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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04H
管理番号 1039398
異議申立番号 異議2001-70114  
総通号数 19 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-06-07 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-10 
確定日 2001-06-04 
異議申立件数
事件の表示 特許第3064149号「入出庫用リフト付き立体駐車装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3064149号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕本件発明
本件特許第3064149号の請求項1に係る発明(平成5年3月18日出願、平成12年5月12日設定登録)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】両側にそれぞれ1層以上の駐車室を配設し、その間に駐車車両を移送する台車を走行させるようにした駐車レーンを2つ並置した立体駐車装置において、第1の駐車レーンの駐車室区画に適宜間隔を置いて立設された入出庫用リフトと、第2の駐車レーンの駐車室区画のうち上記入出庫用リフトに隣接する駐車室区画に配設されたレーン間横送り装置とを具えるとともに、上記台車が、第1の駐車レーン及び第2の駐車レーンのそれぞれ床面に敷設されたレール上を走行し、かつその上部に搭載する駐車車両を上記の入出庫用リフトと駐車室との間で受渡しする昇降可能なリフトを設置されたリフト付台車として構成されていることを特徴とする入出庫用リフト付き立体駐車装置。」

〔2〕特許異議の申立ての理由
特許異議申立人中村昭一は、甲第1号証〜甲第5号証を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号〜甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるので、それらについての特許は取り消されるべきである旨主張している。

甲第1号証:特開昭61-38073号公報
甲第2号証:特開平2-74770号公報
甲第3号証:特開平2-210167号公報
甲第4号証:特開昭63-55275号公報
甲第5号証:実願平2-44377号(実開平3-95307号)のマイ クロフィルム

〔3〕特許異議の申立てについての判断
1.甲各号証の記載事項
甲第1号証には、立体駐車場について、
「本発明を第1図〜第7図に示す一実施例により説明する。1は立体駐車場であり、1階2を入庫口,出庫口のための領域とし、2階以上を車両の格納領域3としている。5はスタッカクレーンであり、2階の床9に設けたレール6上を走行する。スタッカクレーン5は周知の如く巻上装置によって上下動する昇降台7を備え、……スタッカクレーン5および棚10,11はパレットに載せた車両20を横向き(レール6に平行)にして格納するように構成している。このスタッカクレーン5および棚10,11を一組として図示の例では3組を並設している。15は入庫のための昇降台であり、棚11の5行目(第2図の右方から数える。以下同一)の下方に設置されており、1階で車両20を載せて棚11の1段目5Aに上昇させる。16は、出庫のための昇降台であり、棚11の8行目の下方に設置されており、棚11の1段目8Aで車両を載せて1階に下降する。」(3頁右上欄11行〜左下欄11行)、
「入庫可能となると、パレット55を載せて昇降台15が下降する。……車両20は前進し、パレット55上に停止する。……昇降台15は上昇する。……入庫用の昇降台15は棚11の1段目5Aで停止する。スタッカクレーン5はフォーク8および昇降台7を公知の如く動かしてパレット55と共に車両20を受取り、走行および昇降を行って所定の棚にパレット55と共に車両20を置く。……出庫に当っては、……スタッカクレーン5は指令された棚からパレット55と共に車両20を受取り、8行目に停止し棚11の1段目8Aの昇降台16上に降す。」(4頁右上欄16行〜左下欄17行)
との記載がある。
以上の記載並びに第1図及び第2図からみて、甲第1号証には、
「両側にそれぞれ1層以上の車両を格納する棚を配設し、その間に駐車車両を移送するスタッカクレーンを走行させるようにした駐車レーンを2つ並置した立体駐車装置において、第1と第2の駐車レーンの車両を格納する棚の区画に適宜間隔を置いて立設された入出庫用昇降台を具えるとともに、上記スタッカクレーンが、第1の駐車レーン及び第2の駐車レーンのそれぞれ床面に敷設されたレール上を走行し、かつその上部に搭載する駐車車両を上記の入出庫用昇降台と車両を格納する棚との間で受渡しする昇降台を設置されて構成されている入出庫用昇降台付き立体駐車場」
が記載されていると認める。

