとも一方が,ポリエーテル,ポリホスファジン,ポリキシリレン,ポリスルホン,ポリアミド,ポリシロキサン,及びポリエステルからなる群から選ばれる液晶ポリマーで作製されているチューブ。」(特許請求の範囲の【請求項6】)
(2)「本体部分とそれに接続された中空ニードル部分を含み,前記ニードル部分が尖端を有し,前記本体部分と前記ニードル部分の少なくとも一方が,芳香族ヒドロキシ酸のポリマーとコポリマー,及びジカルボン酸とグリコールとの重合反応生成物であって前記のジカルボン酸とグリコールの少なくとも一方が芳香環を含む場合に得られる重合反応生成物からなる群から選ばれる液晶ポリエステルで作製されている,カテーテル集成体。」(特許請求の範囲の【請求項7】)
(3)「本発明のカテーテル集成体は,チューブ部分と患者の皮膚に貫入させるためのニードル部分を含み,チューブ部分とニードル部分の少なくとも一方が熱可塑性の液晶ポリマーで作製されている。チューブ部分とニードル部分は,尖端を含むよう成形された単一の一体形液晶カテーテルであってもよく,チューブ部分はハブ部分を含んでもよい。これとは別に,ニードル部分は,液晶チューブに接続された金属ニードルであってもよく,あるいはニードル部分は,液晶ポリマーもしくは非液晶ポリマーのチューブに接続された尖端を有する液晶ニードルであってもよい。」(段落【0006】)
(4)「曲げ弾性率は約1,000,000〜20,000,000psi,好ましくは約3,000,000〜7,000,000psiである。」(段落【0030】、第9欄第10〜12行)

同じく、引用例2(「プラスチック データ ハンドブック」、伊藤公正編、株式会社工業調査会、1980年7月5日発行、第509頁、第523頁)には、ポリスルホン、ポリエステル樹脂、FR-ナイロン6、FR-ポリカーボネートの物理的性質、機械的性質が、表において以下のとおり示されている。
(5)「ポリスルホンのロックウェル硬度(M法)は、P-1700においては、69、P-1720においては、69、曲げ弾性率は、P-1700においては、27,420kg/cm2、P-1720においては、27,420kg/cm2」(第509頁)
(6)「ポリエステル樹脂のロックウェル硬度(M法)は、93、曲げ弾性率は、85,000kg/cm2、
FR-ナイロン6のロックウェル硬度(M法)は、101、曲げ弾性率は、105,000kg/cm2、
FR-ポリカーボネートのロックウェル硬度(M法)は、90、曲げ弾性率は、80,000kg/cm2」(第523頁)

同じく、引用例3(特開昭62-288400号公報)には、ウォータジェットノズルに関して、第1、2図とともに、以下の事項が記載されている。
(7)「このように構成されたウォータージェットノズルにおいては、有底筒11と被加工物6間の間隔を隔てた状態にして吸気装置(図示せず)を駆動させることにより、被加工物6の切断時に飛散した霧状の水分を通孔11aから有底筒11内に吸入して吸引口12,13から外部に取り除くことができる。このとき、有底筒11内に貯溜する水分は加熱装置16によって気化する。」(第2頁右上欄第6〜13行)

同じく、引用例4(特開昭62-246500号公報)には、ウォータージェット切断用ノズルに関し、第1〜7図とともに以下の事項が記載されている。
(8)「ノズル本体と、このノズル本体内において先端側に向けて順次配置された高圧水ノズル、ノズル混合室及びアブレッシブノズルチップとを有し、上記ノズル本体側には、上記ノズル混合室に懸濁砥粒液を導入するための懸濁砥粒液導入路が形成され、上記ノズル混合室内には、高圧水通路を有する内筒が配置され、さらにこの内筒には、上記ノズル混合室と高圧水通路とを連通する複数の砥粒液供給孔が周方向に位置をずらせて配置されていることを特徴とするウォータージェット切断用ノズル。」(特許請求の範囲)

