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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H03H
管理番号 1041126
異議申立番号 異議2000-71869  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-10-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-02 
確定日 2001-01-29 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2970907号「PCMにおけるアナログ信号合成装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2970907号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 (1)手続の経緯
特許第2970907号の請求項1、2、3に係る発明についての出願は、昭和63年4月13日に特許出願され、平成11年8月27日にその発明について特許の設定登録がされ、その後、その特許について、異議申立人田中清美により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年11月16日に訂正請求がなされたものである。
(2)訂正の適否
(訂正事項)
a 特許請求の範囲の請求項1において
「複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータからアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数のアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
を、
「複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータから音声合成信号としてのアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数の音声信号としてのアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータの中から動作プログラムに従い複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
と訂正する。
b 出願当初明細書第9頁第4行目〜第10頁第6行目の記載において、
「複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータからアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数のアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
を、
「複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータから音声合成信号としてのアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数の音声信号としてのアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータの中から動作プログラムに従い複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
と訂正する。
(訂正の適否の判断)
訂正事項aは、特許明細書に記載された事項の範囲内において「複数のPCMデータからアナログ信号を合成する」をより下位概念に限定し、また、特許明細書に記載された事項の範囲内において「複数のチャンネル数より多い数の前記複数のアナログ信号」をより下位概念に限定し、また、特許明細書に記載された事項の範囲内において「波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段」をより下位概念に限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
訂正事項bは、特許明細書の「問題点を解決するための手段」の記載を訂正された特許請求の範囲の請求項1の記載と整合させるためのもので、明瞭でない記載の釈明に相当するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(むすび)
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法第120条の4第2項に掲げる事項を目的とし、且つ同条第3項において準用する特許法第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについての判断
(申立ての理由の概要)
特許異議申立人田中清美は、本件請求項1〜3に係る発明は、甲第1号証刊行物(特開昭57-113618号公報)、甲第2号証刊行物(ロ-ランドD-50/D-550・S-50/S-550音づくりのすべて:株式会社リット-ミュ-ジック、第76頁〜第120頁、昭和62年12月21日発行)、及び甲第3号証刊行物(特公昭59-17838号公報)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項に規定する発明に該当するので、本件請求項1〜3に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである旨主張している。
