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審決分類 審判 査定不服 4項(5項) 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C08L
審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 C08L
審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 C08L
管理番号 1040778
審判番号 不服2000-420  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1990-11-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-01-13 
確定日 2001-07-25 
事件の表示 平成 1年特許願第 88240号「耐熱性乾式摩擦材」拒絶査定に対する審判事件〔平成 2年11月 2日出願公開、特開平 2-269149、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 (1)手続の経緯・本願発明
本願は、平成1年4月8日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」〜「本願発明3」という。)は、平成12年7月11日付けの手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】石綿以外の補強繊維とフェノール樹脂等の結合剤及び硫酸バリウム等の摩擦調整剤とを含む摩擦材において、前記補強繊維の一部としてチタン酸カリウム繊維を摩擦材としての全量に対して0.5乃至50体積%含み、且つ、前記摩擦調整剤の一部として、粒径300μm以下のものを40重量%以上含有する(但し、150メッシュオンのものが5重量%以下しか含まれない場合を除く)と共に、残部が粒径1000乃至300μm(但し、300μmを除く)である黒鉛を摩擦材としての全量に対して0.5乃至30体積%含むことを特徴とする耐熱性乾式摩擦材。
【請求項2】石綿以外の補強繊維とフェノール樹脂等の結合剤及び硫酸バリウム等の摩擦調整剤とを含む摩擦材において、前記補強繊維の一部として、その表面が金属又は熱硬化性樹脂で被覆されているチタン酸カリウム繊維を摩擦材としての全量に対して0.5乃至50体積%含むことを特徴とする耐熱性乾式摩擦材。
【請求項3】石綿以外の補強繊維とフェノール樹脂等の結合剤及び硫酸バリウム等の摩擦調整剤とを含む摩擦材において、前記補強繊維の一部として、その表面が金属又は熱硬化性樹脂で被覆されているチタン酸カリウム繊維を摩擦材としての全量に対して0.5乃至50体積%含み、且つ、前記摩擦調整剤の一部として、粒径300μm以下のものを40重量%以上含有する黒鉛を摩擦材としての全量に対して0.5乃至30体積%含むことを特徴とする耐熱性乾式摩擦材。」
(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶理由において引用された、本願の出願の日前の他の出願であって、本願出願後に出願公開された特願平1-41131号(特開平2-219888号公報参照)の願書に最初に添付した明細書(以下、「先願明細書」という。)には、全組成物中にチタン酸カリウム繊維を5〜25重量%含有せしめてなる摩擦材組成物が記載され、その実施例には、フェノール樹脂にチタン酸カリウム繊維とともに黒鉛(日本黒鉛社製「CB150」)を5g添加することが記載されている。
(3)対比・判断
本願発明1と先願明細書に記載された発明を対比する。
先願明細書には、結合材としてフェノール樹脂、補強繊維としてチタン酸カリウム繊維及び黒鉛を含む摩擦材が記載され、またチタン酸カリウム繊維及び黒鉛の量においては、本願発明1と重複するものと認められる。ただ、本願発明1では、黒鉛として粒径300μm以下のものを40重量%以上含有する(但し、150メッシュオンのものが5重量%以下しか含まれない場合を除く)と共に、残部が粒径1000乃至300μm(但し、300μmを除く)であるとするのに対して、先願明細書では、黒鉛として日本黒鉛社製の「CB150」を使用するものである点で相違するものと認められる。
そこで、先願明細書に記載の黒鉛である「CB150」が本願発明1で限定するものに一致するかどうか検討する。
審判請求書の平成12年2月14日付手続き補正書に添付された参考資料1(日本黒鉛工業株式会社の商品カタログ)によれば、「CB150」の粒度は、「+150M5%以下-250M75〜90%」と記載されている。「+150M5%以下」というのは、150メッシュオンのものが5重量%以下であることを意味するものと認められる。本願発明1では「但し、150メッシュオンのものが5重量%以下しか含まれない場合を除く」としており、先願明細書に記載された黒鉛は除外されたものに該当しており、先願明細書に記載された黒鉛は本願発明1で特定する黒鉛には相当しないものと認められる。
したがって、本願発明1は、先願明細書に記載された発明と同一とすることはできない。
なお、本願発明2及び3は、補強繊維であるチタン酸カリウム繊維の表面が金属又は熱硬化性樹脂で被覆されるものであり、先願明細書には、そういったことの記載はなく、先願明細書に記載された発明と同一とすることはできない。
次に、上記補正された本願明細書について、特許法第36条に係わる記載不備が存在するかどうかについて検討する。
本願明細書の実施例に記載された黒鉛が本願発明1で特定するものに該当するものであるかどうかは、本願明細書の記載からは直ちには言えないとしても、本願請求項1における「150メッシュオンのものが5重量%以下しか含まれない場合を除く」という補正は、特許法第29条の2の規定の適用を回避するためになされた、特許請求の範囲を減縮する補正であって、それ以上の意味を有するものではなく、また、「150メッシュオンのものが5重量%以下しか含まれない場合を除く」こと自体は、当業者であれば容易に実施し得る程度のことと認められるから、そのことでもって、本願明細書の発明の詳細な説明には、その発明を当業者が容易に実施しうる程度には記載されていないとすることはできない。
(5)むすび
したがって、本願発明1は先願明細書に記載された発明とは同一とは認められないから、本願発明1が特許法第29条の2の規定する要件を満たしていないとした原査定の判断は妥当ではなく、また、補正後の本願明細書に特許法第36条に規定する要件を満足しない記載不備の存在を認めることもできない。
そして、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-07-03 
出願番号 特願平1-88240
審決分類 P 1 8・ 161- WY (C08L)
P 1 8・ 531- WY (C08L)
P 1 8・ 532- WY (C08L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川上 美秀増田 亮子天野 宏樹  
特許庁審判長 柿崎 良男
特許庁審判官 船岡 嘉彦
佐野 整博
発明の名称 耐熱性乾式摩擦材  
代理人 西川 裕子  
代理人 小島 隆司  

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