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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C01B
審判 一部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C01B
管理番号 1041112
異議申立番号 異議1999-73486  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-09-10 
確定日 2001-01-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2869525号「改質ガス中の一酸化炭素除去方法及び装置」の請求項1ないし3、6、8、10、11に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2869525号の請求項1ないし3、6ないし7、9ないし10に係る特許を維持する。 
理由 〔一〕 本件特許は、平成8年(1996)8月29日の出願(特願平8-247154号)であって、平成11年1月8日に特許権の設定の登録(特許第2869525号、請求項の数、12)がされ、平成11年3月10日に特許掲載公報が発行されたものである。
これに対して、本件特許は、その願書に添付した明細書(以下では、本件特許明細書という。)の特許請求の範囲の請求項1及び同2の構成の発明については、特許法第29条第1項第3号に規定する場合に該当し、特許法第29条第1項の規定に違反して、また、同請求項1から同請求項3までの各請求項、同請求項6、同請求項8、同請求項10及び同請求項11に係る発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、取り消すべきであるとの特許異議の申立てがされた。
当審は、平成12年3月27日付けで、上記各請求項に係る本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、取り消すべきものであるとの特許取消理由を通知した。本件特許権者は、平成12年6月1日付けで、特許異議意見書及び本件特許明細書の訂正を請求する訂正請求書を提出した。

〔二〕 訂正請求の適法性
(一) 訂正事項
(a) 訂正事項a
本件特許明細書の特許請求の範囲を
「【請求項1】 一酸化炭素を含む改質ガスを、ガス流れ方向に3段以上の多段に設けられた一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層に順次供給する方法であって、各触媒層の出口の改質ガスを反応に適する温度に冷却するとともに、各触媒層に酸化剤を分配供給することを特徴とする改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項2】 一酸化炭素選択的酸化触媒としてルテニウム系触媒を用い、各触媒層の温度を60〜210℃の範囲に維持する請求項1記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項3】 一酸化炭素選択的酸化触媒としてロジウム系触媒を用い、各触媒層の温度を130〜210℃の範囲に維持する請求項1記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項4】 各段の触媒層をルテニウム系触媒層とロジウム系触媒層とに2分割し、ルテニウム系触媒層で改質ガスを処理した後、昇温した改質ガスを隣接するロジウム系触媒層で処理する請求項1記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項5】 ルテニウム系触媒層に導入する改質ガスの温度を60〜100℃の範囲とし、隣接するロジウム系触媒層に導入する改質ガスの温度を120〜150℃の範囲とする請求項4記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項6】 各触媒層入口におけるO2/COモル比が0.5〜1.5の範囲になるように酸化剤を分配供給する請求項1〜5のいずれかに記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項7】 一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子にガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子を混合して充填した触媒層を備えた反応器を一酸化炭素を含む改質ガスが流れる改質ガス導管に3段以上の多段に設け、各触媒層の出口の改質ガスを冷却して反応に適する温度に調節するための改質ガス温度調整手段を改質ガス導管に設け、これらの改質ガス温度調整手段と各触媒層との間の改質ガス導管に酸化剤分配供給手段を設けたことを特徴とする改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【請求項8】 各段の触媒層を上流側のルテニウム系触媒層と下流側のロジウム系触媒層とに2分割した請求項7記載の改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【請求項9】 反応器が、円筒状本体内に触媒を充填した管型である請求項7又は8記載の改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【請求項10】 反応器が、2枚のプレート間に触媒を充填したプレート型である請求項7又は8記載の改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【請求項11】 反応器が、円筒状本体内に触媒を充填した複数本の小管を挿入したものである請求項7又は8記載の改質ガス中の一酸化炭素除去装置。」と訂正する。
すなわち、上記訂正事項aは、
(α)訂正前の請求項1中の「ガス流れ方向に多段に設けられた」を「ガス流れ方向に3段以上の多段に設けられた」と訂正し、また、同請求項8中の「多段に設け」を「3段以上の多段に設け」と訂正し(以下では、これらの訂正事項のうち、請求項1についての訂正事項を訂正事項a1、請求項8についての訂正事項を訂正事項a1´という。)、
(β)同請求項1中の「一酸化炭素選択的酸化触媒層」を「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層」と、また、同請求項8中の「一酸化炭素選択的酸化触媒の触媒層」を「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子にガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子を混合して充填した触媒層」と訂正し(以下では、これらの訂正事項のうち、同請求項1についての訂正事項を訂正事項a2、同請求項8についての訂正事項を訂正事項a2´という。)、
(γ)同請求項7を削除し、同請求項8から同12までの各項の請求項番号を1だけ繰り上げて請求項7から同11とし、訂正後の請求項8の引用項を訂正後の引用項7と訂正し、訂正後の請求項9から同11までの各請求項の引用項を訂正後の請求項7又は請求項8と訂正する(以下では、これらの訂正事項を訂正事項a3という。)。
なお、以下では、上記のとおり訂正された特許請求の範囲を本件訂正請求特許請求の範囲といい、その各請求項の構成の発明を対応する各請求項の本件訂正請求発明という。

(b) 訂正事項b
本件特許明細書の段落【0006】の記載を
「本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的は、セレクトオキソ反応用の触媒層を3段以上の多段に分割し、各段の出口ガス温度を冷却調整して、最適温度条件になるようにする手段を設け、かつ、酸化剤(空気又は酸素等)をこれら分割した触媒層に分配供給して、一段当たりの温度分布範囲を最適条件に維持することにより、反応到達率と選択率(CO除去率)を向上させるようにした改質ガス中のCO除去方法及び装置を提供することにある。」と訂正する。
すなわち、上記訂正事項bは、
(α)上記段落【0006】中の「2段以上の多段に分割し、」を「3段以上の多段に分割し、」と訂正し(以下では、訂正事項b1という。)、
(β)同【0006】中の「これら分解した触媒層」を「これら分割した触媒層」と訂正する(以下では、訂正事項b2という。)ものである。

(c) 訂正事項c
本件特許明細書の段落【0007】の記載を
「【課題を解決するための手段】 上記の目的を達成するために、本発明の改質ガス中のCO除去方法は、一酸化炭素を含む改質ガスを、ガス流れ方向に3段以上の多段に設けられた一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層に順次供給する方法であって、各触媒層の出口の改質ガスを反応に適する温度に冷却するとともに、各触媒層に酸化剤(空気又は酸素)を分配供給するように構成されている(図1、図5参照)。
この方法において、一酸化炭素選択的酸化触媒としてルテニウム系触媒を用い、各触媒層の温度を60〜210℃、望ましくは130〜180℃の範囲に維持することが好ましい。
触媒層温度が上記の範囲未満であれば、改質ガス中のCOを効率よく除去することができない。また、上記の範囲を超えると、改質ガス中の水素ガスの反応量が増加し、燃料電池に供給できる燃料の水素ガスが減少する。
ルテニウム系触媒としては、Ru/Al2O3、Ru/SiO2、Ru/SiO2-TiO2、Ru/ZrO2、Ru/ゼオライト、Ru/コージェライト等を挙げることができる。
また、一酸化炭素選択的酸化触媒としてロジウム系触媒を用い、各触媒層の温度を130〜210℃、望ましくは120〜150℃の範囲に維持することが好ましい。
触媒温度が上記の範囲未満であれば、改質ガス中のCOを効率よく除去することができない。また、上記の範囲を超えると、改質ガス中の水素ガスの反応量が増加し、燃料電池に供給できる燃料の水素ガスが減少する。
ロジウム系触媒としては、Rh/Al2O3、Rh/SiO2、Rh/SiO2-TiO2、Rh/ZrO2、Rh/ゼオライト、Rh/コージェライト等を挙げることができる。」と訂正する。
すなわち、上記訂正事項cは、
(α)本件特許明細書の段落【0007】中の「ガス流れ方向に2段以上の多段に設けられた」を「ガス流れ方向に3段以上の多段に設けられた」と訂正し(以下では、訂正事項c1という。)、
(β)同段落【0007】中の「一酸化炭素選択的酸化触媒層」を「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層」と訂正し(以下では、訂正事項c2という。)、
(γ)同段落【0007】中の「(図1参照)」を「(図1、図5参照)」と訂正する(以下では、訂正事項c3という。)ものである。

