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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1040326
審判番号 不服2000-748  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-20 
確定日 2001-06-13 
事件の表示 平成 9年特許願第 86081号「乾燥剤用包装材」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 4月 7日出願公開、特開平10-86293号]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成9年3月18日(優先日、平成8年7月24日)の出願であって、その請求項1及び3に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明1」、「本願発明3」という)
【請求項1】坪量が30〜42g/m2の洋紙、和紙ないしは合成繊維の混抄紙からなる通気性基材層と印刷層と酢酸ビニル含有率が10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体層と格子網状強化材層と酢酸ビニル含有率が10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体層との積層体からなることを特徴とする乾燥剤用包装材。
【請求項3】坪量が30〜42g/m2の洋紙、和紙ないしは合成繊維の混抄紙からなる通気性基材層と印刷層とオレフイン系樹脂層と格子網状強化材層とオレフイン系樹脂層との積層体からなり、前記オレフイン系樹脂層に孔あけ加工を施したことを特徴とする乾燥剤用包装材。

2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である昭和62年6月23日に頒布された「実公昭62-24520号公報」(以下「引用刊行物1」という)、平成3年4月16日に頒布された「特開平3-90344号公報」(以下「引用刊行物2」という)及び平成3年7月18日に頒布された「特開平3-166943号公報」(以下「引用刊行物3」という)には、次の事項が記載されている。
(1)引用刊行物1
ア:
「紙と、合成樹脂又はガラス繊維からなる格子網状強化材料とが溶融押出しされた、酢酸ビニルを10ないし40重量%含有する、MIが15ないし45のエチレン-酢酸ビニル共重合体系ホットメルト接着剤層よりなる第1のホットメルト接着剤層を介して貼合わせられてなる積層物の格子状網状強化材料側に、前記接着剤と同じ接着剤を押出しコーティングしてなる第2のホットメルト接着剤が積層されてなる破れにくい通気性包材」(実用新案登録請求の範囲、第1図)
イ:
「紙にアンカーコート層を介して高含有率の酢酸ビニル成分を含むエチレン酢酸ビニル共重合体ををホットメルトコーティングした通気性包材も考案されている・・・」(第1頁第2欄、第4〜7行)
ウ:
「本考案に係る通気性包材は・・・吸湿剤などの包装に適した・・・」(第3頁第5欄第16〜27行)
エ:
「坪量36g/m2の機械すき和紙・・・」(実施例)
(2)引用刊行物2
オ:
「本発明は、例えば、脱酸素剤や乾燥剤等を封入するため包材として使用される通気性を有する包装材料・・・に関するものである。」(第1頁右下欄第15〜18行)
カ:
「片面に、コロナ放電処理による接着性改良処理が付されている厚さ12μの2軸延伸ポリエステル樹脂フィルム・・・からなる支持材の前記接着性改良処理面に、印刷による美粧加工を施し、さらに前記美粧加工面にウレタン系アンカーコート剤・・・を塗工した。しかる後に、前記支持体におけるウレタン系アンカーコート剤の塗工面とフィルター材・・・との間に、厚さ15μの低密度ポリエチレン樹脂・・・層を、溶融、押し出ししつつ、前記支持体とフィルター材との積層シートを得た。・・・」(実施例1)
(3)引用刊行物3
キ:
「通気性を有する紙層からなる支持材と、該支持材に積層されている第1のポリオレフィン系樹脂の溶融押し出し樹脂層と、前記第1のポリオレフィン系樹脂層に積層されている合成樹脂製の網状物あるいは不織布からなる強度保持用シートと、該強度保持用シートに積層されている第2のポリオレフィン系樹脂の溶融押出し樹脂とからなり、しかも、前記第1のポリオレフィン系樹脂の溶融押し出し樹脂層と第2のポリオレフィン系樹脂の溶融押し出し樹脂層とには、垂直方向に対する連通式の微孔群が、レーザー加工によって導入されていることを特徴とする透気性を有する包装材料。」(特許請求の範囲、請求項1)
ク:
「本発明は、例えば、脱酸素剤や乾燥剤等を封入するため包材として使用される通気性を有する包装材料・・・に関するものである。」(第2頁左上欄第7〜10行)
ケ:
「通気性を有する紙層からなる支持体には・・・通常は、20〜150g/m2程度のものが利用される」(第3頁右上欄第1〜7行)

