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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G03G
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  G03G
審判 全部申し立て 発明同一  G03G
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  G03G
管理番号 1041078
異議申立番号 異議1998-75406  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-02-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-11-05 
確定日 2000-12-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2748366号「電子写真用現像剤」の請求項1乃至2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2748366号の請求項1乃至2に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第2748366号に係る発明は、昭和62年8月10日に出願され、平成10年2月20日にその発明についての特許の設定登録がなされた。本件特許公報は、平成10年5月6日に発行され、その特許に対して、特許異議申立人笹木久男より特許異議の申立があり、取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成11年5月18日付で訂正請求がなされた。これに対して、審尋の後、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内の平成12年10月24日に意見書が提出された。
II.訂正の内容
平成11年5月18日付訂正請求における訂正の内容は、次のとおりである。
訂正事項a
特許請求の範囲の第1項及び第2項における、「電子写真現像剤」及び「外添剤層を有し、」をそれぞれ「電子写真用現像剤」及び「外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、」と訂正し、同第2項における「有しないものであること」を「有しないこと」と訂正する。
訂正事項b
特許明細書第5頁第5〜14行(本件特許公報第2頁第3欄第38〜49行)「本発明・・・・特徴とする。」を「本発明の電子写真用現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とよりなるものであって、その第1のものは、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする。また、第2のものは、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子及びクリーニング助剤粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする。」と訂正する。
III.訂正の適否についての判断
1.訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び特許請求の範囲の拡張又は変更の有無
上記訂正事項aにおける、「電子写真現像剤」を「電子写真用現像剤」とする訂正は、特許明細書の特許請求の範囲において、末尾の「電子写真用現像剤」と不一致があるため、また、「有しないものであること」を「有しないこと」とする訂正は、第1項の記載と不一致があるため、明瞭でない記載の釈明を目的としてする訂正に該当する、また、外添剤層の形態の限定は、明細書第6頁第6〜12行(本件特許公報第2頁第4欄第11〜16行)の記載を根拠とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。 また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aによる訂正に伴う明細書の記載の不整合を正すものであるから、明細書の明瞭で記載の釈明を目的とする訂正に該当する。
そして、上記訂正事項a〜bは、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項を追加するものでもないし、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものでもない。
2.独立特許要件の判断
2-1.訂正明細書の請求項に係る発明
「(1)トナー粒子とキャリア粒子とよりなる電子写真用現像剤において、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする電子写真用現像剤。
(2)トナー粒子とキャリア粒子とよりなる電子写真用現像剤において、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子及びクリーニング助剤粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする電子写真用現像剤。」
2-2.取消理由の概要
これに対して、取消理由通知の概要は、(理由1)本件請求項1〜2に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反したものである、(理由2)本件請求項1〜2に係る発明は、先願1明細書に記載された発明であるから、特許法第29条の2第1項の規定に違反したものである、(理由3)本件明細書の記載における「穂立ち構造を有しない」とはその定義が明瞭でないから、本件明細書は、特許法第36条第3項及び第4項の規定を満足していない、というものである。