甲第2号証には、
「1.各駐車階の中央空間部に走行台車を配置するとともに、中央空間部の両側に走行台車の走行方向に沿って複数列ずつ駐車棚を設け、これら各列の駐車棚を複数個の駐車室に区分けするとともに、中央空間部に対向する駐車室の任意の一つを自動車用エレベータ装置の昇降台の昇降用空間となし、上記走行台車、昇降用空間を除いた各駐車室に対応する駐車棚およびエレベータ装置の昇降台に、自動車を受渡し自在なローラテーブルを配置し、……特徴とする立体駐車場。」(特許請求の範囲)、
「本発明の構成によると、自動車は搬出入装置によりエレベータ装置の昇降台上に移送された後、昇降台、走行台車および駐車室におけるローラテーブルにより移送されて自動的に入庫されるため、従来のように入庫または出庫のたびにパレットを出入階まで降ろす必要がなく……パレット方式に比べてかなり連続的に自動車の出庫および入庫を行うことができる。」(5頁左上欄18行〜右上欄6行)
との記載がある。

甲第3号証には、
「自動車入出庫用搬送台車の走行経路の少なくとも片側に、当該走行経路に隣接する手前側とその奥側とに自動車格納区画の列を配設し、全ての格納区画と前記搬送台車とに、前記走行経路に対して直交する方向に自動車を搬送する自動車移載用コンベヤを設けた駐車場設備に於いて、……」(特許請求の範囲)
との記載があり、第1図にはエレベーターに自動車移載用コンベヤが設けられている点が示され、第2図及び第3図には立体駐車場が示されている。

甲第4号証には、
「1〉パレット上に搭載した自動車を上載して、地表レベルのホームポジションと、地下の受渡し位置との間を昇降自在に形成したリフト装置と、前記受渡し位置にあるリフト装置との間において自動車の移載ができるとともに、地下の駐車場スペース内の自動車収容ラック中に形成した自動車収容スペースに自動車を格納し、また、前記自動車収容スペースに格納された自動車を搬出するための、伸縮自在のフォーク装置付きのスタッカクレーンとを備えてなる自動車駐車装置。」(特許請求の範囲)
との記載がある。

甲第5号証には、
「本考案は集合住宅等に設置されて、車や家財道具などを収納する格納設備に関する。」(明細書3頁3〜4行)、
「地下の格納室と、この格納室上に配設された入出庫室とを出入口を介して連通し、前記格納室内に、荷搬送用の出し入れ台車を出入口を介して格納室と入出庫室との間で出し入れ自在なリフト装置と、前記出し入れ台車を案内する走行レールと、この走行レールの両側に配設されて複数の収納部を有する棚とを設け、前記出し入れ台車に、収納部に対して荷を受け渡し自在な送りコンベヤを設けるとともに、収納部に設けた受けコンベヤに搬送力を伝達する動力伝達装置を設けたことを特徴とする格納設備。」(実用新案登録請求の範囲)、
「また、出し入れ台車とリフト装置に換えて昇降台車装置を設けることにより、荷を昇降テーブル上で昇降と移動とを同時に行うことができ、出し入れに要する時間を短縮できる。」(明細書18頁11〜14行)
との記載がある。

