• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1040801
審判番号 不服2000-2060  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-10-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-02-17 
確定日 2001-06-29 
事件の表示 平成 4年特許願第 93827号「ディスクローディング装置およびディスク装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年10月15日出願公開、特開平 5-266565]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 《1》 手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年3月19日の出願であって、その請求項1,2に係る発明は、平成11年3月10日付け及び平成12年3月16日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、本願の特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
メインシャーシと、
ディスクを載置し、前記メインシャーシに対して進退するトレイと、
前記ディスクを回転させるターンテーブルと、
前記ターンテーブルを保持するとともに、前記メインシャーシに一端側が支持されるターンテーブルシャーシと、
前記ターンテーブルシャーシの他端側を支持し、前記トレイの進退に応じて前記ターンテーブルシャーシの一端側を支点として回動させ、前記ターンテーブルを退避位置または前記ディスクのチャッキング位置に移動させる駆動部材と、
前記ターンテーブルシャーシの一端側と他端側にそれぞれ配設され、前記ターンテーブルシャーシを前記メインシャーシおよび前記駆動部材に対して弾性支持する複数のインシュレータとを備え、
前記インシュレータは、凹部と、その凹部を挟む1対の膨張部とを有し、1対の前記膨張部が互いに異なる容積を有する中空状の弾性部材からなり、
前記凹部に取り付けられる前記ターンテーブルシャーシが1対の前記膨張部に、前記ターンテーブルの荷重が、より大きい容積を有する方に受けられるように挟持され、1対の前記膨張部の両端が、前記ターンテーブルシャーシの一端側においては前記メインシャーシに、他端側においては前記駆動部材に、それぞれ挟持されるように構成される
ことを特徴とするディスクローディング装置。」


《2》 引用例および周知例
これに対して、審査において平成11年10月1日付けで通知された拒絶の理由の概要は、本願発明は、その特許出願前日本国内で頒布された下記の刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
1.特開平4-14665号公報(以下、引用例3という。)
2.特開平3-120664号公報
3.実願平1-29004号(実開平2-123749号)のマイクロフィルム(以下、引用例2という。)
4.実願昭63-79882号(実開平2-5139号)のマイクロフィルム(以下、引用例1という。)

平成12年1月13日の拒絶査定においては、周知技術として以下の周知例が示されている。
5.実願昭63-108665号(実開平2-30198号)のマイクロフィルム(以下、周知例1という。)
6.実願平1-82306号(実開平3-23885号)のマイクロフィルム(以下、周知例2という。)


《3》 引用例および周知例に記載された事項
引 用 例
1. 実願昭63-79882号(実開平2-5139号号)マイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
(1)「1.ディスクを載置したトレイを水平移動させてキャビネット内のディスク再生位置に搬入した後、シャーシに一端が回動可能に支持されたフレームを下方より上方に上昇させ、フレームに設けられたターンテーブル上にディスクを載置するよう構成したディスク装着装置において、
ターンテーブル回転用モータの支持板が弾性を有する複数のスペーサを介在してフレームに設置され、更にフレームが上下方向に回動できるようにフレームの一端がシャーシに弾性体によって接続され、かつ、弾性体とスペーサの少なくとも1つが一体に形成されたことを特徴とするディスク装着装置。」(実用新案登録請求の範囲)

(2)「(ハ)考案が解決しようとする課題
しかしながら、このような従来の構成は、ヒンジ6を必要とするが、ヒンジ6は複数の部品から構成され、その取付作業も比較的手間を要するという問題がある。
この考案はこのような事情を考慮してなされたもので、ヒンジが更に単純な部品によって構成され組立作業に手間を要することのないディスク装着装置を提供するものである。」(ヒンジ9はヒンジ6の誤記のため上記のように認定した。)(第2頁第17行〜第3頁第5行)