刊行物1 特開昭56-66856号公報
刊行物2 特開昭62-129866号公報
刊行物3 「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化 総合技術資料集」第70〜71頁 日本科学情報(株)出版部 昭和60年9月30日
先願1明細書 特願昭62-146282号(特開昭63-311264号公報参照)
2-3.刊行物1〜3及び先願1明細書に記載された発明
刊行物1には、「トナーの表面が、そのトナーが適用されるトナー像形成部材の表面の硬さよりも硬い物質からなる微粉末で被われており、かつ前記微粉末は、その微粉末の一部分が前記トナー中に埋没していることを特徴とする乾式トナー。」(特許請求の範囲)に関して、「本発明の乾式トナーの一実施例を説明するに、図面において、総括的に符号1で示される乾式トナーは、トナー2と、このトナー2の表面を被つている微粉末3とからなる。」(第2頁左上欄第9〜12行)、「トナー2の表面を被つている微粉末3は、上述したように、トナー2が適用されるトナー像形成部材の表面の硬さよりも硬い物質からなつていることが必要で、そのような微粉末を形成する物質は、・・・・のような金属や、あるいはこれらの金属の少なくとも一種を主成分とする合金、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化硅酸、酸化チタン、酸化鉄、各種フエライトや、・・・・などのセラミックス、・・・・などの無機化合物、ポリアセタール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂のような合成樹脂や、・・・樹脂の中でも比較的硬い樹脂のなどの中から選定される。上記物質の2種以上を混合したようなものであってもよい。」(第2頁右上欄下から第2行〜同頁左下欄下から第3行)、「本発明の乾式トナーは、トナーの表面が、そのトナーが適用されるトナー像形成部材の表面の硬さよりも硬い物質からなる微粉末で被われているので、トナー像形成部材の表面に固着して残留することが少なく、その表面を長期間にわたって清浄な状態に維持すことができる。また仮に残留したとしても容易に除去できることができるから、画質の低下や地汚れを引起す心配がない。」(第2頁右下欄下から第6行〜第3頁左上欄第3行)と記載されている。
刊行物2には、「トナーとキャリアとよりなる静電像現像用正帯電性現像剤において、トナーの粒子が、その表面に、アルミナ微粒子および/または酸化チタン微粒子と、シリカ微粒子とを含有してなることを特徴とする静電像現像用正帯電性現像剤。」(特許請求の範囲)に関して、「本発明は・・・・・、その目的は、トナーを正に帯電させしかもその帯電量を現像に適正なものとすることができ、しかも流動性が良好であってトナーの凝集が生ぜずトナーとキャリアとの良好な摩擦帯電性が長期間に亘り安定して得られ、結局長期間に亘り安定に良好な可視画像を形成することができる静電像現像用正帯電性現像剤を提供することにある。」(第2頁左下欄第9〜17行)と記載されている。
刊行物3には、「最近のトナーは、一成分系に限らず、2成分トナーに於いても、流動化剤等の微粉末を表面に処理する事が大切になった。・・・この処理を適正に施こすことにより、画質性能を向上さす事が出来る点で盛んに検討された。疎水性シリカ・・・、酸化チタン、・・・・アルミナ等の微粉末は、トナーの凝集防止、カブリ防止に有効に作用する。・・・・この様にトナー表面処理をする事によりトナー特性(流動性、凝集性、帯電性、クリーニング性)の改善をはかる事が出来る。」(第70頁下から第10〜4行)、「その他、表面処理剤としては、ステアリン酸、ポリフッ化ビニリデン粉末、ポリスチレン粉末、ポリフッ化エチレン粉末、酸化セリウム、及び混合物などがあり、・・・・・特殊なケースとしては、トナー表面にシリカを埋め込む方法・・・、・・・提案もある。」(第71頁下から第5〜1行)と記載されている。
先願1明細書には、「熱軟化温度20℃〜100℃の熱可塑性樹脂を主成分とするトナー用コア粒子(A)と、着色剤、磁性粉、電荷制御剤、その他の微粒子から選ばれる1種もしくは2種以上の平均粒子径2.0μm以下の微粒子(B)とを機械的歪力をもって混合し、コア粒子(A)の表面に微粒子(B)を固着もしくは一部内部に埋め込むことことにより、コア粒子(A)の表面の50〜500%を微粒子(B)によって被覆してなる低温定着性電子写真用トナー。」(特許請求の範囲第1項)に関して、「(B)微粒子としては、平均粒径2.0μm以下の着色剤、磁性粉、電荷制御剤など自体電子写真用トナーの成分として用いられるもの、および電子写真用トナーとして用いられてもその特性を害しないものが使用可能である。平均粒径2.0μm以上の微粒子(B)ではコア粒子(A)に固着もしくは表面に埋め込まれ難くなる。」(第2頁右下欄第10〜16行)、「磁性粉としては、2.0μm以下の平均粒径をもつ微細な磁性粉を用いることが好ましく、各種のフェライト、マグネタイト、ヘマタイトなどの鉄、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガンなどの合金もしくは化合物などの自体公知のものを使用することができ、これらの磁性粉は目的によっては分級したものであってもよいし、自体公知の表面処理、例えば疎水処理あるいはシランカップリング剤処理などを施したものであってもよい。」(第3頁左上欄第5〜13行)、「その他の微粒子としては、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化鉄、硫酸バリウム、炭化ケイ素、酸化セリウム、シリカ、カーボン粉などの無機微粒子、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとビニルフルオライド、トリフルオルエチレン、エチレン、プロピレンあるいはブテンなどとの共重合体、ポリスチレン、スチレン-メタクリル酸メチル共重合体、キシレン樹脂、ポリアミド、クマロン-インデン樹脂などの石油樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などを使用することができる。」