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審決分類 審判 補正却下不服 判示事項別分類コード:11  H04N
管理番号 1038898
審判番号 補正2000-50137  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-12-17 
種別 補正却下不服の審決 
審判請求日 2000-12-21 
確定日 2001-05-23 
事件の表示 平成 4年特許願第142343号「テレビジョン受像機」において、平成12年10月16日付けでした手続補正に対してされた補正の却下の決定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成4年6月3日に出願され、平成12年10月16日付けで手続補正書が提出された。

これに対し、原審は、
「補正後の特許請求の範囲に記載された「前記テレビジョン受像機に入力される標準の映像信号に対応する色信号の遅延時間を前記n個の遅延素子のn/2個分に近い遅延素子の数に設定し、前記切換制御手段により遅延時間を標準の映像信号に対して略-n/2個分の時間から略+n/2個分の時間に渡って調整可能にしたこと」における標準の映像信号に限定した点および遅延素子の数をn/2個分に近い遅延素子の数にした点、さらに遅延時間を略-n/2個分の時間から略+n/2個分の時間にした点は、いずれも、願書に最初に添付された明細書(例えば、【0011】の「これは、7個に限らず、1個から複数個のいくらでも良いが、多ければ多い程時間の設定点が多くなり、遅延素子5の遅延時間Tが小さければ微妙な設定が可能となる。今回は約50nsecに設定されている。通常のねらいは、n個の遅延素子のn/2個分の遅延時間に設定することが望ましく、±n/2個分の時間が可変できる範囲となる。」という記載)又は図面に記載されておらず、かつ同明細書又は図面に記載からみて自明のこととも認められないので、この補正は明細書の要旨を変更するものと認める。したがって、この補正は特許法第53条第1項の規定により上記の結論のとおり決定する。」
と決定した。

以下、(1)標準の映像信号に限定した点、(2)遅延素子の数をn/2個分に近い遅延素子の数にした点、(3)遅延時間を略-n/2個分の時間から略+n/2個分の時間にした点、について、それぞれ審理する。

(1)標準の映像信号に限定した点
請求人は、
「まず、「映像信号に対応する色信号の遅延時間を前記n個の遅延素子のn/2個分に近い遅延素子の数に設定」を「標準の映像信号に対応する色信号の遅延時間を前記n個の遅延素子のn/2個分に近い遅延素子の数に設定」の補正事項は、出願当初の明細書の段落【0011】の第5行目「通常のねらいは、n個の遅延素子のn/2個分の遅延時間に設定」の記載及び同書の段落【0002】の第1行目〜第5行目「近年、テレビジョン受像機には衛星放送受信チューナが内蔵されたり外部入力端字が数多く付き、VTRやレーザーディスク等の外部機器と接続して種々なソフトが楽しめるようになっている。このような状況の中で、テレビジョン受像機に内蔵のテレビチューナで受信した信号の帯域特性と、衛星放送信号の帯域特性やVTR等から入力される映像信号の帯域特性は、異なっているため」の記載において、「通常のねらい」における「映像信号に対応する色信号の遅延時間」が「テレビジョン受像機に内蔵のテレビチューナで受信した信号」に対する「映像信号に対応する色信号の遅延時間」であることは、明確であり、「テレビジョン受像機に内蔵のテレビチューナで受信した信号」が標準テレビジョン信号であることは、自明であると思料いたします。
その理由は、通常、テレビジョン受像機は、その国の標準テレビジョン放送の信号が受信できるようにつくられており、そのため、テレビジョン受像機に内蔵のテレビチューナは、標準映像信号を受信するものであり、日本国や米国においては、NTSC方式が標準方式となっており、その他、欧州等の国々では、PAL方式やSECAM方式が標準方式となっていることは、周知の事実であります。従って、通常、「テレビジョン受像機に内蔵のテレビチューナが、標準映像信号を受信するものである」ことは自明でありますので、「通常のねらい」として、「標準映像信号」にすることは自明のことと思料いたします。」
と主張している。
そこで、以下、検討する。
請求人は、「「通常のねらい」における「映像信号に対応する色信号の遅延時間」が「テレビジョン受像機に内蔵のテレビチューナで受信した信号」に対する「映像信号に対応する色信号の遅延時間」であることは、明確であり、」と主張しているが、「通常のねらい」という内容のはっきりしない不明確な記載を根拠にして、請求人が主張することが明確であるということはできない。
請求人(出願人)は、上記手続補正書と同時に提出した意見書において、「前記n個の遅延素子の約半数のn/2個近辺に当該テレビジョン受像機で受信する標準テレビジョン放送(NHK等)の映像信号に対する輝度信号と色信号の時間ずれ調整における遅延時間を設定したことにより、標準となる信号に対して、色信号の時間を進めたり、遅らせたりすることができるため、さまざまな信号源からの映像信号に対して最適な輝度信号と色信号の時間合わせが可能であるという、格別の作用効果を奏することができるものであります」と主張している。
この意見書の記載からみて、補正後の特許請求の範囲に記載された「標準の映像信号」は「標準テレビジョン放送(NHK等)の映像信号」を意味すると理解できる。
一方、出願当初の明細書の【0003】には【発明が解決しようとする課題】として、「・・・それぞれの信号源(テレビチューナ受信時、衛星放送チューナ受信時、外部入力端子からの信号受信時)・・・」と記載されており、また、【0008】には【課題を解決するための手段】として、「・・・テレビ、衛星放送、外部入力(入力端子数に相当する外部入力)・・・」と記載されている。
これらの記載は、出願当初の明細書では、テレビ、衛星放送、外部入力を同等に扱っていることを示唆している。
したがって、出願当初の明細書又は図面の記載からみて、「テレビ、衛星放送、外部入力」のうち、「テレビ(標準テレビジョン放送(NHK等))」、すなわち「標準の映像信号」だけを特別に扱った「標準の映像信号に対応する・・・設定し、・・・標準の映像信号に対して・・・調整可能にしたこと」が自明であるとはいえない。
したがって、補正後の特許請求の範囲に記載された「標準の映像信号に対応する・・・設定し、・・・標準の映像信号に対して・・・調整可能にしたこと」は出願当初の明細書又は図面の記載からみて自明であるとはいえない。