(本件請求項1〜3に係る発明)
本件請求項1〜3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりの次のものである。
請求項1「(1)複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータから音声合成信号としてのアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数の音声信号としてのアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータの中から動作プログラムに従い複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
請求項2「(2)特許請求の範囲(1)記載の装置において、
前記読み出す手段は、前記複数のPCMデータをタイムシェアリングにより前記波形メモリから順次読み出し、
前記オーバーサンプリング手段は、前記タイムシェアリングにより順次読み出された前記PCMデータを順次オーバーサンプリングし、
前記加算する手段は、オーバーサンプリングされた前記各PCMデータを、前記複数のチャンネル数分累算してその累算値を出力する、ことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
請求項3「(3)特許請求の範囲(1)又は(2)記載の装置において、
前記オーバーサンプリング手段は、波形メモリから読み出される各チャンネルのPCMデータを、n次補完(但し、nは整数)し、各PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるよう形成されたことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
(引用刊行物記載の発明)
当審が平成12年9月4日に付けで通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭57-113618号公報)の特に第7図とその説明には、複数のアナログ信号をそれぞれ異なるサンプリング周波数でサンプリングした複数のディジタルサンプリングデ-タがある場合、その複数のディジタルサンプリングデ-タの発生部110からのデ-タが補間回路120(インパルス応答特性の振幅デ-タを利用した補間回路)に送られ、同一のサンプリング周波数に変換して、加算し、D-A変換器でアナログ信号に変換し、ディジタルサンプリングデ-タに含まれる折り返しノイズを除去する1個のロ-パスフィルタに送ることによりアナログ合成信号を得ることが記載されている。そして、ディジタルサンプリングデ-タ発生部110にRAM(ランダムアクセスメモリ-)等を用いる場合には、このメモリ-の読み出しアドレスとしてサンプリングアドレスNを供給すること(第4頁左下欄〜同頁右下欄)、また、時分割で波形デ-タを取り扱うこと(第4頁右下欄)も記載されている。
刊行物2(ロ-ランドD-50/D-550・S-50/S-550音づくりのすべて:株式会社リット-ミュ-ジック、第76頁〜第120頁、昭和62年12月21日発行)の特に第80頁には、最大音色数32に対して最大同時発音数は、最大音色数32より少ない16であることが記載されている。
刊行物3(特公昭59-17838号公報)には、アナログ信号をサンプリングしたサンプリングデ-タを、n次補間の方法で補間すること(第4頁左欄)が記載されている。
(対比・判断)
訂正明細書の請求項1に係る発明と刊行物1〜3に記載された発明とを対比すると、刊行物1〜3のいずれにも、本件請求項1に係る発明を構成するための事項である「複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の複数の音声信号としてのアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされたPCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータの中から動作プログラムに従い複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段」が記載されていない。そして、当該事項により、波形メモリからのPCMデ-タの選択及びその読み出しは、動作プログラムに従い行われ、音声合成のバリエ-ションを飛躍的に多くすることができるという顕著な効果を奏するものであり、本件請求項1に係る発明が、引用刊行物1〜3に記載されはものから当業者が容易に発明をすることができる程度のものとは認められない。
そして、本件請求項2、3に係る発明は、本件請求項1を引用しているから、本件請求項2、3に係る発明が引用刊行物1〜3に記載されはものから当業者が容易に発明をすることができる程度のものとは認められないことはいうまでもない。
(むすび)
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜3に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
PCMにおけるアナログ信号合成装置
(57)【特許請求の範囲】