2.対比・判断
本件請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「車両を格納する棚」、「スタッカクレーン」、「車両を格納する棚の区画」、「入出庫用昇降台」及び「昇降台」は、その機能に照らし、それぞれ本件請求項1に係る発明の「駐車室」、「台車」、「駐車室区画」、「入出庫用リフト」及び「昇降可能なリフト」に相当するから、両者は、
「両側にそれぞれ1層以上の駐車室を配設し、その間に駐車車両を移送する台車を走行させるようにした駐車レーンを2つ並置した立体駐車装置において、第1の駐車レーンの駐車室区画に適宜間隔を置いて立設された入出庫用リフトを具えるとともに、上記台車が、第1の駐車レーン及び第2の駐車レーンのそれぞれ床面に敷設されたレール上を走行し、かつその上部に搭載する駐車車両を上記の入出庫用リフトと駐車室との間で受渡しする昇降可能なリフトを設置されたリフト付台車として構成されている入出庫用リフト付き立体駐車装置」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点
本件請求項1に係る発明は、第2の駐車レーンの駐車室区画のうち上記入出庫用リフトに隣接する駐車室区画に配設されたレーン間横送り装置を具えるのに対し、甲第1号証記載の発明は、第2の駐車レーンの駐車室区画に、適宜間隔を置いて立設された入出庫用リフトを具え、レーン間横送り装置を具えていない。
上記相違点について検討する。
本件明細書の「図8〜図9の構造では入出庫用リフト9,10が駐車レーンごとに必要となり、設置数が多くなるので、コストが嵩む。また図10の構造のものでは、入出庫用リフトは半減できるが、Eレーンの車両23を出庫するとき、Eレーンに設置した走行台車12のみでは入出庫用リフト9,10と駐車室8との間の駐車車両の受渡しはできず、Dレーンの走行台車12も使用しないと出庫できないという問題がある。」(段落【0003】)との記載によれば、本件請求項1に係る発明が相違点における構成を採用したのは、従来の立体駐車場における、入出庫用リフトが駐車レーンごとに必要となり、設置数が多くなり、コストが嵩むという問題、及びレーン間横送り装置を設けると、入出庫用リフトは半減できるが、一方の駐車レーンの車両を出庫するとき、一方の駐車レーンに設置した走行台車のみでは入出庫用リフトと駐車室との間の駐車車両の受渡しはできず、他方の駐車レーンの走行台車も使用しないと出庫できないという問題を解決するためであると解される。
しかしながら、甲第2号証〜甲第5号証のいずれにも上記相違点における本件請求項1に係る発明の構成は、記載されていないし、示唆もされていない。
つまり、甲第2号証には、立体駐車場において、走行台車、昇降用空間を除いた各駐車室に対応する駐車棚及びエレベータ装置の昇降台に、自動車を受渡し自在なローラテーブルを配置することが記載されているが、該ローラテーブルは、一つの駐車レーン内で自動車を走行台車、駐車棚及びエレベータ装置の昇降台間で移送するためのもので、他の駐車レーンに移送するためのものではなく、本件請求項1に係る発明の「レーン間横送り装置」に対応するものではない。
甲第3号証には、立体駐車場において、エレベーター、自動車格納区画及び搬送台車に、走行経路に対して直交する方向に自動車を搬送する自動車移載用コンベヤを設けることが記載されているが、該自動車移載用コンベヤも甲第2号証のローラテーブルと同様に、他の駐車レーンに移送するためのものではなく、本件請求項1に係る発明の「レーン間横送り装置」に対応するものではない。
甲第4号証には、自動車駐車装置について記載されているが、他の駐車レーンに自動車を移送することについては何も記載されていな。
甲第5号証には、車などを収納する格納設備において、出し入れ台車に、収納部に対して荷を受け渡し自在な送りコンベヤを設けるとともに、収納部に受けコンベヤを設けることが記載されているが、該送りコンベヤ及び受けコンベヤは、甲第2号証のローラテーブルと同様に、他の駐車レーンに移送するためのものではなく、本件請求項1に係る発明の「レーン間横送り装置」に対応するものではない。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記相違点における構成を具備することにより、本件明細書記載の「入出庫用リフト設置場所から遠い方のレーンの車両の出庫時にリフト付レーン側の台車を使用することなく、出庫できるので、円滑性が向上する。……その結果リフト個数を1/2としてもレーンごとにリフトが設置されたものと同等の稼働率を得ることができる。」(段落【0014】)、「他格納レーンの走行台車を使用することなく、入出庫することができる経済的な立体駐車装置を得る」(段落【0015】)との作用効果を奏するものである。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-05-07 
出願番号 特願平5-83967
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04H)
最終処分 維持  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 伊波 猛
鈴木 公子
登録日 2000-05-12 
登録番号 特許第3064149号(P3064149)
権利者 三菱重工業株式会社
発明の名称 入出庫用リフト付き立体駐車装置  

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