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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K |
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管理番号 | 1040414 |
審判番号 | 審判1998-13998 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-10-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-09-10 |
確定日 | 2001-06-15 |
事件の表示 | 平成8年特許願第82507号「流量調節弁」拒絶査定に対する審判事件[平成9年10月21日出願公開、特開平9-273638]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願に係る発明 本件は、平成8年4月4日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成10年10月12日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された、以下のとおりのものである。 【請求項1】 弁体と、該弁体が摺動可能な空間を入口側流路及び出口側流路間に画成する筒壁部を有した弁箱とを備え、前記入口側流路は前記筒壁部の周囲に形成されており、前記筒壁部には、前記入口側流路を前記空間に連通可能なオリフィスが形成され、該オリフィスは、流体の出口側の流路面積の方が入口側の流路面積よりも小さくなるようにテーパ角度が20〜60度である流路面積変化部分と、該流路面積変化部分の最小流路面積を有して前記オリフィス内のほぼ流れ方向に所定長さ延びている流路面積一定部分とにより画成されており、 前記オリフィスは、筒壁部の軸心を中心とする放射状に少なくとも2つ設けられており、かつ、該オリフィスから流出した流体同士を前記空間において衝突させるように形成されている、流量調節弁。 【請求項2】 前記弁体は、流量調節のために摺動した際に、前記筒壁部のうち前記空間の画成面に付着したスケールを掻き取ることが可能なスクレーパ部を有している、請求項1に記載の流量調節弁。 【請求項3】 前記オリフィスの流路面積は前記弁体の開閉方向に延びている、請求項1に記載の流量調節弁。 2.引用文献に記載された発明 これに対して、原査定の理由に引用された、本願出願日前に頒布された刊行物である特公昭60-39911号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の記載がある。 「1 (a)液体入口及び液体出口を形成するバルブ本体と、(b)該バルブ本体内に収容され且つトリムケージを介して半径方向への液体の流れのための多数の半径方向流路を備えた略円筒状トリムケージと、・・(d)該バルブ本体と共働して液体の流れを制御するためのバルブ要素を備え、・・(f)該半径方向流路は該排出開口に向けて略指数的に収斂しており、・・ 2 該排出開口が有限であるが最小長さの円筒状通路部分で形成され、・・3 (a)該円筒状部分から上流の方向に拡張している円錐状に広がった流路部分と、(b)該円錐部分の上流端から上流に続く弧状にフレアが付いた流路部分を具備し、・・ 5 ・・(b)該バルブ要素が、・・該トリムケージ内を滑動可能であるプラグ状要素である・・ 7 (a)該円錐状に広がる流路部分が略30°の夾角を有し・・」(特許請求の範囲の欄中) 「参照番号10は、流体制御バルブのバルブ本体の全体を示し、・・例えばボイラ供給システム内で使用される。・・主要なバルブ部分を設置し且つバルブ通路を形成している開口14を備えた内部ウエブ13が入口通路と出口通路とを分割し分離している。」(第6欄第29〜36行) 「・・バルブ本体は、流体が全外側円筒状表面の回りでトリムケージに近ずくようになっている形態であるので、流体がトリムケージの全側面から開口24を介して半径方向内側に流れることができることが示されている・・ ・・釣合バルブプラグ25はトリムケージ15及び釣合シリンダ19内に滑動可能に収容されている。」(第7欄第10〜18行) 「・・バルブプラグの下方部分27は少し直径が大きくなっており且つトリムケージ内にて滑動可能に案内されるように配置されている。」(第7欄第20〜23行) 「・・入口通路24は典型的には3つの段階で形成され、短かいが有限の円筒状部分45の直径は所望の有効オリフィス42の直径に等しい。