(2)遅延素子の数をn/2個分に近い遅延素子の数にした点
請求人は、
「遅延時間を前記n個の遅延素子のn/2個分に近い遅延素子の数に設定」した点に関しましては、出願当初の明細書の段落【0011】の第5行目「通常のねらいは、n個の遅延素子のn/2個分の遅延時間に設定」の記載に基づくものであります。」
と主張している。
そこで、以下、検討する。
請求人が指摘する出願当初の明細書の段落【0011】の第5行目の「通常のねらいは、n個の遅延素子のn/2個分の遅延時間に設定」には、「近い」とは記載されていない。そして、この記載に基づく構成に、「近い」というあいまいな記載を加えて、あいまいな構成に変えることが出願当初の明細書又は図面の記載からみて自明であるとはいえない。

(3)遅延時間を略-n/2個分の時間から略+n/2個分の時間にした点 請求人は、
「遅延時間を略-n/2個分の時間から略+n/2個分の時間に設定」した点に関しましては、出願当初の明細書の段落【0011】の第5行目〜第6行目の「通常のねらいは、n個の遅延素子のn/2個分の遅延時間に設定」の記載及び「±n/2個分の時間が可変できる」の記載に基づくものであります。」
と主張している。
そこで、以下、検討する。
請求人が指摘する出願当初の明細書の段落【0011】の第5行目〜第6行目の「通常のねらいは、n個の遅延素子のn/2個分の遅延時間に設定」の記載及び「±n/2個分の時間が可変できる」には、「略」とは記載されていない。そして、これらの記載に基づく構成に、「略」というあいまい記載を加えて、あいまいな構成に変えることが出願当初の明細書又は図面の記載からみて自明であるとはいえない。

したがって、平成12年10月16日付けでした手続補正書は、明細書の要旨を変更するものであるから、特許法第53条第1項の規定により却下すべきものとした原審は妥当である。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-03-08 
結審通知日 2001-03-21 
審決日 2001-04-03 
出願番号 特願平4-142343
審決分類 P 1 7・ 11- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松永 隆志  
特許庁審判長 井上 雅夫
特許庁審判官 橋本 恵一
石川 伸一
発明の名称 テレビジョン受像機  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  

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