(1)複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータから音声合成信号としてのアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数の音声信号としてのアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータの中から動作プログラムに従い複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。
(2)特許請求の範囲(1)記載の装置において、
前記読み出す手段は、前記複数のPCMデータをタイムシェアリングにより前記波形メモリから順次読み出し、
前記オーバーサンプリング手段は、前記タイムシェアリングにより順次読み出された前記PCMデータを順次オーバーサンプリングし、
前記加算する手段は、オーバーサンプリングされた前記各PCMデータを、前記複数のチャンネル数分累算してその累算値を出力する、ことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。
(3)特許請求の範囲(1)又は(2)記載の装置において、
前記オーバーサンプリング手段は、波形メモリから読み出される各チャンネルのPCMデータを、n次補完(但し、nは整数)し、各PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるよう形成されたことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明はPCMにおけるアナログ信号合成装置、特に波形メモリから多チャンネル分のPCMデータを読み出してアナログ信号を合成するアナログ信号合成装置に関する。
[従来の技術]
背景技術
PCMは、ノイズに対して非常に強く、隣接チャンネルとの干渉にも強いなどの優れた特徴を有することから、今日、例えばシンセサイザー、音楽用のコンパクトディスク装置、PCM通信方式およびその他の用途に幅広く用いられている。
第8図には、PCMの原理が示されている。例えば、音声などのアナログ信号をPCM信号に変換する場合には、まず第8図(A)に示すように、アナログ信号100を所定のサンプリング周波数で標本化し、第8図(B)に示すようなPAM波を得る。そして、このようなPAM波に量子化、符号化処理を施しPCMデータを得る。
また、このようにして得られたPCMデータをアナログ信号に再変換する場合には、まずPCMデータを復号化し、第8図(B)に示すようなPAM波を得る。そして、これをローパスフィルタを通すことにより、原アナログ波形の信号波が再現される。
ところで、アナログ信号をfsの周波数でサンプリングすると、第9図に示すような波形スペクトラムとなる。ここにおいて、斜線部分は原アナログ信号のスペクトラムである。また、このようなサンプリングを行うと、そのサンプリング周波数の整数倍、すなわちfs、2fs、3fs、…を中心に複数の折り返しノイズが発生する。この折り返しノイズは、サンプリング周波数fsが低いと、現信号の波形スペクトラムと重なり合ってしまうため、原アナログ信号を忠実に再生することが不可能となる。
しかし、サンプリング周波数fsを高くすると、取扱うデータ量が増え、データ処理が極めて繁雑なものとなってしまう。
従って、原アナログ信号を忠実に再生し、しかも取扱うデータ量を最小限に抑えるためには、折返しノイズが原信号と混ざらない範囲で、サンプリング周波数をできるだけ小さな値に設定してやることが必要とされる。
サンプリング定理によれば、原アナログ信号の波形スペクトラムと折り返しノイズとが混ざらないようにするためには、サンプリング周波数を原アナログ信号の最高の周波数の2倍以上に設定すれば良いことが知られている。従って、サンプリング周波数を、対象とするアナログ信号の最高周波数の2倍に設定すれば、取扱うデータ量を最小限に抑え、原アナログ信号を忠実に再生することが可能となる。
第10図には、このようなPCM技術を利用したアナログ信号合成装置の一例が示されている。
この装置は、複数のアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされたPCMデータとして記憶した波形メモリ10を含む。そして、この波形メモリ10から、3チャンネル分のPCMデータを読み出してアナログ信号を合成出力するよう形成されている。
例えば、このアナログ信号合成装置を用いて、複数の楽器の合成音を出力しようとする場合には、対象とする複数種類の楽器、例えばギター、ドラム、ベースの各音声アナログ信号を、その周波数に対応した周波数fs1、fs2、fs3でサンプリングされたPCMデータとして波形メモリ10へ予め記憶する。
そして、この波形メモリ10からは、チャンネル1、チャンネル2、チャンネル3を介して、サンプリング周波数fs1、fs2、fs3の各PCMデータが読み出され、D/Aコンバータ12-1、12-2、12-3を介してアナログ信号に変換され、ローパスフィルタ14-1、14-2、14-3へ入力される。そして、入力された各アナログ信号は、フィルタ14-1、14-2、14-3により折り返しノイズが除去された後、アンプ16-1、16-2、16-3を介してミキサー18へ向け出力される。そして、ミキサー18は、各チャンネルを介して入力された3チャンネル分のアナログ信号をミキシングし、3種類のアナログ信号の合成アナログ信号、例えばギター、ドラム、ベースの各楽器の合成アナログ音を出力している。
[発明が解決しようとする問題点]