(第3頁右上欄第3〜14行)、「上記コア粒子(A)に微粒子(B)を機械的歪力を以て固着もしくは一部表面に埋め込む条件としては、コア粒子(A)が融着して大きい塊となったり、逆に大き過ぎて微細に粉砕されたりすることがない条件であり、このような両条件を満たす具体的な方法としては、工業的には、ボールミル、サンドミルなどの分散機などの運転条件、処理量、分散媒体などの条件を上記の目的が達成されるように変更すればよい。・・・・・また、コア粒子(A)と、微粒子(B)とは、上記混合処理よりも弱い撹拌条件、例えばヘンシェルミキサーで予備混合することが好ましい。このような予備混合によりコア粒子(A)に微粒子(B)を静電的に付着せしめておくと混合処理がスムースに行なえる。」(第3頁右下欄下から第3行〜第4頁右上欄第5行)と記載されている。そして、実施例1として、平均粒径約10μmのコア粒子100部、平均粒径0.35μmのカーボン粉(セバカルボMT-CI、コロンビアカーボン社製商品名)に電荷制御剤(PNR-BE、オリエント化学(株)製商品名)を担時した担持体粉末6部、黒色顔料(カーボンブラック、モナーク880、キャボット社製商品名)2部及び平均粒径0.3μmのマグネタイト粉末(MAT305、戸田工業(株)製商品名)18部をマルチブレンダーミルBL-1型(日本精機製作所製混合容器800ml)にて、周速8m/秒で5分間予備混合し、次いでこの混合物100gをハイブリタイザーNHS-I型で6,400rpmで4分間運転して、平均粒径11μmで、5μm以下および25μm以上の粒子を実質的に含まないトナーを得て、このトナー100部にシリカ微粉末(日本アエロジル(株)製 R-972、商品名)0.3部およびマイクロキャリアMC・30(東洋インキ製造(株)製キャリア)700部を添加・混合して現像剤を製造したことが示されている。
2-4.対比・判断
a.特許法第36条違反について
本件明細書において、穂立ち構造は、第2図にその形態が模式的に示されており、かつ明細書に、「従来用いられているトナー粒子は、第2図に示すように、トナー粒子上で、金属酸化物、シリカ粒子、クリーニング助剤等の外添剤粒子同士は弱い付着力で付着し合い、穂立ち構造となってトナーに弱く付着している」(本件特許公報第2頁第4欄第6〜10行)と記載されているから、弱い付着力で付着した外添剤同士はトナー粒子表面から外に向かって伸びた状態、即ち稲穂の穂立ちのような状態を意味していることを表していると解される。
また、「穂立ち」に関しては、二成分磁気ブラシ現像において、キャリア粒子が磁気力で連なりブラシの「穂立ち」を形成することは当業者に周知のことであるから、「穂立ち構造」は、(稲穂のように)多数の粒子が外に向かって鎖状若しくは線状に連なる状態、を意味していることは、当業者においては明確であるといえる。
そして、「穂立ち構造を有さない」については、第1図にもその構造が模式的に示されているから、「外添剤層が穂立ち構造を有さない」とは、外添剤の外に向かっての鎖状若しくは線状の連なりが存在しない状態を意味していることは、明細書の記載から明瞭であるといえ、外添剤層の穂立ち構造の有無は、明細書の実施例及び比較例で記載されているように、電子顕微鏡による観察で判定できると認められる。(平成12年3月9日付回答書に添付された電子顕微鏡写真参照。)
したがって、「外添剤層が穂立ち構造を有さない」に関して、明細書の記載に不備があるとすることはできない。
b.特許法第29条第2項の規定違反について
(請求項1に係る発明について)
刊行物1の図は、トナー粒子及び外添剤の微粒子について、それらの実際の大きさを考慮すると、トナー粒子を微粒子が被覆した実際の表面の状態を示したものではなく、被覆した状態を極めて模式的に示したものと解されるから、この図から、外添剤である微粒子が、トナーの表面を全体を「穂立ち構造を有しない」で被覆しているとすることは妥当とはいえない。
請求項1に係る発明(「前者」という)と刊行物1に記載された発明(「後者」という)を対比すると、「電子写真用現像剤のトナー粒子が、その表面を微粒子で被覆したトナー粒子」では一致するが、(イ)トナー粒子が、前者では、「その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しない」と特定されるのに対して、後者では、このような特定が何もない点、(ロ)電子写真用現像剤が、前者では、上記特定のトナー粒子とキャリア粒子からなるとされるのに対して、後者では、キャリア粒子を成分として含むことが不明である点、で相違する。
上記相違点(イ)に関して、刊行物2には、トナー粒子の表面に、アルミナ微粒子および/または酸化チタン微粒子と、シリカ微粒子とを含有してなるものが開示されているにすぎないこと、また、刊行物3には、トナー表面に流動化剤等の微粉末を表面処理することが記載されているにすぎないことから、刊行物2〜3には、少なくとも、上記相違点(イ)についての構成を示唆する記載はない。
これに対して、本件請求項1に係る発明は、外添剤層が穂立ち構造を有しない点に特徴を有し、トナー同士の電荷交換性を向上させ、トナーの追加投入(トナーアドミックス)も電荷分布がシャープで、感光体の非画像部へのトナーの付着が極めて少なく、電子写真複写装置内の汚れの少ないという優れた効果を示すものであることは、明細書の実施例3と比較例3に示される試験結果を対比すれば、明らかである。
