• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1038891
審判番号 審判1999-18218  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-04-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-11-15 
確定日 2001-05-24 
事件の表示 平成 6年特許願第 75485号「会議通信装置および会議通信方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 4月 7日出願公開、特開平 7- 95300]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯、本願発明の要旨
本願は、平成6年3月23日(優先権主張1993年3月24日、米国)の出願であって、その発明の要旨は、平成11年7月19日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至14に記載された「会議通信装置および会議通信方法」にあると認められるところ、その請求項1に記載された発明は次のとおりのものである。
「(A)少なくとも3つの入力通信路からの符号化信号を組み合わせて出力通信路へ送出する組み合わせ手段と、(B)前記符号化信号を完全に復号することをせずに、各入力通信路の信号エネルギーをモニタリングする手段と、(C)前記モニタリングする手段(B)に応答して、前記信号エネルギーのモニタリングが第1の値を与える場合に、前記入力通信路のうちの1つの上の信号について前記組み合わせ手段(A)を迂回させて前記出力通信路へと送る手段とからなることを特徴とする会議通信装置。」(以下、「本願発明」という。)

第2.特許法第29条の2の要件
1.先願明細書に記載の発明
(1)一方、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平3-324093号〔特開平5-136896号〕の願書に最初に添付された明細書(以下、「先願明細書」という。)の公開公報には、以下の記載が認められる。
「【請求項1】 原音声信号を分析し符号化した符号化音声信号から音声信号を合成する少くとも3つの音声合成部と、これら音声合成部のそれぞれに対応して前記符号化音声信号からスペクトル包絡を算出するスペクトル包絡算出器と、前記音声合成部の出力信号を加算する加算器と、前記音声合成部のそれぞれに対応して前記加算器の出力信号から対応する前記音声合成部の出力信号を減算する減算器と、これら減算器のそれぞれに対応して前記減算器の出力信号にあらかじめ定めた1未満の係数を乗算する乗算器と、これら乗算器のそれぞれに対応して前記乗算器の出力信号に前記原音声信号に施したのと同じ符号化を施す音声分析器と、前記スペクトル包絡算出器のそれぞれが算出した前記スペクトル包絡のレベルを相互比較して1つが他のいずれよりもあらかじめ定めたレベル差以上に高いとき前記1つを示す信号を出力する包絡比較器と、この包絡比較器が出力した前記1つを示す信号に対応する前記符号化音声信号を選択して出力するパラメータ選択器と、前記音声分析器のそれぞれに対応して前記包絡比較器が前記1つを示す信号を出力していないときは前記音声分析器の出力信号を選択して出力し前記包絡比較器が前記1つを示す信号を出力しているときは前記1つを示す信号に対応しないそれぞれの前記音声分析器の出力信号に代えて前記パラメータ選択器の出力信号を選択して出力するスイッチとを備えたことを特徴とする(N-1)加算器。」(公開公報第2頁左欄第2〜26行)、
「【0011】【発明が解決しようとする課題】上述した従来の符号化音声信号を処理する(N-1)加算器は、常に合成及び分析符号化を行っているので、当然、音質を劣化させる。ところが、通話中の有音区間は4割弱であり、会議通話中に参加者中の1人だけしか発声していない期間が占める割合は大きい。2つの音にある程度以上の差があれば弱い方の音は強い方の音にマスクされてしまうことから、参加者中の1人だけが発声している期間にはその参加者からの符号化音声信号をそのまま他の参加者に送ることができ
れば、不要な合成、分析符号化による音質の劣化を除去できる。」(同第2頁右欄第48行〜第3頁左欄第9行)、
「【0021】図1は本発明の一実施例による(N-1)加算器を示すブロック図である。
【0022】本実施例の入力端子11〜1n(nは3以上の整数)に入力する各信号は、原音声信号を線形予測(linear predictive coding:LPC)分析して得たLPC係数,電力係数,音源情報をそれぞれ符号化して多重化した符号化音声信号である。入力端子11に入力した符号化音声信号は、音声合成部21のディマルチプレクサ211により分離され、LPC係数復号化器212,電力係数復号化器213,音源情報復号化器214によりそれぞれ復号されてLPC係数,電力係数及び音源情報となる。音声合成器215は、これらLPC係数,電力係数,音源情報から直線PCM信号の形の音声信号を合成して出力する。音声合成部22〜2nもそれぞれ音声合成部21と同じ構成であり、入力端子12〜1nに入力した符号化音声信号から直線PCM信号の形の音声信号を合成して出力する。