ところで、ローパスフィルタ14を用いて、PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するためには、各ローパスフィルタ14-1、14-2、14-3のカットオフ周波数fcを、第11図(A)に示すように、サンプリング周波数fsの2分の1に設定してやることが必要とされる。これは、例えば同図(B)に示すように、カットオフ周波数fcが(1/2)fsより大きくなると、折り返しノイズの一部を除去することができず、この部分がノイズとして再生されてしまうからである。
しかし、CH1、CH2、CH3の各チャンネルを介して読み出されるPCMデータは、その各サンプリング周波数がfs1、fs2、fs3とそれぞれ異なる。このため、これら各チャンネルに対応して設けられたローパスフィルタ14-1、14-2、14-3は、そのカットオフ周波数fc1、fc2、fc3がそれぞれ異なる値に設定されなければならないという問題があった。
特に、このような装置は、波形メモリ10から読み出される各PCMデータのサンプリング周波数とローパスフィルタ14のカットオフ周波数fcとが1対1に対応している。このため、各チャンネルが汎用性に乏しく、例えばCH1からはギター、CH2からはドラム、CH3からはベースという特定のPCMデータしか読出すことができないという問題があった。
従って、波形メモリ10から例えば10種類、20種類といった多種類のPCMデータを読み出そうとする場合には、PCMデータの種類と同じ数のチャンネルを設けなければならず、装置全体の構成が複雑かつ高価なものとなってしまうという問題があった。
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、各チャンネルのPCMデータに含まれる折り返しノイズの除去を共通のローパスフィルタを用いて行うPCMにおけるアナログ信号合成装置を提供することにある。
[問題点を解決するための手段]
前記目的を達成するため、本発明は、
複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータから音声合成信号としてのアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数の音声信号としてのアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータの中から動作プログラムに従い複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とする。
本発明において、
読み出す手段は、複数のPCMデータをタイムシェアリングにより波形メモリから順次読み出し、
オーバーサンプリング手段は、タイムシェアリングにより順次読み出されたPCMデータを順次オーバーサンプリングし、
加算する手段は、オーバーサンプリングされた各PCMデータを、複数のチャンネル数分累算してその累算値を出力する、のが好ましい。
本発明において、
オーバーサンプリング手段は、波形メモリから読み出される各チャンネルのPCMデータを、n次補完(但し、nは整数)し、各PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるよう形成されるのが好ましい。
本発明は以上の構成からなり、次にその作用を説明する。
本発明の装置では、波形メモリ内に、複数のアナログ信号が、異なるサンプリング周波数でサンプリングされたPCMデータとして記憶されている。
そして、この波形メモリから、各チャンネルのPCMデータが読み出されると、読み出されたPCMデータは、オーバーサンプリング処理される。
このようなオーバーサンプリング処理の手法としては、例えば1次補間、2次補間等の各種補完方式を利用して、新たにデ-タ値を求める方法がある。また、オ-バ-サンプリングした各点につき、波形メモリのデ-タと同じものを用い、それを原デ-タとしてデジタルフィルタリング処理を行って新たにデ-タ値を求める方法もある。そのデジタルフィルタリング処理の方法としては、離散フ-リエ変換による周波数領域でのフィルタリング(デジタル・ロ-パス・フィルタ)や、フィルタのインパルス応答とのたたみ込みによる時間領域でのフィルタリング(スム-ジング)がある(デジタルフィルタについては「インタ-フェ-イス1987年11月号(NO.126)」を参照)。
このような、オ-バサンプリング処理を施すことにより、読出された各チャンネルのPCMデ-タは、そのサンプリング周波数が高周波側にシフトされる。
例えば、波形メモリから、第2図(A)に示すようなPCMデータが各チャンネルを介して読み出されたときに、読み出された各PCMデータに対し前記オーバーサンプリング処理を施すと、各チャンネルのサンプリング周波数はfs1、fs2、fs3…から、fDA1、fDA2、fDA3…で示すように高周波にシフトされる。このように、本発明では、各PCMデータに含まれる低いサンプリングデータの折り返しノイズを、高い周波数領域へシフトさせ、図中斜線で示す原信号のスペクトラムとこれに隣接する折り返しノイズのスペクトラムとの周波数間隔を広げている。
そして、オーバーサンプリング処理された各チャンネルのPCMデータは、加算手段を用いて加算され、DA変換手段を用いてアナログ信号に変換された後、ローパスフィルタに入力される。
ローパスフィルタは、前記オーバーサンプリング処理により高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づき、そのカットオフ周波数が設定されている。そして、入力された合成アナログ信号からPCMデータに含まれる折り返しノイズを除去している。