したがって、請求項1に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(請求項2に係る発明について)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、外添剤として、更にクリーニング助剤粒子を併用することを要件とするものであるから、請求項1に係る発明において述べた理由と同様の理由により、請求項2に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
c.特許法第29条の2違反について
訂正後の請求項1に係る発明(「前者」という)と、先願1明細書の実施例1に記載された発明(「後者」という)を対比する。
後者における、「トナー用コア粒子」、「磁性粉としてのマグネタイト」及び「その他の微粒子としてのシリカ」は、前者における、「トナー粒子」、「外添剤としての金属酸化物微粒子」及び「外添剤としてのシリカ微粒子」に、それぞれ相当するから、両者は「トナー粒子とキャリア粒子とよりなる電子写真用現像剤において、トナー粒子が、その表面を金属酸化物微粒子及びシリカ微粒子からなる外添剤層で被覆したトナー粒子」で一致するが、(イ)外添剤層の状態について、前者では、「電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子とよりなる付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しない」と特定しているのに対して、後者では、「外添剤としての微粒子が固着もしくは一部内部に埋め込まれた」と特定しているにすぎない点、で相違している。
先願1明細書の実施例の記載によれば、微粒子が固着もしくは一部内部に埋め込まれた状態は、微粒子がコア粒子と一体化されたものと解されるから、先願1明細書に開示のトナー粒子は、本件請求項1に係る発明でいう、外添剤を付着せしめた外添剤層を有するものに該当するとはいえないし、外添剤層が穂立ち構造を有しないものに該当するともいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、先願1明細書に記載されたものとはいえない。
(請求項2に係る発明について)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、外添剤として、更にクリーニング助剤粒子を併用することを要件とするものであるから、請求項1に係る発明において述べた理由と同様の理由により、請求項2に係る発明は、先願1明細書に記載されたものとはいえない。
よって、本件請求項1〜2に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号、以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
IV.特許異議申立について
1.特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人笹木久男は、甲第1号証(特願昭62-78027号(特開昭63-244054号公報参照)、甲第2号証(特願昭62-146282号(特開昭63-311264号公報参照))(取消理由で引用した先願1明細書に同じ)、甲第3号証(特開昭56-66856号公報)(取消理由で引用した刊行物1に同じ)、甲第4号証(「最近の電子写真現像システムとトナー材料の開発・実用化 総合技術資料集」第70〜71頁、日本科学情報(株)出版部 昭和60年9月30日)(取消理由で引用した刊行物3に同じ)及び甲第5号証(特開昭62-129866号公報)(取消理由で引用した刊行物2に同じ)を提出して、(1)本件明細書の記載における「穂立ち構造を有しない」とはその定義が明瞭でないから、本件明細書は、特許法第36条第3項及び第4項の規定を満足していないものである、(2)訂正前の請求項1〜2に係る発明は、本件特許の出願前の出願である甲第1号証及び甲第2号証の先願明細書に記載された発明と同一であるから、特許法第29条の2第1項の規定により、その特許を取消すべきである、(3)訂正前の請求項1〜2に係る発明は、甲第3〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、その特許を取消すべきである、旨主張する。
2.判断
異議申立人の提出した証拠である甲第2号証〜甲第5号証は、上記の「2.独立特許要件の判断」欄に示した先願1明細書及び刊行物1〜3と同一のものであり、その申立理由(1)〜(3)も、上記の「2.独立特許要件の判断」欄の(理由1〜3)と同様のものであるから、それらに対する判断は、上記の「2.独立特許要件の判断」欄に示した通りである。
甲第1号証には、「少なくとも結着樹脂と着色剤とを有する着色粒子(A)と該着色粒子(A)の0.2以下の粒径比を有する研磨粒子(B)を、雰囲気温度10〜90℃の条件下で回転片と固定片から形成される0.5〜5mmの最短間隙を有する衝撃部または少なくとも2種の回転片から形成される0.5〜5mmの最短間隙を有する衝撃部を通過させ、該衝撃部における機械的衝撃により該着色粒子(A)の表面に該研磨粒子(B)を被覆率0.1〜10%で固定して静電荷像現像用トナーを生成し、該トナーと潤滑性微粉体を混合する事を特徴とする静電荷像現像用現像剤の製造方法。」(特許請求の範囲)に関して、「研磨性を有する粒子(B)とはモース硬度3以上の無機金属酸化物、窒化物、炭化物、硫酸あるいは炭酸金属塩の1種又は2種以上が用いられる。以下に具体例を示すがこれらに限定されるものではない。SiO2,SrTiO3,CeO2,CrO,Al2O3,MgO等の金属酸化物,Si3N4等の窒化物、SiC等の炭化物、CaSO4,BaSO4,CaCO3等の硫酸あるいは炭酸金属塩がある。・・・・・かかる研磨性を有する粒子を固定化したトナーは、感光体からのトナーあるいは紙粉等の低抵抗物質のクリーニングを容易にするという観点から外添される脂肪酸金属塩やPVOF(ポリビニリデンフルオライド)等の潤滑性微粉体との系において好ましい効果を生ずる。