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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05B
管理番号 1039154
審判番号 審判1999-9125  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-06-09 
確定日 2001-05-25 
事件の表示 平成2年特許願第81645号「放電灯点灯装置」拒絶査定に対する審判事件[平成3年12月13日出願公開、特開平3-283297]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 〔1〕手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年3月29日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年11月30日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。)
「直流電源から供給される直流出力を高周波出力に変換させ、この高周波出力により放電ランプを点灯させ出力周波数を変化可能な高周波発生装置と;
放電ランプが点灯状態になったことを検出する点灯検出回路と;
放電ランプの点灯・非点灯にかかわらず、所定の時間内に時間に対して出力周波数を変化させるように構成されたソフトスタート回路と;
ソフトスタート期間において前記点灯検出回路が放電ランプの点灯状態を検出することによりソフトスタートを解除し、高周波発生装置の出力周波数を通常点灯時の出力周波数に切換えるソフトスタート解除回路と;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。」

〔2〕引用例
これに対して、前置審査の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された特開昭63-237398号公報(以下「引用例1」という。)には、放電灯点灯装置に関し、第1〜17図とともに以下の事項が記載されている。
(1)「第1図に示すように、高周波で繰り返し導通制御される主スイッチ素子を有し、放電灯DLを高周波点灯させる点灯回路1と、放電灯DLに印加される電圧を徐々に増加させていくように、主スイッチ素子の繰り返し導通期間を制御する制御回路2とを有する放電灯点灯装置において、放電灯DLが点灯したことを検出する点灯検出回路3と、点灯検出回路3からの点灯検出信号により、主スイッチ素子の繰り返し導通期間を固定する導通期間決定回路4とを有して成るものである。」(第2頁右下欄第19行〜第3頁左上欄第9行)

(2)「本実施例にあっては、交流電源ACの電源電圧は、ダイオードブリッジDBにて整流され、コンデンサC0にて平滑され、直流電圧とされる。この直流電圧は、発振トランスOTの1次側とトランジスタTr1との直列回路に印加される。発振トランスOTの2次側には、コンデンサC2を介して放電灯DLが接続され、放電灯DLの非電源側にはコンデンサC3が接続され、放電灯フィラメントの予熱回路が構成されている。トランジスタTr1には、ダイオーD1が逆並列接続されている。また、回路のインダクタンス成分と共振状態を呈するコンデンサC1をトランジスタTr1の両端に並列接続する。このコンデンサC1の接続される位置は、発振トランスOTの1次コイルの両端でも構わない。トランジスタTr1のベースには、制御回路2の発振出力が、抵抗R1とコンデンサC4の並列回路よりなるスピードアップ回路を介して入力されている。
トランジスタTr1がオンされると、発振トランスOTの1次側を介してトランジスタTr1に電流が流れる。トランジスタTr1がオフされると、回路のLC成分に蓄えられたエネルギーのために、発振トランスOTはコンデンサC1と共振し、共振コンデンサ電流が流れ、トランジスタTr1の両端には、共振電圧が生じる。この共振電圧がゼロになると、共振電流はダイオードD1を介して流れ、また、ダイオード電流がゼロになると、トランジスタTr1が前サイクルと同様にオンして、発振を継続して行く。そして、この共振によって発振トランスOTの2次側に生じる電圧を発振トランスOTのリーケージインダクタンスとコンデンサC3を介して放電灯DLに印加して、点灯させる。
制御回路2において、tm1,tm2は、汎用のタイマーIC(NEC製μPD15555)である。このタイマーICは、周知のように、トリガ端子(2番端子)が1/3Vcc以下になると、トリガされて出力端子(3番端子)が“High”レベルとなり、放電端子(7番端子)は高インピーダンスとなる。また、スレショルド端子(6番端子)が2/3Vccになると出力端子(3番端子)が“Low”レベルとなり、放電端子(7番端子)も“Low”レベルとなる。なお、8番端子は電源端子、1番端子はアース端子、4番端子はリセット端子、5番端子は周波数制御端子である。
タイマーICtm1の時定数回路を構成する抵抗R8,R9とコンデンサC7の直列回路には、制御部電源電圧Vccが印加されている。抵抗R8と抵抗R9の接続点は、タイマーICtm1の放電端子(7番端子)に接続されている。抵抗R9とコンデンサC7の接続点は、タイマーICtm1のスレショルド端子(6番端子)及びトリガ端子(2番端子)に接続されている。これによって、タイマーICtm1は、制御信号の周期を決める無安定マルチバイブレータを構成している。
抵抗R6と抵抗R7の直列回路には、制御部電源電圧Vccが印加されている。抵抗R6と抵抗R7との接続点の電圧は、オペアンプOP1の非反転入力端子に入力されている。オペアンプOP1の反転入力端子には、オペアンプOP1の出力電圧が帰還されている。オペアンプOP1の出力電圧は、タイマーICtm1の5番端子に入力されている。
タイマーICtm2の時定数回路を構成する抵抗R10とコンデンサC8の直列回路には、制御部電源電圧Vccが印加されている。抵抗R10とコンデンサC8の接続点は、タイマーICtm2のスレショルド端子(6番端子)及び放電端子(7番端子)に接続されている。タイマーICtm2のトリガ端子(2番端子)は、タイマーICtm1の出力端子(3番端子)に接続されている。タイマーICtm1の出力端子(3番端子)は、インバータI2と、前述のスピードアップ回路を介してトランジスタTr1のベースに印加されている。これによって、タイマーICtm2は、トランジスタTr1のオフ期間を決める単安定マルチバイブレータを構成している。」(第3頁左上欄第20行〜第4頁左上欄第14行)