【0023】加算器30は音声合成部21〜2nが合成出力した各音声信号を加算する。減算器41〜4nは加算器30の出力信号から音声合成部21〜2nが出力した音声信号を減算する。係数器51〜5nは減算器41〜4nの出力信号に係数1/2を乗算する。音声分析器61〜6nは係数器51〜5nの出力信号を入力端子11〜1nに入力した符号化音声信号と同じ方式で分析符号化する。
【0024】以上説明した入力端子11〜1nから音声分析器61〜6nまでの信号径路の動作は図7の従来例の動作と同じである。本実施例は、これら信号径路の他に入力端子11〜1nからパラメータ選択器95,遅延回路96を介してスイッチ71〜7nに至る信号径路を備えている。スイッチ71〜7nは入力端子1〜11n(及び入力端子11〜1nに対応する出力端子81〜8n)に対応しており、音声分析器61〜6nの出力信号または遅延回路の96からの信号のいずれか一方を選択して出力端子81〜8nから出力する。入力端子11〜1nに入力した符号化音声信号(の原音声信号)のうちいずれか1つが他のいずれよりも十分レベルが高い場合(本実施例を用いて行われている会議通話中で1人の参加者だけが発声している場合)、パラメータ選択器95はこの1つの符号化音声信号をスイッチ71〜7nのうちこの1つの符号化音声信号に対応しない全てのスイッチを送り、これらスイッチはパラメータ選択器95からの信号を選択して出力するので、この場合に音声合成部21〜21n,音声分析器61〜6nで不要な合成、分析符号化が行われて音質が劣化するのを防止できる。他のいずれよりも十分レベルが高い1つの符号化音声信号がない場合は、スイッチ71〜7nは音声分析器61〜6nの出力信号を選択して出力する。
【0025】以下、パラメータ選択器95を通る信号径路の動作及びスイッチ71〜7nの制御動作について説明する。
【0026】音声合成部21〜2nはスペクトル包絡算出器216を備えている。スペクトル包絡算出器216は、LPC係数復号化器212,電力係数復号化器213が出力したLPC係数,電力係数を用いてスペクトル包絡を算出する。包絡比較器94は、音声合成部21〜2nのスペクトル包絡算出器216が出力したスペクトル包絡を相互比較して入力端子11〜1nに入力した符号化音声信号(の原音声信号)をレベル比較して各符号化音声信号のうち他のいずれよりもあらかじめ定めたレベル差以上に高いレベルの1つの符号化音声信号があるか否かを判定し、判定結果をスイッチ71〜7nの制御信号として出力し、又、他のいずれよりもあらかじめ定めたレベル差以上に高いレベルの1つの符号化音声信号があれば、その1つに対応する入力端子を示す信号をパラメータ選択器95へ出力する。パラメータ選択器95は包絡比較器94からの信号が示す入力端子に入力した符号化音声信号を他の入力端子に対応する全てのスイッチに送り、又、無音時の符号化音声信号を生成して包絡比較器94からの信号が示す入力端子に対応するスイッチに送る。例えば、包絡比較器94からの信号が入力端子11を示していれば、スイッチ72〜7nには入力端子11に入力した符号化音声信号が送られ、スイッチ71には無音時の符号化音声信号が送られる。遅延回路96は、入力端子11〜1nからパラメータ選択器95を通ってスイッチ71〜7nに至る径路の信号に入力端子11〜1nから音声分析器61〜6nまでの信号径路における信号遅延と等しい遅延を与えるために設けられている。」(同第3頁右欄第30行〜第4頁右欄第25行)。

(2)これらの記載及び図面第1乃至4図によれば、先願明細書には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「(A)少なくとも3つの入力端子からの符号化音声信号を音声合成部21〜2nと加算器30と音声分析器61〜6nとからなる手段により加算して出力端子へ送出する符号化音声信号加算手段と、(B)前記符号化音声信号から算出したスペクトル包絡のレベルを相互比較して1つが他のいずれよりもあらかじめ定めたレベル差以上に高いとき前記1つに対応する入力端子を示す信号を出力するスペクトル包絡算出器216と包絡比較器94とからなるレベル判定手段と、(C)前記レベル判定手段に応答して、前記スペクトル包絡のレベルが前記1つを示す信号を出力している場合に、前記音声信号加算手段からの出力信号に代えて、前記1つに対応する入力端子からの前記符号化音声信号を選択して出力するパラメータ選択器95とスイッチ71〜7nとからなる選択出力手段とからなる会議通信装置。」(以下、「先願発明」という。)