(d) 訂正事項d
本件特許明細書の段落【0009】の末尾の「用いることが好ましい(図5参照)」を「用いる(図5参照)」と訂正する。

(e) 訂正事項e
本件特許明細書の段落【0010】の記載を
「 本発明の改質ガス中のCO除去装置は、一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子にガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子を混合して充填した触媒層を備えた反応器を一酸化炭素を含む改質ガスが流れる改質ガス導管に3段以上の多段に設け、各触媒層の出口の改質ガスを冷却して反応に適する温度に調節するための改質ガス温度調整手段を改質ガス導管に設け、これらの改質ガス温度調整手段と各触媒層との間の改質ガス導管に酸化剤分配供給手段を設けたことを特徴としている(図1、図5参照)。
上記の装置において、各段の触媒層を上流側のルテニウム系触媒層と下流側のロジウム系触媒層とに2分割するように構成することもできる(図12参照)。」
すなわち、上記訂正事項eは、
(α)同段落【0010】中の「改質ガス導管に多段に設け」を「改質ガス導管に3段以上の多段に設け」と訂正し(以下では、訂正事項e1という。)、
(β)同段落【0010】中の「一酸化炭素選択的酸化触媒の触媒層を備えた反応器」を「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子にガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子を混合して充填した触媒層を備えた反応器」と訂正し(以下では、訂正事項e2という。)、
(γ)同段落【0010】中の「特徴としている(図1参照)。」を「特徴としている(図1、図5参照)。」と訂正する(以下では、訂正事項e3という。)ものである。

(f) 訂正事項f
本件特許明細書の段落【0015】中の「触媒粒子34と伝熱粒子36とを混合して充填する希釈充填方式とすることが好ましい。」を「触媒粒子34と伝熱粒子36とを混合して充填する希釈充填方式とする。」と訂正する。

(g) 訂正事項g
本件特許明細書の段落【0022】中の「(2) 触媒粒子に伝熱粒子を混合して充填する場合は、発熱反応による触媒層の昇温と熱除去を効率よく行うことができる」を「(2) 触媒粒子に伝熱粒子を混合して充填することにより、発熱反応による触媒層の昇温と熱除去を効率よく行うことができる」と訂正する。

(h) 訂正事項h
本件特許明細書の【図面の簡単な説明】の「【図5】図1における触媒層の他の例を示す断面説明図である。」を「【図5】図1における本発明の触媒層の一例を示す断面説明図である。」と訂正する。

(i) 訂正事項i
本件特許の図面の【図2】中の「空気(又は水)」を「空気(又は酸素)」と訂正する。

(二) 訂正の適法性
A. 独立特許要件以外の要件(特許法第120条の4、同126条第2項及び同第3項)
(a) 訂正事項a
(α) 訂正事項a1及び訂正事項a1´
(イ) 請求項1の「多段」は、3段以上を包含する2段以上の多段を指すものであるから、本件訂正は、その訂正事項a1の点で、本件特許明細書の特許請求の範囲を減縮することを目的とするものである。
(ロ) 本件特許明細書の段落【0012】及び同【0013】並びに図1及び図12の記載(「触媒層12a,12b,12c・・・12n」の記載及びこれに対応する図示)には、触媒層が3段を含む任意段数の多段であることが示されているから、本件訂正は、その訂正事項a1の点で、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内でする訂正である。
(ハ) 触媒層が2段の場合については、2段目の触媒層の出口の改質ガス温度を次段の反応に適するように冷却することはあり得ないから、各触媒層の出口の改質ガスを冷却するとするのは明らかに不適切であるのに対して、3段以上のn段の多段の場合、少なくとも、2段以上のn-1段の触媒層の各層の出口の改質ガスを冷却することになるから、改質ガスを効率的に冷却してCO除去率を高めようとする本件特許発明の目的からみて、本件訂正は、訂正事項a1の点で、実質上、特許請求の範囲を拡張するものとも、変更するものでもない。
(ニ) 本件訂正は、訂正事項a1´の点でも、訂正事項a1についての上記(イ)〜(ハ)に述べた理由と同一の理由によって、本件特許明細書の特許請求の範囲を減縮し、本件特許明細書及び図面に記載した事項の範囲内でする訂正であって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張するものとも、変更するものとも認められない。

(β) 訂正事項a2及び訂正事項a2´
(イ) 本件特許明細書には、触媒層の触媒粒子に伝熱粒子を混合する場合もあることが記載されているから、請求項1の触媒層は、その触媒粒子に伝熱粒子を混合した場合をも包含する概念であると認められる。
そして、本件訂正は、上記の場合に限定するものであるから、本件訂正は、訂正事項a2の点で、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
(ロ) 本件特許明細書の段落【0009】並びに図5及び図15には、本件特許明細書の触媒層として、「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層」の例が示されているから、本件訂正は、訂正事項a2の点で、本件特許明細書に記載された事項の範囲内で訂正する訂正である。
(ハ) 本件特許明細書の段落【0006】によれば、請求項1の構成の発明は、CO除去率を向上させることを目的とする発明であり、そのためには、同段落【0009】に示されているように、発熱でガス温度があがると不都合であり、かつ、段落【0022】には、触媒粒子に伝熱粒子を混合して充填すると、触媒層の昇温と熱除去を効率化できるとされているのであるから、本件訂正は、訂正事項a2の点で、請求項1に係る発明の目的を変更するものではなく、したがって、本件訂正は、訂正事項a2の点で、実質上、特許請求の範囲を拡張するものとも、変更するものでもない。
(ニ) 訂正事項a2´についても、訂正事項a2についての上記(イ)〜(ハ)に述べた理由によって、本件訂正は、特許請求の範囲を減縮し、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でする訂正であって、かつ、実質上、特許請求の範囲を拡張するものとも、変更するものでもない。

(γ) 訂正事項a3
本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項7を削除することは、当然に、特許請求の範囲の減縮し、本件特許明細書の記載事項の範囲内で訂正し、また、特許請求の範囲を実質上拡張するものとも、変更するものでもない。
また、上記請求項7の削除にともない、同項より後の請求項の項番号を繰り上げ、かつ、これに対応して、引用請求項中に引用した請求項の項番号を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、また、当然に、本件特許明細書に記載した事項の範囲内でする訂正であり、かつ、実質上、特許請求の範囲を拡張するものとも、変更するものでもない。

(b) 訂正事項bから同iまでの各訂正事項
(イ) 訂正事項b1、同c1、同c2、同e1、同e2、同e3、同f及び同gは、訂正事項同a1、a1´、同a2及びa2´に対応して、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、本件訂正は、これらの訂正事項の点で、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
(ロ) 本件訂正は、訂正事項c3、同d及び同hについても、訂正事項a2及び同a2´に対応して、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び図面の簡単な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
(ハ) 図2は、改質ガスにCO酸化用のガスを混合器内で混合して、第1触媒層に流す工程の詳細図であることは、本件特許発明の構成から明らかであるところ、CO酸化用ガスとして水が使用できることは本件特許明細書には示唆されておらず、本件特許明細書の段落【0014】には、CO酸化剤として空気又は酸素が例示され、かつ、図1、図3及び図12には、混合器に空気(又は酸素)を供給することが示されているから、本件訂正は、訂正事項iの点で、誤記の訂正を目的とするものである。
また、本件訂正は、訂正事項b2についても、誤記の訂正を目的とする訂正である。
(ニ) また、上記(イ)から(ハ)までの各訂正事項は、いずれも、本件特許明細書に記載された事項の範囲内でする訂正であり、実質上、特許請求の範囲を拡張するものとも、変更するものでもない。

