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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C01B
管理番号 1039286
異議申立番号 異議2001-70118  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-07-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-12 
確定日 2001-05-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第3064241号「半導体デバイスにおけるテーパー付き誘電層のエッチングによる形成」の請求項1ないし15に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3064241号の請求項1ないし15に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3064241号(平成8年10月9日出願、優先日平成7年10月11日米国、平成12年5月12日設定登録)の請求項1乃至15に係る発明は、特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至15に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2.特許異議申立ての理由の概要
(申立ての理由)
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証乃至甲第3号証を提出して、本件請求項1乃至15に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1乃至15に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものであると主張している。
(証拠の記載内容)
特許異議申立人が提出した上記甲第1号証乃至甲第3号証には、それぞれ次の事項が記載されている。
甲第1号証:特開平5-299392号公報
(a)「本発明は薄膜トランジスタ及び薄膜ダイオード等の電子デバイスを形成する場合に用いられる窒化珪素膜のエッチング方法に関するものである。」(第2頁段落【0001】)
(b)「上述のようなSF6ガスを用いたエッチング方法では、異方性のエッチングが行われるため図5に示すようにパターンエッヂが垂直に切り立った形状となり、また、CF4ガスを用いた場合には等方性のエッチングとなるためエッチングをうまくコントロールしても、その断面は図6に示す様に円弧を描く形状となる。このように図5や図6に示した断面形状では、その後に形成される薄膜のカバレージが悪くなり、特にSi3N4膜1の断差によりその上に形成される金属等の薄膜の方が薄い場合や、上に形成される金属等の薄膜を蒸着法等のカバレージ性の悪い成膜法で形成する場合には、図7に示すように断切れが生じ、Si3N4膜1の下層2と上層にある膜3との電気的コンタクトがうまくとれないといった問題が生じる。
本発明は上記の様な問題点を解決するためになされたもので、Si3N4膜1のパターン加工の際、そのエッヂ形状を制御し、Si3N4膜1の上に形成する薄膜3のカバレージを改善することを目的とする。」(第2頁段落【0004】)
(c)「この発明による窒化珪素膜のエッチング方法は、窒化珪素膜上にレジストパターンを形成した後、これらの膜を弗化炭素ガス、6弗化イオウガス又は3弗化窒素ガスに酸素ガスを添加した混合ガスによってプラズマエッチングを行うように構成したものである。
【作用】この発明における窒化珪素膜のエッチング方法によれば、酸素ガスを添加することにより窒化珪素膜とレジストパターンとを同時にエッチングさせることができ、窒化珪素膜のテーパ加工が可能となる。」(第2頁段落【0005】及び【0006】)
(d)「図1に本発明の一実施例であるCF4ガスとO2ガスとを用いたドライエッチング特性の一例を示す。ここでは、RFPowerを800w、CF4ガス流量を100sccm、圧力を50mTorrと一定にし、O2ガス流量をかえたときのレジストとSi3N4とのエッチング速度比とSi3N4膜1のテーパ角を示している。すなわち、O2ガス流量が多くなるほどレジスト/Si3N4のエッチング速度比は増大し、テーパ角は小さくなる。この結果よりO2ガス流量を変えることにより、テーパ角を任意に設定することが可能となる。」(第2頁段落【0007】)
甲第2号証:特開昭64-8626号公報
(a)「本発明は、シリコンウェハのような単結晶シリコン又は多結晶シリコンのドライエッチング方法、より詳しくは、臭素(Br)系ガスによるシリコンの反応性イオンエッチング方法に関するものである。」(第1頁右欄第10行乃至第14行)
(b)「さらに、シリコントレンチエッチングを反応性イオンエッチング法でSiCl4系、SF6系、Cl2系、CBrF3系のガスを使用して行なった例が・・・に開示されている。」(第2頁上段左欄第11行乃至第17行)
(c)「そこで、臭素系ガスによるエッチングの前に自然酸化膜をフッ素系(又は塩素系)ガスによるエッチングで除去すれば、上述した問題を回避して臭素系ガスによるシリコンエッチングが再現性の良い高速異方性エッチングとなるわけである。」(第2頁下段右欄第14行乃至第18行)
