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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01J
管理番号 1038935
審判番号 不服2000-14291  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-07 
確定日 2001-06-19 
事件の表示 平成 7年特許願第248553号「赤外光源」拒絶査定に対する審判事件〔平成 9年 3月11日出願公開、特開平 9- 68463、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年8月31日の出願であって、本願の請求項1に係る発明は、平成12年5月22日及び平成12年9月21日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面からみて、特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 赤外光を利用した分析装置用の赤外光源において、金属導体から成る発熱抵抗体と、該発熱抵抗体を挟み込んで形成される平板形状の窒化珪素焼結体とから成ることを特徴とする赤外光源。」
2 引用発明
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された刊行物は次の引用例1〜3であり、以下に摘記する事項が記載されている。
2-1 引用例1:特開平07-135067号公報
(窒化珪素質セラミックヒータについて)
「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、昇温特性が良好で、耐久性に優れた窒化珪素質セラミックヒータに関するものである。」
「【0003】窒化珪素質セラミックスは、耐熱性が良好で高温強度が高く、熱容量が小さく、また電気絶縁性が良好であることから、ヒータ用として非常に優れた材料である。そのため、上記窒化珪素質セラミックヒータは、昇温立ち上がり時間の速さ、耐熱衝撃性、高温安定性に優れており、自動車エンジン用グロープラグや石油ファンヒータの気化器用ヒータ、あるいはその他の一般家庭用、電子部品用、産業機器用等さまざまな分野に使用されている。」
(窒化珪素質セラミックヒータの形状及び製法について)
「【0010】
【実施例】
以下本発明実施例を説明する。
【0011】 図1(a)に示すヒータ1は、窒化珪素質セラミックスからなる基体2の内部に、BNを含む導電ペーストにより発熱体3、リード部4、および電極取出部5を一体的に形成し、該電極取出部5に接続する電極6およびリード線7を備えたものである。そして、リード線7より電圧を印加すれば、上記発熱体4が発熱し、ヒータとして作用することになる。
【0012】 このヒータ1の製造方法は、図1(b)に示すように、窒化珪素質未焼成成形体2a上に導電ペーストをスクリーン印刷して発熱体3、リード部4、および電極取出部5を一体的に形成する。次に、これらのパターンを覆うように他の成形体2bを積層してホットプレス法等により焼成した後、研削加工を行い、表面に露出した電極取出部5にメタライズを施して電極6を接合すれば良い。」
2-2 引用例2:特開昭59-086181号公報
(セラミックヒータの製法について)
「イ.断面が円形コイル状に成形された発熱線をU字状に屈曲させたその両端部にリード線を接続する工程と、
ロ.リード線を接続し、U字状に屈曲した前記発熱線コイルをセラミック粉体中に埋設し、
断面がほぼ長方形状の仮成形体とする工程と、
ハ.前記仮成形体を加熱圧縮して長辺を短縮し、内部に埋設されている円形コイル状発熱線のコイル形状を楕円状に変形させるとともに、断面が擬似円形状のセラミック焼結成形体とする工程と、
ニ.前記セラミック焼結成形体の外周を研削加工して、断面円形の発熱成形体とする工程と、を包有していることを特徴とするセラミックヒーターの製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
2-3 引用例3:特開平05-242957号公報
(窒化珪素質焼結体ヒーターについて)
「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はディーゼルエンジンの始動促進用グロープラグや、各種燃焼機器の点火用ヒーター及び加熱機器の加熱用ヒーターに用いられる高温用のセラミック発熱体に関するものである。」
「【0005】 なかでも、耐熱衝撃性及び高温強度が他のセラミックスよりも著しく優れた窒化珪素質焼結体をヒーターの基体として使用し、一般にタングステン(W)やモリブデン(Mo)等の高融点金属もしくはこれらの化合物より成る線材を発熱抵抗体として基体中に埋設して焼成一体化してなるものが、1000℃前後の高温用ヒータとして内燃機関のグロープラグ等に広く利用されている。