かかる観点から用いられる潤滑性微粉体とはテフロン、ポリビニリデンフルオライド、フツ化炭素等のフツ素重合体粒子、ステアリン酸亜鉛粒子等の脂肪酸金属塩が好ましく用いられる。」第4頁右下欄下から第2行〜第5頁右上欄第7行)、「固定化の方法は粒子(B)を分散し均一に粒子(A)に付着せしめる前処理と、付着せしめた粒子(B)を衝撃力により、固定化する工程の2つからなる。前処理は粒子(B)を分散しつつ、粒子(A)と摩擦せしめて静電力(及びフアンデルワールス力)により粒子(A)に付着せしめ、一般的には高速の撹拌羽根付きの混合機が用いられるが、混合機能と分散機能を有するものであればこれに限定されるものではない。」(第5頁右上欄下から第7行〜左下欄第3行)、「本発明の製造方法で得られたトナーは、公知の乾式静電荷像現像法に適用できる。例えば、カスケード法、磁気ブラシ法、マイクロトーニング法、二成分ACバイアス現像法などの二成分現像法;トナー担持体上に静電気的力によって保持されることによってトナーが現像部へ搬送され、現像に供される非磁性一成分現像法;電界カーテン法によりトナーが下現像部へ搬送され、現像に供される電界カーテン法などに適用可能である。」(第11頁右上欄第7〜18行)と記載されている。そして実施例-1には、カーボンブラックと共に重合性単量体を懸濁重合した後、水洗、脱水、乾燥して体積平均径11μ径の粒子(A)を得たこと、粒子(A)1000重量部に、体積平均径1μのCeO2粒子(B)10重量部を回転片から形成される衝撃部を有する処理装置で処理して被覆率0.5%としたものを電子顕微鏡で観察すると部分的に融着固定されたトナーが得られたこと、このトナー100重量部に、アミノシリコンオイルで処理されたコロイダルシリカ0.5重量部とポリフツ化ビニリデン粒子(体積平均3.7μ)0.1重量部を外添して現像剤としたこと、この現像剤にシリコーン樹脂で被覆された25〜300メッシュのフェライト粒子1000重量部と混合して用いて、複写機で画出しを行ったことが示されている。
本件請求項1に係る発明(「前者」という)と甲第1号証の実施例に記載された発明(「後者」という)を対比すると、後者における、「粒子(A)」、「CeO2体積平均径1μの粒子(B)」、「アミノシリコンオイルで処理されたコロイダルシリカ」及び「シリコーン樹脂で被覆されたフェライト粒子」は、前者における、「トナー粒子」、「金属酸化物微粒子」、「シリカ微粒子」及び「キャリア粒子」にそれぞれ相当するから、両者は「トナー粒子とキャリア粒子とよりなる電子写真用現像剤において、トナー粒子が、その表面を金属酸化物微粒子及びシリカ微粒子からなる外添剤層で被覆したトナー粒子」で一致するが、(イ)外添剤層の状態について、前者では、「電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子とよりなる付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しない」と特定しているのに対して、後者では、外添剤としての金属酸化物(CeO2)粒子をトナー粒子に融着固定したと特定しているにすぎない点、で相違している。
甲第1号証の実施例における、CeO2粒子(B)がトナー粒子(粒子(A))に融着固定された上で、コロイダルシリカ等で被覆されたトナーは、本件請求項1に係る発明でいう、金属酸化物微粒子とシリカ微粒子からなる外添剤をトナー粒子に付着せしめた外添剤層を有するものに該当するとはいえないし、外添剤層が穂立ち構造を有しないものに該当するともいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明が、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。
また、請求項1に係る発明で述べた理由と同様の理由により、本件請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。
V.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては、本件請求項〜2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件請求項1〜2に係る特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対して付与されたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電子写真用現像剤
(57)【特許請求の範囲】
(1)トナー粒子とキャリア粒子とよりなる電子写真用現像剤において、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする電子写真用現像剤。
(2)トナー粒子とキャリア粒子とよりなる電子写真用現像剤において、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子及びクリーニング助剤粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする電子写真用現像剤。
【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野
本発明は、電気的な潜像を現像するための電子写真用現像剤、特に電荷交換性を向上させ、電子写真感光体の非画像部へのトナーの付着が極めて少ない電子写真用現像剤に関する。
従来の技術
従来、電子写真法としては、米国特許第2,297,691号明細書、特公昭42-23910号公報及び特公昭43-24748号公報などに各種の方法が記載されているが、一般には、光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成させ、次いで、該潜像をトナーを用いて現像し、必要に応じて紙などに粉体像を転写した後、加熱あるいは溶剤蒸気などにより定着し、コピーを得るものである。