このように、本発明によれば、各チャンネルのPCMデータに対しオーバーサンプリング処理を施し、低い周波数の折り返しノイズを高い周波数領域へ強制的にシフトをさせる。このため、各チャンネルのPCMデータは、原信号の最高周波数と、これに接する折り返しノイズの最低周波数との間の周波数間隔が広くなる。従って、各チャンネルのPCMデータに対するローパスフィルタのカットオフ周波数を同じ値に設定することが可能となる。
さらに、本発明によれば、各チャンネルごとに個別にローパスフィルタを設けるのではなく、各チャンネルのPCMデータを加算し、アナログ信号に変換した後、ローパスフィルタに入力するよう構成されている。このため、各チャンネルのPCMデータに含まれる折り返しノイズを、共通のローパスフィルタを用いて除去することができ、装置全体の構成を簡単かつ安価なものとすることができる。
さらに、本発明によれば、各チャンネルを介して読み出されるPCMデータが限定されず、例えば同じチャンネルを介して異なるPCMデータを読み出すことができる。従って、本発明の信号合成装置は、各チャンネルの汎用性が極めて高く、波形データ内にチャンネル数以上の種類のPCMデータが記憶されている場合でも、これらPCMデータを任意の組合せで各チャンネルを介して随時読み出し、アナログ信号を合成することができる。
[実施例]
次に本発明の好適な実施例を図面に基づき説明する。
第3図には、本発明に係るPCMにおけるアナログ信号合成装置の好適な実施例が示されている。
実施例のアナログ信号合成装置は、複数の音声信号(アナログ信号)を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされたPCMデータとして記憶した波形メモリ10を有する。そして、この波形メモリ10から多チャンネル分のPCMデータを読み出して、右スピーカ用のアナログ音声合成信号100Rおよび左スピーカ用のアナログ音声合成信号100Lを出力するよう形成されている。
このため、実施例の装置は、ワークメモリ20、CPU22およびマルチチャンネル・プログラマブル・サウンド・シンセサイザー24を有する。
前記ワークメモリ20には、第4図(A)に示すように、0〜17FHのアドレスで指定される0〜23チャンネルまでのチャンネルエリアと、1F8H〜1FEHのアドレスで指定されるインタラプトエリアが設けられている。そして、前記各チャンネルエリアは第4図(B)、前記インタラプトエリアは第4図(C)で示すように構成されている。
ここにおいて、第4図(B)で示される各チャンネルのLボリュウム、Rボリュウムエリアには、そのチャンネルの左右の音の大きさが書き込まれる。また、周波数エリアには、そのチャンネルを介して出力される音声の音程が書き込まれる。また、フラグエリアは、第5図または第6図に示すようなフラグが書き込まれる。また、スタートアドレス、エンドアドレスの各エリアには、波形メモリ10に対する読み出し開始アドレスおよび読み出し終了アドレスが書き込まれ、これにより、当該チャンネルを介して波形メモリ10から読み出されるPCMデータが指定される。また、リピートアドレスには、指定されたPCMデータを繰り返して読み出すときの繰り返し部分の開始アドレスが書き込まれる。
そして、CPU22は、動作プログラムに従いアナログ信号合成用の演算を行い、この演算結果をワークメモリ20を介してマルチプログラマブル・サウンド・シンセサイザー24へ向け出力する。
すなわち、実施例のCPU22は、第4図(A)に示す各エリアに書き込むデータを演算し、その演算データをワークメモリ20に書き込むと共に、0〜23の各チャンネルを介して波形メモリ10からPCMデータを読み出すのに必要な各種データを、マルチチャンネル・プログラマブル・サウンド・シンセサイザー24へ向け出力する。
第1図には、このマルチチャンネル・プログラマブル・サウンド・シンセサイザー24の回路構成が示されている。
実施例のシンセサイザー24は、CPU22から演算出力されるデータおよびワークメモリ20に書き込まれたデータに基づき、波形メモリ10から各チャンネルのPCMデータを読み出す制御回路30と、波形メモリ10から読み出される各チャンネルのPCMデータをオーバーサンプリング処理するオーバーサンプリング回路32とを含む。
前記制御回路30は、0〜23の各チャンネルのPCMデータ読み出しアドレスをタイムシェアリングの手法を用いて、波形メモリ10へ向け順次出力する。これにより、波形メモリ10からは、読み出しアドレスにより指定されるPCMデータが各チャンネルごとに順次読み出され、オーバーサンプリング回路32へ向け出力される。
このとき制御回路30は、音程を高く設定する場合には、PCMデータ読み出しアドレスを短い時間間隔でインクリメントし、また音程を低く設定する場合には読み出しアドレス信号を長い時間間隔でインクリメントしている。
また、これと同時に制御回路30は、読み出されるPCMデータの音程を表わす周波数データ120をオーバーサンプリング回路32へ向け出力すると共に、左右のボリュウムを指示するボリュウムデータ130Rおよび130Lを乗算器46Rおよび46Lへ向け出力する。
また、前記オーバーサンプリング回路32は、波形メモリ10から読み出される各チャンネルのPCMデータをオーバーサンプリング処理し、読み出された各PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるよう形成されている。
このようなオーバーサンプリング処理の手法としては、例えば1次補間(線形補間)、2次補間などの補完処理の手法や、デジタルフィルタリング処理を用いる手法などを必要に応じて適宜用いることができる。本実施例においては、PCMデータを直線補間処理し、サンプリング周波数を高周波側にシフトさせるよう形成されている。
