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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04B
管理番号 1040400
審判番号 審判1999-12441  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-11-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-29 
確定日 2001-07-02 
事件の表示 平成 6年特許願第117593号「エコーキャンセラ」拒絶査定に対する審判事件〔平成 7年11月14日出願公開、特開平 7-303065、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明の要旨
本願は、平成6年5月7日の出願であって、その発明の要旨は、明細書及び図面の記載から見て、特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】4線路側の音声を伝送する第1の伝送路と2線路側の音声を伝送する第2の伝送路とを具備した電話回線網にもうけられるエコーキャンセラにおいて、一定の疑似雑音を発生する疑似雑音発生手段と、前記第2の伝送路の信号のレベル及び周波数特性に応じてその特性が変化するフィルタであって、前記疑似雑音にそのフィルタ特性を付与して出力するフィルタと、前記フィルタの出力を前記第1の伝送路に供給する手段とを具備し、前記フィルタを介して前記第1の伝送路に供給される前記疑似雑音と前記第2の伝送路の信号との間に成立する相関関係に基づき疑似エコー発生に必要な係数を算出することを特徴とするエコーキャンセラ。
【請求項2】4線路側の音声を伝送する第1の伝送路と2線路側の音声を伝送する第2の伝送路とを具備した電話回線網にもうけられるエコーキャンセラにおいて、一定の疑似雑音を発生する疑似雑音発生手段と、前記疑似雑音に所望のフィルタ特性を付与して出力するフィルタと、前記フィルタの出力を前記第1の伝送路に供給する手段と、前記第2の伝送路の信号のレベル及び周波数特性を検出し、その検出結果に応じて前記フィルタの特性を変化させる検出手段とを具備し、前記フィルタを介して前記第1の伝送路に供給される前記疑似雑音と前記第2の伝送路の信号との間に成立する相関関係に基づき疑似エコー発生に必要な係数を算出することを特徴とするエコーキャンセラ。
【請求項3】前記フィルタを介して前記第1の伝送路に供給される前記疑似雑音と前記第2の伝送路の信号との間に成立する相関関係に基づき疑似エコー発生に必要な係数を算出して出力する手段を更に具備したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のエコーキャンセラ。」(以下、「本願発明」という。)
2.引用例
これに対して、原審の拒絶の理由に引用された、特開昭59-80030号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開平4-120825号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
引用例1
1)「1、一方の端局側からの伝送信号xを、伝送回線を介して、他方の端局側において取り込み、該他方の端局側で生じた該伝送信号xのエコー信号yを、これに近似のエコー信号y'で相殺するためのエコーキャンセラーであってしかも前記他方の端局側で形成されるエコーパスのインパルス応答をhとするとき前記伝送信号の時系列xkと該インパルス応答hとの時系列的なたたみ込みにより前記近似のエコー信号の時系列y'kを得、且つ該インパルス応答hはフィルタのタップ係数補正操作により逐次補正されるようにしたエコーキャンセラーの制御方法において、前記タップ係数補正操作の開始前に、前記インパルス応答hを推定して推定値h'を求める演算を行い、この推定値h'によって前記エコーキャンセラーの初期設定を行った後、該タップ係数補正を開始するようにしたことを特徴とするエコーキャンセラーの制御方法。
2.前記伝送信号xと前記エコー信号yとの相互相関を演算することにより前記推定値h'を求める特許請求の範囲第1項記載の エコーキャンセラーの制御方法。
3.前記相互相関において割り出した前記インパルス応答hの存在範囲に対応するタップの範囲内で前記タップ係数補正操作を行う特許請求の範囲第1項記載の エコーキャンセラーの制御方法。」
(特許請求の範囲)
2)上記目的を達成するために本発明は、収束動作の初期において、受信伝送信号とそのエコー信号との間の相互相関を演算し、これによりエコーパスのインパルス応答を推定し、この推定値を用いてフィルタに対するタップ係数の初期設定を行い、その後通常のタップ係数補正を逐次行うようにしたことを特徴とするものである。(第3頁左上欄第2行〜第8行)