(c) 以上によれば、本件訂正請求は、以下に判断する独立特許要件を除く訂正要件のいずれをも満たしている。

B. 独立特許要件(特許法第126条第4項)
(a) 引例の記載
(1) 特開平8-133702号公報(本件特許異議申立人が提示した甲第1号証。公開日、平成8年5月28日。以下では、引例1という。)
(イ)特許請求の範囲
「【請求項1】 水素リッチな燃料ガス中の一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去装置であって、前記燃料ガス中の一酸化炭素を選択的に酸化除去する酸化触媒が担持される第1および第2の酸化反応部が前記燃料ガスの流れ方向に直列に接続され、前記第1の酸化反応部の上流側には前記燃料ガスと共に酸化剤ガスを供給する第1の供給手段が接続され、前記第2の酸化反応部の上流側には前記第1の酸化反応部にて処理された後の前記燃料ガスと共に新たな酸化剤ガスを供給する第2の供給手段が接続されてなることを特徴とする一酸化炭素除去装置。
【請求項2】 前記第1の酸化反応部内の酸素濃度を検出する酸素濃度検出手段と、前記酸素濃度検出手段により検出された酸素濃度に基づいて前記第2の供給手段による酸化剤ガス供給量を調整する調整手段と、が更に設けられることを特徴とする請求項1の一酸化炭素除去装置。
【請求項3】 前記第1の酸化反応部と前記第2の酸化反応部の反応容積比が5:1〜20:1であることを特徴とする請求項1または2の一酸化炭素除去装置。
【請求項4】 水素リッチな燃料ガス中の一酸化炭素を酸化除去する一酸化炭素除去方法であって、前記燃料ガスと共に酸化剤ガスを導入して一酸化炭素を選択的に酸化除去する酸化触媒の作用下で酸化反応を進行させて前記燃料ガス中の一酸化炭素濃度を低減させ、前記酸化反応が進行して酸化剤ガス量が希薄となった結果還元反応が開始されるようになった後に、新たな酸化剤ガスを補給して上記酸化反応を再開させることを特徴とする一酸化炭素除去方法。」
(ロ)【0001】【産業上の利用分野】(1欄)
「本発明は一酸化炭素除去装置および方法に関し、特に、リン酸型燃料電池や固体高分子電解質型燃料電池のように比較的低温で作動する燃料電池に供給する水素リッチガス中の一酸化炭素を常に低濃度に保持するために用いられる一酸化炭素除去装置および方法に関する。」
(ハ)【0004】(【従来技術】の一部)(2欄6行)
「そこで、改質反応直後の改質ガス中には約1%含まれている一酸化炭素濃度を、燃料電池の燃料極に供給する時点では100ppm未満にまで低減させる必要があり、たとえば特開平3-276577号公報においては、改質装置と燃料電池との間に、改質ガス中の一酸化炭素を選択的に燃焼させる酸化触媒(主にPt/Al2O3)を充填してなる一酸化炭素除去装置を設けることが提案されている。」
(ニ)【0005】(【発明が解決しようとする課題】の一部)(2欄15行)
「上記従来技術における一酸化炭素除去装置において用いられる酸化触媒による一酸化炭素酸化反応の活性温度域は100〜200℃であり、(ε)酸化触媒がこの温度範囲に保持されていれば、改質ガス中の一酸化炭素濃度を100ppm以下に低減させて燃料電池の燃料極に供給することが可能であると考えられていた。」
(ホ)【0006】(【発明が解決しようとする課題】の一部)(2欄22行)
(ヘ)【0007】(【発明が解決しようとする課題】の一部)(2欄33行)
「この還元反応の進行を防ぐために、常に一酸化炭素に対して(δ´)過剰量の空気を一酸化炭素除去装置の酸化触媒担持体の上流側に供給することも考えられるが、この場合には、過剰分の酸素が改質ガス中の水素と爆発的に反応する危険性が高くなって安全上問題となるだけでなく過剰量の水素により一酸化炭素のみならず水素の酸化反応も並行するために改質ガス中の水素が消費されてしまう。」
(ト)【0008】(【課題を解決するための手段】の一部)(2欄42行)
「そこで本発明は上記した従来技術の問題点を解消し、一酸化炭素除去装置での処理後の燃料ガスにおける一酸化炭素濃度を確実に100ppm未満、ひいては数ppmにまで低減して燃料電池に供給することを目的とする。」
(チ)【0013】【作用】(3欄)
「燃料改質装置からの改質ガスと酸化剤ガスとが一酸化炭素除去装置の上流側に設けられる第1の酸化反応部に導入され、第1の酸化反応部に担持される選択酸化触媒により改質ガス中の一酸化炭素が酸化除去される。酸化反応の進行につれて第1の酸化反応部内の酸素が消費され、第1の酸化反応部の後半部においては、改質ガス中の二酸化炭素が水素により還元されて一酸化炭素を生成する還元反応が起こり、改質ガス中の一酸化炭素濃度が上昇するが、第1の酸化反応部を出た改質ガスは新たな酸化剤ガスと共に第2の酸化反応部に導入され、再度酸化反応を受けて含有一酸化炭素濃度が数ppmにまで低減される。」
(リ)【0022】(【実施例】の一部)(5欄)
「上流側酸化反応器38および下流側酸化反応器40は、ガス導入マニホールド37、39に隣接して、たとえば、触媒充填層と冷媒が通過せしめられる冷却層とが交互に積層された積層構造体を設けることによって構成される。あるいは、一つの触媒充填体の周囲に冷媒が流れる冷却管を配するように構成することもできる。」
(ヌ)【0023】(【実施例】の一部)(5欄)
(ル)【0024】の一部(【実施例】の一部)(5欄)
「酸化反応器38、40における冷却層には、触媒充填層に担持される酸化触媒を上記活性温度域に保持すべく冷却するために、それぞれ所定の冷媒が導入される。」
(ヲ)【0025】(【実施例】の一部)(5欄)
「上流側酸化反応器38には、内部の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ45が設けられる。また、上流側酸化反応器38および下流側酸化反応器40にはそれぞれ内部温度を検出する温度センサ46、47が設けられる。」
(ワ)【0028】(【実施例】の一部)(6欄)
「コントローラ52は、酸化反応器38、40内の温度が酸化触媒の活性温度域(100〜200℃)以上に昇温したことが温度センサ46、47からの検出信号で知られたとき、冷媒ポンプ32、34からの冷媒吐出量を増大させて、上記触媒活性温度を保持するように制御する。」
(カ)【0033】(【実施例】の一部)(6〜7欄)
「改質ガスは次いで下流側酸化反応器40に導入されるが、上流側酸化反応器38内の酸素濃度がセンサ45により検出され、該酸素濃度に応じた適正量の酸化剤ガス(空気)がエアコンプレッサ26からエアポンプ43およびバルブ44を介して下流側酸化反応器40に導入されることにより、改質ガス中の一酸化炭素が再度酸化除去され、数ppmのレベルにまで含有一酸化炭素濃度を低減させることができる(領域C)。本発明のように酸化剤ガスを補給しない場合には、併せて図3に点線で示すように、上記還元反応が進行して含有一酸化炭素濃度が大幅に増大してしまう。」