・・短かい円筒状部分45は外側に拡張した円錐部分46に連結されており、円錐部分46は外側にフレアが付いている円の一部を形成する部分47に連結され、・・トリムケージの外側表面48に連結している。」(第12欄第28〜38行) 「 所望の指数的に収斂する流路は、30°の夾角を備えた円錐部分を形成する・・即ち、壁と中心軸線との間の角度θは約15°である。」(第13欄第27〜31行) これら記載と図面の記載とを総合すると、引用文献の「滑動」とは所謂「摺動」と同義であり、「円錐部分」と「円筒状部分」の関係は、その記載された構成から必然的に円筒状部分は、円錐部分の最小流路面積を有するものとなり、「流体がトリムケージの全側面から開口24を介して半径方向内側に流れることができる」ことは、「開口24」(入口通路24)が、トリムケージの軸心を中心とする放射状に設けられていることを意味するとともに、引用文献にいう「流体の流れを制御」が流量の制御であることは明らかであるので、引用文献には、 バルブ要素と、該バルブ要素が摺動可能な空間を流体入口及び流体出口を形成するバルブ本体に収容され円筒状のトリムケージを備え、流体入口は、トリムケージの全外側円筒状表面の回りに流体が流れるように形成され、前記トリムケージには、前記流体入口からの流体をバルブ要素が摺動可能な空間に連通する入口通路24が形成され、該入口通路は、流体の出口側の流路面積の方が入口側の流路面積よりも小さくなるようにテーパ角度が15度である円錐部分46と、該円錐部分の最小流路面積を有して前記オリフィス内のほぼ流れ方向に所定長さ延びている円筒状部分45とから画成されており、 前記入口通路は、トリムケージの軸心を中心とする放射状に少なくとも2つ設けられており、かつ、入口通路から流体が前記空間に流出する流量調節できるバルブ弁であり、 該バルブ要素の下端には、少し直径が大きくなった、バルブ要素が摺動した際に入口通路を有するトリムケージの面を摺動する部位が設けられているバルブ弁 の発明が記載されるものと認める。 3.対比判断 3-1 本願請求項1に係る発明について 本願請求項1に係る発明と、引用文献に係る発明とを対比すると、引用文献のものの、「バルブ要素」、「トリムケージ」、「入口通路」、及び、入口通路の「円錐部分」並びに「円筒状部分」は、その形状、配置、機能からみて本願請求項1に係る発明の「弁体」、「筒壁部」、「オリフィス」、及び、オリフィスの「流路面積変化部分」並びに「流路面積一定部分」にそれぞれ相当するものと認められるから、両発明は、 弁体と、該弁体が摺動可能な空間を入口側流路及び出口側流路間に画成する筒壁部を有した弁箱とを備え、前記入口側流路は前記筒壁部の周囲に形成されており、前記筒壁部には、前記入口側流路を前記空間に連通可能なオリフィスが形成され、該オリフィスは、流体の出口側の流路面積の方が入口側の流路面積よりも小さくなるようにテーパ角度がある流路面積変化部分と、該流路面積変化部分の最小流路面積を有して前記オリフィス内のほぼ流れ方向に所定長さ延びている流路面積一定部分とにより画成されており、 前記オリフィスは、筒壁部の軸心を中心とする放射状に少なくとも2つ設けられており、かつ、該オリフィスから流体が前記空間に流出する流量調節弁 の発明である点で一致し、以下の点で相違している。 相違点1 本件発明のオリフィスの流路面積変化部分は、テーパ角度が20〜60度であり、該オリフィスから流出した流体同士を前記空間において衝突させるように形成されている、ものであるのに対して、引用文献のものの入口通路の円錐部分は、テーパ角度が15度であり、入口通路から流体が前記空間に流出するものの、同空間において流体が衝突する旨の記載はない点 しかしながら、引用文献のものの入口通路は、トリムケージ外周に多数螺旋状の配置をもって設けらており、結果として、それら入口通路の設置高さの近接する二つの入口通路から半径方向内側に流れる流体の流れは、程度の差こそあれ円筒状のトリムケージ内側の中心部で衝突することは、たとえそれが記載されていなくても必然であり、結果として、円筒状のトリムケージの軸線方向に一定の広がりを有して分布した衝突を形成するものと認められる。 なお、この点に関して、合議体が通知した審尋に対して、請求人は、平成12年12月22日付回答書において、本願請求項1に係る発明は、オリフィスの軸線がほぼ一点で交わる点に差異がある旨述べているが、請求項1の発明は上記の事項により特定されるものであり、オリフィスの軸線がほぼ一点で交わる点を明確に特定するものではなく、しかも、請求項1の発明を更に限定した請求項3においては、オリフィスの流路面積は弁体の開閉方向に延びているものとなり、流体同士の衝突は、筒状部の軸線方向に一定の広がりを有するものとされており、同限定を可能とする請求項1のものを流体同士の衝突が筒状部の軸線方向に一定の広がりを有さない一点のみのものと解することはできない。 