(3)「(ホ)作用
フレームの一端が、弾性体によってシャーシに接続される。つまり、この弾性体がフレームを上下動させる回動ヒンジとして作用する。しかも、モータ支持板のスペーサと一体に形成されているので、部品点数が大幅に低減され、組立作業も容易になる。」(第3頁第20行〜第4頁第6行)
(4)「第1図は、この考案の一実施例を示す構成説明図であり、21はディスク22を載置するトレイ、・・・・・・・・・・・26は一端がシャーシ25に設けられた穴25aに嵌着され他端がフレーム24の穴24aに嵌着されたゴム製の弾性体、27はターンテーブル、28はディスク押さえ、29は出力軸にターンテーブルを備えモータ取付台30に設置されたモータ、31はモータ取付台30をフレーム24に固定するゴム製のスペーサ、31aは弾性体26と一体に成形されモータ取付台30をフレーム24に固定するスペーサである。・・・・・・・・弾性体26はそれぞれ2個ずつ(一方は図示しない。)使用されている。
このような構成においてトレイ21を水平移動させて第2図に示すようにキャビネット23の内部のディスク再生位置に搬送した後、フレーム24を下方より上方に上昇させると、第3図に示すようにディスク22はターンテーブル27の上に載置されディスク押さえ28によって固定される。このようにして、弾性体26はフレーム24から上下に回動可能できるようにフレーム24をシャーシ25に接続し、ヒンジとして作用すると共に防振材として作用する。更に、スペーサ31aと一体成形されているため、第4図に示す従来例に比べて部品点数が低減されると共に取付作業も極めて容易になる。」(第4頁第11行〜第5第17行)


2. 実願平1-29004号(実開平2-123749号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
(1)「メインシャーシと、このメインシャーシに前後移動可能に取り付けられたディスク載置用スライドテーブルと、メインシャーシに取り付けられ、スライドテーブルが所定位置まで後退移動すると、スライドテーブルに載置されるディスクをスライドテーブルから回転可能に再生位置まで持ち上げるサブシャーシとを備えてなるディスクプレーヤにおいて、
サブシャーシは、その後部がメインシャーシに枢支されて前部を略上下移動可能に構成され、かつ、上記前部の一側または両側に外方へ突出したガイド部材を有し、
スライドテーブルは、上記ガイド部材に対応する箇所に、ガイド部材をスライドテーブルの後退移動の前期には水平案内し、後退移動の後期には水平から徐々に上昇案内して、スライドテーブルに載置されるディスクを載置位置から再生位置へサブシャーシで持ち上げて移行させるガイド溝を有していることを特徴とするディスクプレーヤ。」(実用新案登録請求の範囲)

(2)「サブシャーシ4は、上面側に、水平回転されかつテーブル面に鋼板が貼られたターンテーブル12が設けられているとともに、後部において防振ゴム製の2本の取付軸8で枢支されており、前部が略上下方向へ移動できるようにされている。また、サブシャーシ4の前部には、L字板9がその水平部をサブシャーシ4の上面に対面させ、立ち上がり部をサブシャーシの右側方向へ向けて、2本の取付軸8で取り付けられている。このL字板9の立ち上がり部には、これに垂直であって右方向へ突出した細い丸棒状のガイド部材10が取り付けられている。」(第8頁第9行〜第20行)

(3)「一番前まで引き出されてディスクの出し入れ位置に置かれたスライドテーブル2のトレイ部2aにディスク3を載置した(第2図および第3図参照)後、ローディングボタンを押す。・・・・・・・・・・。そして、スライドテーブル2の後退移動に連れて、サブシャーシ4におけるガイド部材10が、ラック7におけるガイド溝11の水平部11aを案内され、・・・・・・・・・・・・・・・。このようなガイド部材10およびガイド溝11の傾斜部11bによって、サブシャーシ4は第6図のような傾斜状態から第8図のような水平状態へ移行し、ディスク3はターンテーブル12によって徐々に持ち上げられ、第6図に示すような載置位置から第8図に示すような再生位置へ移行される。」(第9頁第18行〜第11頁第5行)

3. 特開平4-14665号公報には、以下の事項が記載されている。
(1)「この駆動機構部シャーシ17は、トレイ2の外周側方向の端部が防振ゴム15を介して支持部材16に回動可能に取り付けられている。駆動機構部シャーシ17の他端部側には、駆動機構部シャーシ17を昇降駆動する為のシャーシ駆動レバー19が設けられ、このシャーシ駆動レバー19が防振ゴム15を介して駆動機構部シャーシ17を押し上げ、あるいはその動作を解除することにより、ターンテーブル12がディスク1を保持する為の上方位置および下方の退避位置へ移動するようになっている。」(第3頁右上欄第15行〜左下欄第5行)


