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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  D04B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  D04B
管理番号 1039297
異議申立番号 異議2000-72744  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2000-05-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-17 
確定日 2001-05-19 
分離された異議申立 有 
異議申立件数
事件の表示 特許第2999762号「リンキング部の編地構造及びニット製品の製造方法」の請求項1及び2に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2999762号の請求項1及び2に係る発明の特許を維持する。 
理由 1. 本件発明
特許第2999762号(平成10年11月10日出願、平成11年11月5日設定登録)の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1,2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりの下記のものである。
【請求項1】 ゴム編みで構成された編地の刺目を、表目は裏目に移し、裏目は表目に移してゴム編みで捨て編みを施して補助布部を形成し、前記編地の刺目配列を平坦化したことを特徴とするリンキング部の編地構造。
【請求項2】 請求項1に記載した編地構造の刺目を用いてリンキングを行い、形成したことを特徴とするニット製品の製造方法。
2. 特許異議申立ての理由の概要
特許異議申立人東京ニットファッション工業組合は、請求項1,2に係る発明は、甲第1号証(独逸国1983年発行 書籍「Stricken」の該当ページの写し)(なお、特許異議申立人が添付書類として提出した該写しには証拠表示が為されていないので、当審は以下、該写しを「甲第1号証」という)を提出しつつ、特許異議申立書で申立ての理由として「従来の鹿の子編み地編成の編目に捨て糸編みを付けただけの編目構成であり何等特許として申請する程 特記する程のことでは無いと思われます。従って 請求項1は従来の編み地構成の一部を利用しただけの結果に過ぎず当ニット業界にとって甚だ不適等な特許申請と思われます。」、「請求項2に於いても請求項1を用いて形成する以上特許請求は不適等と思われます。又リンキング方法は通常リンキングと何等変わることは無いと思われます。鹿の子柄最終段に刺目を入れて捨て糸をそのまま1目ゴム編みすると請求項1及び請求項2と全く同じ編み地のリンキング構成になります。」、「…当ニット業界にあっては請求項1及び請求項2は特許とするには値しないものと思われます。以上ニット業界各社の賛同意見として異議申立を致します。」と記載するのみで、特許異議申立の理由として特許法何条に違反するかの表示もなく、その特許異議申立の理由として記載しているところも、提示した証拠である甲第1号証に基づいた主張は何もなされていない。
しかしながら、特許異議申立人が提出した特許異議申立書の全記載をみると、本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すべきと主張しているので、当審ではその主張に沿って請求項1、2に係る発明が、特許法第29条第1項並びに特許法第29条第2項に該当し、本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消されるべきかを検討する。
3. 甲第1号証記載の発明
翻訳文が提出されていないが、甲第1号証には、写しの左欄の中程に、Natter, Maria:、Stricken:…/von Natter,Maria, -…Falken-Verlag,1983.との記載があり、それぞれ、著者、書籍名、出版社、出版年と見られる記載がある。ここで、仮に、その記載のとおりのものと認めると、甲第1号証は、本件発明の出願日前に頒布された刊行物と認められ、特許異議申立人が特許異議申立書に表記したとおりの証拠と認められる。
そこで、その刊行物に記載されている事項について検討すると、甲第1号証なる写しの右欄には、「「Symbole」と題し、編み目の記号の説明、編み地の写真、編み目記号による編み地」が記載されているものと認められる。また、概ね「特に、同じ編み方をしたひも飾り(Blende)には、縮も広がりもしない平坦なものであるパール模様(1目右、1目結び、置き換え)が適している。パール模様の外側にはこぶ状のふちが編まれている。ひも飾りは内部模様が奇数の編み目になるように注意して、編まれた部分の両側が高く編まれる。内部が高く編まれる場合もある。」という内容のことが記載されているものと認められる。
4. 対比・判断
4-1.本件発明1について
(1)特許法第29条第1項違反について