例えば、波形メモリ10から、あるチャンネルのPCMデータが第7図に示すようにHn-1、Hn…と読み出される場合を想定する。この場合に、PCMデータHn-1とHnとの間のm番目の補間データHは次式により求められる(m=0,1,…)。

但し、ΔT=Tn-Tn-1。
ここにおいて、Tn-1、Tn…は各PCMデータが出力される時間を表す。
そして、このような直線補間式を用いて、各PCMデータHn-1、Hnの間で1つの補間データを求めれば、波形メモリ10から読み出されるPCMデータのサンプリング周波数fsを2倍の周波数、すなわち2fsまで高周波側にシフトさせることができる。また、各PCMデータの間で2つの直線補間データを求めれば、サンプリング周波数を3倍まで実質的に高めることができる。
このとき、実施側においては、第1図に示すように、波形メモリ10から読み出されるPCMデータは12ビット、引算器36から出力されるデータは、これに正負を表わす1ビットを加えた13ビット、周波数デ-タメモリ40から出力されるデ-タは8ビットである。これが乗算器38および加算器44で演算され、補間処理されることにより、得られるPCMデータは16ビットに符号拡張される。
このような直線補間処理を行うため、実施例のサンプリング回路32は、ラッチ回路34、引算器36、乗算器38、周波数データメモリ40、周波数データ加算器42、加算器44を有する。
そして、波形メモリ10から読み出されるPCMデータHnはラッチ回路34および引算器36へ向け出力される。
そして、ラッチ回路34は、前回入力されたPCMデータHn-1を引算器36および加算器44へ向け出力するよう形成され、引算器36は、このようにして入力されるPCMデータHn、Hn-1からΔH=Hn-Hn-1を演算し乗算器38へ向け出力する。
また、前記周波数データメモリ42には、各PCMデータの音程を表わす周波数データとして、(Δt/ΔT)が制御回路30から初期値として入力される。そして、周波数データ加算器42は、この初期値(Δt/ΔT)を用いて、m(Δt/ΔT)を演算し乗算器38へ向け出力する。
乗算器38は、このようにして入力される各データに基づき、Δh=(ΔH/ΔT)mΔtを演算し加算器44へ向け出力する。
そして、加算器44は、このようにして入力される各データを加算し、前記第1式に示す直線補完データHを演算し、乗算器46Rおよび46Lへ向け出力する。
そして、乗算器46R、46Lは、このようにしてオーバーサンプリング回路32から出力されるPCMデータと、制御回路30から出力される左右のボリュウムデータ130R、130Lとを乗算し、その乗算値を右チャンネル用の累算器48Rおよび左チャンネル用の累算器48Lに向け出力する。
本実施例のマルチチャンネルプログラマブルサウンドシンセサイザー24は、このような演算処理をタイムシェアリングの手法を用いて0〜23の各チャンネルに対して繰り返し行い、0〜23チャンネル分の演算データを累算器48Rおよび48Lに順次累算していく。
そして、23チャンネル目のPCMデータの累算が終了すると、右チャンネル用の累算器48R、左チャンネル用の累算器48Lの累算値は、順にマルチプレクサ50を介してシフトレジスタ52に向け出力され、シフトレジスタ52は、左右のチャンネルの累算値をシリアルデータに変換出力する。そして、このシリアルデータは、第3図に示すシリアルパラレル変換回路60を介してDAコンバータ62に入力される。
このように、累算値を一旦シリアルデータに変換して出力するのは、シンセサイザー24として出力ピン数が少なくてすむシリアルデータ出力型のワンチップ素子を用いているためであり、このシンセサイザー24として出力ピン数は多くなるがパラレルデータ出力型のワンチップ素子を用いた場合には、このようなマルチプレクサ50、シフトレジスタ52、シリアルパラレル変換回路60を用いる必要はない。
また、このようにシリアルパラレル変換回路60を介してDAコンバータ62に入力された右チャンネルおよび左チャンネルの各累算値は、ここでアナログ信号に変換され右チャンネル用のローパスフィルタ64Rおよび左チャンネル用のローパスフィルタ64Lに向け出力される。
ここにおいて、前記各ローパスフィルタ64R、64Lは、高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきそのカットオフ周波数fcが設定されており、入力されるアナログ信号からPCMデータに含まれる折り返しノイズを除去する。そして、これら各アナログ信号を、アンプ66R、66Lを介して右チャンネル用の音声信号100Rおよび左チャンネル用の音声信号100Lとして出力している。
本実施例は以上の構成からなり、次にその作用を説明する。
本実施例の信号合成装置は、タイムシェアリングの手法を用いて0〜23の各チャンネルのPCMデータを波形メモリ10から順次読み出す。 第2図(A)には、このようにして波形メモリ10から読み出された各チャンネルのPCMデータの周波数スペクトラムが示されている。前述したように、これら各PCMデータは、そのサンプリング周波数fsが元のアナログ信号の最高周波数の約2倍に設定されている。このため、各チャンネルを介して読み出されるPCMデータは、斜線で示す原信号のスペクトラムと、折り返しノイズのスペクトラムとが近接している。このため、各チャンネルごとに固有のカットオフ周波数fsを設定しなければ、PCMデータから折り返しノイズを確実に除去することはできない。