周 知 例
1. 実願昭63-108665号(実開平2-30198号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
(1)「本シャーシ3は取付ビス4により本体1に固定される。5はゴム等弾性材により成る断面瓢箪形状の防振支持部材で、光デッキ2に設けた係合部2-1に瓢箪形状のくびれ部5-1が係合するよう取り付けられている。6は光デッキ取付ねじ、7は本体底板、8は本体底板7を本体1に取り付けるためのねじである。第6図は第5図の光デッキ取付装置の組み立て後の断面図である。」(第2頁第6行〜第13行)

(2)「このように、上下方向は、瓢箪形状の上下曲面部の変形寸法、横方向は、瓢箪形状のくびれ部内側寸法と、支持棒との空隙距離のみにより、防振している。
考案が解決しようとする課題
しかしながら防振支持部材の瓢箪形状の寸法は大きい程、防振効果を上げる事ができるが、CDプレーヤ本体の寸法により規制を受け、限られた寸法に制限されている。又、防振支持部材5を軟らかくすると、・・・・・・・・ ・、逆に硬くすると低い周波数は底当たりがしにくくなるため、防振性能は良くなるが高い周波数で悪くなる。」(第3頁第5行〜第18行)
(3)「以上のように本実施例によれば、振動を吸収する等価バネを3段に増やし、バネ定数を組み合わせる事により、高い周波数から低い周波数までの広い範囲の振動を吸収することができる。」(第6頁第9行〜第12行)

2. 実願平1-82306号(実開平3-23885号)のマイクロフィルムには、以下の事項が記載されている。
(1)「(1)ディスクプレーヤの機構部が設けられるサブシャーシを、弾性材により構成される防振体を介してメインシャーシに取付け、前記機構部の防振を行うディスクプレーヤの防振装置において、
前記防振体に前記サブシャーシが係合される様にくびれている係合部と、該係合部を挟んで前記サブシャーシの一方の面を支持する第1支持部と、該サブシャーシの他方の面を支持する第2支持部とを設けるとともに、前記第1及び第2支持部を中空構造にし、該第1支持部の内部に第1空気室を、前記第2支持部の内部に第2空気室をそれぞれ形成したことを特徴とするディスクプレーヤの防振装置。」(実用新案登録請求の範囲)

(2)「(ホ)作用
本考案は、弾性材から成る防振体に空気室を形成するに当たり、独立した第1及び第2の空気室を形成し、それらの空気室がそれぞれサブシャーシのそれぞれの面に配置される様に前記サブシャーシを支持し、該サブシャーシの面方向の垂直方向の振動を前記第1及び第2の空気室により制御する様にしている。」(第4頁第8行〜第15行)


《4》 引用例1の発明
上記《3》 引用例1.(1)〜(4)の記載から、実願昭63-79882号(実開平2-5139号号)マイクロフィルムには、ターンテーブルを保持するフレームを上下動させる回動ヒンジを弾性体によって形成し、弾性体は防振材としても作用することにより、部品点数の減少と、装置の組立作業を容易にしたディスク装着装置であって、
第1図〜第3図には、ターンテーブルとモータを備えたモータ取付台をフレームが、シャーシの下方に支持された構成が示されていて、ターンテーブルの荷重はフレームに支持されていることから、
引用例1には、
「シャーシと、
ディスクを載置し、水平移動するトレイと、
ターンテーブルと、
前記ターンテーブルとモータを備えたモータ取付台がスペーサを介して設置されるとともに、前記シャーシに一端側が支持されるフレームと、
前記トレイが再生位置に搬入した後、フレームの一端側を支点として回動させ、前記ターンテーブルをディスクをディスク押さえによって固定する位置へ、下方から上方に移動させるようにした構成であって、
前記フレームの一端側に配設され、前記フレームを前記シャーシを接続する一対の弾性体とを備え、
前記弾性体は、シャーシの穴とフレームの穴に嵌着され、かつ、スペーサと一体に形成された弾性部材からなり、
前記弾性体に取り付けられる前記フレームの一端側においては前記フレームが前記ターンテーブルの荷重を支持するように構成される
ことを特徴とするディスクローディング装置。」の発明(以下、引用例1の発明という。)が記載されていると認められる。