(d)「上述の例では、臭素系ガスにBr2とO2との混合ガスを用いているが、Br2単独ガス又はBr2ガスに・・・SF6・・・Cl2・・・の少なくともひとつを添加した混合ガスを用いることもでき、・・・場合によって穴形状制御ができる。」(第3頁下段右欄第7行乃至第13行)
甲第3号証:特開平6-95135号公報
(a)「まず図2におけるガラス基板21上にCVD法により多結晶シリコン薄膜22を約1000Åの厚さに堆積させ、フォトリソグラフィにより所定の形状に形成する。続いて、酸素雰囲気中で熱処理して多結晶シリコン薄膜22の一部を酸化して約1000Åの酸化膜23を形成する。その上に燐をドープした多結晶シリコン薄膜24をCVD法により約3000Å堆積し、フォトリソグラフィにより所定のゲート電極形状に形成する。次いで、多結晶シリコン薄膜22に多結晶シリコン24をマスクにして燐を2×1015/cm2ドープし、ソース及びドレイン領域を形成する。その上に、層間絶縁膜25としてSiO2膜をCVD法により約5000Å堆積させる。次に、ソース領域にフォトリソグラフィによりコンタクトホール26を開けた後、スパッタリング法によりAl膜を約6000Å堆積させ、フォトリソグラフィにより所定形状の配線27を形成しコンタクトホール26で接続する。再び、CVD法により層間絶縁膜28としてSiO2を約5000Å堆積させる。この際、デポガスにO3-TEOSガスを用いると図3(a)に示すような平坦化が可能となる。次に、ドレイン領域にフォトリソグラフィによりコンタクトホール29を開けた後、スパッタリング法によりITO膜を約1500Å堆積させ、フォトリソグラフィにより所定形状の透明電極30を形成し、コンタクトホール29でスイッチング素子と接続する。」(第3頁段落【0013】)
(b)「尚、エッチングガスとしてメタンの代わりにメタノール(CH3OH)、エタノール(C2H5OH)・・・を用いたり、アルゴン(Ar)、水素(H2)を添加しても良い。」(第3頁段落【0014】)
(当審の判断)
(1)本件請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という)について
甲第1号証には、「窒化珪素膜のテーパエッチング方法」に関し、窒化珪素層とフォトレジスト層からなる基板を「6弗化イオウガスと酸素ガスとの混合ガス」によってテーパエッチングする方法」の発明(以下、「甲第1号証発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明1と甲第1号証発明とを対比すると、甲第1号証発明は、そのエッチャント混合ガスが「SF6とO2」であり、これは本件特許明細書に記載の「従来技術」に相当するものであるから、両者は、次の点で相違していると云える。
相違点:本件発明1は「SF6とCl2とを有するエッチャント混合ガス」を使用するのに対し、甲第1号証発明は「SF6とO2とを有するエッチャント混合ガス」を使用する点
次に、この相違点について検討する。
特許異議申立人が提出した甲第2号証には、「Cl2」をシリコンのドライエッチングに使用することが記載されているが、この「Cl2」は、シリコンウェハのドライエッチングのために臭素系ガスとの混合で使用されるものであり(上記(d)参照)、本件発明1の如く、フォトレジスト層と窒化物層からなる基板のドライエッチングのために「SF6」との混合で使用されるものではない。
また、「Cl2」の作用についてみても、甲第2号証の上記(c)の記載によれば、臭素系ガスによるシリコンエッチングの前に、その表面に生じた自然酸化膜(SiO2)を塩素系ガスでドライエッチングするという、いわば予備処理的な作用を奏するものであり、フォトレジストを除去する本件発明1とその作用の点でも相違していると云えるから、上記相違点は、このような甲第2号証の記載からでは当業者といえど容易に想到することができないとするのが相当である。
さらに、甲第3号証について検討すると、この証拠は、「透明導電薄膜のドライエッチング方法」に関するものであり、このドライエッチングに使用されるガスは、メタンやメタノール、エタノール等であって「SF6とCl2とのエッチャント混合ガス」ではないから、この証拠も上記結論に何ら影響を及ぼすものではない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
(2)本件請求項2乃至15に係る発明について
これら発明は、少なくとも請求項1を引用してなるものであるから、本件発明1と同様の理由により、これら発明の特許を取り消すことができない。
3.むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件請求項1乃至15に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-05-07 
出願番号 特願平8-268551
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今井 淳一  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 山田 充
唐戸 光雄
登録日 2000-05-12 
登録番号 特許第3064241号(P3064241)
権利者 エーケーティー株式会社
発明の名称 半導体デバイスにおけるテーパー付き誘電層のエッチングによる形成  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 山田 行一  

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