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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 F02M |
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管理番号 | 1039258 |
異議申立番号 | 異議2001-70407 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-02-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-06 |
確定日 | 2001-05-23 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3073740号「空気掃気型の2サイクルエンジン」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3073740号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 |
理由 |
(1)本件発明 特許第3073740号(平成11年8月18日出願、平成12年6月2日設定登録。)の請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1〜3」という。)は、その特許請求の範囲1〜3に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「【請求項1】 シリンダの燃焼室に、エアクリーナを通った空気と気化器において供給される燃料との混合気を導入する前に、エアクリーナを通った空気を導入して初期掃気を行う2サイクルエンジンであって、 前記エアクリーナに、 前記気化器に設けられた混合気通路および空気通路の各入口と連通する入口室と、 前記入口室に連通してエアクリーナ内に開口する共通孔と、 前記入口室内に位置して前記共通孔と前記各入口とを区画して接続する区画壁と、 前記共通孔を開閉するチョーク弁とが設けられている空気掃気型の2サイクルエンジン。 【請求項2】 請求項1において、前記入口室は、気化器側の端部が開放され、かつエアクリーナの内方側に底壁を持つ窪み状に形成され、 前記共通孔は、前記底壁に設けられて、気化器の混合気通路および空気通路の一部と対向している。 【請求項3】 請求項1または2において、前記共通孔は横断面形状が円形である空気掃気型の2サイクルエンジン。」 (2)申立の理由の概要 申立人株式会社共立は、証拠として甲第1号証(特開2000-136755号公報)、及び甲第2号証(実公昭63-32362号公報)を提出し、甲第2号証の記載も参酌すれば、本件発明1〜3は、その出願の日前の出願であって、その出願後に出願公開された甲第1号証に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書又は図面」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明1〜3の発明者が上記先願明細書又は図面に記載された発明の発明者と同一でなく、また本件出願の時において、その出願人が上記先願明細書又は図面に記載された発明に係る特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1〜3の特許は、特許法第113条第2号に該当すると認められるので、取り消されるべきものである旨主張している。 (3)先願発明 先願明細書又は図面の段落【0011】には、(イ)「空気清浄器7に導入される空気aは、その略中央部に設けた遮蔽板7aにより2つに分流し、図中矢印で示す方向に沿って気化器6へ向けて流れる。空気清浄器7に接続された気化器6には、空気流路6Aと、燃料及び空気により混合気を生成し、その混合気を流す混合気流路6Bとが並列に形成されている。そして、空気流路6Aには空気制御バルブ6aを内設しており、混合気流路6Bには混合気制御バルブ6bを内設している。また、吸気管4は、前述のように、気化器6の空気流路6A及び燃料と空気の混合気を流す混合気流路6Bにそれぞれ接続される空気流路4aと混合気流路4bを有している。 混合気は、混合気流路4bからシリンダ2に設けられた図示しない混合気供給流路を介して図示しないクランク室に流入するようになっている。」と、また、段落【0012】には、(ロ)「図10に示す吸気管4は、空気の排出口4A,4Aに接続される空気供給管5,5から図11に示す接続管5a,5aを介してシリンダ2の外側面に接続されている。この接続管5a,5aはシリンダ2内に設けた複数の掃気流路2b,2bとそれぞれ連通しており、各掃気流路2b,2bとの間にそれぞれ逆止弁2B,2Bを内設している。また、シリンダ2に設けられた複数の掃気孔2a,2aは、それぞれ掃気流路2b,2bを介してクランクケース3内のクランク室と接続している。シリンダ2内に上下方向に摺動自在に配設されたピストン2Aの上下動に同期して、この掃気流路2b,2b及び掃気孔2a,2aを経由して空気の吸気や掃気が行われる。前記逆止弁2B,2Bは、図10に示す矢印方向に沿って導入される空気aを、吸気管4の空気流路4a,4a、空気供給管5,5、接続管5a,5a及び掃気流路2b,2bにそれぞれ流入させることはできるが、シリンダ2内の燃焼ガスを接続管5a,5a側へは流入させないように作用するものである。」と記載されている。さらに、第10図には、(ハ)「空気清浄器7の上下に、空気流入口が存在し、該上下の空気流入口から空気清浄器7に流入した空気は遮蔽板7aにより2つに分流し、上方に位置する一方の空気流が空気流路6Aの入口から空気流路6Aへ、また、下方に位置する他方の空気流が混合気流路6Bの入口から混合気流路6Bへと流入する」ことが示されている。 