《5》 対 比
本願発明1と引用例1の発明を対比すると、
引用例1の発明の「シャーシ」「フレーム」「弾性材」「ディスク押さえによって固定する位置」
本願発明1の「メインシャーシ」「ターンテーブルシャーシ」「インシュレータ」「チャッキング位置」に相当し、
インシュレータがディスクローディング時に回動支点として作用する点で共通し、引用例1の発明の「水平移動」は第1〜3図から、「シャーシに対して進退する」ことが明かであるから、
両者は、
「メインシャーシと、
ディスクを載置し、前記メインシャーシに対して進退するトレイと、
前記ディスクを回転させるターンテーブルと、
前記メインシャーシに一端側が支持されるターンテーブルシャーシからなり、
前記ターンテーブルシャーシは、前記ターンテーブルシャーシの一端側を支点として回動し、前記ターンテーブルを前記ディスクのチャッキング位置に移動させ、
前記ターンテーブルシャーシの一端側に配設され、前記ターンテーブルシャーシを前記メインシャーシに対して弾性支持する複数のインシュレータとを備え、
前記インシュレータは、弾性部材からなり、
前記ターンテーブルシャーシが、ターンテーブルの加重を受けられるように、前記ターンテーブルシャーシの一端側においては前記メインシャーシに、支持されるように構成される
ことを特徴とするディスクローディング装置。」で一致し、

以下の点で、相違する。
(1)本願発明1では、ターンテーブルはターンテーブルシャーシに直接保持され、ターンテーブルをトレイの進退に応じてターンテーブルを退避位置とチャキング位置に移動させる駆動部材がターンテーブルシャーシの他端側に配設されており、ターンテーブルシャーシは駆動部材にインシュレータで弾性支持されているのに対して、
引用例1の発明では、ターンテーブルはモータ取付台に保持され、モータ取付台はスペーサを介してフレームに取り付けられていて、ターンテーブルのチャキング位置への移動時期はトレイが再生位置に移動した後であり、ターンテーブルをチャキング位置に移動させる駆動部材について記載がなく、シャーシとは反対側のフレームの他端側の構成については明示されていない点で相違する。

(2)本願発明1のインシュレータの形状が、凹部とその凹部を挟む1対の膨張部とを有し、1対の前記膨張部が互いに異なる容積を有する中空状であり、大きい容積を有する膨張部がターンテーブルの荷重を受けるように、凹部が、ターンテーブルシャーシ挟持されるのに対して、引用例1の発明では、シャーシ、フレーム、モータ取付台の穴に嵌着される形状である点で相違する。


《6》 当審の判断
相違点について検討する。
相違点(1)について
ディスク装置において、ターンテーブルを保持したターンテーブルシャーシが、トレイの進退に応じてターンテーブルを退避位置とチャキング位置に移動するように、駆動部材がターンテーブルシャーシの他端側に配設されていて、ターンテーブルシャーシの一端側でメインシャーシに、他端側で駆動部材に防振ゴムで弾性支持された構成が、引用例2,3に記載されているように公知であり、これが同じ技術分野に属することから、これらに倣って、引用例1の発明において、ターンテーブルをターンテーブルシャーシで直接保持し、ターンテーブルをトレイの進退に応じてターンテーブルを退避位置とチャキング位置に移動させるように駆動部材をターンテーブルシャーシの他端側に配設し、駆動部材をインシュレータでターンテーブルシャーシに弾性支持するように形成することは、容易に想到できることと認められる。

相違点(2)について
ディスク装置において、凹部とその凹部を挟む一対の膨張部からなり、凹部にシャーシを挟持するインシュレータは、周知例1,2に示されているとおりである。
一般的に、インシュレータにおいては、受ける荷重に応じて、インシュレータ壁部の厚み、硬軟、大小等、形状等を変更することは、必要に応じて適宜行われており、凹部とその凹部を挟む一対の膨張部からなる周知のインシュレータにおいても、一対の膨張部の大きさをそれぞれ変えることは適宜であり、ターンテーブルの荷重を受ける側の膨張部を大きくする程度のことは、格別の発明力を要するものとは認められない。


《7》 む す び
したがって、本願発明1は、引用例1の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-05-08 
結審通知日 2001-05-08 
審決日 2001-05-21 
出願番号 特願平4-93827
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 和俊  
特許庁審判長 麻野 耕一
特許庁審判官 犬飼 宏
相馬 多美子
発明の名称 ディスクローディング装置およびディスク装置  
代理人 稲本 義雄  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