(窒化珪素質焼結体ヒーターの製法について)
「【0023】 ・・・プレス成形法により断面が半円形の棒状の窒化珪素質成形体18、19を作製する。
【0024】 次に、該成形体18の平面上に、発熱部の長さを約8mmにし、線径と線間隔を種々設定した略U字形状のコイル状タングステン線と該コイル状タングステン線に接続したリード部7、12を構成するタングステン線とから成る発熱抵抗体2を載置し、該発熱抵抗体2を挟むように前記同形状の別の窒化珪素質成形体19を重ねて加圧焼成した。」
3 対比・判断
本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用例1に記載された発明(以下、「引用発明」という。)とを対比すると、いずれも、「金属導体から成る発熱抵抗体と、該発熱抵抗体を挟み込んで形成される平板形状の窒化珪素焼結体」を用いる点で一致しているものの、該窒化珪素焼結体を、本願発明が、赤外光を利用した分析装置用の赤外光源に利用しているのに対して、引用発明は、ヒータとして利用している点で相違する。
そこで該相違点について検討する。
本願発明は、従来、赤外分光光度計の赤外光源として、カンタル線をコイル状に形成した熱放射体等が用いられているが、コイル状の熱放射体では、光の強度分布に粗密が生じエネルギー密度が低くなるため、結果的に光のパワーが小さく、また、焦点位置から若干ずれた位置にアパーチャーを置き発光むらの影響を軽減する必要があるため光の利用効率が悪く、更に、長期間の使用によりコイル形状に変形が生じ、光束密度が低くなる上に寿命も短いという欠点があったところ、これを解決するために成されたものであり、その目的は発光パワーが大きく且つその強度分布のむらが小さく、更に長寿命である赤外光源を提供することにある(【0002】〜【0004】)。
そして、その作用効果は、発光部分が平面状であるため、光の強度分布にむらがなく大きな発光パワーが得られ、また、高温(約1350℃)迄安定し変形も生じないため、輝度を上げることができ且つ長寿命であり、更に、窒化珪素自体が黒色であるため、放射効率を上げるために従来行なっていた黒化処理も不要となる(【0018】【本願発明の効果】)というものである。
これに対して、引用例1には、窒化珪素焼結体を赤外光源に利用する点について記載がなく、また、引用例2、3に記載のものもいずれもヒータに関する発明であって、赤外光源としての利用を開示するものではない。
このように、各引用例には、窒化珪素焼結体をヒータとして利用することを開示するのみで、分析装置用の赤外光源についての課題ないし課題解決手段について記載はなく、分析装置用の赤外光源に利用することを開示ないし示唆する記載はない。そして、窒化珪素焼結体を分析装置用の赤外光源として用いる本願発明は、その構成により上記作用効果を奏することが認められる。
したがって、引用例1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。
原査定は、抵抗体発熱器の用途としては、その赤外線放射能からヒーター並びに各種赤外光源のいずれも逐一例示するまでもなく周知であり、赤外線源として相互に転用可能であることは自明であるから、本願発明の用途限定は格別なことではないとするが、抵抗体発熱器は赤外線を放射することから、ヒーターとしても赤外線源としても使用可能であるとはいえるが、熱源(ヒーター)として使用されているものが光源(赤外線源)としても適しているとは直ちにいうことはできない
例えば、分光分析分野の一般的な技術文献である、工藤恵栄『分光の基礎と方法』(昭和60年(株)オーム社発行41〜44頁)を参照すると、分析装置用の光源として固体光源が記載され、光源として利用しうる高融点化合物として窒化物等のセラミックスが記載されている(窒化珪素焼結体については言及するところはない。)ものの、光源として利用しうる高融点化合物のうち、光源としての条件を満たして利用されているものは限られていることが記載され、「ケラマックスは、発熱体としてはよいが発光体としてはよくない。」(42頁表1・14*5)との記載もあり、ヒーター用に好適であれば、必ず赤外光源用に好適なものとして転用可能であるとは認められない。
そして、本願発明は、分析装置用の赤外光源としての作用効果も認められるものであるから、当業者にとっても容易ではないといわざるを得ない。
4 むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-06-05 
出願番号 特願平7-248553
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01J)
最終処分 成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 関根 洋之
後藤 千恵子
発明の名称 赤外光源  
代理人 西岡 義明  

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