電気的な潜像をトナーを用いて可視化する方法としては、例えば米国特許第2,874,063号明細書に記載されている磁気ブラシ法、同第2,618,552号明細書に記載させているカスケード現像法及び同第2,221,776号明細書に記載されている粉末雲法等が知られている。
電子写真用現像剤としては、ポリスチレン、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリエステル等の樹脂類にカーボンブラック、フタロシアニンブルー等の顔料又は染料を着色剤として使用し、溶融混練後、1μmから30μmに粉砕して得られたトナーと、キャリアとして平均粒径がトナーの粒径とほぼ同じか、ないしは500μmまでのガラスビーズ、鉄、ニッケル、フェライト等の粒子、あるいはこれ等に種々の樹脂を被覆したものとを混ぜ合わせたものが一般に用いられている。
しかしながら、これ等の現像剤だけでは、所望の帯電量、帯電速度、電荷交換性、帯電の均一性、画質の環境依存性及び現像剤の耐久性等が得られない。そのため、しばしば、帯電コントローラーを添加剤として加える試みが行われている。
発明が解決しようとする問題点
しかしながら、従来用いられている帯電コントローラーを単に添加して用いるだけでは、必ずしも上記した要求を満足するものでなく、特に、電気抵抗値が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物粉末を帯電コントローラーとして外添した系では、所望の帯電量と電荷交換性が得られる添加量とは一致せず、帯電量を所望の値に合わせると、電荷交換性が著しく悪くなって、感光体の非画像部へのトナーの付着が多くなり、カプリの多いコピーしか得られない結果となる。
したがって、本発明の目的は、上記従来の技術において要求される性質のすべてを満足する電子写真用現像剤を提供することにある。
すなわち、本発明の目的は、所望の帯電量を実現し、なおかつ、優れた電荷交換性を有し、トナーアドミックス後(追加トナーを混合した後)も、電荷分布がシャープで感光体の非画像部へのトナー付着が極めて少なく、機内汚れも少なく、耐久性にも優れ、多数枚の複写にも安定した画質を得ることができる電子写真用現像剤を提供することにある。
問題点を解決するための手段
本発明者等は、上記の目的を達成するために、下記のようなトナー構成にすることによって解決した。
本発明の電子写真用現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とよりなるものであって、その第1のものは、トナー粒子がその表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、その外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする。また、第2のものは、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子及びクリーニング助剤粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、その外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする。
本発明の電子写真用現像剤を図面によって説明する。第1図は、本発明の電子写真用現像剤に於けるトナー粒子の模式的断面図、第2図は従来用いられているトナー粒子の模式的断面図であって、1はトナー粒子、2は金属酸化物粒子、3はシリカ微粒子、4はクリーニング助剤を示す。
従来用いられているトナー粒子は、第2図に示すように、トナー粒子上で、金属酸化物粒子、シリカ微粒子、クリーニング助剤等の外添剤粒子同士は弱い付着力で付着し合い、穂立ち構造となってトナーに弱く付着している。
これに対し、本発明の電子写真用現像剤に於けるトナー粒子は、第1図に示す様に、トナー粒子表面上に形成された外添剤層には穂立ち構造は存在しない。又、外添剤粒子はトナー及び外添剤粒子同士と比較的強く付着し合い、トナー全体又は、トナーの一部を被覆するようにトナーと付着している。
本発明において金属酸化物微粒子の電気抵抗は、102Ω・cm〜109Ω・cmであることが必要であり、好ましくは105Ω・cm〜108Ω・cmである。電気抵抗が102Ω・cmより低い場合には、現像剤の電気抵抗が低くなり、又摩擦帯電効果が薄れ、転写性の低下、あるいは像濃度の低下やカプリの上昇をきたす。また109Ω・cmより高い場合には、エッジ効果が出易く、又、摩擦帯電量が大きくなり過ぎ、像濃度の低下や、転写性の低下をきたす。
本発明において使用できる金属酸化物としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム等があげられる。
金属酸化物微粒子の平均粒径は好ましくは0.3μm以下のものである。この金属酸化物微粒子は、トナー100重量部に対して0.1〜5.0重量部、より好ましくは1.0〜3.0重量部の範囲の含有量において、好結果を与える。
なお、金属酸化物微粒子の上記電気抵抗値は、直径5、5cmのテフロンセル、直径4.2cm、面積13,85cm2のプレスラムを用いた簡易型比抵抗測定装置において、ハンドプレスに油圧35.5kg/cm2の圧力(試料には100kg/cm2の圧力がかかる)をかけて測定したものである。又、金属酸化物微粒子の粒径は、自然沈降法及び遠心沈澱法により求めたものである。
本発明において、シリカ微粒子としては、シリカ微粒子そのもの、又は、特公昭54-16219号公報に記載されているごとき硅素-炭素結合によって直接に硅素に結合されている1〜3個の有機基を有する硅素原子が硅素-酸素-硅素結合を介して化学的に結合した、表面硅素原子を有する二酸化硅素粒子があげられる。シリカ微粒子は疎水性表面処理が施されていてもよい。