(2) 特公昭39-21742号公報(本件特許異議の申立人が提示した甲第2号証。以下では、引例2という。)
(イ)特許請求の範囲
「1 水素、窒素および1酸化炭素を含有するガスに対して酸素含有ガスを添加し、そして得られたガス状混合物を、約4.9〜16.2kg/cm2(70〜230psig)の圧力下において300℃よりも高くない触媒の高められた温度において、触媒的に活性な材料として白金、ルテニウムおよびロジウムからなる群の1部員からなる支持された触媒と接触するように通過させて、それによりガス中の1酸化炭素の大部分を2酸化炭素へ選択的に転化することを特徴とする1酸化炭素に加うるに水素および窒素を含有するガスから1酸化炭素を選択的に除去する方法。」
(ロ)(第2頁、左欄27〜34行)
「この2段階法にもとずいて、1酸化炭素の実質的に完全な除去は、第1段階において1酸化炭素の大部分を2酸化炭素に酸化して典型的には約1000〜2000p.p.m.COを含有するガス状溶出液をもたらし、続いて2酸化炭素の洗浄除去をし、そして第2段階において少量残渣量のCOを10p.p.m.COよりも少なくそしてしばしば2p.p.m.よりも少なくまで酸化することにより達成されうる。」

(3) 特開平8-106914号公報(本件特許異議申立人が提示した甲第3号証。以下では、引例3という。)
(イ)【0001】【産業上の利用分野】(1欄)
「本発明は燃料電池発電装置に関し、特に電気自動車に搭載するに好適な固体高分子電解質型燃料電池発電装置に関する。」
(ロ)【0021】の一部(【実施例】の一部)(5欄17行)
「同時に、改質ガスは水回収装置32内を通過する間に冷却水によって冷却される。」
(ハ)【0023】の一部(【実施例】の一部)(5欄)
「一酸化炭素除去装置34には、改質ガスの導入流量を測定する改質ガス流量計36が設けられる。上記選択酸化触媒による酸化反応が行われる反応部38は、図2に示されるように、ガス不透過性かつ熱伝導性の良好な材料(たとえばステンレス)で形成された仕切板40a、40bによって複数の反応部38a〜38cに分割されている。各反応部においては、改質ガスを通過せしめる選択酸化触媒充填部41に隣接して、冷却水を通過せしめる冷却層42が設けられ、前記選択酸化触媒をその活性温度域である90〜140℃に保持する。」
(ニ)【0024】の一部(【実施例】の一部)(5〜6欄)
「このようにして、改質ガスの平均温度がたとえば100℃以上に上昇したことが検知されたとき、温度コントローラ50は、水回収装置32における冷却効果を向上させるよう制御することにより、一酸化炭素除去装置34の反応部38における選択酸化触媒を常に活性温度域に保持することができる。」
(ホ)【0034】(【発明の効果】)(8欄)
「本発明によれば、電気自動車の駆動負荷の変化に伴う燃料電池の出力変化に対応して、一酸化炭素除去装置に導入される改質ガスの空間速度が一定範囲内に制御される。これにより、一酸化炭素除去装置に担持される選択酸化触媒の作用による一酸化炭素の酸化除去反応が効率的に行われ、常に所定レベル(たとえば10ppm)以下に含有一酸化炭素濃度を低減させた状態で改質ガスを燃料電池に供給することが可能となり、燃料電池の電極触媒の劣化を防止し、燃料電池に安定した性能を与えると共に長寿命化を達成することができる。」

(4) 特開平5-201702号公報(本件特許異議申立人が提示した甲第4号証。以下では、引例4という。)
(イ)特許請求の範囲の一部
「【請求項1】 容量基準で一酸化炭素に比較した水素に富んでいる一酸化炭素と水素からなるフィードガスを、担体に分散したロジウムおよびルテニウムからなる群から選ばれる少なくとも一つから本質的になる触媒の存在で処理する方法において、水素を実質上反応させることなく120℃以下の温度で、フィードガス中の一酸化炭素を一酸化炭素の少なくとも一部分を酸化するのに十分な量の酸素と反応させて、フィードガスよりも小さい一酸化炭素容量含量を有しフィードガスよりも小さくない水素対一酸化炭素容量比を有する生成物ガスを製造する方法。
【請求項2】 温度が約100℃以下である請求項1の方法。」
(ロ)(1欄39〜48行)
「水素に富んだガス源とは無関係に、一酸化炭素はアノード酸化速度を減じることにより燃料電池の性能をひどく劣化させるから、ごく低い一酸化炭素含量が有効な燃料電池操作には望まれる。そこで、効率よく有効であり、一酸化炭素を選択的に除去し、高価な水素燃料の除去を最小にし、合体した車の動力プラントの一部分としての水素ガス製造手段および燃料電池手段と共に使うのに相容れる、水素に富んだガス流の一酸化炭素含量の減少手段をもつことが望ましい。」
(ハ)(2欄32〜38行)
この反応は、高価な水素燃料を消費するから望ましくない。好ましい方法では、Rhおよび(または)Ruと組合わせて、H2の酸化を最小にしてCOの実質上選択的酸化を与えるように、最適反応条件を選ぶ。この方法では、一酸化炭素の選択的変換(酸化)は約70〜約200℃の範囲で起り、また好ましくは・・・。」
(ニ)(3欄27〜45行)
「本発明の反応器手段32では、導管40から供給される水素に富んだ製造ガスフィード流は好ましい方法で処理されて、燃料電池36で使うのに適する受け入れられる低一酸化炭素量、約0.1容量%以下、望ましくは約0.01容量%以下、好ましくは0.001容量%以下を有し、また好ましくは導管40内の製造ガスフィード流に比較して増加したH2:CO比をもつ導管44内の生成物流をつくる。低一酸化炭素含量をもつ導管44内の生成物流れは燃料電池36に供給され、・・・。図2に示すように、本発明の反応器手段32は、基本的には入口68および出口72を有し、反応室64を規定する反応器60からなる。反応器60の反応室64は、床担持形で、担体78好ましくはアルミナの基剤担体とその上に分散した触媒成分80からなる触媒76を含んでいる。触媒成分80は金属、好ましくはロジウム(Rh)およびルテニウム(Ru)の群から選ばれる少なくと1種である。」
(ホ)(4欄3〜7行)
「製造ガスフィード流中の一酸化炭素は、反応室64で触媒76の存在で、約70〜約200℃、好ましくは約80〜約100℃の範囲の予め決めた温度で、一酸化炭素の少なくとも一部分を選択的に酸化するのに十分な量の酸素と反応する。」
(ヘ)(7欄、実施例2)
「使用金属触媒がロジウムである以外は、実施例1の方法に従った。実施例1のように、変換CO量は迅速に増し、温度が約90〜約100℃の範囲に上ると、100%に近づいた。温度が約150℃に近づくと、同様にCO変換の減少が認められた。」
(ト)(10欄、実施例3の一部)
「温度を約170〜約185℃の範囲に変え、酸素量を0〜約2500ppmと変えた、すなわちO2対COの比を約2500/900まで変えた以外は、実施例1の方法に従った。」
(チ)(12欄、実施例5の一部)
「温度を約120〜約140℃の範囲で変えた以外は、実施例3(ルテニウムを使用)の方法に従った。」
(リ) 【図2】の反応器60は、管状と認められる。

(5) 実開平4-626号公報(本件特許の異議申立人が提示した甲第5号証。以下では、引例5という。)
引例5によれば、管状反応器はありふれた反応器であると認められる。

