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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1038896 |
審判番号 | 不服2000-3731 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-02-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-03-16 |
確定日 | 2001-05-25 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第 29502号「検出器付き電動機」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 2月18日出願公開、特開平 6- 46552]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成3年1月30日の出願であって、平成12年4月17日付の手続補正書によって補正された明細書及び図面によれば、その発明は請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、本願発明という。)である。 「固定子が取付けられたアウタハウジング内に、回転子が回転自在に組込まれている検出器付き電動機において、前記回転子にレゾルバロータが接続され、該レゾルバロータに対向して単極レゾルバ及び多極レゾルバが磁束を通しにくいステンレス鋼からなるレゾルバホルダに支持されると共に、前記単極レゾルバ及び多極レゾルバがケイ素鋼板からなり、前記単極レゾルバ及び前記多極レゾルバ間がケイ素鋼板からなる遮蔽部材によりほぼ隔離されていることを特徴とする検出器付き電動機。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平2-264306号公報(以下、引用例1という。)には、「モータ・ドライブ・システム」(発明の名称)が記載され、図面と共に以下の記載がある。 「図で、1はアウタロータ形のダイレクト・ドライブ・モータ、2、3はモータの回転を検出する磁気レゾルバである。・・・ロータ12で、121は円筒状のロータフランジ、122はロータフランジ121の内周面に固定されていてロータの磁気回路を構成するロータコア、121と124はロータフランジ121の両端が固定された上部フランジと支持フランジ、125は軸受13を一端側から挟み込むクランプである。 磁気レゾルバ2は、ステータ11とロータ12にそれぞれ一体に固定されたステータ部21とロータ部22からなる。ステータ部21において、211は非磁性リング、212は磁性材料を積層したコア、213は絶縁材料214を介してコア212に巻かれたコイルである。非磁性リング211とコア212は接着剤で互いに固定されている。 ロータ部22において、221は非磁性リング、222は磁性材料を積層したコアで、これらもステータ部と同様に接着剤で固定されている。 磁気レゾルバ3は、ステータ21とロータ部22にそれぞれ一体に固定されたステータ部31とロータ部32からなる。 ステータ部31とロータ部32は、設けられたコアは1個ずつであるが、磁気レゾルバ2のステータ部とロータ部と同様な構成になっている。ただ、ステータ部とロータ部に設けられた歯数は磁気レゾルバ2と異なる。 磁気レゾルバ2と3は、ロータ部、ステータ部とともコア先と非磁性リングは同心円上になるように加工されている。 磁気レゾルバ2はモータ1が1/n回転する毎に検出信号の位相が0°から360°まで変化するnXレゾルバ(nは整数)で、磁気レゾルバ3はモータ1が1回転する毎に検出信号の位相が0°から360°まで変化する1Xレゾルバである。」(3頁左上欄13行〜右下欄8行) すなわち、引用例1には、回転子が回転自在に組込まれている検出器付き電動機において、電動機の回転子にレゾルバロータが接続され、該レゾルバロータに対向して1Xレゾルバ及びnXレゾルバが非磁性体リングに支持されると共に、前記1Xレゾルバ及びnXレゾルバが磁性材料からなる検出器付き電動機、が開示されていると認められる。 また、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-89043号公報(以下、引用例2という。)には、「レゾルバ固定子固定方法」(発明の名称)が記載され、図面と共に以下の記載がある。 「レゾルバの固定子側は、フレーム2のシャフト10の端末側内周面に、まず第1固定子3を挿入して段差に当接して固定し、そして第2固定子4の位置決め及び第1固定子3と第2固定子4の相互の磁力を遮蔽するための断面がT字形のシールド板5を挿入し固定し、それから第2固定子4を挿入固着して、フレーム2をボルト18により電動機固定部に螺合装着させる。」(2頁左上欄7行〜14行) すなわち、引用例2には、2つのレゾルバ間の磁力を遮蔽するためにシールド板を設けることが開示されていると認められる。 3.対比・判断 (1)対比 本願発明と引用例1に記載されたものとを比較すると、引用例1の1Xレゾルバ、nXレゾルバ、及び、非磁性体リングは、本願発明の、単極レゾルバ、多極レゾルバ、及び、レゾルバホルダにそれぞれ相当するから、本願発明と引用例1とは、回転子が回転自在に組込まれている検出器付き電動機において、回転子にレゾルバロータが接続され、該レゾルバロータに対向して単極レゾルバ及び多極レゾルバが非磁性体からなるレゾルバホルダに支持されている検出器付き電動機である点で一致し、以下の(イ)〜(ニ)の点で相違が認められる。 (イ)本願発明は、電動機のアウタハウジング内に固定子が取り付けられているのに対し、引用例1は、アウタロータ形であって、アウタハウジング内に固定子を取り付けたものではない点。 (ロ)レゾルバホルダが、本願発明ではステンレス鋼であるのに対し、引用例1では非磁性体材料としか記載されていない点。 (ハ)単極レゾルバ及び多極レゾルバが、本願発明では、ケイ素鋼板であるのに対し、引用例1では、磁性材料としか記載されていない点。 (ニ)本願発明では、単極レゾルバ及び多極レゾルバ間がケイ素鋼板からなる遮蔽部材によりほぼ隔離されているのに対し、引用例1では、この構成を備えていない点。 (2)判断 上記相違点(イ)〜(ニ)について検討する。 (イ)電動機において、電動機のアウタハウジング内に固定子が取り付けられているインナロータ形は周知であり、インナロータ形、アウタロータ形のどちらかを採用するかは、適宜選択する設計的事項にすぎない。 したがって、引用例1のアウタロータ形を、インナロー形とし、本願発明のようにアウタハウジング内に固定子が取り付けられているようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 (ロ)、(ハ)電動機を構成する部材の材質に何を用いるかは、強度や温度特性を考慮して、適宜決定する設計的事項にすぎない。 そして、電動機において、非磁性材料にステンレス鋼を用いること、及び、磁性材料にケイ素鋼を用いることは周知であり、非磁性材料であるレゾルバホルダの材質としてステンレス鋼を選択し、磁性材料である単極レゾルバ及び多極レゾルバの材質としてケイ素鋼板を選択することを阻害する特段な事情はないのであるから、本願発明のように、レゾルバホルダをステンレス鋼とし、単極レゾルバ及び多極レゾルバをケイ素鋼板とするようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 (ニ)本願発明において、単極レゾルバ及び多極レゾルバ間がケイ素鋼板からなる遮蔽部材によりほぼ隔離する目的は、「単極レゾルバ及び多極レゾルバ間を遮蔽部材でほぼ隔離したので、相互の磁束が干渉せず」(本願明細書段落【0049】)との記載から明らかなように、2つのレゾルバ間の磁力を遮蔽するためと認められるところ、同様に、2つのレゾルバ間の磁力を遮蔽するためにシールド板を設けることは引用例2に開示されており、磁力を遮蔽するためにシールド板の材質としてケイ素鋼板を用いることは周知であるから、引用例1において、本願発明のように、単極レゾルバ及び多極レゾルバ間がケイ素鋼板からなる遮蔽部材によりほぼ隔離するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められる。 そして、本願発明が奏する「回転子にレゾルバロータが接続され、該レゾルバロータに対向して単極レゾルバ及び多極レゾルバが磁束を通しにくいステンレス鋼からなるレゾルバホルダに支持されると共に、単極レゾルバ及び多極レゾルバがケイ素鋼板からなり、単極レゾルバ及び多極レゾルバ間がケイ素鋼板からなる遮蔽部材によりほぼ隔離されているので、単極レゾルバ系の信号がディジタル変換されたディジタル位置信号の値と、多極レゾルバ系の信号がディジタル変換されたディジタル位置信号の値とから、電動機の回転子の絶対位置を検出する機能を持たせることができ、従来のようにリミットスイッチにより基準位置(原点)を確認する復帰動作は不要となり、回転子の回転角度位置の検出操作がモータを回転させることなく自動的に行われる。」という明細書記載の作用効果は、引用例1、2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 なお、請求人は審判請求書において、「『単極レゾルバ及び多極レゾルバをケイ素鋼板で構成し、レゾルバホルダをステンレス鋼で構成することによって、モータの温度上昇に伴う単極レゾルバ及び多極レゾルバに生じる熱変形量とそれらを支持するレゾルバホルダに生じる熱変形量との差が小さくなるので、両者の間における歪みの発生を防止することができる。その結果、温度上昇に伴う位置検出の精度の低下を未然に防止することができる。』という作用、効果を奏します。」、及び、「『温度上昇に伴う位置検出の精度の低下を未然に防止する』という効果を得るために、『単極レゾルバ及び多極レゾルバをケイ素鋼板で構成し、レゾルバホルダをステンレス鋼で構成する』という構成を採用」した旨主張している。 しかしながら、一般的に、電動機は温度上昇を伴うものであり、温度上昇に対して、位置検出器の精度が低下しないように位置検出器の材質を選択することは、当業者が当然に考慮することであるから、レゾルバとレゾルバホルダの熱変形量の差が小さいものを採用することは当業者にとって通常行われる範囲内のものであり、本願発明のように、単極レゾルバ及び多極レゾルバをケイ素鋼板で構成し、レゾルバホルダをステンレス鋼で構成するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことと認められ、請求人の上記主張は採用できない。 よって、本願発明は、引用例1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-14 |
結審通知日 | 2001-03-21 |
審決日 | 2001-04-04 |
出願番号 | 特願平3-29502 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山下 喜代治 |
特許庁審判長 |
三友 英二 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 川端 修 |
発明の名称 | 検出器付き電動機 |
代理人 | 渡部 敏彦 |