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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65G |
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管理番号 | 1040410 |
審判番号 | 審判1998-3923 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-12-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-03-18 |
確定日 | 2001-06-08 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第158502号「重量物回転装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年12月14日出願公開、特開平 5-330619]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯・本願発明 この出願は、平成4年5月26日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年11月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】横架軸の回りで回転可能とした2枚の起伏盤が、横架軸を挟んで両側に設置してあり、各起伏盤の下面に、下縁が前記各起伏盤の下面下側方向に向けて突湾するサイクロイドカーブ状に形成されているカム縁となっているカムプレートが、前記横架軸と直交する方向で取り付けてあると共に、直線駆動機構に連結されて、前記横架軸と直交する方向に設置したスライドテーブル上で走行可能に設けられているカムフォロワが、前記カム縁に加圧当接しつつ前記横架軸に接近する方向及び前記横架軸から離れる方向に移動することを特徴とする重量物回転装置。」 【2】引用例に記載の発明 これに対して、当審において平成12年9月4日付けで通知した拒絶の理由に引用した実願昭61-168509号(実開昭63-73208号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、 (1)「1は矩形の枠体より成る型鋼反転装置の本体であり、該本体1は略爪片状を成した内輪レール2、2aに穿設せしめた孔3に、逆コ字状の固定台4に一体固設せしめた外輪レール5、5aに穿設せしめた孔6に中央ピン7を介して半回転自在に内輪レール2、2a、外輪レール5、5aを挿通支承せしめている。 尚、外輪レール5、5aは中央を突出し、中央より側方へ下方に向かって極少と成した形状と成している。 8、8aは内輪レール2、2aの上部に装着せしめた半回転自在な可動台であり、該可動台8、8aは略コ字状を成している。 9は型鋼反転装置の本体1の端部に設置せしめたシリンダー支持台10に装着せしめた起こし側シリンダーであり、該起こし側シリンダー9の先端部には内輪転子11を一体装着せしめ、回転軸12を介して回転自在な外輪転子13、13aを内輪転子11に挿通支承せしめている。 14は型鋼反転装置の本体1の端部に設置せしめたシリンダー支持台10aに装着した受け側シリンダーであり、該受け側シリンダー14の先端部には内輪転子11aを一体装着せしめ、回転軸12aを介して回転自在な外輪転子13b、13cを内輪転子11aに挿通支承せしめている。」(明細書第5頁第7行〜第6頁第11行) (2)「要するに本考案は、矩形の枠体上部に上方へ半回転自在な可動台8、8aを設け、該可動台8、8a下部に前後に摺動自在な起こし側シリンダー9及び受け側シリンダー14を内蔵せしめたので、可動台8、8aに型鋼17を載置せしめるのみで、可動台8、8a下部に設けた起こし側シリンダー9、受け側シリンダー14の前後に摺動自在運動により、型鋼17を可動台8、8a上に垂直に立設せしめられる為、型鋼17自体へのショックを無くし、円滑及び安全に能率良く反転出来るのである。」(明細書第7頁第15行〜第8頁第5行) (3)「起こし側シリンダー9、受け側シリンダー14のFの力、即ち水平力が内輪レール2、2a、外輪レール5、5aの内輪転子11、11a、外輪転子13、13aに印加せしめるベクトルを分離せしめてクサビ状の内輪レール2、2a、外輪レール5、5aを形成せしめることにより、可動台8、8aに印加せしめる荷重Wgに起こし側シリンダー9、受け側シリンダー14のFの力、即ち水平力より起因せしめる反力により、軽量且つ極少なストロークで大なる中央ピン7を基点と成した可動台8、8aの回転自在運動が出来る」(明細書第8頁第13行〜第9頁第4行) と記載されている。 そして、上記(3)の記載及び型鋼反転装置の作動状態を示す第4図ないし第7図を特に参照すれば、起こし側シリンダー9及び受け側シリンダー14の前後の摺動運動時において、内輪転子11は、内輪レール2、2aの下縁に接触しつつ移動するものであって、その際、内輪転子11には、可動台8、8a、内輪レール2、2a及び型鋼17に働く各重力が荷重として作用することから、内輪転子11と内輪レール2、2aの下縁とが、互いに加圧当接状態となることは明らかである。 したがって、上記の各記載及び図面を参照すれば、上記引用例1には、 「中央ピン7の回りで回転可能とした2枚の可動台8、8aが、中央ピン7を挟んで両側に設置してあり、各可動台8、8aの下面に、爪片状の内輪レール2、2aが、前記中央ピン7と直交する方向で取り付けてあると共に、起こし側シリンダー9又は受け側シリンダー14に連結されて、前記横架軸と直交する方向に設置した曲線状の外輪レール5、5a上で曲線的に走行可能に設けられている内輪転子11が、前記内輪レール2、2aの下縁に加圧当接しつつ前記中央ピン7に接近する方向及び前記中央ピン7から離れる方向に移動する型鋼反転装置」 が記載されているものと認められる。 同じく引用した特開平2-89709号公報(以下、「引用例2」という。)には、 (4)「この発明は、回転可能に設置した起伏盤を介して工作物その他の重量物を所定の角度宛(0〜90度)回転するようにした重量物回転装置に関する。」(公報第1頁左下欄最終行〜右上欄第3行) (5)「カム溝は、種々のサイクロイドカーブが用いられ、カムフォロワの定速水平移動に対して、起伏盤が所望の回転速度で回転するように、一又は複数種のサイクロイドカーブが組合わされる。」