(6) 特開平8-47621号公報(本件特許異議の申立人が提示した甲第6号証。以下では、引例6という。)
(イ)特許請求の範囲の一部
「【請求項1】 一酸化炭素を含有するガスから該一酸化炭素を酸化除去する除去装置であって、
酸素存在下で一酸化炭素の酸化反応に関与する触媒を収納した触媒収納体を、該触媒の収納部を前記ガスが通過するようにガス通過管路に設け、
前記ガスの流れに沿った複数の箇所から、前記触媒収納体の前記触媒の収納部に酸素を導入する酸素導入手段を備えることを特徴とする一酸化炭素の除去装置。」
(ロ)【0027】(5欄)
「次に、CO除去装置16の詳細な構成について説明する。CO除去装置16は、図2のブロック図に示すように、ガス(改質器12からの改質ガス)の流れ方向に3分割された第1酸化反応器30と第2酸化反応器32と第3酸化反応器34を、改質器12からの改質ガスの流路である改質ガス管路36に直列に備える。」
(ハ)【0029】(6欄)
「このほか、CO除去装置16は、第1酸化反応器30、第2酸化反応器32、第3酸化反応器34に空気を導入するための空気導入管路38を備え、当該管路の分岐管38a、38b、38cをそれぞれの酸化反応器の上流で且つ該当するCO濃度センサの下流に改質ガス管路36に合流させている。また、各分岐管38a、38b、38cには、管路を通過する空気の流量を調整する流量調整器40a、40b、40cが設けられている。この各流量調整器40a、40b、40cは、図示しない制御装置に接続されており、この制御装置からの制御信号により流量を調整する。制御装置はCO濃度センサの検出したCO濃度に応じた流量の制御信号を各流量調整器に出力するので、各流量調整器はCO濃度に応じた流量の空気を該当する酸化反応器に導入する。このため、各酸化反応器における触媒は、COを含有する改質ガスとCO濃度に応じた流量の空気とが混在した状態、即ちCOと酸素とが混在した状態におかれることになる。」

(b) 独立特許要件の判断
(1)(イ) 本件訂正請求に係る特許明細書(以下では、本件訂正請求明細書という。)の特許請求の範囲の請求項1及び請求項7の構成の発明は、「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層」を用いることを、少なくとも一つの特徴点とする「改質ガス中の一酸化炭素除去方法」又は「改質ガス中の一酸化炭素除去装置」の発明であると認められる。
そして、同請求項2〜同6は請求項1を引用し、請求項8〜同11は請求項7を引用しているから、これらの各請求項の構成の発明も、上記の特徴点を構成の一部とする発明であると認められる。
一方、引例1から引例6のいずれの引例にも、上記特徴事項は記載されていない。
なお、以下では、上記請求項1及び同7を含めて、上記の各請求項の構成の発明を本件訂正請求発明と総称する。
(ロ) また、一般に、発熱反応系では、反応の暴走、副反応の防止や逆反応の抑制等のために、発生した熱を系外に除去することは通常なされる工夫であるものの、どの程度に熱を除去すればよいか、また、効率的に熱を除去するためには、どのような熱除去手段を採用すればよいかについては、個々の具体的反応系に応じて工夫しなければならないことであるから、触媒層に伝熱粒子を混合すること〔上記(イ)参照〕は、単に慣用手段を付加したものにすぎないとすることもできない。
(ハ) そうすると、本件訂正請求発明は、引例1〜引例6のいずれの引例にも記載されている発明とは認められない。

(2)(イ) 引例1〜引例6には、それらの採用した一酸化炭素除去方法において、それらの触媒層からさらに効率的に熱除去すべき必要があることを示唆する記載はみあたらない(したがって、熱除去手段として触媒層に伝熱粒子を混合するということも、全く示唆されていない)から、触媒層に伝熱粒子を混合することそれ自体は一般的に格別の工夫とは認められないとしても、触媒層に伝熱粒子を混合することは、容易にできることとは認められない。
(ロ) そして、本件訂正請求明細書の段落【0022】の記載によれば、本件訂正請求発明は、上記(1)に指摘した触媒層を採用することによって、(イ)「セレクトオキソ反応用の触媒層を多段に分割し、各段の出口に改質ガス温度調整手段を設けているので、一段当たりの温度分布範囲を最適条件に維持することができ、このため、反応到達率及び選択率(CO除去率)の向上を図る」ことができ、(ロ)「触媒粒子に伝熱粒子を混合して充填することにより、発熱反応による触媒層の昇温と熱除去を効率よく行う」ことができるという優れた効果を奏することができたものと認められる。
(ハ) そうすると、本件訂正請求発明は、引例1〜引例6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるとも認められない。

(3) また、本件訂正請求発明について、他に、独立して特許を受けることができない理由を発見しない。

(4) したがって、本件訂正請求発明は、独立して特許を受けることができるものであると認められる。

(三) 以上、上記(二)A.及び(二)B.によれば、本件訂正請求は、適法な訂正を請求するものであるから、これによって、本件特許明細書の訂正を認めるべきものである。
以下では、上記請求によって訂正された本件特許明細書を単に本件特許明細書といい、本件訂正請求発明を本件特許発明という。