これらの記載事項によると、引用刊行物1には、
「坪量が36g/m2の紙からなる通気性基材層と酢酸ビニル含有率が10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体層と格子網状強化材層と酢酸ビニル含有率が10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体層との積層体からなることを特徴とする乾燥剤用包装材。」(以下、「引用刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
引用刊行物2には、
「2軸延伸ポリエステル樹脂フィルムからなる支持材の前記接着性改良処理面、すなわち内面に、印刷による美粧加工を施し、さらに前記美粧加工面にウレタン系アンカーコート剤を塗工し、ウレタン系アンカーコート剤の塗工面とフィルター材との間に、低密度ポリエチレン樹脂層を、溶融、押し出しして前記支持体とフィルター材との積層シートからなる脱酸素剤や乾燥剤等を封入するため包材として使用される通気性を有する包装材料」(以下、「引用刊行物2記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
また、引用刊行物3には、
「坪量が20〜150g/m2の紙からなる通気性基材層とオレフイン系樹脂層と格子網状強化材層とオレフイン系樹脂層との積層体からなり、前記オレフイン系樹脂層に孔あけ加工を施したことを特徴とする乾燥剤用包装材。」(以下、「引用刊行物3記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明1と引用刊行物1記載の発明を対比すると、両者は、坪量が36g/m2の紙からなる通気性基材層と酢酸ビニル含有率が10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体層と格子網状強化材層と酢酸ビニル含有率が10〜40重量%のエチレン-酢酸ビニル共重合体層との積層体からなることを特徴とする乾燥剤用包装材である点で一致し、本願発明1は印刷層を有しているのに対し、引用刊行物1記載の発明は印刷層については明示されていない点で相違する。
本願発明3と引用刊行物3記載の発明を対比すると、両者は、同程度の坪量の紙からなる通気性基材層とオレフイン系樹脂層と格子網状強化材層とオレフイン系樹脂層との積層体からなり、前記オレフイン系樹脂層に孔あけ加工を施したことを特徴とする乾燥剤用包装材である点で一致し、本願発明3は、印刷層を有しているのに対し、引用刊行物3記載の発明は印刷層については明示されていない点で相違する。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
乾燥剤用の包装材表面に、乾燥剤であることを示すような何らかの印刷を施すことは通常行われていることである。しかし、本願発明1は、印刷層が内容物に付着ないし接触することがなく、衛生面で優れた乾燥剤用包装材を得るために、印刷層を包装材の表面ではなく、通気性基材層の内面に形成している。
そして、引用刊行物1には、印刷層については明示されていないが、引用刊行物2には、脱酸素剤や乾燥剤等を封入するため包材として使用される装材料の支持材の内面側に印刷による美粧加工を施すことが記載されており(記載事項カ)、引用刊行物2に記載された発明の支持材は通気性のないものであるが、支持材の材料が異なっていても、表面から視認できる材料であれば内面に印刷することに何ら不都合はないのであるから、通気性の有無に関わらず透明あるいは半透明の支持材の内面に印刷層を設けることは当業者が容易になし得ることである。
また、引用刊行物2には、印刷を支持材の外面ではなく内面に行うことの技術的意義について直接の記載はないが、印刷層が内面にあることにより、印刷層が内容物に付着ないし接触することがなく、衛生面で優れているということは、外面に印刷しないことにより当然得られる効果であるし、また本願の優先日前に周知の事項である(要すれば、特開平3-110141号公報の第4頁右下欄第3〜12行、実願昭59-27521号(実開昭60-138742号)のマイクロフィルムを参照のこと。なお、後者の刊行物においては、不織布の印刷面を内側に、非印刷面を外側にした袋材料用不織布が記載されている。)。
したがって、本願発明1は引用刊行物1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである
次に、本願発明3について検討する。
本願発明3は、印刷層が内容物に付着ないし接触することがなく、衛生面で優れた乾燥剤用包装材を得るために、通気性基材層の内面に印刷層を形成しているものであるが、本願発明1についての判断で示したのと同様の理由により、本願発明3は引用刊行物2及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
したがって、本願発明1及び3は引用刊行物1ないし3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-03-27 
結審通知日 2001-04-03 
審決日 2001-04-16 
出願番号 特願平9-86081
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芦原 ゆりか平井 裕彰  
特許庁審判長 山口 昭則
特許庁審判官 仁木 由美子
寺本 光生
発明の名称 乾燥剤用包装材  
代理人 金山 聡  

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