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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G10H
管理番号 1038729
審判番号 審判1999-17461  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-10-28 
確定日 2001-06-04 
事件の表示 平成 5年特許願第175884号「電子楽器」拒絶査定に対する審判事件〔平成 7年 3月31日出願公開、特開平 7- 84579、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯、本願発明の要旨
本願は、平成5年6月24日の出願であって、その請求項1乃至4に係る発明は、平成11年11月26日付け手続補正書で補正された明細書及び出願当初の図面の記載から、特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された次のとうりの「電子楽器」にあると認める。
「【請求項1】楽音を構成する基本波およびその高調波信号を発生する高調波信号発生手段と、所望の音色に対応した高調波係数を発生する高調波情報発生手段と、各次数の高調波信号に、対応する高調波係数を乗算して累算することにより、楽音信号を形成する手段とを有する高調波合成方式の電子楽器において、前記高調波情報発生手段は、選択された音色および高調波次数に対応した基本高調波係数を発生する基本高調波係数発生手段と、前記基本高調波係数と演算されて前記基本高調波係数を補正し、各次数の高調波係数を発生するための係数制御信号を生成する係数制御信号発生手段とを含み、前記係数制御信号発生手段は、各高調波次数ごとの係数制御信号変更用特性データを記憶する記憶手段と、演奏、操作信号の関数である制御信号および前記係数制御信号変更用特性データに基づいて、各高調波次数毎の前記係数制御信号を演算する演算手段とを具備し前記係数制御信号変更用特性データは、各高調波次数ごとに予め設定された、少なくとも演奏、操作信号の変化に対する高調波係数制御信号の変化の傾きを示す情報と、高調波係数制御信号値のオフセット量を決定する特定値の情報とを含むことを特徴とする電子楽器。
【請求項2】前記係数制御信号変更用特性データの記憶および前記係数制御信号の演算の少なくとも一方は、選択された音色ごとに行われることを特徴とする請求項1に記載の電子楽器。
【請求項3】前記演奏、操作信号は少なくともタッチ情報を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電子楽器。
【請求項4】前記高調波係数制御信号は、{制御信号×傾き+特定値-(傾き×特定値)}の演算式によって求められることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の電子楽器。」
2.原査定の理由
これに対して、原査定の拒絶の理由の概要は、本願の請求項1〜4の発明は、「特公昭59-17435号公報」(以下「引用例1」という。)および「特開昭61-188592号公報」(以下「引用例2」という。)並びに周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有するものが、容易に発明することができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というにある。
3.引用例の記載事項
引用例1には、「楽音を構成する基本波およびその高調波に対応する各成分を発生させ、この各成分にそれぞれ対応する振幅係数を乗じてその乗算値を加算することによって楽音を形成する高調波合成方式の電子楽器において、押鍵操作に伴う鍵タッチ状態を検出するタッチ検出回路と、このタッチ検出回路の出力に関連して上記各振幅係数の値を相対的に変化される振幅係数変化手段とを備えた電子楽器」(特許請求の範囲1)および「前記振幅係数変化手段を、高調波の次数を示す信号と前記タッチ検出回路の出力信号とによってアドレスされるメモリによって構成」(特許請求の範囲2)が記載されている。
また、引用例2には、「押鍵速度又は押鍵圧力を検出してタッチデータを生成するタッチデータ生成手段と、該タッチデータ生成手段からのタッチデータを変更するための基準データを設定する基準データ設定手段および変更度合いを示す感度データを設定する感度データ設定手段とを有するタッチデータ変更手段と、このタッチデータに基づいて楽音の音色を決定する楽音作成手段とを具備するタッチレスポンス装置」(第二実施例)が記載されている。
4.対比・判断
請求項1に記載された発明(以下「本件発明1」という。)と引用例1に記載された発明とを比較すると、引用例1における「高調波係数メモリ(20)、(21)」、「タッチメモリ(22)」(第2図参照)は、本件発明1における「選択された音色および高調波次数に対応した基本高調波係数を発生する基本高調波係数発生手段」、「高調波次数ごとの係数制御信号変更用特性データを記憶する記憶手段」にそれぞれ相当するから、両者は、「楽音を構成する基本波およびその高調波信号を発生する高調波信号発生手段と、所望の音色に対応した高調波係数を発生する高調波情報発生手段と、各次数の高調波信号に、対応する高調波係数を乗算して累算することにより、楽音信号を形成する手段とを有する高調波合成方式の電子楽器において、前記高調波情報発生手段は、選択された音色および高調波次数に対応した基本高調波係数を発生する基本高調波係数発生手段と、前記基本高調波係数と演算されて前記基本高調波係数を補正し、各次数の高調波係数を発生するための係数制御信号を生成する係数制御信号発生手段とを含み、前記係数制御信号発生手段は、各高調波次数ごとの係数制御信号変更用特性データを記憶する記憶手段とを含む電子楽器」である点で一致し、
以下の点で相違する。
相違点1
係数制御信号発生手段を制御する制御信号が、本件発明1においては「演奏、操作信号の関数である制御信号」であるのに対して、引用例1においては、「タッチ検出回路の出力信号(演奏制御信号)」である点
相違点2
係数制御信号発生手段が、本件発明1においては「各高調波次数毎の前記係数制御信号を演算する演算手段とを具備し前記係数制御信号変更用特性データは、各高調波次数ごとに予め設定された、少なくとも演奏、操作信号の変化に対する高調波係数制御信号の変化の傾きを示す情報と、高調波係数制御信号値のオフセット量を決定する特定値の情報とを含むもの」であるのに対して、引用例1は、「複数組の各高調波次数別のタッチ係数が記憶されているタッチメモリ」である点
上記相違点について検討すると、
相違点1について
音色を制御するための制御信号としてタッチ検出信号および音色を選択する操作子群の制御因子を用いることは周知の技術(例えば、実開昭63-195397号公報、特開昭64-56488号公報)であり、引用例1の制御信号に変えて演奏、操作信号の関数である制御信号を用いることは必要に応じて適宜設定し得るものである。
相違点2について
引用例2には、要するに、基準データおよび感度データを任意に設定することによりタッチレスポンスの感度を任意に変更するものが開示されているのみであり、引用例1および引用例2を組み合わせたとしても本件発明1の構成要件である「各高調波次数毎の前記係数制御信号を演算する演算手段とを具備し前記係数制御信号変更用特性データは、各高調波次数ごとに予め設定された、少なくとも演奏、操作信号の変化に対する高調波係数制御信号の変化の傾きを示す情報と、高調波係数制御信号値のオフセット量を決定する特定値の情報とを含むもの」は得られなし、また、それを想起させる記載も見いだせない。
そして、本件発明1は、上記構成要件を具備することにより大量のメモリを用いることなく、演算により演奏、操作情報に基づき分解能のよい高調波係数制御信号を得ることができ、簡単な構成で、最適な変化度合いで、音色を変化させることが可能となるとの効果を奏するものと認められる。
また請求項2乃至4に記載された発明(以下「本件発明2乃至4」という。)は、本件発明1を引用して更に限定事項を付加したものであるから、本件発明1についての判断と同様の理由となる。
5.結び
したがって、本件発明1乃至4は、引用例1、2記載の発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると認めることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-05-15 
出願番号 特願平5-175884
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G10H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 千葉 輝久  
特許庁審判長 井上 雅夫
特許庁審判官 小松 正
山本 章裕
発明の名称 電子楽器  
代理人 平木 道人  
代理人 田中 香樹  

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