〔三〕 特許異議に関する判断
本件特許明細書の請求項1、同2、同3、同6、同7、同9及び同10に係る本件本件特許発明は、本件特許異議の申立人が提示した引例1から引例6までの各引例に記載された発明でもないし、これらの引例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることできる発明であるとも認められないことは、上記〔二〕(二)B.(b)に示した判断のとおりである。
そして、他に、上記本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、本件特許異議の申立人は、本件訂正前の本件特許明細書の、「2段以上の多段に設け」るとの記載は不明確であるとして、特許法第36条第6項第2号違反を主張しているが、この主張も、また、「3段以上の多段に設け」ると本件訂正請求により訂正されたので、解消している。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
改質ガス中の一酸化炭素除去方法及び装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 一酸化炭素を含む改質ガスを、ガス流れ方向に3段以上の多段に設けられた一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属性粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層に順次供給する方法であって、各触媒層の出口の改質ガスを反応に適する温度に冷却するとともに、各触媒層に酸化剤を分配供給することを特徴とする改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項2】 一酸化炭素選択的酸化触媒としてルテニウム系触媒を用い、各触媒層の温度を60〜210℃の範囲に維持する請求項1記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項3】 一酸化炭素選択的酸化触媒としてロジウム系触媒を用い、各触媒層の温度を130〜210℃の範囲に維持する請求項1記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項4】 各段の触媒層をルテニウム系触媒層とロジウム系触媒層とに2分割し、ルテニウム系触媒層で改質ガスを処理した後、昇温した改質ガスを隣接するロジウム系触媒層で処理する請求項1記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項5】 ルテニウム系触媒層に導入する改質ガスの温度を60〜100℃の範囲とし、隣接するロジウム系触媒層に導入する改質ガスの温度を120〜150℃の範囲とする請求項4記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項6】 各触媒層入口におけるO2/COモル比が0.5〜1.5の範囲になるように酸化剤を分配供給する請求項1〜5のいずれかに記載の改質ガス中の一酸化炭素除去方法。
【請求項7】 一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子にガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子を混合して充填した触媒層を備えた反応器を一酸化炭素を含む改質ガスが流れる改質ガス導管に3段以上の多段に設け、各触媒層の出口の改質ガスを冷却して反応に適する温度に調節するための改質ガス温度調整手段を改質ガス導管に設け、これらの改質ガス温度調整手段と各触媒層との間の改質ガス導管に酸化剤分配供給手段を設けたことを特徴とする改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【請求項8】 各段の触媒層を上流側のルテニウム系触媒層と下流側のロジウム系触媒層とに2分割した請求項7記載の改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【請求項9】 反応器が、円筒状本体内に触媒を充填した管型である請求項7又は8記載の改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【請求項10】 反応器が、2枚のプレート間に触媒を充填したプレート型である請求項7又は8記載の改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【請求項11】 反応器が、円筒状本体内に触媒を充填した複数本の小管を挿入したものである請求項7又は8記載の改質ガス中の一酸化炭素除去装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、改質ガスに含まれる一酸化炭素(以下、適宜、COと記す)を選択的に効率よく除去する方法及びこの方法を実施する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、メタノールの改質反応(CH3OH+H2O→CO2+3H2)により、水素を製造して燃料電池の燃料とする方法が知られている。しかし、固体高分子型燃料電池(PEFC)、りん酸型燃料電池(PAFC)等のようにCOによって燃料電池の電極が被毒して、性能低下をきたすものに対しては、改質反応の副反応であるCO2の逆シフト反応(CO2+H2→CO+H2O)で生成するCOを選択的に除去しておく必要がある。
既知の方法として、セレクトオキソ、メタネーション、膜分離、吸着分離、電極酸化等の方法が存在する。
【0003】
特開平3-276577号公報には、改質ガス中に含まれるCOを優先して燃焼させる白金等の貴金属の燃焼触媒からなる触媒燃焼器により、改質ガス中のCOを、酸化剤(空気又は酸素)により燃焼させて、COを殆ど含まない改質ガスを燃料電池に供給するようにした燃料電池発電装置が記載されている。
【0004】
また、特開平5-201702号公報には、アルミナ基材担体上にロジウム(Rh)又はルテニウム(Ru)を担持させた触媒層に、約120℃以下、好ましくは約100℃以下で、水素と一酸化炭素を含むガス流と酸素を含むガス流を好ましくはO2:COの容量比が1:1より小さくなるように混合して流し、水素と酸素とを実質的に反応させずに、一酸化炭素を酸素と反応させてガス流中の一酸化炭素濃度を低減するようにした一酸化炭素の選択的除去方法及びその装置が記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のCO選択的除去方法のうち、セレクトオキソ法では、CO+1/2O2→CO2の反応が発熱反応であるので、例えば、触媒を図13に示すように触媒層長さL0に充填すると、図15において破線で示すように、触媒層温度が反応上限温度である210℃(触媒としてルテニウム系触媒、具体的にはRu/Al2O3を用いる場合)を超えてしまい、COを効率よく除去することができない。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的は、セレクトオキソ反応用の触媒層を3段以上の多段に分割し、各段の出口ガス温度を冷却調整して、最適温度条件になるようにする手段を設け、かつ、酸化剤(空気又は酸素等)をこれら分割した触媒層に分配供給して、一段当たりの温度分布範囲を最適条件に維持することにより、反応到達率と選択率(CO除去率)を向上させるようにした改質ガス中のCO除去方法及び装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の改質ガス中のCO除去方法は、一酸化炭素を含む改質ガスを、ガス流れ方向に3段以上の多段に設けられた一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層に順次供給する方法であって、各触媒層の出口の改質ガスを反応に適する温度に冷却するとともに、各触媒層に酸化剤(空気又は酸素)を分配供給するように構成されている(図1、図5参照)。
この方法において、一酸化炭素選択的酸化触媒としてルテニウム系触媒を用い、各触媒層の温度を60〜210℃、望ましくは130〜180℃の範囲に維持することが好ましい。
触媒層温度が上記の範囲未満であれば、改質ガス中のCOを効率よく除去することができない。また、上記の範囲を超えると、改質ガス中の水素ガスの反応量が増加し、燃料電池に供給できる燃料の水素ガスが減少する。
ルテニウム系触媒としては、Ru/Al2O3、Ru/SiO2、Ru/SiO2-TiO2、Ru/ZrO2、Ru/ゼオライト、Ru/コージェライト等を挙げることができる。
また、一酸化炭素選択的酸化触媒としてロジウム系触媒を用い、各触媒層の温度を130〜210℃、望ましくは120〜150℃の範囲に維持することが好ましい。
触媒温度が上記の範囲未満であれば、改質ガス中のCOを効率よく除去することができない。また、上記の範囲を超えると、改質ガス中の水素ガスの反応量が増加し、燃料電池に供給できる燃料の水素ガスが減少する。
ロジウム系触媒としては、Rh/Al2O3、Rh/SiO2、Rh/SiO2-TiO2、Rh/ZrO2、Rh/ゼオライト、Rh/コージェライト等を挙げることができる。
【0008】
また、各段の触媒層をルテニウム系触媒層とロジウム系触媒層とに2分割し、ルテニウム系触媒層で改質ガスを処理した後、昇温した改質ガスを隣接するロジウム系触媒層で処理する場合もある(図12参照)。この場合、ルテニウム系触媒層に導入する改質ガスの温度を60〜100℃の範囲とし、隣接するロジウム系触媒層に導入する改質ガスの温度を120〜150℃の範囲とすることが好ましい。
ルテニウム系触媒としては、Ru/Al2O3、Ru/SiO2、Ru/SiO2-TiO2、Ru/ZrO2、Ru/ゼオライト、Ru/コージェライト等を挙げることができる。
また、ロジウム系触媒としては、Rh/Al2O3、Rh/SiO2、Rh/SiO2-TiO2、Rh/ZrO2、Rh/ゼオライト、Rh/コージェライト等を挙げることができる。
ルテニウム系触媒層の温度が60〜100℃を外れる場合、ロジウム系触媒層の温度が120〜150℃の範囲を外れる場合は、いずれも改質ガス中のCOを効率よく除去することができない。
【0009】
これらの方法において、各触媒層入口におけるO2/COモル比が0.5〜1.5(酸素量論比1.0〜3.0)、望ましくは0.8〜1.0(酸素量論比1.6〜2.0)の範囲になるように酸化剤を分配供給することが好ましい。
O2/COモル比が上記の範囲未満の場合は、COと反応する量のO2量が足りなく、未反応COが残ってしまうという不都合があり、一方、O2/COモル比が上記の範囲を超える場合は、COと反応したO2以外のO2量が多くなり、発熱でガス温度が上がっているため、改質ガス中のH2とO2が反応してH2ガスを減少させるという不都合がある。
触媒層としては、通常の粒子充填層(図4参照)やハニカム充填層等でもよいが、触媒として触媒粒子を用い、ガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかを触媒粒子と混合して用いる(図5参照)。
【0010】
本発明の改質ガス中のCO除去装置は、一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子にガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子を混合して充填した触媒層を備えた反応器を一酸化炭素を含む改質ガスが流れる改質ガス導管に3段以上の多段に設け、各触媒層の出口の改質ガスを冷却して反応に適する温度に調節するための改質ガス温度調整手段を改質ガス導管に設け、これらの改質ガス温度調整手段と各触媒層との間の改質ガス導管に酸化剤分配供給手段を設けたことを特徴としている(図1、図5参照)。
上記の装置において、各段の触媒層を上流側のルテニウム系触媒層と下流側のロジウム系触媒層とに2分割するように構成することもできる(図12参照)。
【0011】