3)そして相互相関の演算結果により、推定インパルス応答と必要な補正タップ数が決定されると、必要なタップ数に対応する推定インパルス応答(第3図h'n1〜h'n2)だけをレジスタ18に送ると共に(ラインL1)、レジスタ16に補正タップに対応した伝送信号を読み出すための、すなわち絶対遅延τの分だけ遅延させて、読出し信号を送る(ラインL2)。かくして初期設定がされた後は、必要なタップについてだけ(第3図の期間T1)、従来の学習同定法による収束動作を行う。(第3頁右下欄第5行〜第15行)
4)この信号が白色雑音であると、すなわち全く信号に周期性がないと、・・・・・・・・・推定値h'1はエコーパス14のインパルス応答h1を正しく推定することが可能となる。(第4頁右上欄第3行〜第12行)
引用例2
1)「1.周囲信号を入力してパワースペクトラムを算出するパワースペクトラム算出器と、白色雑音信号を発生する白色雑音発生器と、前記白色雑音信号に前記周囲信号のパワースペクトラムと相似形のフィルタを掛ける適応フィルタと、音声符号化信号を検知した音声検知信号により入力音声信号と前記適応フィルタの出力信号とを選択出力する選択器とを備えることを特徴とする雑音発生器。」(特許請求の範囲)
2)周囲信号7がパワースペクトラム算出器13に入力されると、パワースペクトラム算出器13はパワースペクトラム5を算出する。一方、白色雑音発生器11で発生した白色雑音信号4を適応フィルタ12に入力してパワースペクトラム5と相似形のフィルタを掛け、周囲信号6を出力する。この雑音信号6は周囲信号7と同一の周波数成分の雑音に制御されるために違和感のない雑音となって選択器14に入力される。音声検知信号3により選択器14では音声信号1か雑音信号6を選択して出力信号2を出力する。(第2頁左下欄第18行〜右下欄第9行)
そうすると、引用例1には、エコーパス14のインパルス応答を、伝送信号とエコー信号との相互相関を演算して推定するエコーキャンセラが記載され、さらに、このインパルス応答の推定値を、白色雑音を用いて決定することが記載され、また、引用例2には、白色雑音発生器11から発生される白色雑音4を、入力された周囲信号7のパワースペクトラム5に応じて特性が変化する適応フィルタ12によりフィルタリングして、出力信号2として出力する雑音発生器が記載されているといえる。
3.対比・判断
本願発明と引用例1に記載された発明を対比すると、両者は、疑似エコーを発生するために必要なインパルス応答を、疑似(白色)雑音を用いて推定いる点において一致しているが、本願発明では、疑似雑音が第2の伝送路の信号のレベル及び周波数特性に応じた特性のフィルタを介して出力されるのに対し、引用例1に記載の発明では、白色雑音がそのまま出力される点で少なくとも相違している。
一方、引用例2には、周囲信号のパワースペクトラムに応じて特性が変化する適応フィルタによって白色雑音をフィルタリングする雑音発生器が記載されている。
しかしながら、引用例2に記載の雑音発生器は、音声がある一定レベル以下のときのみフィルタリングされた雑音信号が送出される構成となっており、本願発明のように第1の伝送路に伝送される音声信号の強弱にかかわらずフィルタリングされた雑音信号を出力させる構成とは異なるものである。
したがって、引用例1に記載された発明に引用例2に記載された雑音発生器を適用しても4線路側の音声信号にかかわらず第1の伝送路に所定の疑似雑音が強制的に供給される構成にはならない。
そして、本願発明は、上記相違点を有することにより、第1の伝送路によって伝送される音声信号が無い場合または微弱な場合であっても、疑似エコーを発生することができ、かつ、第2の伝送路の信号のレベル及び周波数特性に応じたフィルタ特性が付与されて出力されるので、2線路側(近端話者側)では、疑似雑音の成分による通話障害を抑えることができるという明細書記載のとおりの効果を奏するものである。
4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、上記引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本願発明を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-06-12 
出願番号 特願平6-117593
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 青木 重徳  
特許庁審判長 松野 高尚
特許庁審判官 大橋 隆夫
橋本 正弘
発明の名称 エコーキャンセラ  
代理人 秦 貴清  
代理人 松本 隆  
代理人 川▲崎▼ 研二  

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