(3)「スイッチSWがオン状態である場合を考える。この場合には、ANDゲートG1,G3,G5,G7,G9の片側の入力が“Low”レベルであるから、その出力は“Low”レベルとなる。したがって、タイマー(1)〜(8)の出力により、トランジスタTr2〜Tr9が駆動される。第4図において、期間T0においては全てのタイマー(1)〜(8)の出力が“High”レベルであるから、トランジスタTr2〜Tr9は全てオン、したがって、各トランジスタTr2〜Tr9のコレクタに接続されている抵抗が全て、抵抗R7と並列に接続され、オペアンプOP1の非反転入力端子の電圧は、最も低い値に設定される。時間T0の経過後に、タイマー(1)の出力が“Low”レベルとなるので、トランジスタTr2がオフ、したがって、トランジスタTr2のコレクタに接続された抵抗が抵抗R7から切り離された状態となり、オペアンプOP1の非反転入力端子電圧がやや上昇する。その後、時間T1が経過する毎にトランジスタTr3〜Tr9が順次オフして行き、非反転入力端子電圧が上昇して行く。全てのトランジスタTr2〜Tr9がオフになるとオペアンプOP1の非反転入力端子電圧は、R7・Vcc/(R6+R7)となる。ここで、オペアンプOP1はインピーダンス変換器として動作しており、非反転入力端子電圧がそのまま出力電圧となり、タイマーICtm1の5番端子に印加される。
タイマーICtm1は、5番端子電圧が上昇するに従い、出力として得られる動作周波数が低くなるものである。タイマーICtm1の動作周波数が低くなると、第3図において、タイマーICtm2の3番端子電圧が“Low”レベルである期間が長くなり、トランジスタTr1のオン区間が長くなる。したがって、トランジスタTr2〜Tr9が全てオフである状態を放電灯DLの定格点灯状態に設定しておけば、第5図に示すように、電源投入後、予熱状態から始動区間(徐々に出力を増加させる区間)を経て、定格点灯状態に至る。」(第4頁右下欄第10行〜第5頁右上欄第6行)

(4)「第12図は本発明の別の実施例の要部回路図である。本実施例は、第2図に示す実施例において、論理ゲートが一部追加されたものである。すなわち、第12図において、ANDゲートG11〜G15、NANDゲートG16、及び、インバータI3が追加されている。第2図に示す実施例においては、スイッチSWがオンの状態(定格点灯状態)で、電源投入されると、始動過程で放電灯が始動した後、定格点灯に至るまで、光出力が段階的に変化していく。このとき、第4図においける区間T1の長さにもよるが、区間T1を、例えば数10msec以上に設定すると、光出力の変化が目視でき、チラツキ感になる場合がある。
第12図の実施例においては、スイッチSWがオンの状態で電源投入されると、インバータI3の出力は“High”レベルとなっている。放電灯が点灯していない間は、コンパレータCP1の出力は“Low”レベルだから、NANDゲートG16の出力は“High”レベルである。その後、放電灯が点灯すると、コンパレータCP1の出力が“High”レベルとなり、NANDゲートG16の出力が“Low”レベル、したがって、トランジスタTr2〜Tr9の全てがオフとなり、始動過程の途中で定格点灯に移行する。それ故、光出力が段階的に変化することなく、第13図に示すように、一気に定格点灯状態に移行するため、前述のようなチラツキ感が発生することを防止することができる。」(第8頁左上欄第13行〜右上欄第19行)

(5)「本発明は上述のように、点灯回路における主スイッチ素子の繰り返し導通期間を除々に増加させて行き、放電灯を始動点灯させる点灯装置において、放電灯が点灯したことを検出して、その時の状態により主スイッチ素子の繰り返し導通期間を決定しているため、回路定数のばらつきや、電源変動、周囲温度の変化に対して、安定に始動・点灯維持を行うことができるという効果がある。」(第8頁右下欄第17行〜第9頁左欄第4行)