これらの装置において、反応器として、円筒状本体内に触媒を充填した管型のものを用いたり(図6、7参照)、2枚のプレート間に触媒を充填したプレート型のものを用いたり(図10、11参照)、円筒状本体内に触媒を充填した複数本の小管を挿入したものを用いたりすることができる(図8、9参照)。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施の第1形態による改質ガス中のCO除去装置を示している。
10a、10b、10c…10nは反応器で、これらの反応器はCO選択的酸化触媒、例えばRu/Al2O3 (Al2O3を担体とするルテニウム系触媒)の触媒層12a、12b、12c…12nを備えている。
これらの反応器10a、10b、10c…10nをCOを含む改質ガスが流れる改質ガス導管14に直列に、かつ多段に設け、各触媒層の出口の改質ガスを冷却して反応に適する温度に調節するための改質ガス温度調整手段16を改質ガス導管14に設け、これらの改質ガス温度調整手段16と各触媒層12a、12b、12c…12nとの間の改質ガス導管14に酸化剤分配供給手段18を設けている。酸化剤としては、空気、酸素、酸素富化空気等のいずれか又はこれらの混合気体が用いられる。20は混合器である。これらの混合器は必ずしも必要なものではなく、改質ガス導管14に直接、酸化剤を供給して、改質ガス導管14内で混合するようにしてもよい。22はメタノールリフォーマー、24はPEFC(固体高分子型燃料電池)、PAFC(りん酸型燃料電池)等のCO被毒型の燃料電池、26は空気又は水等の冷却媒体を制御する冷媒流量調節弁、28は酸化剤流量調節弁である。なお、第1触媒層12aの入口の改質ガス温度調整手段は必ずしも必要なものではない。
【0013】
図2は、改質ガス温度調整手段16の一例を示している。本例では、改質ガス温度調整手段16は、冷却器30と、改質ガス導管内の改質ガスの温度を検出し冷媒流量調節弁26を制御するための温度指示調節器(TIC)32とからなっている。
上記のように構成された装置において、メタノールリフォーマー22からのCOを含む改質ガスは、温度が最適反応温度より高い場合は、改質ガス温度調整手段16でCO選択的酸化反応に適する温度に冷却されるとともに、酸化剤分配供給手段18により酸化剤が供給されて第1触媒層12aに導入される。なお、メタノールリフォーマー22からのCOを含む改質ガスの温度が最適反応温度である場合は、冷却することなく第1触媒層12aに導入される。この第1触媒層12aで改質ガス中のCOの一部が除去された後、上記と同様の操作が行われてCOを含む改質ガスが第2触媒層12bに導入されて改質ガス中のCOの一部又は残部が除去され、その後、上記と同様の操作が行われて、第3触媒層12c、…第n触媒層12nに導入されて、改質ガス中のCOがほぼ完全に除去される。
【0014】
図3は、本発明の改質ガス中の一酸化炭素除去装置における制御機構の一例を示している。
反応器10aの入口の改質ガス温度を冷却媒体の流量により制御する。すなわち、冷媒流量指示調節計60で冷却媒体流量を検出し、改質ガス温度指示調節計62で改質ガス温度を検出し、改質ガス温度が設定値になるように冷却媒体の流量を冷媒流量調節弁26により制御する。
また、酸化剤流量指示調節計64で酸化剤流量を検出し、改質ガス流量指示調節計66で改質ガス流量を検出するとともに、CO濃度分析計68で改質ガス中のCO濃度を検出し、これらの検出値から、必要な酸化剤を供給できるように、酸化剤(空気又は酸素)の流量を酸化剤流量調節弁28により制御する。
また、反応器の触媒層の反応温度を、冷却媒体の流量制御により調整する。すなわち、反応器10aに冷媒通路70を設け、この冷媒通路70に導入するための冷媒流量を冷媒流量指示調節計72により検出するとともに、触媒層12aの温度を触媒温度指示調節計74で検出し、これらの検出値により、反応器10aの触媒層12aの反応温度が設定値になるように、冷媒流量調節弁76を制御する。
【0015】
反応器10の触媒層12は、図4に示すような従来から知られている触媒粒子34の充填層としてもよく、また、ハニカム形状としてもよい。
しかし、図4に示す構成では、触媒層10の冷却・放熱が十分行なわれないので、図5に示すように、触媒粒子34と伝熱粒子36とを混合して充填する希釈充填方式とする。伝熱粒子としては、ガラスビーズ、セラミックス等の触媒活性を持たない粒子、アルミニウムやステンレススチール等の触媒活性を持たず熱伝導度の高い金属の粒子等が用いられる。
【0016】
図14は、図4に示す触媒層12に分割する前の触媒層40を示し、触媒層長さL0の場合を示している。本発明における触媒層12は、図14に示す触媒層40を分割したものであり、触媒層長さL0よりも短くなっている。
図14に示す触媒粒子34のみを充填した触媒層40では、図16において破線で示すように、発熱反応により触媒層温度が上昇し、反応上限温度を超えるので好ましくない。なお、触媒としてRu/Al2O3粒子を用い、触媒層長さL0=36mmに充填した場合を示している。そこで、図15に示すように伝熱粒子36を混合した触媒粒子34を充填することが考えられる。この場合の触媒層長さLNはL0×Nとなる。ただし、Nは触媒の希釈倍率である。触媒として、Ru/Al2O3粒子を用い、伝熱粒子としてガラスビーズを希釈倍率N=6.3となるように用いると、触媒層長さLN=L0×N==36×6.3=230mmとなった。この場合の温度分布は、図16において実線で示すように、発熱反応により触媒層温度が上昇するが、反応上限温度以下に納まっていることがわかる。
【0017】
図14に示す通常の触媒充填方式と図15に示す触媒希釈充填方式とにおける反応率を測定した結果、図14に示す通常の触媒充填方式では、CO除去率99.0%、出口CO濃度100ppmであったが(SV=50000hr-1、LV=0.496Nm/sec)、図15に示す触媒希釈充填方式では、CO除去率99.84%、出口CO濃度16ppmであった(SV=50000hr-1、LV=0.496Nm/sec)。流量を半分にすると、CO除去率99.93%、出口CO濃度7ppmであった(SV=25000hr-1、LV=0.248Nm/sec)。なお、入口における改質ガス中のCO濃度はいずれも、10000ppmであった。
しかし、希釈充填方式において、触媒層温度が反応上限温度以下になっていると言っても、反応上限温度に近いので、より確実に、かつ、さらに反応率を向上させるために、触媒層を多段に分割する必要がある。
【0018】
反応器10の形状としては、図6及び図7に示すように、円筒状本体42内に触媒粒子34を充填した管型とすることができる。44はジャケットで、冷却媒体を流して触媒層を冷却するためのものである。
また、図8及び図9に示すように、反応器10として、円筒状本体42内に触媒粒子34を充填した複数本の小管46を挿入した構造とすることもできる。この場合は、小管と小管の間を冷却媒体が流れるように構成される。
さらに、図10及び図11に示すように、反応器10として、2枚のプレート48、48間に触媒粒子34を充填したプレート型とすることもできる。50は冷却媒体通路、52は断熱層である。CO除去用反応器としてプレート型を採用する場合は、改質器(リフォーマー)及びCOコンバーターと一体に組み込むことができるので、燃料電池発電装置のコンパクト化を図ることができる。
【0019】
図12は、本発明の実施の第2形態による改質ガス中のCO除去装置を示している。
本実施形態は、各段の触媒層を上流側のルテニウム系触媒層54と下流側のロジウム系触媒層56とに2分割し、ルテニウム系触媒層54で改質ガス中のCOの一部を除去した後、反応熱により昇温した改質ガスを隣接するロジウム系触媒層56に導入して改質ガス中のCOを除去するように構成したものである。本実施形態では、反応熱を効率よく利用することができるという利点がある。他の構成は実施の第1形態の場合と同様である。
【0020】
図13は、CO・H2酸化反応率に及ぼす温度と触媒の影響を示すグラフである。○印はRh系触媒(具体的にはRh/Al2O3を用いた)の温度一ηCO曲線、●印はRu系触媒(具体的にはRu/Al2O3を用いた)の温度一ηCO曲線、□印はRh系触媒(Rh/Al2O3)の温度一ηH2曲線、■印はRu系触媒(Ru/Al2O3)の温度-ηH2曲線を示している。なお、触媒層(触媒粒子充填層)の入口のガス組成は、いずれの場合も水素8500ppm、一酸化炭素900ppm、酸素800ppmであり、SVはいずれの場合も、20000hr-1、LVはいずれの場合も、0.215Nm/secであった。
【0021】
図13から、Ru系触媒を用いる場合は、60〜100℃でCO酸化反応率が高く、水素酸化反応率が低いことがわかる。また、最適温度範囲が狭いRh系触媒を用いる場合は、120〜150℃でCO酸化反応率が高く、水素酸化反応率が低いことがわかる。
したがって、図12に示す実施の第2形態の場合は、60〜100℃のCOを含む改質ガス(より高温度の改質ガスを60〜100℃にすることで得られる改質ガスを含む)に対しては、Ru系触媒でCOを除去する反応を進めることによって、Rh系触媒の最適温度条件である120〜150℃まで昇温させ、Rh系触媒でCOをさらに除去し、副反応による水素、メタンの反応量を減らすことができる。
【0022】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されているので、つぎのような効果を奏する。
(1) セレクトオキソ反応用の触媒層を多段に分割し、各段の出口に改質ガス温度調整手段を設けているので、一段当たりの温度分布範囲を最適条件に維持することができ、このため、反応到達率及び選択率(CO除去率)の向上を図ることができる。
(2) 触媒粒子に伝熱粒子を混合して充填することにより、発熱反応による触媒層の昇温と熱除去を効率よく行うことができる。
(3) 各段の触媒層を上流側のルテニウム系触媒と下流側のロジウム系触媒とに2分割する場合は、発熱に対して熱除去が追いつかないという問題を解決できるとともに、改質ガス温度を制御することにより、水素の減少量、メタンの発生量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施の第1形態による改質ガス中のCO除去装置を示すフローシートである。
【図2】
図1における第1触媒層及び第2触媒層まわりの詳細を示すフローシートである。
【図3】
本発明の装置における制御機構の一例を示すフローシートである。
【図4】
図1における触媒層の一例を示す断面説明図である。
【図5】
図1における本発明の触媒層の一例を示す断面説明図である。
【図6】
図1における触媒反応器の一例を示す縦断面説明図である。
【図7】
同横断面説明図である。
【図8】
図1における触媒反応器の他の例を示す縦断面説明図である。
【図9】
同横断面説明図である。
【図10】
図1における触媒反応器のさらに他の例を示す縦断面説明図である。
【図11】
同横断面説明図である。
【図12】
本発明の実施の第2形態による改質ガス中のCO除去装置を示すフローシートである。
【図13】
Ru系触媒及びRh系触媒を用いた場合の温度とCO酸化反応率、H2酸化反応率との関係を示すグラフである。
【図14】
触媒粒子のみを均一に充填する通常の充填方式の触媒層を示す断面説明図である。
【図15】
触媒粒子と伝熱粒子とを混合した触媒の希釈充填方式の触媒層を示す断面説明図である。
【図16】
図14に示す通常充填方式の触媒層及び図15に示す希釈充填方式の触媒層における触媒層長さと触媒層反応温度との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
10、10a、10b、10c…10n 反応器
12、12a、12b、12c…12n 触媒層
14 改質ガス導管
16 改質ガス温度調整手段
18 酸化剤分配供給手段
20 混合器
22 メタノールリフォーマー
24 燃料電池
26、76 冷媒流量調節弁
28 酸化剤流量調節弁
30 冷却器
32 温度指示調節器
34 触媒粒子
36 伝熱粒子
40 触媒層
42 円筒状本体
44 ジャケット
46 小管
48 プレート
50 冷却媒体通路
52 断熱層
54 ルテニウム系触媒層
56 ロジウム系触媒層
60、72 冷媒流量指示調節計
62 改質ガス温度指示調節計
64 酸化剤流量指示調節計
66 改質ガス流量指示調節計
68 CO濃度分析計
70 冷媒通路
74 触媒温度指示調節計
【図面】
