同じく、引用例5(特開昭62-236700号公報)には、高圧ウォータージェット装置に関して、第1図とともに以下の事項が記載されている。
(9)「洗浄、切断状況を観察可能に実施する高圧ウォータージェット装置において、噴流エネルギを吸収するための格子板により画成された小室部からなるタンクと、該タンクと噴流作業部との間に、洗浄、切断した後の噴流エネルギによる巻き上がりを防止するための巻き上がり防止板とを設けたことを特徴とする高圧ウォータージェット装置。」(特許請求の範囲の請求項1)

〔3〕対比・判断
本願発明と引用例1に記載されたものを対比すると、引用例1に記載された「ポリスルホン」は、本願発明の「ポリサルホン」のことであり、引用例1に記載された「曲げ弾性率は約1,000,000〜20,000,000psi」は、1psiは、0.07031kg/cm2であるから、換算すると「曲げ弾性率は約70,310〜1,406,200kg/cm2」となり、本願発明の「曲げ弾性率20,000kg/cm2以上」に相当する。
また、引用例1に記載された「芳香族ヒドロキシ酸のポリマーとコポリマー,及びジカルボン酸とグリコールとの重合反応生成物であって前記のジカルボン酸とグリコールの少なくとも一方が芳香環を含む場合に得られる重合反応生成物」は、本願発明の「合成樹脂組成物」に相当し、以下同様に「尖端」は、「先端刃」に相当し、引用例1の「カテーテル」は、患者の皮膚に貫入させるものとして用いられているから、本願発明の「注射針」に相当する。
したがって、両者は、「ポリサルホン,ポリエステル,ポリアミドよりなる群れから選ばれる1種以上を含有し、曲げ弾性率20,000kg/cm2以上である合成樹脂組成物からなり、先端刃が、形成されたことを特徴とする注射針」の点で一致しており、以下の点で両者は相違するものと認める。
(相違点1)
合成樹脂組成物に関し、本願発明は「ロックウェル硬さ(M法)65以上」であるのに対し、引用例1はその点が明示されていない点。
(相違点2)
先端刃に関し、本願発明は「針型に射出成形後に針管部を延伸処理」したのに対し、引用例1はその点が明示されていない点。
(相違点3)
先端刃に関し、本願発明は「延伸処理部分をウオータージェット法で切断することにより形成された」のに対して、引用例1にはその点が明示されていない点。
そこで、上記相違点について検討する。
上記相違点1について
ポリサルホン、ポリエステル、ポリアミドの合成樹脂組成物(「ポリアミド合成樹脂組成物」は、「FR-ナイロン6」ことである)のロックウェル硬度(M法)は、上記引用例2によれば、それぞれ69、93、101であるから、「ロックウェル硬さ(M法)65以上」である合成樹脂組成物は刊行物1に記載されているのと同等である。

上記相違点2について
先端刃を、針型に射出成形後に針管部を延伸処理することは、例えば、特開平3-176071号公報の合成樹脂製のシリンジ筒の下端部を針状に延伸して切断したもの(本願発明の「注射針」に相当する。)に見られるように周知技術であり、また、一般的に、強度を上げるために合成樹脂からなるパイプを延伸処理することは、特開平3-274200号公報に見られるように常套手段であるから、引用例1記載のものにおいて、強度を上げるという課題の下に上記周知技術を適用して、先端刃を、針型に射出成形後に針管部を延伸処理することは、当業者が容易に想到できたものと認められる。

上記相違点3について
ウオータージェット法で切断することは、上記引用例3〜5により見られるように、切断手法としての周知技術であり、上記引用例1に上記周知技術を適用することにより合成樹脂組成物の先端刃をウォータージェット法で切断して得ることは、当業者にとって容易に想到し得たことと認められる。

そして、本願発明によって奏する効果を検討しても、引用例1〜5及び上記周知技術に記載されたものから当業者であれば容易に予測できる程度のものであって、格別のものは認められない。

〔4〕むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用例1〜5及び上記周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたもの認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、請求項2に係る発明を検討するまでもなく、拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-03-09 
結審通知日 2001-03-13 
審決日 2001-03-26 
出願番号 特願平5-203128
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 和泉 等
熊倉 強
発明の名称 注射針及びその製造法  
代理人 安西 篤夫  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  

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