これに対し、本発明のアナログ信号合成装置では、このようにして読み出された各チャンネルのPCMデータに対し、オーバーサンプリング回路32を用いてオーバーサンプリング処理を施し、各チャンネルのPCMデータのサンプリング周波数を第2図(B)に示すように高周波側にシフトさせている。
すなわち、本実施例においては、第7図に示すように、各PCMデータHn-1、Hn…の間のデータHを、直線補間により求めている。これにより、第2図(A)に示すサンプリング周波数の低いデータ列を、高い周波数fDAでサンプリングしたと仮定したデータ列に変換し、各チャンネルのデータ列の見掛け上のサンプリング周波数fDAを高周波側へ強制的にシフトさせている。
この場間に、例えば各PCMデータの間で1つのPCM補間データHを求めると、見掛け上のサンプリング周波数を2倍まで高めることができ、また各PCMデータの間でn個(nは整数)の補間データHを求めると、見掛け上のサンプリング周波数fDAをサンプリング周波数fsのn+1倍まで高めることができる。
このようにして、各チャンネルを介して読み出されるPCMデータの見掛け上のサンプリング周波数fDAを高周波側にシフトさせることにより、各チャンネルの低周波側折り返しノイズを強制的に高周波側へシフトさせ、原信号と折り返しノイズとの間の周波数間隔を広げることができる。
従って、オーバーサンプリング処理を施された各チャンネルのPCMデータを累算器48R、48Lを用いて合成しても、合成されたPCMデータに含まれる原信号と折り返しノイズとが重なり合うことはなく、両者を十分な周波数間隔を介して引き離すことができる。
なお、波形メモリ10内に記憶されているPCMデータのサンプリング周波数は予め知られている。このため、PCMデータをオーバーサンプリング処理した場合に、全てのPCMデータに含まれる原信号成分の最高周波数と折り返しノイズの最低周波数とを予め求めておくことができる。
従って、各ローパスフィルタ64R、64Lのカットオフ周波数fcを、原信号の最高周波数と、折り返しノイズの最低周波数との間に設定すれば、第3図に示すように、DAコンバータ62の出力段に左右の両チャンネル用のローパスフィルタ64R、64Lを用意するのみで、各チャンネルのPCMデータに含まれる折り返しノイズを確実に除去することができる。
このようにして、本実施例によれば、右チャンネル用として一台のローパスフィルタ64R、左チャンネル用として1台のローパスフィルタ64Lを用意するのみで、0〜23の各チャンネルを介して出力されるPCMデータに含まれる折り返しノイズを確実に除去することができる。
さらに、本発明によれば、0〜23の各チャンネルを介してどのようなサンプリング周波数のPCMデータを読み出しても良い。従って、波形メモリ10に25種類以上のPCMデータが記憶されている場合でも、0〜23の合計24個のチャンネルを用いて前記各PCMデータを任意の組合せで読み出しアナログ信号として合成出力することができ、PCMデータの種類と各チャンネルとが1対1の対応関係にあった信号合成装置に比べ、装置全体の汎用性を高め、しかも装置全体の構成を簡単なものとすることができる。
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で各種の変形実施が可能である。
例えば、本実施例においては、オーバーサンプリングとして直線補間処理を行う場合を例に取り説明したが、本発明はこれに限らず、必要に応じて2次補間、3次補間…や、ラグランジェの補間公式を用いた補完処理を行ってもよい。
また、このようなオーバーサンプリングの他の手法として、デジタルフィルタリング処理により補完データを求めることもできる。
前記実施例では、PCMデータHn-l,Hn…自体は、補完の対象としなかったが、必要に応じてこれらPCMデータそのものも補完の対象とすることもできる。
また、本実施例は、音声信号を合成出力する場合を例に取り説明したが、本発明はこれに限らず、必要に応じて他の種類のアナログ信号を合成出力する場合にも適用可能であることはいうまでもない。
[発明の効果]
以上説明したように、本発明によれば、各チャンネルのPCMデータに含まれる折り返しノイズの除去を共通のローパスフィルタを用いて行うことができ、各チャンネルごとに、それぞれ独自のカットオフ周波数が設定されたローパスフィルタを設ける装置に比べ、装置全体の構成を簡単かつ安価なものとすることができる。
また、本発明によれば、各チャンネルを介して、どのような周波数でサンプリングされたPCMデータを読み出しても良い。このため、読み出されるPCMデータの種類が各チャンネルごとに制限されていた装置に比べ、少ないチャンネル数で多種類のアナログ信号を合成出力することができるという効果がある。
従って、本発明によれば、装置とチャンネル数が同じ場合でも、波形メモリ内にチャンネル数以上の多数のPCMデータを記憶しておき、これら各PCMデータを任意に組合せて、多彩なアナログ信号を合成出力することができる。また、波形メモリ内に書き込まれているPCMデータの種類が装置と同じ場合には、必要に応じてチャンネル数を減らすこともできるため、この面からも装置全体の構成を簡単なものとし、コストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係るPCMにおけるアナログ信号合成装置の好適な実施例を示すブロック回路図、
第2図はオーバーサンプリング処理の一例を示す説明図であり、同図(A)はオーバーサンプリング処理を施す前の各チャンネルのPCMデータの周波数スペクトラム図、同図(B)はオーバーサンプリング処理を施した後の周波数スペクトラム図、