2.本願発明と先願発明との対比判断
(1)まず、先願発明における、「入力端子」、「出力端子」、「符号化音声信号」、「音声合成部21〜2nと加算器30と音声分析器61〜6nとからなる符号化音声信号加算手段」は、それぞれ、本願発明における、「入力通信路」、「出力通信路」、「符号化信号」、「(A)組み合わせ手段」と一致する。

(2)また、先願発明では、入力端子11に入力された符号化音声信号を音声合成部21〜2n内のLPC係数復号化器212、電力係数復号化器213及び音源情報復号化器214によりそれぞれLPC係数,電力係数及び音源情報に復号した後、一方では、前記LPC係数、電力係数及び音源情報という符号化音声信号のすべての復号信号から直線PCM信号の形の音声信号を完全に復号するとともに、他方では、前記LPC係数及び電力係数という符号化音声信号の一部の復号信号からスペクトル包絡算出器216によりスペクトル包絡を算出して包絡比較器94によりスペクトル包絡のレベルを相互比較して1つが他のいずれよりもあらかじめ定めたレベル差以上に高いとき前記1つに対応する入力端子を示す信号を出力することで音声信号のレベルを判定するものである。してみると、先願発明における「スペクトル包絡算出器216と包絡比較器94とからなるレベル判定手段」は、符号化音声信号の一部の復号信号から音声信号のレベル、すなわち信号エネルギーを判定するものであるから、本願発明における「(B)符号化信号を完全に復号することをせずに、各入力通信路の信号エネルギーをモニタリングする手段並直列変換回路」に一致する。

(3)さらに、先願発明では、パラメータ選択器95とスイッチ71〜7nとからなる選択出力手段は、レベル判定手段からの音声信号のレベルが他のいずれよりもあらかじめ定めたレベル差以上に高い1つの入力端子を示す信号に応答して、音声信号加算手段からの出力信号を出力端子に選択出力しないで、前記1つの入力端子に対応する符号化音声信号を入力端子から合成(復号)符号化を行うことなく出力端子に選択出力するものである。してみると、先願発明における「パラメータ選択器95とスイッチ71〜7nとからなる選択出力手段」は、1つの入力端子に対応する符号化音声信号を音声信号加算手段を経由することなく出力端子に出力するものであるから、本願発明における「入力通信路のうちの1つの上の信号について組み合わせ手段を迂回させて出力通信路へと送る手段」に一致する。
この点について、審判請求人は、先願発明では、音声信号加算手段である「組み合わせ手段」は常に動作状態であるからこれは迂回されるのではない旨主張しているが、本願発明は、信号エネルギーのモニタリング結果に応じて「入力通信路のうちの1つの上の信号」について「組み合わせ手段を迂回して」「出力通信路へ送られる」という信号経路を規定するのみであって、「迂回された組み合わせ手段」が動作状態にあるか否かについては何ら規定していないから、この主張は本願発明としての特許請求の範囲の請求項1の記載に基づかないものというべきで採用できない。

(4)したがって、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であると認められ、しかも、本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも、また本願の出願のときに、その出願人が上記他の出願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

