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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07H
管理番号 1040510
審判番号 審判1999-382  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-06-14 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-12 
確定日 2001-06-05 
事件の表示 昭和63年特許願第220577号「結合オリゴヌクレオチド及びペプチドを有する膜」拒絶査定に対する審判事件[平成 1年 6月14日出願公開、特開平 1-151596]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,手続の経緯・本願発明
本願は、昭和63年9月5日(優先権主張 1987年9月4日 米国)の出願であって、請求項に係る発明は、平成11年2月10日付けで補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜13に記載されたとおりのものと認められ、請求項1には、次のとおり記載されている。
「1.保護されたヌクレオシド或はアミノ酸を結合させたポリマー膜を含む改質膜。」(以下、本願発明という。)
2,原査定の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物1〜5に記載された発明から、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
3,引用例に記載された事項
引用例3(Tetrahedron Letters Vol.21,pp719-722)には、以下の記載がされていると認める。
「古典的に、合成戦略に支持されたポリマーにおける主な問題は、ポリマー支持体であった。種々のポリマーが、支持体内への遅い拡散速度、多彩なマクロ孔質の過剰な膨潤、低架橋度のポリマーやポリマーに対する試薬の不可逆な吸着のために不十分であることが解かっていた。我々は、マクロ孔質な高速液体クロマトグラフィ(hplc)シリカゲルを選択した。この材料は、これらの問題に関わらないからである。ポリジメチルアクリルアミド、ポリアクリルモルホライド、ポリスチレンで表面をグラフトしたポリテトラフルオロエチレンからなる他のポリマーも、また有望である。」(719頁本文9行〜15行)
「チミヂンは、3’-OHを通して、カルボン酸を有する支持体にエステル結合している。」(720頁第1行)
引用例5(特開昭59-172500号公報)には、以下の点が記載されている。
「(1)固相として1又はそれより多くの支持体を平らな材料の断片の形で使用することによって任意に異なる配列を有するオリゴヌクレオチドを合成することを特徴とする、固相上のいくつかのオリゴヌクレオチドの連続的合成法。
(2)セルロース、合成材料又はガラスを基材とする任意に補強した(例えば繊維で補強いした)平らな材料を使用することを特徴とする前項(1)記載の方法。」(特許請求の範囲請求項1,2)
「今まで、非常に多くの支持体材料がかかる合成に使用されてきたが、それらが互いに調和されることが支持体材料及び合成方法にとつて必要であることは文献にも記載されている。当業者はこのような調和方法に精通している。これまで使用されたすべての支持体材料に共通している点は、それらが顆粒の形で使用されていることである。例えば、オリゴヌクレオチドはこれまで少量の顆粒上に個々に合成されてきた。」(3頁左上欄16行〜右上欄4行)
「 この課題は本発明に従って固相として平らな形の材料からなる1種又はそれより多くの支持体を使用することによつて解決される。平らな材料とは、互いに垂直である3次元の中の1つが実質的に残りの2つよりも小さい場合の材料であると解するべきである。平らな材料から成るこれらの支持体は断片(セグメント)として空間的に範囲を限定された形、例えはシート又は細片(ストリップ)の形で使用される。平らな材料は、例えはセルロース,合成材料又はガラス、あるいはこのタイプの補強(特に繊維補強)材料から構成されていてもよい。平らな材料は前記材料をべースとした紙であってもよい。かかる平らな材料の例は濾紙又はガラス繊維で補強した濾紙である。平らな材料は、例えばセルロースのようにそれ自体本質的に出発ヌクレオチドブロックに結合するのに適当であるか、又は当業者に公知の方法で例えば先行技術から上記目的に対して部分的に変えてもよい。
好ましい態様によれば、使用される平らな材料は液体反応媒体及び(又は)そこに含有される反応体に対して浸透性である。」(3頁左下欄4行〜右下欄5行)
「仮にモノヌクレオチドをブロックとして使用すると、異なる出発ヌクレオチドを担持した4群の支持体フィルムが必要であり、かつ各群は1種又はそれより多くの支持体フィルムを包含してもよい。」(4頁左上欄13行〜16行)
「各々のオリゴヌクレオチドは1群の支持体又は1群のセグメントの支持体フィルム上で合成される。この目的のために、出発ヌクレオチドに結合した支持体フィルムの遊離官能基は通常ブロックされ、かつ出発ヌクレオチドは脱保護される。」(4頁左上欄末行〜右上欄4行)
「『出発モノヌクレオチドブロック』において、ヌクレオチドのみがヌクレオシドによって置換されることができ、そして『出発オリゴヌクレオチドブロック』において、特に支持体材料に結合した最初のヌクレオチドがヌクレオシドによって置換されることができる。第2図は、どのようにしてセルロース(例えば濾紙)からなる支持体材料がサクシニル出発ヌクレオシドに結合し、次いでプロセスフリーのOH基がブロックされるかを示すものである。」(5頁右上欄7行〜16行)
4.判断
引用例5には、従来、支持体材料として顆粒状の形で使用されていたのを、平らな形の材料からなる支持体を使用することにより解決したことが記載され、平らな形の材料からなる支持体としてシートが例示され、平らな材料は、セルロースや合成材料でもよいことが示されている。そして、第2図によれば、保護されたヌクレオシドを結合させたセルロースについて示されている。さらに、具体的なヌクレオチドの合成においては、支持体フイルム上で合成されることが示されている。
そうすると、引用例5に記載の保護されたヌクレオシドを結合させたポリマー膜は具体的な例ではセルロースフイルムであるが、セルロースと同様に合成材料も使用できることが示されているのであるから、合成材料がセルロースフイルムと同様に使用できることは容易に理解できることである。
そして、引用例3に記載の事項を参照すると、保護されたヌクレオシドを結合させるためのポリマーとして、合成ポリマーが記載されているから、引用例5の合成材料に保護されたヌクレオシドを結合させ得ることも容易に予測できることである。
そうであれば、本願発明の保護されたヌクレオシドを結合させたポリマー膜を含む改質膜は、引用例3,5から容易に予測できることであり、また、本願発明によって得られる効果も格別顕著なものとはいえない。
5.むすび
したがって、本願発明は、引用例3,5に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-12-08 
結審通知日 2000-12-22 
審決日 2001-01-05 
出願番号 特願昭63-220577
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 種村 慈樹内藤 伸一  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 大久保 元浩
谷口 浩行
発明の名称 結合オリゴヌクレオチド及びペプチドを有する膜  
代理人 倉内 基弘  
代理人 風間 弘志  

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