第3図は本発明が適用されたアナログ信号合成装置の全体説明図、
第4図は第3図に示すワークメモリのメモリマップの説明図、
第5図および第6図は第4図(B)に示すメモリマップの所定エリアの説明図、
第7図は直線補間の説明図、
第8図はアナログ信号をPCM信号に変換する場合の説明図であり、同図(A)はアナログ信号を所定周波数でサンプリングする場合の説明図、同図(B)はそのサンプリングされたPAM波の説明図、
第9図は所定のサンプリング周波数fsサンプリングされたPCMデータの周波数スペクトラム図、
第10図はPCMにおけるアナログ信号合成装置の一例を示すブロック回路図、
第11図はPCMデータに対するカットオフ周波数の説明図であり、同図(A)はカットオフ周波数をサンプリング周波数の2分の1に設定した場合の説明図、同図(B)はカットオフ周波数をサンプリング周波数の2分の1より高い値に設定した場合の説明図である。
10…波形メモリ
30…制御回路
32…オーバーサンプリング回路
48…累算器
62…DAコンバータ
64…ローパスフィルタ
100R、100L…アナログ音声合成信号
 
訂正の要旨 (3)訂正の要旨
1)訂正事項a
本件特許公報に記載の特許請求の範囲の請求項1に係る記載
「(1)複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータからアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数のアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
を、
「(1)複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータから音声合成信号としてのアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数の音声信号としてのアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータの中から動作プログラムに従い複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とするPCMにおけるアナログ信号合成装置。」
と訂正する。
2)訂正事項b
出願当初明細書第9頁第4行目〜第10頁第6行目の記載
「複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータからアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、複数のチャンネル数より多い数の複数のアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされたPCMデータとして記憶し、かつ任意のチャンネルから読み出し可能にPCMデータが記憶された波形メモリと、
波形メモリに記憶されている複数のPCMデータを任意に組み合わせて、各チャンネルを介して読み出す手段と、
波形メモリから読み出される各チャンネルのPCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された各チャンネルのPCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号からPCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とする。」
を、
「複数のチャンネルを介して読み出される複数のPCMデータから音声合成信号としてのアナログ信号を合成するPCMにおけるアナログ信号合成装置において、
前記複数のチャンネルが割り当てられた波形メモリであって、前記複数のチャンネル数より多い数の前記複数の音声信号としてのアナログ信号を、異なるサンプリング周波数でサンプリングされた前記PCMデータとして記憶し、かつ任意の前記チャンネルから読み出し可能に前記PCMデータが記憶された波形メモリと、
前記波形メモリに記憶されている前記複数のPCMデータの中から動作プログラムに従い複数のPCMデータを任意に組み合わせて、前記各チャンネルを介して読み出す手段と、
前記波形メモリから読み出される前記各チャンネルの前記PCMデータのサンプリング周波数を高周波側にシフトさせるオーバーサンプリング手段と、
オーバーサンプリング処理された前記各チャンネルの前記PCMデータを加算する手段と、
加算されたデータをアナログ信号に変換するDA変換手段と、
高周波側にシフトされたサンプリング周波数に基づきカットオフ周波数が設定され、合成されたアナログ信号から前記PCMデータに含まれる折り返しノイズを除去するローパスフィルタと、
を含むことを特徴とする。」と訂正する。
異議決定日 2001-01-10 
出願番号 特願昭63-90575
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H03H)
最終処分 維持  
前審関与審査官 畑中 博幸  
特許庁審判長 松野 高尚
特許庁審判官 磯崎 洋子
大橋 隆夫
登録日 1999-08-27 
登録番号 特許第2970907号(P2970907)
権利者 株式会社ナムコ
発明の名称 PCMにおけるアナログ信号合成装置  
代理人 大渕 美千栄  
代理人 井上 一  
代理人 布施 行夫  
代理人 井上 一  
代理人 布施 行夫  
代理人 大渕 美千栄  

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