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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10F |
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管理番号 | 1039159 |
審判番号 | 審判1999-11614 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-02-04 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-07-15 |
確定日 | 2001-06-08 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第178573号「自動演奏ピアノ」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 2月 4日出願公開、特開平 6- 27935]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯、本願発明 本願は、平成4年7月6日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下本願発明という)は、平成9年8月8日付け、平成11年3月29日付け、および平成11年8月16日付けの各手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、次の請求項1に記載されたとおりのものと認めることができる。 「自動演奏ピアノ本体と自動演奏する音楽演奏情報を出力するコントローラとが別体であり、MIDI情報を直接に自動演奏ピアノ本体側の制御回路に取り込んで自動演奏を行う自動演奏ピアノであって、 前記各鍵に対応して設けられた鍵駆動手段と、 演奏状態を変更するペダルを駆動するペダル駆動手段と、 外部からの実時間演奏データである、鍵のオン・オフ、鍵番号及び打鍵強度からなる鍵情報、及びペダルのオン・オフからなるペダル情報を含む、MIDI情報を直接に入力するMIDI情報入力手段と、 該入力したMIDI情報のうち、前記鍵情報の打鍵強度データを修正する操作子と、 該操作子の操作量を表示する表示手段と、 前記操作子の操作に応じて前記鍵情報の打鍵強度データを補正変換することによって、音量調節を行う打鍵強度データ変更手段と、 前記MIDI情報入力手段によって入力したMIDI情報の鍵情報である鍵番号及びこの鍵番号に対応する前記打鍵強度データで変換された打鍵強度データに基づいて、前記鍵駆動手段により鍵を駆動するとともに、前記MIDI情報入力手段のペダルのオン・オフからなるペダル情報に基づいて、前記ペダル駆動手段によりペダルを駆動する駆動信号を出力する駆動信号発生手段と、 を、前記自動演奏ピアノ本体に備えるとともに、 前記コントローラを、前記自動演奏ピアノ本体に内蔵しないことを特徴とする自動演奏ピアノ。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された実願平1-73976号(実開平3-12298号)のマイクロフィルム(以下引用例1という)、特開昭62-299994号公報(以下引用例2という)には、それぞれ次のことが記載されている。 【引用例1】 (a)自動演奏ピアノにおいては、その本体内に、鍵73(鍵盤を構成する各鍵)を駆動するソレノイド83,ペダル機構を駆動するソレノイド(第3図の符号80)、およびコントローラ85が備えられていること(第6頁1行〜第7頁2行、および第2図参照)。 (b)コントローラ85は、メインマイクロコンピュータ91とローカルマイクロコンピュータ93を有していること(第7頁3行〜9行、第3図参照)。 (c)メインマイクロコンピュータ91は、フロッピーディスク101から読み出された演奏情報が供給されると、この情報に従ってソレノイドドライバ105を制御し、これによりソレノイドドライバ105は鍵用のソレノイド83およびペダル用のソレノイド80を駆動し、自動演奏を行うこと(第9頁18行〜第10頁5行、第3図参照)。 (d)ローカルマイクロコンピュータ93は、フロッピーディスク101から読み出した演奏情報をメインマイクロコンピュータ91へ供給するが、さらにMIDI入出力部103(コントローラ85に設けられた入出力部)を介して外部の電子楽器とMIDI情報の授受を行うようになっており、したがって、メインマイクロコンピュータ91は、ローカルマイクロコンピュータ93を介して外部電子楽器との間でMIDI情報の授受を行い得ること(第8頁17行〜9頁8行、第3図参照)。 【引用例2】 (a)自動演奏ピアノでは、キー駆動用のソレノイドをメモリ内の演奏データに基づいて駆動することにより自動演奏が行われること(第1頁右下欄14行〜17行)。 (b)上記演奏データには、キーの音高を示すキーコードと、キーのタッチ強度(打鍵強度)を示すタッチデータと、キーの駆動時間を示す時間データとが含まれており、上記タッチデータは、タッチ変換テーブルによりソレノイド駆動データに変換されること(第2頁左上欄1行〜12行)。 (c)上記タッチ変換テーブルは、内部に第1〜第5のテーブルを有し、これらテーブルの内の1つがスイッチにより選択されるもので、例えばスイッチが最少音に設定された時は第1のテーブル、スイッチがノーマルに設定されたときは第3のテーブル、スイッチが最大音に設定された時は第5のテーブルが選択されること(第2頁左上欄12行〜20行) 3.対比 (1)本願発明と引用例1の記載内容を対比すると次のことが認められる。 (イ)両者はいずれも自動演奏ピアノに関するもので、本願発明の自動演奏ピアノは、「自動演奏ピアノ本体と自動演奏する音楽演奏情報を出力するコントローラとが別体であり、」「前記コントローラを、前記自動演奏ピアノ本体に内蔵しない」ものであるが、この点を一応措くと、「MIDI情報を直接に自動演奏ピアノ本体側の制御回路に取り込んで自動演奏を行う」ものであるところ、引用例1の自動演奏ピアノも、同様に、MIDI情報を直接に自動演奏ピアノ本体側のコントローラ85(制御回路)に取り込んで自動演奏を行うものであることは、引用例1の前記記載、特に(c),(d)の記載から明らかである。 また、本願発明の自動演奏ピアノは、その本体に、自動演奏に必要な鍵駆動手段やペダル駆動手段を備えると共に、上記MIDI情報を直接取り込んで自動演奏を行う上で、“外部からの実時間演奏データであるMIDI情報(鍵のオン・オフ、鍵番号、打鍵強度からなる鍵情報とペダルのオン・オフからなるペダル情報)を直接に入力するMIDI情報入力手段”および“上記MIDI情報(鍵情報,ペダル情報)に基づいて鍵やペダルの駆動信号を発生する駆動信号発生手段を備えているが、引用例1の自動ピアノも、これら各手段に相当するものであることが明らかな“鍵を駆動するソレノイド83”(第2図)、“ペダル機構を駆動するソレノイド80”(第3図)、“MIDI入出力部103”(第3図)、および“ソレノイドドライバ105”(第3図)を備えている。 (ロ)本願発明でいう前記「自動演奏ピアノ本体と自動演奏する音楽演奏情報を出力するコントローラとが別体であり、」「前記コントローラを、前記自動演奏ピアノ本体に内蔵しない」との構成は、必ずしもその意味が明確ではないが、この構成につき、本件請求理由(請求書第3頁最下行〜第4頁20行)では、一般に自動演奏ピアノでのMIDI情報に基づく自動演奏は専用のコントローラ(自動演奏する音楽演奏情報を出力するコントローラ)を介して行われているとの前提の下に、本願発明の自動演奏ピアノ本体はそのような専用コントローラとは全く別もの(別体)で、これを内蔵するものではない旨、具体的には、本願発明の自動演奏ピアノ本体は、引用例1のもののような、上記専用コントローラの役割を果たすローカルマイクロコンピュータ93を内蔵するものではなく、自動演奏ピアノ本体の制御回路(鍵駆動用のCPU)に外部からのMIDI情報を直接取り込んで自動演奏を行うようにしたものである旨主張していること、この主張に関連して、本願明細書(図2)には、上記ピアノ本体の制御回路の実施例として、MIDI入力端子35を有する電子制御装置11が示されており、この電子制御装置11では、1つのCPU13の制御の下に、MIDI入力端子35から入出力インターフェース23を介してMIDI情報を取り込み、取り込んだMIDI情報に基づいて鍵やペダルを駆動して自動演奏を行うようになされていること、の各点を考慮すると、本願発明でいう上記構成は、上記ピアノ本体の制御回路がMIDI情報の取り込みから自動演奏制御までの全制御を1つのCPUで行うようにしたものであることをいうと解することができる。 一方、引用例1のものは、先に認定したように、MIDI情報を直接に自動演奏ピアノ本体の制御回路(コントローラ85)に取り込むんで自動演奏を行う点では本願発明と変わりがないものであるが、その制御回路は、引用例1の前記(c)、(d)の記載および第3図から明らかなように、メインマイクロコンピュータ91とローカルマイクロコンピュータ93とを有し、MIDI情報の取り込み制御についてはローカルマイクロコンピュータ93が分担するものであり、この点では本願発明とは異なっている。 (ハ)また、本願発明では、「入力したMIDI情報のうち、前記鍵情報の打鍵強度データを修正する操作子と、該操作子の操作量を表示する表示手段と、前記操作子の操作に応じて前記鍵情報の打鍵強度データを補正変換することによって、音量調節を行う打鍵強度データ変更手段」とが設けられているところ、引用例1のものでは、このような操作子、表示手段、打鍵強度データ変更手段は設けられていない。 なお、本願発明では、鍵の駆動を「鍵番号に対応する打鍵強度データで変換された打鍵強度データに基づいて」行うとしているが、この点は上記打鍵強度データ変更手段による打鍵強度データの補正変換を行うようにしたことに伴った当然の事項をいうにすぎないものと解される。 (1)以上の認定(イ)〜(ハ)によれば、本願発明と引用例1記載のものとの一致点、相違点は次のとおりであることが認められる。 【一致点】 両者はいずれも、 「MIDI情報を直接に自動演奏ピアノ本体側の制御回路に取り込んで自動演奏を行う自動演奏ピアノであって、前記各鍵に対応して設けられた鍵駆動手段と、演奏状態を変更するペダルを駆動するペダル駆動手段と、外部からの実時間演奏データである、鍵のオン・オフ、鍵番号及び打鍵強度からなる鍵情報、及びペダルのオン・オフからなるペダル情報を含む、MIDI情報を直接に入力するMIDI情報入力手段と、前記MIDI情報入力手段によって入力したMIDI情報の鍵情報である鍵番号及びこの鍵番号に対応する前記打鍵強度データに基づいて、前記鍵駆動手段により鍵を駆動するとともに、前記MIDI情報入力手段のペダルのオン・オフからなるペダル情報に基づいて、前記ペダル駆動手段によりペダルを駆動する駆動信号を出力する駆動信号発生手段とを、前記自動演奏ピアノ本体に備える自動演奏ピアノ」 であるといえる点。 【相違点】 (i)本願発明の自動演奏ピアノは、「自動演奏ピアノ本体と自動演奏する音楽演奏情報を出力するコントローラとが別体であり、」「前記コントローラを、前記自動演奏ピアノ本体に内蔵しない」もの、例えばその実施例(図2)に示されるように、ピアノ本体の制御回路がMIDI情報の取り込みから自動演奏制御までの全制御を1つのCPUで行うようにしたものであるのに対し、引用例1のものでは、そのような点についての開示はなく、ピアノ本体の制御回路(コントローラ85)は、メインマイクロコンピュータ91とローカルマイクロコンピュータ93とを有し、MIDI情報の取り込み制御についてはローカルマイクロコンピュータ93が分担するようになされている点。 (ii)本願発明では、「入力したMIDI情報のうち、前記鍵情報の打鍵強度データを修正する操作子と、該操作子の操作量を表示する表示手段と、前記操作子の操作に応じて前記鍵情報の打鍵強度データを補正変換することによって、音量調整を行う打鍵強度データ変更手段」を設けているのに対し、引用例1の自動演奏ピアノはそのような操作子、表示手段、打鍵強度データ変更手段を有していない点。 4.判断 (イ)相違点(i)について 一般に、所要の処理業務全体を1つのCPUで遂行させたり、メインCPUとローカルCPUで分担して遂行させたりすることは周知事項であり、このような周知事項に照らすと、引用例1のように、外部からのMIDI情報を直接自動演奏ピアノ本体側の制御回路に取り込んで自動演奏を行えるようにするに際し、制御回路にメインマイクロコンピュータ91とローカルマイクロコンピュータ93を設け、MIDI情報の取り込み制御についてはローカルマイクロコンピュータ93に分担させるようにするのに代え、本願発明のように、制御回路における1つのCPUでMIDI情報の取り込み制御から自動演奏制御までの全制御を行うようにすることは、当業者が容易に想到し得た程度のことにすぎないと認められる。 (ロ)相違点(ii)について 引用例2には、その前記(a)〜(c)の記載から明らかなように、自動演奏ピアノにおいて、演奏データ中のタッチデータ(打鍵強度データ)に基づく打鍵強度を手動操作により変更して音量調節を行うことが記載されているから、引用例1の自動演奏ピアノでも音量調節を可能とすべく、本願発明でいうような操作子と打鍵強度データ変更手段、すなわち「入力したMIDI情報のうち、前記鍵情報の打鍵強度データを修正する操作子と前記操作子の操作に応じて前記鍵情報の打鍵強度データを補正変換することによって、音量調節を行う打鍵強度データ変更手段」を設けることは、当業者が容易に想到し得た程度のことにすぎない。 また、本願発明では、上記操作子の操作量を表示する表示手段、つまり音量調節量の表示手段が設けられているが、音量調節量を適宜の表示手段で表示可能とすることは常套の事項である〔例えば電子楽器における例として原審での平成11年1月19日付け拒絶理由通知で引用された実願平1-113092(実開平3-51494号)のマイクロフィルム等参照〕から、このような表示手段の採用において本願発明が格別のものであるとすることはできない。 (ハ)以上判断したとおり、本願発明における上記相違点(i)、(ii)に係る構成は、いずれも当業者が容易に想到し得たといえるものであり、また本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-08 |
結審通知日 | 2001-03-21 |
審決日 | 2001-04-03 |
出願番号 | 特願平4-178573 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G10F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 益戸 宏 |
特許庁審判長 |
井上 雅夫 |
特許庁審判官 |
小池 正彦 石川 伸一 |
発明の名称 | 自動演奏ピアノ |
代理人 | 足立 勉 |