又、クリーニング助剤としては、フッ化ポリビニリデン粉末、ポリメタクリル酸メチル粉末があげられる。
又、本発明においてトナー粒子としては、公知のものが使用される。このトナー粒子に使用される結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン、ビニルスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα-メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン等の単独重合体あるいは共重合体を例示することができ、特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸アルキル共重合体、スチレン-メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレンをあげることができる。
更に、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィン、ワックス類をあげることができる。
又、トナーの着色剤としては、カーボンブラック、ニグロシン染料、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアリンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.Iピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等を代表的なものとして例示することができる。
なお、本発明において、結着樹脂及び着色剤は上記の例示したものに限定されるものではない。
本発明において、トナー粒子は、約30μmより小さく、好ましくは3〜20μmの平均粒径を有するものを用いることができる。
本発明の電子写真用現像剤は、キャリアとトナーとを有する、いわゆる二成分現像剤として用いられる。
キャリア粒子としては、平均粒径が500μmまでの粒子であり、鉄、ニッケル、コバルト、酸化鉄、フェライト、ガラスビーズ、粒状シリコン等、公知の種々のものが用いられる。
また、これ等粒子の表面をフッ素系樹脂、アクリル系樹脂、シリコン樹脂などの被覆剤で被覆してもよい。
本発明の電子写真用現像剤は、まず、上記金属酸化物微粒子とシリカ微粒子及びクリーニング助剤とトナー粒子を強く混合し、最後にキャリア粒子と混ぜて調製することができる。
混合のために使用する混合機としては、ヘンシェルミキサーなど、回転数を変化させることにより、容易に付着力を変化させることができるものが好ましい。トナー粒子と外添剤粒子との混合は、30m/sec以上の周速で行うのが好ましく、それによって外添剤粒子は穂立ち構造を生じることなくトナー粒子表面に付着し、穂立ち構造を有しない外添剤層が形成される。
本発明の電子写真用現像剤は、電子写真感光体あるいは静電記録体に形成された静電潜像を現像するのに用いることができる。すなわち、セレン、酸化亜鉛、酸化カドミウム、無定形シリコンなどの無機光導電材料、フタロシアニン顔料、ビスアゾ顔料などの有機光導電材料からなる感光体に、電子写真的に静電潜像を形成し、あるいはポリエチレンテレフタレートのような誘電体を有する静電記録体に、針状電極などにより静電潜像を形成し、磁気ブラシ法、カスケード法などの現像方法によって、静電潜像に本発明の現像剤を付着させ、トナー像を形成させる。このトナー像は、紙などの転写材に転写後、定着して複写物となり、感光体などの表面に残留するトナーはクリーニングされる。クリーニング法としては、ブレード法、ブラシ法、ウエブ法、ロール法など種々の方法を用いることができる。
実施例
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
実施例1
プロピレン重合体とスチレン-n-ブチルメタクリレート共重合体の
グラフト重合体 54重量部
スチレン-n-ブチルメタクリレート架橋重合体 36重量部
C.I.ピグメント・レッド48:1 10重量部
(Symuler Neothol Red 2BY 大日本インキ化学工業(株))
上記成分を溶融混練後、微粉砕し、分級して平均粒径12μmの赤色粒子を得た。この粒子100重量部に対し、電気抵抗が8×108Ω・cmの酸化チタン微粒子粉末2.0重量部、シリカ微粒子粉末1.5重量部及びポリメチルメタクリレート粒子粉末0.7重量部を加え、周速33m/sのヘンシェルミキサーによって30分混合した後、95℃×1分流動槽によって熱処理を行ない、赤色トナーを得た。電子顕微鏡による観察の結果、このトナー粒子表面に形成された外添剤層には、穂立ち構造は形成されていないことが確認された。
実施例2
末端をジメチルエステル化したポリエステル 34重量部
ポリプロピレンワックス 1重量部
スチレン-n-ブチルメタ 55重量部
クリレート共重合体C.I.ピグメント・レッド48:1 5重量部
(スミカプリント Red KF 住友化学工業(株))
C.Iピグメント・レッド122 5重量部
(Fastogen Super Magenta RE-01大日本インキ化学工業(株))
上記成分を混練、粉砕、分級して平均粒径11.5μmの赤色粒子を得た。
この粒子100重量部に対し、電気抵抗が5×107Ω・cmの酸化錫微粒子1.5重量部、疎水性シリカ微粉末0.9重量部及びポリフッ化ヒニリデン粉末0.4重量部を加え、ヘンシェルミキサーにより周速50m/sで60分混合し、赤色トナーを得た。電子顕微鏡による観察の結果、このトナー粒子表面に形成された外添剤層には、穂立ち構造は形成されていないことが確認された。
実施例3
スチレン-n-ブチルメタクリレート共重合体 90重量部
銅テトラー(アルキルスルホンアミド)フタロシアニン 9重量部
シリカ微粒子粉末 1重量部