本件発明1と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、後者は、本件発明1の発明特定事項である(a)「ゴム編みで構成された編地の刺目を、表目は裏目に移し、裏目は表目に移してゴム編みで捨て編みを施して補助布部を形成し、前記編地の刺目配列を平坦化した」点について記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。
また、特許異議申立人は、特許異議申立書において本件発明1の発明特定事項上記(a)が「従来の鹿の子編み地編成の編目に捨て糸編みを付けただけの編目構成であり」と主張しているが、その主張を裏付ける証拠は提出されていないと認められるから、本件発明1、2は公知ないし公用の発明に該当するとはいえない。
(2)特許法第29条第2項違反について
甲第1号証には、縮も広げもしないパール模様の編み地の周りにこぶ状のふち(Knotchenrand)が編まれていることは記載されているが、本件発明1の発明特定事項である、「ゴム編みされた編み地にゴム編みで捨て編みを施して補助布部を形成」することや、リンキングする上で(a)「ゴム編地の刺目を、表目は裏目に移し、裏目は表目に移してゴム編みで捨て編みを施して補助布部を形成し、編み地の刺目配列を平坦化した」点について何等記載されていない。
一方、上記事項について、特許異議申立書中では、「表目は裏目に移し、裏目は表目に移して交互に表目と裏目を1列に配し、次の編み地段に於いて、表目を裏目に移し裏目を表目に移して前記同様に1列に配し編成された編み地を古来より世界中いずこでも存在する一般に鹿の子編み等と称される普遍編み地構造である。〜中略〜リンキング使用時に於いて柄地のまま刺目としたり捨て糸を捨て地編み用に補助編み材として縫製後に整理取り除かれる部分である。以上により従来の鹿の子編み地編成の編目に捨て糸編みを付けただけの編目構成であり」と主張するが、主張の「目の移し」は、鹿の子編みの編み方として「表目を裏目に移し裏目を表目に移」すことが行われるもので、鹿の子編みの編み地においては、リンキング時に敢えて編まれた編み地の刺目を「表目を裏目に移し裏目を表目に移」すことを必要としないものであり、鹿の子編みとしての編み方として「表目を裏目に移し裏目を表目に移」すことは、本件発明1のゴム編みで「ゴム編地の刺目を、表目を裏目に移し裏目を表目に移」すこととは全く技術を異にするものである。
また、「〜リンキング使用時に於いて柄地のまま刺目としたり捨て糸を捨て地編み用に補助編み材として縫製後に整理取り除かれる部分である。以上により従来の鹿の子編み地編成の編目に捨て糸編みを付けただけの編目構成であり」と主張しているが、ゴム編み等で捨て編みし、補助編み材とすること自体が当該技術分野において周知慣用手段であったとしても、本件発明1の如くリンキングする上で「ゴム編地の刺目を、表目は裏目に移し、裏目は表目に移してゴム編みで捨て編みを施して補助布部を形成し、編み地の刺目配列を平坦化」するという技術を開示するものがないだけでなく、そのような技術思想を開示、示唆するところもなく、証拠に基づかない主張にすぎい。
しかも、本件発明1は発明特定事項により「編地の端部に形成された刺目の表目を裏目に移し、刺目の裏目を表目に移して捨て編みを施すことにより、刺目配列が平坦化されるとともに、編地の本体部と補助布部とが共にゴム編みにて構成されるためにリンキング作業が容易になるため、刺目の刺し外しが低減されるので不良率が低減されるとともに、作業効率を高めることができる。」など明細書記載の顕著な効果を奏するものである。
以上のように、本件発明1が特許異議申立人が主張するように「従来の鹿の子編み地編成の編目に捨て糸編みを付けただけの編み目構成である」と認めることはできないし、本件発明1のリンキング時に編み地の刺目を「表目を裏目に移し裏目を表目に移」すことについて、少なくとも証拠を提示すべきところ、特許異議申立人は何等証拠を提示しておらず、特許異議申立人が主張するような事項が公知あるいは周知慣用技術であったとしても、そのことから直ちに本件発明1が容易に発明することができたものとはいえない。
4-2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に記載した編地構造の刺目を用いてリンキングを行い、形成したニット製品の製造方法の発明であるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、上記甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1号証に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明することができたものともいえない。
5. むずび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-04-27 
出願番号 特願平10-318621
審決分類 P 1 651・ 113- Y (D04B)
P 1 651・ 121- Y (D04B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 石井 淑久
特許庁審判官 仁木 由美子
石井 克彦
登録日 1999-11-05 
登録番号 特許第2999762号(P2999762)
権利者 横井 巻男
発明の名称 リンキング部の編地構造及びニット製品の製造方法  

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