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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24J
管理番号 1039153
審判番号 審判1999-12470  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-29 
確定日 2001-05-31 
事件の表示 平成 7年特許願第240917号「地中熱交換器」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 3月 4日出願公開、特開平 9- 60983]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明の要旨
本願は、平成7年8月25日の出願であって、その発明は、平成11年8月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 熱媒(M)を下方に送り込んだうえ、反転させて、地熱を受ける外管(1a)との間を上方に導くよう、外管(1a)内に内管(1b)を同心に挿入した熱交換用同心二重管(1)の複数本をそれぞれ少なくとも5m間隔に地中に鉛直に埋設してなる地中熱交換器。」
2.引用例
これに対して、当審における、平成12年10月19日付けで通知した拒絶の理由に引用した実願昭61-89174号(実開昭62-201352号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「1は本案の地中熱交換管である。2は外管で、下端には半球状の尖先部2Aが形成されている。2Bは上記外管の尖先部2Aに連設された土壌切削用の刃部で、・・・(中略)・・・4は上記外管2の軸心部に、当該外管2の内周面との間に側方空間5を設けて挿入配設された内管で、その下端4Aは上記仕切板3の上記上縁3Aとは所定間隔をもった下方空間6が形成できる位置に達するよう構成されている。」(その明細書の第5頁の第13行から第7頁の第2行目に記載)、「第13図は本願のもののヒートポンプに組み合わせたシステム図で、図中、8は循環ポンプ、9は蒸発器、10は膨張弁、11は凝縮器、12は圧縮機、13は土壌をそれぞれ示す。」(同第8頁の第2行から第6行目に記載)及び「本方式の地中熱交換管は管の先端に刃部を取付けた管を回転させ、圧挿入により土中を切削しながら貫入されるため、外管への損耗を与えず充分な深さまで埋設することができる。・・・(中略)・・・外管先端には半球状の尖先部内には仕切板が張設されているから、二次冷媒はこの仕切板により容易に分流されるため、流速の減衰を抑制することができる。」(同第8頁の第10行から第9頁の第8行目に記載)と記載されている。
そして、上記記載及び図面の記載からみて、引用例に記載の地中熱交換管1は、外管2とこの外管2の軸心部に、当該外管2の内周面との間に側方空間5を設けて挿入配設された内管4とから構成されているから、同心二重管の構造となっているものである。
また、第2図には、内管4の下端から反転して外管2と内管4との間の上方に向かっているような矢印が認められるが、同様な二重管構造の地中熱交換器において、例えば、特開昭57-454号公報、実公昭16-10970号公報記載にもみられるように、熱媒が内管4内を下方に流れ、反転上昇し地熱を受ける外管と内管との間を上方に導かれるように構成するようなことは従来周知の技術事項ともいうべきものである。
これらのことを考えあわせると、引用例には、その内部を流れる二次冷媒が、内管4の下端4Aから下方に流れ、下方空間において反転上昇し、地熱を受ける外管2と内管4との間を上方に導かれることが示されているものと解される。
さらに、第13図には、引用例に記載の地中熱交換管をヒートポンプに組み合わせたシステム図が示されているが、地中熱交換管1が3本認められ、その3本の地中熱交換管1が土壌にほぼ鉛直に間隔をあけて埋設されている様子が窺える。
以上のことから、これを本願発明に照らし表現すると、引用例には、
「二次冷媒を下方に送り込んだうえ、反転させて、地熱を受ける外管2との間を上方に導くよう、外管2内に内管4を同心に挿入した地中熱交換管1の3本をそれぞれ間隔をあけて地中に鉛直に埋設している地中熱交換管。」
について記載されている。
3.対比
そこで、本願発明と引用例に記載のものとを比較すると、引用例に記載の「二次冷媒」、「外管2」、「内管4」及び「地中熱交換管1」は、その記載内容からみて、本願発明の「熱媒(M)」、「外管(1a)」、「内管(1b)」及び「熱交換用同心二重管(1)」に相当しており、また、引用例に記載の3本の地中熱交換管1も複数本の地中熱交換管であることには変わりがないから、両者は、
「熱媒(M)を下方に送り込んだうえ、反転させて、地熱を受ける外管(1a)との間を上方に導くよう、外管(1a)内に内管(1b)を同心に挿入した熱交換用同心二重管(1)の複数本を地中に鉛直に埋設してなる地中熱交換器。」
である点で一致し、熱交換用同心二重管(1)を地中に鉛直に埋設することについて、本願発明が「それぞれ少なくとも5m間隔」に地中に鉛直に埋設しているのに対し、引用例に記載のものは、「それぞれ間隔をあけて」地中に鉛直に埋設しているものである点で相違する。
4.当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用例に記載の熱交換用同心二重管(1)(地中熱交換管1)は、複数本(3本)をそれぞれ間隔をあけて地中に鉛直に埋設しているものが示されているだけで、その間隔が具体的に何メートル間隔かは記載されていない。
しかしながら、引用例記載の地中熱交換器を現実に実施する際、効率よく地熱を利用できるよう、熱交換用同心二重管(1)(地中熱交換管1)の配置間隔をどの程度にするかは、当業者が当然に考慮すべき設計的事項であって、特にその間隔を5m間隔とする程度のことは、当業者が場合に応じて容易になし得る事項に過ぎないものである。
以上のとおり、上記相違点は格別なことではなく、本願発明は、上記引用例に記載されたものから当業者が容易に推考できたものであり、本願発明が奏する効果も、上記引用例に記載されたものから予測される範囲内のものである。
5.むすび
したがって、本願発明、即ち、本願請求項1に係る発明は、上記引用例記載のものから当業者が容易に発明をすることができたものであり、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-03-15 
結審通知日 2001-03-27 
審決日 2001-04-09 
出願番号 特願平7-240917
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 敏史  
特許庁審判長 大久保 好二
特許庁審判官 櫻井 康平
岡本 昌直
発明の名称 地中熱交換器  
代理人 古田 剛啓  

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