上記成分を混練、粉砕、分級して平均粒径13μmの青色粒子を得た。この粒子100重量部に対し、電気抵抗が3×102Ω・cmの酸化アルミニウム微粒子粉末0.5重量部及び疎水性シリカ微粒子1.2重量部を加え、ヘンシェルミキサーにより周速60m/sで30分混合し、青色トナーを得た。電子顕微鏡による観察の結果、このトナー粒子表面に形成された外添剤層には、穂立ち構造は形成されていないことが確認された。
比較例1
実施例1と同様の方法で赤色粒子を得、電気抵抗が8×108Ω・cmの酸化チタン微粒子2.0重量部、シリカ微粒子1.5重量部、ポリメチルメタクリレート粒子0.7重量部と共に同時に、周速15m/sのヘンシェルミキサーにより3分混合して、赤色トナーを得た。電子顕微鏡による観察の結果、このトナー粒子表面には、外添剤粒子が、穂立ち構造を形成して付着していることが確認された。
比較例2
実施例2と同様の方法で赤色粒子を得、電気抵抗が5×107Ω・cmの酸化錫微粒子1.5重量部、疎水性シリカ粒子0.9重量部、ポリフッ化ビニリデン粒子0.4重量部と共に同時に、周速15m/sのヘンシェルミキサーにより5分混合して、赤色トナーを得た。電子顕微鏡による観察の結果、このトナー粒子表面には、外添剤粒子が、穂立ち構造を形成して付着していることが確認された。
比較例3
実施例3と同様の方法で青色粒子を得、電気抵抗が3×102Ω・cmの酸化アルミニウム粒子0.5重量部、疎水性シリカ微粒子1.2重量部と共に同時に、周速15m/sのヘンシェルミキサーにより8分混合して青色トナーを得た。電子顕微鏡による観察の結果、このトナー粒子表面には、外添剤粒子が、穂立ち構造を形成して付着していることが確認された。
比較試験
平均粒径130μmのフェライトコアにスチレン-n-ブチルメタクリレート共重合体を被覆したキャリアに対し、実施例1〜3及び比較例1〜3のトナーをそれぞれ混合し、現像剤を調製した。
調整比率は、キャリア100重量部に対して、トナー3.5重量部であった。
次にこの現像剤100gを250ml広ロビンに入れ、タンブラー振蕩器によって10分間振蕩し、停止後、現像剤をサンプリングした。さらにトナーを3.5g追加投入し(トナーアドミックス)、30秒間振蕩し、現像剤をサンプリングした。この結果を次表に示す。
又、別にこの現像剤900gを、二成分磁気ブラシ現像機を有する複写機(富士ゼロックス3870)の現像機に入れ、1万枚の連続複写試験を行ったところ、次表の如き結果が得られた。

発明の効果
本発明は、トナー粒子の表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子、又は該金属酸化物微粒子とシリカ微粒子及びクリーニング助剤粒子とよりなる外添剤層を有するトナーにおいて、外添剤層が穂立ち構造を有しない点に特徴を有するが、このような構成を有することにより、トナー同士の電荷交換性を向上させ、トナーの追加投入(トナーアドミックス)も電荷分布がシャープで、感光体の非画像部へのトナー付着が極めて少なく、電子写真複写装置内の汚れも少ないという優れた効果を示す。
又、耐久性に優れ、多数枚の複写にも安定した画質の画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の電子写真用現像剤におけるトナー粒子の模式的断面図、第2図は、従来用いられているトナー粒子の模式的断面図である。
1・・・トナー粒子、2・・・金属酸化物微粒子、3・・・シリカ微粒子、4・・・クリーニング助剤
【図面】


 
訂正の要旨 平成11年5月18日付けの訂正請求書における訂正事項は次の通りである。
訂正事項a
明細書の明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の第1項及び第2項における、「電子写真現像剤」及び「外添剤層を有し、」をそれぞれ「電子写真用現像剤」及び「外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、」と訂正し、明細書の明瞭でない記載の釈明を目的として、同第2項における「有しないものであること」を「有しないこと」と訂正する。
訂正事項b
明細書の明瞭でない記載の釈明を目的として、特許明細書第5頁第5〜14行(本件特許公報第2頁第3欄第38〜49行)「本発明・・・・特徴とする。」を「本発明の電子写真用現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子とよりなるものであって、その第1のものは、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする。また、第2のものは、トナー粒子が、その表面に電気抵抗が102Ω・cm〜109Ω・cmの金属酸化物微粒子とシリカ微粒子及びクリーニング助剤粒子とよりなる外添剤を付着せしめた外添剤層を有し、かつ、該外添剤層が穂立ち構造を有しないことを特徴とする。」と訂正する。
異議決定日 2000-11-28 
出願番号 特願昭62-198298
審決分類 P 1 651・ 161- YA (G03G)
P 1 651・ 121- YA (G03G)
P 1 651・ 532- YA (G03G)
P 1 651・ 531- YA (G03G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 中澤 俊彦  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 植野 浩志
鐘尾 みや子
登録日 1998-02-20 
登録番号 特許第2748366号(P2748366)
権利者 富士ゼロックス株式会社
発明の名称 電子写真用現像剤  
代理人 萩原 亮一  
代理人 内田 明  
代理人 安西 篤夫  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
代理人 安西 篤夫  

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