したがって、流体の衝突の有無は、実質的な差異を構成していない。 更に、同衝突との関係から、請求項1に係る発明の奏する作用効果について検討すると、流体の衝突による結果としてのスケール付着防止の認識が、引用文献のものに記載されていないとしても、そのことが直ちに引用文献のものにおいて、そのような作用が発生しないことを意味するものではない。換言すれば、作用の認識の有無に関わらず、一定の構成において奏する作用は、その構成を有することにより、作用自体は認識の有無に関わらず発生するものというべきであり、流体の衝突が起こる引用文献のものにおいても、本願請求項1に係る発明と同様の物理現象として、結果としてのスケール付着防止がなされることは必然であり、本件発明者が、同作用の発見という新たな発見をなしたか否かはさておき、同作用の発見は、公知の流体の衝突を起こす構成を有する引用文献のものをも含んで、流体の衝突とスケールの付着防止に係る発見であるというべきものであって、本願請求項1に係る発明が引用文献のものに対して、格別の差異を構成する論拠とはならない。 また、テーパ角度を20〜60度とした点は、20度自体の数値に格別の臨界的意味はなく、設計上の事項に属するものと認める。 したがって、上記相違点1は、当業者が容易になし得た設計上の事項に属するものと認める。 よって、本願請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 3-2 本願請求項2に係る発明について 引用文献のもののバルブ要素の下端には、少し直径が大きくなった、バルブ要素が摺動した際に入口通路を有するトリムケージの面を摺動する部位が設けられているのであるから、本願請求項2に係る発明と引用文献のものとを比較すると、本願請求項2に係る発明は、上記相違点1の点で引用文献のものと相違し、残余の点で両発明は一致しするものと認める。 そして、上記相違点1は、前記のとおり、当業者が容易になし得た設計上の事項に属するものと認められるから、本願請求項2に係る発明は、引用文献に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとみとめる。 3-3 本願請求項3に係る発明について 本願請求項3に係る発明と引用文献のものとを比較すると、両発明は、上記相違点1に加えて、下記相違点2の点で相違し、残余の点で一致するものと認める。 相違点2 本願請求項3に係る発明のオリフィスの流路面積は前記弁体の開閉方向に延びているのに対して、引用文献の入口通路は、そのような形状ではない点。 しかしながら、原査定の理由に引用された実公昭63-47322号公報にもあるように、オリフィスの流路面積を前記弁体の開閉方向に延びる形状とすることは、周知の技術であり、相違点2は、周知の技術に基づいて、当業者が容易になし得たものと認める。 また、上記相違点1は、前記のとおり、当業者が容易になし得た設計上の事項に属するものと認められるから、本願請求項3に係る発明は、引用文献に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。 4. むすび 以上説示のとおり、本件請求項1〜3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-04-03 |
結審通知日 | 2001-04-13 |
審決日 | 2001-04-25 |
出願番号 | 特願平8-82507 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16K)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 豊原 邦雄 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
刈間 宏信 鈴木 久雄 |
発明の名称 | 流量調節弁 |
代理人 | 小林 慶男 |
代理人 | 古川 秀利 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 池谷 豊 |
代理人 | 池谷 豊 |
代理人 | 長谷 正久 |
代理人 | 古川 秀利 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 黒岩 徹夫 |
代理人 | 長谷 正久 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 小林 慶男 |
代理人 | 黒岩 徹夫 |