 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
(1) 訂正事項a
(α)訂正前の請求項1中の「ガス流れ方向に多段に設けられた」を「ガス流れ方向に3段以上の多段に設けられた」と訂正し、また、同請求項8中の「多段に設け」を「3段以上の多段に設け」と、
β)同請求項1及び同請求項8中の「一酸化炭素選択的酸化触媒層」を「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層」と、また、同請求項8中の「一酸化炭素選択的酸化触媒層」を「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層」と、
(γ)同請求項7を削除し、同請求項8から同12までの各項の請求項番号を1だけ繰り上げて請求項7から同11とし、訂正後の請求項8の引用項を訂正後の引用項7と訂正し、訂正後の請求項9から同11までの各請求項の引用項を訂正後の請求項7又は請求項8と訂正する。
(2) 訂正事項b
(α)上記段落【0006】中の「2段以上の多段に分割し、」を「3段以上の多段に分割し、」と、
(β)同【0006】中の「これら分解した触媒層」を「これら分割した触媒層」と訂正する。
(3) 訂正事項c
(α)本件特許明細書の段落【0007】中の「ガス流れ方向に2段以上の多段に設けられた」を「ガス流れ方向に3段以上の多段に設けられた」と、
(β)同段落【0007】中の「一酸化炭素選択的酸化触媒層」を「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子とガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子とを混合して充填した触媒層」と訂正し、
(γ)同段落【0007】中の「(図1参照)」を「(図1、図5参照)」と訂正する。
(4) 訂正事項d
本件特許明細書の段落【0009】の末尾の「用いることが好ましい(図5参照)」を「用いる(図5参照)」と訂正する。
(5) 訂正事項e
(α)同段落【0010】中の「改質ガス導管に多段に設け」を「改質ガス導管に3段以上に設け」と、
(β)同段落【0010】中の「一酸化炭素選択的酸化触媒の触媒層を備えた反応器」を「一酸化炭素選択的酸化触媒の粒子にガラスビーズ、セラミックス粒子及び金属製粒子の少なくともいずれかの伝熱粒子を混合して充填した触媒層を備えた反応器」と、
(γ)同段落【0010】中の「特徴としている(図1参照)。」を「特徴としている(図1、図5参照)。」と訂正する。
(6) 訂正事項f
本件特許明細書の段落【0015】中の「触媒粒子34と伝熱粒子36とを混合して充填する希釈充填方式とすることが好ましい。」を「触媒粒子34と伝熱粒子36とを混合して充填する希釈充填方式とする。」と訂正する。
(7) 訂正事項g
本件特許明細書の段落【0022】中の「(2) 触媒粒子に伝熱粒子を混合して充填する場合は、発熱反応による触媒層の昇温と熱除去を効率よく行うことができる」を「(2) 触媒粒子に伝熱粒子を混合して充填することにより、発熱反応による触媒層の昇温と熱除去を効率よく行うことができる」と訂正する。
(8) 訂正事項h
本件特許明細書の【図面の簡単な説明】の「【図5】図1における触媒層の他の例を示す断面説明図である。」を「【図5】図1における本発明の触媒層の一例を示す断面説明図である。」と訂正する。
(9) 訂正事項i
本件特許の図面の【図2】中の「空気(又は水)」を「空気(又は酸素)」と訂正する。
異議決定日 2000-12-22 
出願番号 特願平8-247154
審決分類 P 1 652・ 121- YA (C01B)
P 1 652・ 537- YA (C01B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 前田 仁志  
特許庁審判長 吉田 敏明
特許庁審判官 野田 直人
唐戸 光雄
登録日 1999-01-08 
登録番号 特許第2869525号(P2869525)
権利者 社団法人日本造船研究協会 川崎重工業株式会社
発明の名称 改質ガス中の一酸化炭素除去方法及び装置  
代理人 塩出 真一  
代理人 塩出 真一  
代理人 塩出 洋三  
代理人 塩出 洋三  
代理人 塩出 真一  
代理人 塩出 洋三  

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