同じく、特開昭63-160194号公報(以下「引用例2」という。)には、放電灯点灯装置に関して、第1〜12図とともに以下の事項が記載されている。
(6)「トランジスタTr1の動作周波数を、予熱状態から、始動状態を経て、点灯状態に至るまで、徐々に変化させて、放電灯DL1,DL2に印加される電圧を徐々に上昇させながら始動させるいわゆるソフトスタート制御を行っている。そして、このソフトスタート制御の期間中に放電灯DL1,DL2が点灯したことを検出し、それに基づいて制御回路3の段調光時の動作周波数を決定している。」(第6頁右上欄第8〜16行)

〔3〕対比・判断
本願発明と引用例1に記載されたものを対比すると、引用例1の「直流電圧」、「タイマーICtm1は、5番端子電圧が上昇するに従い、出力として得られる動作周波数が低くなる」、「放電灯DLが点灯したことを検出する点灯検出回路3」は、それぞれ本願発明の「直流電源」、「出力周波数を変化可能」、「放電ランプが点灯状態になったことを検出する点灯検出回路」に相当するものと認められる。
そして、引用例1の「第1図に示すように、高周波で繰り返し導通制御される主スイッチ素子を有し、放電灯DLを高周波点灯させる点灯回路1」は、本願発明の「(直流電源から供給される)直流出力を高周波出力に変換させ、この高周波出力により放電ランプを点灯させ(る)・・・高周波発生装置」に相当するものと認められる。
また、引用例1の「タイマーICtm1は、5番端子電圧が上昇するに従い、出力として得られる動作周波数が低くなるものである。タイマーICtm1の動作周波数が低くなると、第3図において、タイマーICtm2の3番端子電圧が“Low”レベルである期間が長くなり、トランジスタTr1のオン区間が長くなる。したがって、トランジスタTr2〜Tr9が全てオフである状態を放電灯DLの定格点灯状態に設定しておけば、第5図に示すように、電源投入後、予熱状態から始動区間(徐々に出力を増加させる区間)を経て、定格点灯状態に至る。」との一連の動作を実行するための回路が、本願発明の「所定の時間内に対して出力周波数を変化させるように構成されたソフトスタート回路」に相当し、
引用例1の「第12図は本発明の別の実施例の要部回路図である。・・・スイッチSWがオン状態で電源が投入されると、インバータI3の出力は“High”レベルとなっている。放電灯が点灯していない間は、コンパレータCP1の出力は“Low”レベルだから、NANDゲートG16の出力は“High”レベルである。その後、放電灯が点灯すると、コンパレータCP1の出力が“High”レベルとなり、NANDゲートG16の出力が“Low”レベル、したがって、トランジスタTr2〜Tr9の全てがオフとなり、始動過程の途中で定格点灯に移行する。」との一連の動作を実行するための回路が、本願発明の「ソフトスタート期間において前記点灯検出回路が放電ランプの点灯状態を検出することによりソフトスタートを解除し、高周波発生装置の出力周波数を通常点灯時の出力周波数に切換えるソフトスタート解除回路」に相当するものと認められる。

そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明は、「直流電源から供給される直流出力を高周波出力に変換させ、この高周波出力により放電ランプを点灯させ出力周波数を変化可能な高周波発生装置と;
放電ランプが点灯状態になったことを検出する点灯検出回路と;
所定の時間内に時間に対して出力周波数を変化させるように構成されたソフトスタート回路と;
ソフトスタート期間において前記点灯検出回路が放電ランプの点灯状態を検出することによりソフトスタートを解除し、高周波発生装置の出力周波数を通常点灯時の出力周波数に切換えるソフトスタート解除回路と;
を具備した放電灯点灯装置」の点で一致しており、
ソフトスタート回路において、本願発明が「放電ランプの点灯・非点灯にかかわらず」出力周波数を変化させるのに対し、引用例1に記載のものは、そのような態様が明確にされていない点で相違する。

以下、上記相違点について検討する。
引用例1に記載の発明と同一技術分野に属する引用例2に記載の放電灯点灯装置において、「トランジスタTr1の動作周波数を、予熱状態から、始動状態を経て、点灯状態に至るまで、徐々に変化させて、放電灯DL1,DL2に印加される電圧を徐々に上昇させながら始動させるいわゆるソフトスタート制御を行っている」ことは、ソフトスタート回路において、放電ランプの点灯・非点灯にかかわらず、出力周波数を変化させることに相当するものであるから、
引用例1に記載のソフトスタート回路において、「放電ランプの点灯・非点灯にかかわらず」、出力周波数を変化させるように構成する程度のことは、当業者が容易になし得ることと認められる。
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到できたものと認められる。

そして、本願発明の効果をみても、引用例1,2に記載された内容から容易に予測できる程度のものであって、格別のものは認められない。

〔4〕むすび
したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-03-06 
結審通知日 2001-03-16 
審決日 2001-03-27 
出願番号 特願平2-81645
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関 信之  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 藤本 信男
和泉 等
発明の名称 放電灯点灯装置  
代理人 和泉 順一  

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