上記(イ)〜(ハ)の記載からみると、先願明細書又は図面には、次のとおりの発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。 「シリンダ(2)の燃焼室に、空気清浄器(7)を通った空気と気化器(6)において供給される燃料との混合気と、空気清浄器(7)を通った空気とにより、層状掃気を行う2サイクルエンジンであって、 前記空気清浄器(7)に、 前記気化器(6)に設けられた混合気流路(6B)および空気流路(6A)の各入口に対し、前記空気清浄器(7)に導入される空気を2つに分流して流す遮蔽板(7a)が設けられている空気掃気型の2サイクルエンジン。」 (4)対比・判断 まず、本件発明1と先願発明とを対比すると、先願発明の、「空気清浄器(7)」、「混合気流路(6B)」、及び「空気流路(6A)」は、それらの機能からみて、それぞれ本件発明1の、「エアクリーナ」、「混合気通路」、及び「空気通路」に相当する。また、先願発明における「層状掃気」は、掃気の際に、まず掃気通路の空気がシリンダに供給され、次いでクランク室の混合気がシリンダに供給されるものであり、その機能からみて、先願発明の、「空気清浄器(7)を通った空気と気化器(6)において供給される燃料との混合気と、空気清浄器(7)を通った空気とにより、層状掃気を行う」は本件発明1の、「エアクリーナを通った空気と気化器において供給される燃料との混合気を導入する前に、エアクリーナを通った空気を導入して初期掃気を行う」に相当する。 ところで、本件発明1では、混合気通路の入口と空気通路の入口とは、気化器に設けられた入口室を通じて連通しているが、先願発明において混合気通路の入口と空気通路の入口とがエアクリーナ内で連通しているかどうか明らかでない。また、2サイクルエンジンにおいて、チョーク弁を設けることが慣用手段であり、甲第2号証の「図において、エアクリーナ1はつぎのように構成されている。すなわち、本体3には、一方向に開口する内室5が設けられ、本体3の底部7には内室5と気化器9の吸気口11に連通する連通口13が設けられている。前記内室5の開口部15には多孔性の合成樹脂等の除塵用のフィルター17が嵌合されている。前記本体3の底部7はボルト19,19によって気化器9に装着されている。ボルト19の1つには、前記連通口13を開閉するためのシャッター21の開閉アーム部22がボルト19に嵌合するカラー23の外周に嵌合して、揺動自在に枢着されている。」(第2欄第25行〜第3欄第8行)の記載、及び第2、3図の記載も参酌すると、先願発明の2サイクルエンジンもチョーク弁(断面形状円形の連通口13を開閉するシャッター21参照)を有しているものと認められるが、先願発明ではチョーク弁がエアクリーナのどの部分に設けられているかについて明らかでない。 してみれば、両者は、「シリンダの燃焼室に、エアクリーナを通った空気と気化器において供給される燃料との混合気を導入する前に、エアクリーナを通った空気を導入して初期掃気を行う2サイクルエンジンであって、 空気掃気型の2サイクルエンジン。」である点で一致し、次の点で相違する。 a.本件発明1では、「気化器に設けられた混合気通路および空気通路の各入口と連通する入口室と、前記入口室に連通してエアクリーナ内に開口する共通孔が設けられている」のに対し、先願発明においては、そもそも混合気通路の入口と空気通路の入口とがエアクリーナ内で連通しているかどうか明らかでないから、混合気通路及び空気通路の各入口と連通する入口室、並びに該入口室と連通する共通孔が設けられているかどうか明らかでない点。 b.本件発明1では、「入口室内に位置して前記共通孔と前記各入口とを区画して接続する区画壁」が設けられているのに対し、先願発明においては、気化器に設けられた混合気流路(6B)および空気流路(6A)の各入口に対し、エアクリーナに導入される空気を2つに分流して流す遮蔽板7aが設けられているものの、共通孔、及び入口室が設けられているかどうか不明であるので、先願発明の「遮蔽板7a」が、本願発明の「区画壁」に相当するかどうかも不明である点。 c.本件発明1では、「共通孔を開閉するチョーク弁」が設けられているのに対し、先願発明においては、共通孔が設けられているかどうか不明であるので、先願発明が、共通孔を開閉するチョーク弁を有するかどうかも不明である点。 そして、本件発明1は、上記相違点a〜cに係る本件発明の構成を採ることにより、「本発明のエンジンによれば、チョーク弁を大形とすることなく、従来より使用されているエアクリーナ内に収容可能な大きさの単一のチョーク弁で混合気通路と空気通路を同時に開閉でき、しかも混合気通路から空気通路への吹き返し混合気の侵入をなくして、HC排出濃度を軽減できる。」(本件特許公報段落【0037】)という作用効果を奏している。また、上記相違点a〜cに係る本件発明の構成を採ることは、先願発明の出願時の技術常識を参酌して導き出せるものでもない。 従って、本件発明1は、先願発明と同一であるとはいえない。 また、本件発明2、3は、ともに本件発明1の構成に更に他の構成を付加したものであるので、本件発明1に関して検討したと同様の理由により、先願発明と同一であるとはいえない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件発明1〜3についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-05-07 |
出願番号 | 特願平11-231129 |
審決分類 |
P
1
651・
161-
Y
(F02M)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中野 宏和 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
亀井 孝志 飯塚 直樹 |
登録日 | 2000-06-02 |
登録番号 | 特許第3073740号(P3073740) |
権利者 | 川崎重工業株式会社 |
発明の名称 | 空気掃気型の2サイクルエンジン |