第3.特許法第29条第2項の要件
1.引用刊行物に記載の発明
(1)原審の拒絶の理由通知に引用された、本願の優先権主張の日前に出願公開された特開平5-37655号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の記載が認められる。
「【請求項1】音声符号化データを伝送する伝送路(5)と、該伝送路に接続した通信端末装置(1)と、複数の伝送路(5)を収容すると共に多地点に存在する通信端末装置(1)の間を単独で又は複数により相互に接続する多地点接続装置(3)とを備え、任意数の話者及び傍聴者間で音声のやりとりを行う音声多地点通信方式において、多地点接続装置(3)は、受信した音声符号化データを復号化(D)、音声ミキシング(M)及び再符号化(C)して送信するミキシングルート(XR)と、受信した音声符号化データをそのままバイパスさせるバイパスルート(BR)とを備え、伝送路ポートの話者分布に応じてミキシングルート(XR)及びバイパスルート(BR)を使い分けることを特徴とする音声多地点通信方式。
【請求項2】多地点接続装置(3)は、ミキシングルート(XR)及びバイパスルート(BR)のいずれか一つを選択して伝送路の出力ポートに接続するセレクタ(41)と、該セレクタの切替制御を行う制御部(45)とを備え、制御部(45)は、伝送路ポートの話者分布に応じてセレクタ(41)の切替制御を行うことを特徴とする請求項1の音声多地点通信方式。
【請求項3】制御部(45)は、伝送路ポートの話者数が1のときは、当該話者の入力ポートから残りの各伝送路の出力ポートに対して夫々バイパスルート(BR)を形成するようにセレクタ(41)の切替制御を行うことを特徴とする請求項2の音声多地点通信方式。」(引用例第2頁第1欄第2〜29行)、
「【請求項9】 多地点接続装置(3)は、復号化した音声データのレベルに基づいて話者の有無を検出する話者検出部(46)を備え、制御部(45)は話者検出部(46)の検出出力に基づいて伝送路ポートの話者分布を認定するように構成されたことを特徴とする請求項2の音声多地点通信方式。」(同第2頁第2欄第4〜9行)、
「【0013】【作用】本発明の音声多地点通信方式においては、ある時点で、多地点通信装置3aの各伝送路ポートには、話者A,Bと、多地点通信装置3bより中継された話者Eと、傍聴者aとが分布している。この場合は、話者AにはミキシングルートXRで音声ミキシングした話者B,Eの音声を符号化して送信し、話者Bには同様にして話者A,Eのミキシング音声を符号化して送信する。また多地点通信装置3bには話者A,Bのミキシング音声を符号化して送信し、傍聴者aには話者A,B,Eのミキシング音声を符号化して送信する。
【0014】一方、この時点で、多地点通信装置3bの各伝送路ポートには、中継された話者F,Gと傍聴者b,cとが分布している。この場合は、傍聴者b,cにはミキシングルートXRで音声ミキシングした話者F,Gの音声を符号化して送信するが、この多地点通信装置3bには新たにミキシングして加えるべき第3の話者がいない。そこで、話者Gの音声符号化データはバイパスルートBRを介してバイパスし、話者Eとして多地点通信装置3aに中継する。また話者Fの音声符号化データはバイパスルートBRを介してバイパスし、話者Hとして他の多地点通信装置3cに中継する。
【0015】かくして、会議の各参加者は従来と同様に他の全話者の声を聞くことができると共に、本発明によれば伝送路ポートの話者分布に応じてミキシングルートXR及びバイパスルートBRを使い分けるので、この例では話者F,Gの音声符合化データは多地点通信装置3b上をそのままで中継されることとなり、音声品質の劣化が著しく軽減される。」(同第4頁第5欄第25〜43行)、
「【0043】図9は他の実施例の音声多地点接続装置のブロック図で、図において4は音声多地点接続装置、46は話者検出部である。多地点接続装置4内には各伝送路ポートの入力音声符号化データVCDを復号化した後、この音声データVDのレベルを常時観測することにより、伝送路ポートの話者分布を自動的に判定する話者検出部46を設けた。この場合は、制御部45は話者検出部46の検出出力SPに基づいて伝送路ポートの話者分布を動的に把握できる。従って、通信端末装置1毎に話者検出部20を設けて話者信号を送る負担が軽減され、また多地点接続装置3の制御部45においては話者信号を他の多地点接続装置3に中継する手間が省ける。
【0044】図10は実施例の話者検出部46のブロック図で、図において46は話者検出部、461は比較器(CMP)、462はシフトレジスタ、463は判定回路である。比較器461は音声データVDと所定閾値thとを比較し、VD>thの時は論理1レベルを出力する。」(同第7頁第11欄第16〜33行)。

(2)これらの記載及び図面の第1乃至10図によれば、引用例には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「(A)少なくとも3つの入力伝送路からの音声符号化データVCDを復号化部Dにより音声データVDに復号化してから音声ミキシング部Mにより加算し加算した音声データVDを再符号化部Cにより再符号化して音声符号化データVCDとして出力伝送路へ送出するミキシングルート部XRと、(B)前記音声データVDのレベルを観測することにより各入力伝送路の話者分布を判定する話者検出部46と、(C)前記話者検出部46に応答して、前記音声データVDのレベルが所定閾値thと比較し、VD>thの値を与える場合に、当該話者の入力伝送路の上の信号について前記ミキシングルート部XRを経由することなくバイパスルート部BRを経由して前記出力伝送路へと送るセレクタ41と制御部45とからなる手段とからなる音声多地点通信方式。」(以下、「引用発明」という。)

