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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1040325
審判番号 不服2000-7210  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-01-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-05-15 
確定日 2001-06-13 
事件の表示 平成 4年特許願第159728号「テープカセット用樹脂製容器」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 1月14日出願公開、特開平 6- 5040]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年6月18日の出願であって、その請求項1,2に係る発明は、平成12年5月15日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲1,2に記載されたとおりのものと認めるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
底壁の周囲から同側へ屈曲した側壁を有するとともに、
テープを巻装するハブを回転自在に支持する一対のハブ受け部を前記底壁に有するテープカセット用樹脂製容器において、
不透明部中に、一側壁の先端縁から底壁を貫いて前記一側壁と相対する側壁の先端縁まで連続し前記ハブ受け部を含む透明部を有し、
この透明部の幅は、前記ハブ受け部の直径とほぼ等しくし、
前記透明部の両側に不透明な樹脂と透明な樹脂との2層部を設けたことを特徴とするテープカセット用樹脂製容器。」


2.引用例の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭60-61968号公報には、

「発明の目的
本発明は斯かる点に鑑み外観を損なうことなく磁気テープの巻回状態の全体を良好に見ることがきるものを得ることを目的とする。
発明の概要
本発明は上ハーフ及び下ハーフからなり、テープが巻装される一対のリールハブを有するテープカセットにおいて、一対のリールハブを回転できるように遊嵌する一対のリール軸挿入孔を含む帯状の透明部を夫々上ハーフ及び下ハーフに夫々一体に成形したものであり、斯かる本発明のテープカセットに依れば、外観を損なうことなく磁気テープの巻回状態を良好に目視することができる利益がある。」(第2頁右上欄第11行〜左下欄第4行)と、
「本例においては第4図乃至第6図に示す如く上ハーフ(2)及び下ハーフ(3)に夫々一対のリール軸挿入孔(8)(8)を含み左右のサイドフェンス(19)(19)にまで及ぶ透明な樹脂例えばポリスチレン樹脂(GPPS)系又はスチロール樹脂系よりなる帯状の透明部(20)を一体成形する。この場合、この透明部(20)の長手方向に直交する方向の幅をテープカセット(1)の前後方向の幅の4割程度の寸法となし、この幅方向の中央位置Cがリール軸挿入孔(8)(8)の夫々の中心を結ぶ線に対応するようになす。尚、この透明部(20)の長手方向に直交する方向の幅は上ハーフ(2)及び下ハーフ(3)の四隅等の見栄えのしない部分が透けて見えないような幅とするを可とする。その他は上述第1図乃至第3図に示すものと同様に構成する。」(第2頁左下欄第11行〜右下欄第5行)と、
「先ず、可動金型(23)により上ハーフ(2)の透明部(20)を型作るキャビティを塞いだ第7図に示す如き状態で上ハーフ(2)の不透明部分を形成するキャビティ(2’)にゲート(21a)を介して溶融した不透明な樹脂が射出注入される。・・・・・・・・透明な樹脂が固化し、透明部(20)が一体に成形された上ハーフ(2)が得られる。」(第2頁右下欄第17行〜第3頁左上欄第13行)が記載されている。
また、上ハーフ及び下ハーフは、長方形の底部と左右のサイドフェンスと2つの長辺側の側壁とからなる箱状であることが図1〜4,7,8に記載されている。

以上の記載から、引用例には、
外観を損なうことなく磁気テープの巻回状態が目視可能としたテープカセットであって、
「長方形の底部と左右のサイドフェンスと2つの長辺側の側壁を有するとともに、
テープを巻装するリールハブを回転できるように遊嵌する一対のリール軸挿入孔を底部に有する上ハーフ及び下ハーフからなるテープカセット用樹脂性容器において、
不透明部中に、左右のサイドフェンスにまで連続し前記一対のリール軸挿入孔を含む帯状の透明部を有し、
この透明部の幅はテープカセットの前後方向の4割程度の寸法とし、尚、上ハーフ及び下ハーフの四隅の見栄えのしない部分が透視できない幅とするを可とし、
前記透明部の両側に不透明な樹脂と透明な樹脂との結合部を設けたことを特徴とするテープカセット用樹脂性容器。」の発明(以下、引用例の発明という。)が記載されてると認められる。

3.対比
本願発明1と引用例の発明を対比すると、
両者は、テープカセットの外観を損なわずテープの巻径が目視しやすい透明窓部に関する発明で共通し、
引用例の発明の「リール軸挿入孔」は、リールハブを回転できるように遊嵌する点で、本願発明の「ハブ受け部」に相当することから、
両者は、
「底壁の周囲から同側へ屈曲した側壁を有するとともに、
テープを巻装するハブを回転自在に支持する一対のハブ受け部を前記底壁に有するテープカセット用樹脂製容器において、
不透明部中に、一側壁の先端縁から底壁を貫いて前記一側壁と相対する側壁の先端縁まで連続し前記ハブ受け部を含む透明部を有し、
この透明部の幅は、前記ハブ受け部の直径を含む幅とし、
前記透明部の両側に不透明な樹脂と透明な樹脂との結合部を設けたことを特徴とするテープカセット用樹脂製容器。」で一致し、
以下の点で、相違する。
(1)透明部の幅が、本願発明1が、ハブ受け部の直径とほぼ等しいのに対して、引用例の発明では、テープカセットの前後方向の4割程度、尚、上ハーフ及び下ハーフの四隅等の見栄えのしない部分が透視できない幅を可とする点。
(2)不透明な樹脂と透明な樹脂との結合部が、本願発明1が2層であるのに対して、引用例の発明では2層とは記載されていない点。

4.当審の判断
相違点について検討する。
相違点(1)について
テープカセットにおいては、透明部がハブ受け部の直径よりも幅広なものから狭いものまで種々の幅に形成される点は、文献を示すまでもなく、本願出願前に周知・慣用の技術である。また、引用例には、透明部の幅について、四隅の見栄えのしない部分が透視できない幅とするを可とするとの記載があり、見栄えに応じて透明部の幅を適宜変えることが示唆されており、引用例1に記載された透明部において、その幅をハブ受け部の直径とほぼ等しい幅とする程度のことは、格別の発明力を要するものとは認められない。

相違点(2)について
一般的に2種類の樹脂の接合部の結合強度を高めるために、接合面積を広くすることは適宜に行われており、テープカセットにおいても、透明部と不透明部の接合部の接合面積を広くした接合手段は周知であり(特開昭62-172583号公報、特開平2-134783号公報、特開平4-98668号公報等参照)、引用例において透明部と不透明部を2層部とすることは、容易に推考できることとである。

5.むすび
したがって、本願発明1は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-04-17 
結審通知日 2001-04-18 
審決日 2001-05-02 
出願番号 特願平4-159728
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 内藤 二郎
特許庁審判官 相馬 多美子
川上 美秀
発明の名称 テープカセット用樹脂製容器  
代理人 牛木 護  

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