(公報第2頁左上欄第16〜20行) (6)「図中1が水平軸で、該水平軸1を挟んで両側に起伏盤2、2が水平軸1の回りで回転可能に設置してある。前記起伏盤2の下面には、2枚1組のカムプレート3、3が水平軸1と直交する方向に2組ずつ固着してある。カムプレート3、3には各組毎に対向する面内にカム溝4が形成してあり、該カム溝4、4には、第3図々示の如く、回転自在のローラ5、5を両側に設けたカムフォロワ6が係合してある。そして、各カムフォロワ6は、起伏盤2の下側に水平に設置した流体圧シリンダー7のピストンロッド8の先端部が連結してあると共に、下向きに設けた係合凹部9が、カムプレート3、3に沿って設置された水平ガイドレール10に嵌合されている。」(公報第2頁右下欄第1〜14行) 等の記載があり、これらの各記載及び図面を参照すれば、上記引用例2には、 水平軸1の回りで回転可能とした2枚の起伏盤2が、水平軸1を挟んで両側に設置してあり、各起伏盤2の下面に、カム溝4を有するカムプレート3が、前記水平軸1と直交する方向で取付けてあり、走行可能に設けられているローラ5が、前記カム溝4の縁部に当接しつつ前記水平軸1に接近する方向及び前記水平軸1から離れる方向に移動する重量物回転装置において、 「カムプレート3のカム溝4が、起伏盤2の下面下側方向に向けて突湾するサイクロイドカーブ状に形成されている」点に関する事項、 及び「ローラ5が、水平に設置された流体圧シリンダー7のピストンロッド8に連結されて、前記水平軸1と直交する方向に設置した水平ガイドレール10上で走行可能に設けられている」点に関する事項、 が記載されているものと認められる。 【3】対比・判断 本願発明と上記引用例1に記載の発明とを対比すると、後者における「中央ピン7」、「可動台8、8a」、「内輪レール2、2a」、「内輪転子11」、「内輪レール2、2aの下縁」、「反転装置」は、その機能からみて各々前者における「横架軸」、「起伏盤」、「カムプレート」、「カムフォロワ」、「カム縁」、「回転装置」に相当しているものと認められる。また、一般に型鋼は、重量物とみなすことができることから、 両者は、 「横架軸の回りで回転可能とした2枚の起伏盤が、横架軸を挟んで両側に設置してあり、各起伏盤の下面に、下縁がカム縁となっているカムプレートが、前記横架軸と直交する方向で取り付けてあると共に、走行可能に設けられているカムフォロワが、前記カム縁に加圧当接しつつ前記横架軸に接近する方向及び前記横架軸から離れる方向に移動する重量物回転装置」 である点で一致するものの、次の各点で相違している。 (相違点1)カム縁の形状に関し、前者が、起伏盤の下面下側方向に向けて突湾するサイクロイドカーブ状に形成されているのに対し、後者では、爪片状に形成されている点。 (相違点2)カムフォロワの駆動機構に関し、前者が、横架軸と直交する方向に設置したスライドテーブル上で走行可能に設けたカムフォロワに直線駆動機構を連結した構成を備えているのに対し、後者では、カムフォロワに連結される起こし側シリンダー9又は受け側シリンダー14により、カムフォロワが、横架軸と直交する方向に設置した曲線状の外輪レール5、5a上を曲線的に駆動される点。 以下、上記相違点につき検討する。 (相違点1について) 重量物回転装置における起伏盤をカムにより回転させるに当たり、起伏盤の回転速度を所望の速度に定めるために、当該カムの形状として下側方向に向けて突湾するサイクロイドカーブを用いることは、上記引用例2に記載されていることから、同じくカム機構を利用した引用例1に記載の重量物回転装置において、カム縁の形状としてサイクロイドカーブを採用して上記相違点における前者の構成とすることは、当業者であれば容易になし得たものである。 (相違点2について) 上記引用例2には、ローラ5が、水平に設置した流体圧シリンダー7のピストンロッド8に連結されて、水平軸1と直交する方向に設置した水平ガイドレール10上で走行可能に設けられており、当該ローラ5がカム溝4の縁部に当接しつつ前記水平軸1に接近する方向及び前記水平軸1から離れる方向に移動する重量物回転装置が記載されている。 引用例2に記載された発明における「ローラ5」、「水平に設置した流体圧シリンダー7のピストンロッド8」、「水平軸1」、「水平ガイドレール10」は、その機能からみて各々本願発明における、「カムフォロワ」、「直線駆動機構」、「横架軸」、「スライドテーブル」に相当することから、上記相違点2における本願発明の構成は、上記引用例2に記載されているものと認められる。そして、引用例1、2に記載のものは、何れもカム機構を利用した重量物回転装置という共通の技術分野に属するものであるから、引用例2に記載された、カムフォロワの駆動機構に関する構成を引用例1に記載の発明に適用して上記相違点2における前者の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 また、本願発明の奏する効果も、上記引用例1、2に記載の発明から、当業者が予測できる程度のものであって、格別のものとは認められない。 なお、請求人は、平成12年11月20日付け意見書において、本願発明におけるカムフォロワとカム縁とは、起伏盤の直立時にはスプリングにより、起伏盤が斜めになってからはその自重も加わることにより、加圧当接状態を保つものである旨主張しているが(第2頁第24〜26行参照)、特許請求の範囲には、このような加圧当接状態を形成するための具体的な構成について何らの記載もなく、請求人の上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づく主張とは認められない。 【4】むすび 以上のとおり、本願発明は上記引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-03-22 |
結審通知日 | 2001-04-03 |
審決日 | 2001-04-16 |
出願番号 | 特願平4-158502 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B65G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 杉野 裕幸、黒石 孝志 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
関谷 一夫 清水 信行 |
発明の名称 | 重量物回転装置 |
代理人 | 鈴木 正次 |