2.本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)まず、引用発明における「入力伝送路」、「出力伝送路」、「音声符号化データVCD」、「復号化部Dと音声ミキシング部Mと再符号化部Cとからなるミキシングルート部XR」、「音声多地点通信方式」は、それぞれ、本願発明における、「入力通信路」、「出力通信路」、「符号化信号」、「(A)組み合わせ手段」、「会議通信装置」に相当する。
また、引用発明における「音声データVDのレベルを観測することにより各入力伝送路の話者分布を判定する話者検出部46」は、各入力伝送路の話者数を判定するために、入力伝送路からの音声符号化データVCDを復号化した音声データVDのエネルギーのレベルを観測するものであるから、本願発明における「(B)前記符号化信号を完全に復号することをせずに、各入力通信路の信号エネルギーをモニタリングする手段」と対比して、「前記符号化信号に基づいて、各入力通信路の信号エネルギーをモニタリングする手段」において一致する。
さらに、引用発明における「(C)話者検出部46に応答して、音声データVDのレベルが所定閾値thと比較し、VD>thの値を与える場合に、当該話者の入力伝送路の上の信号についてミキシングルート部XRを経由することなくバイパスルート部BRを経由して出力伝送路へと送るセレクタ41と制御部45とからなる手段」は、音声データVDのレベルを観測することにより入力伝送路からの話者数が1のときに、当該話者の入力伝送路からの符号化信号についてミキシングルートXRを経由することなくバイパスルートBRを経由して出力伝送路へと送るようにセレクタ41の切替制御を行うものであるから、本願発明における「モニタリングする手段(B)に応答して、信号エネルギーのモニタリングが第1の値を与える場合に、入力通信路のうちの1つの上の信号について組み合わせ手段(A)を迂回させて出力通信路へと送る手段」と一致する。
そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ならびに相違するものと認められる。

(2)一致点
「(A)少なくとも3つの入力通信路からの符号化信号を組み合わせて出力通信路へ送出する組み合わせ手段と、(B)前記符号化信号に基づいて、各入力通信路の信号エネルギーをモニタリングする手段と、(C)前記モニタリングする手段(B)に応答して、前記信号エネルギーのモニタリングが第1の値を与える場合に、前記入力通信路のうちの1つの上の信号について前記組み合わせ手段(A)を迂回させて前記出力通信路へと送る手段とからなることを特徴とする会議通信装置。」

(3)相違点
各入力通信路の信号エネルギーをモニタリングする手段として、本願発明では、入力通信路からの符号化信号を完全に復号することをせずにモニタリングするのに対して、引用発明では、入力通信路からの符号化信号を完全に復号してモニタリングする点。

3.相違点の判断
(1)一般に、会議通信装置の技術分野において、各入力通信路からの音声符号化信号に基づいてその音声エネルギーを算出・モニタして話者数を判定するときに、前記符号化信号を完全に復号することをせずに算出・モニタすることは周知技術(例えば、特開昭56-103566号公報、特開昭60-223369号公報、特開平4-151953号公報)である。

(2)そうすると、引用発明において、入力通信路からの符号化信号を完全に復号してモニタリングすることに代えて、入力通信路からの符号化信号を完全に復号することをせずにモニタリングする前記周知技術を採用して、本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものと認められる。

(3)そして、本願発明における、各入力通信路のうち1つのみに信号エネルギー存在するときに入力通信路からの符号化信号を組み合わせる組み合わせ手段を迂回させることで復号化及び符号化に伴う信号劣化を減少させるという作用効果は、引用発明において既に達成されているものであり、また、本願発明における、入力通信路からの符号化信号を完全に復号することをせずにモニタリングすることで復号化に要する時間及び回路を節減できるという作用効果は、前記周知技術に示されているから、いずれの作用効果も当業者が容易に予測できるものと認められる。

(4)したがって、本願発明は、引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、先願明細書に記載された発明と同一であるもの、あるいは、引用例に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条の2あるいは特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-10-27 
結審通知日 2000-11-07 
審決日 2000-12-15 
出願番号 特願平6-75485
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 161- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 二宮 千久
稲葉 慶和
発明の名称 会議通信装置および会議通信方法  
代理人 三俣 弘文  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