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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04B 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 H04B |
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管理番号 | 1041176 |
異議申立番号 | 異議2000-72522 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1996-02-16 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-19 |
確定日 | 2001-01-19 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2993551号「移動通信におけるゾーン変更システム」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2993551号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 同請求項3ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本件特許第2993551号は、その発明について、平成6年8月1日に特許出願され、平成11年10月22日に特許権の設定の登録がされたものであって、その後、請求項1ないし4に係る特許の全てについて、平成12年6月19日に保田博志より特許異議の申立てがされ、これにより、当審における合議の結果、同年9月4日付けで前記請求項1ないし4のうちの1及び4に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月20日に訂正請求がされたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正の要旨 平成12年11月20日付け訂正請求に係る訂正の要旨は、同訂正請求書の訂正の要旨の欄の記載から見て、次のものと認められる。 (1)訂正1 願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とするゾーン変更システム。」及び 「【請求項2】移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とするゾーン変更システム。」と訂正する。 (2)訂正2 同じく、請求項2を請求項3に繰り下げる。 (3)訂正3 同じく、請求項3を請求項4に繰り下げると共に、被引用請求項の番号を2から3に訂正する。 (4)訂正4 同じく、請求項4を請求項5に繰り下げると共に、該請求項4を、 「【請求項5】前記アンテナはアレイアンテナであり、前記指向性変更手段は、アレイアンテナへ給電する送信信号の位相を変えることで、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることを特徴とする請求項3または4に記載のゾーン変更システム。」と訂正する。 (5)訂正5 願書に添付した明細書の段落番号【0015】〜【0018】を、 「【0015】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置とを備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とする。 【0016】 請求項2に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置とを備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とする。 【0017】 請求項3に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する複数の基地局と、前記複数の基地局の指向性変更手段を一括して制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記複数の基地局のゾーンを変更する制御装置とを備えたことを特徴とする。 【0018】 請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のゾーン変更システムであって、前記制御装置は、前記複数の基地局のトラヒックを考慮して、前記複数の基地局のゾーンを変更することを特徴とする。 請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載のゾーン変更システムであって、前記アンテナはアレイアンテナであり、前記指向性変更手段は、アレイアンテナへ給電する送信信号の位相を変えることで、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることを特徴とする。」と訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 (1)訂正1について ア この訂正は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された「制御装置(制御手段)」及び「指向性変更手段」を技術的に限定するものであって、特許請求の範囲の減縮に相当するから、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものである。 イ また、願書に添付した明細書には、「制御装置29は、可変移相器24,25,26および27に設定する各位相量の組を記憶し、それを単に出力するばかりではなく、可変移相器24,25,26および27に設定する各位相量を演算で求める構成とすることもできる。」(段落番号【0031】)との記載があるから、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされており、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第2項の規定に適合する。 ウ 更に、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第3の規定に適合する。 (2)訂正2について この訂正は、訂正1に伴う単なる番号整理に過ぎないものであるから、訂正要件を満たしているか否かの検討は要しないものである。 (3)訂正3について この訂正も、前記(2)と同様に、先の訂正に伴う単なる番号整理に過ぎないから、訂正要件を満たしているか否かの検討は要しないものである。 (4)訂正4について この訂正は、請求項4における被引用請求項の個数を1ないし3の3個から3または4の2個に減少するものであって、特許請求の範囲の減縮に相当するから、一応、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものに相当するが、請求項に係る発明の技術的特徴を何らも変更するものではないから、前記(3)と同様に、訂正要件を満たしているか否かの検討は要しないものである。 (5)訂正5について ア この訂正は、訂正された明細書の特許請求の範囲における記載と発明の詳細な説明における記載を単に整合させるためのものであって、明りょうでない記載の釈明に相当するから、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に掲げる事項を目的とするものである。 イ また、この訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされているから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第2項の規定に適合するものである。 ウ 更に、この訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するものである。 3 独立特許要件 訂正1は、特許異議の申立てのされている請求項に対してされたものであるから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条第4項の規定の適用外のものである。 4 訂正の適否についての結論 以上のとおりであって、平成12年11月20日付け訂正請求については、拒絶すべき理由が見当たらないから、当該訂正は認める。 第3 特許異議申立て 1 特許異議申立ての概要 特許異議申立人保田博志は、証拠として、特開平4-320122号公報(平成4年11月10日特許庁発行)、同5-37222号公報(平成5年2月12日特許庁発行)、桑原守二監修「自動車電話」(昭和60年8月1日社団法人電子通信学会発行)66-68頁及び85-89頁、特開平6-120720号公報(平成6年4月28日特許庁発行)、及び、桑原守二監修「ディジタル移動通信」(1992年9月株式会社科学新聞社発行)123-125頁及び222-233頁を、それぞれ、甲第1号証ないし同5号証として提示すると共に、理由として、請求項1ないし4に係る発明は、いずれも、前記甲第1号証ないし5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、前記請求項1ないし4に係る特許は、全て、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消されるべきものである旨、及び、願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、複数の基地局の指向性変更回路の制御を一括管理する制御装置に関する事項についての記載不備があり、該制御を一括管理する制御装置に関する事項を構成要件とする請求項2ないし4に係る特許は、いずれも、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消されるべきである旨主張する。 2 請求項に係る発明 (1)請求項1に係る発明 請求項1に係る発明は、訂正された明細書及び図面の記載からみて、該明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次の事項により構成されるものである。 「移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とするゾーン変更システム。」 (なお、前掲において、「制御手段」とあるのは、記載表現の統一上、“制御装置”と読み替えるものとする。以下、同様とする。) (2)請求項2に係る発明 請求項2に係る発明は、同じく、特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりの次の事項により構成されるものである。 「移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とするゾーン変更システム。」 (3)請求項3に係る発明 請求項3に係る発明は、同じく、特許請求の範囲の請求項3に記載されたとおりの次の事項により構成されるものである。 「移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する複数の基地局と、 前記複数の基地局の指向性変更手段を一括して制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記複数の基地局のゾーンを変更する制御装置と を備えたことを特徴とするゾーン変更システム。」 (4)請求項4に係る発明 請求項4に係る発明は、同じく、特許請求の範囲の請求項4に記載されたとおりの次の事項により構成されるものである。 「前記制御装置は、前記複数の基地局のトラフィックを考慮して、前記複数の基地局のゾーンを変更することを特徴とする請求項3に記載のゾーン変更システム。」 (5)請求項5に係る発明 請求項5に係る発明は、同じく、特許請求の範囲の請求項5に記載されたとおりの次の事項により構成されるものである。 「前記アンテナはアレイアンテナであり、前記指向性変更手段は、アレイアンテナへ給電する送信信号の位相を変えることで、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることを特徴とする請求項3または4に記載のゾーン変更システム。」 3 引用刊行物ないし甲号証に記載された発明ないし事項 (1)引用刊行物1 当審における合議の結果、平成12年9月4日付けで通知した取消理由に刊行物1として引用した特開平4-320122号公報(甲第1号証刊行物)には、アンテナビーム制御方式に関する発明が記載されており、これについて、次の各事項が図面と共に記載されている。 a「移動通信システムでは、サービスエリアを複数の無線ゾーンに分割し、同一チャネル(周波数)の電波を繰り返し使用することにより、周波数利用効率の向上を図っている。」(1欄32行ないし35行) b「同一チャネル干渉を軽減する有効な方法の一つに、垂直面内指向性を俯角方向に機械的あるいは電気的に傾斜させ、自局ゾーンに放射電力を集中させて遠方(干渉領域)への電波を減衰させるアンテナビームチルティングがある。」(2頁右欄15行ないし19行) c「電気的ビームチルティングは、各アンテナ素子82に対応する位相器83(あるいは位相調整用ケーブル)を介して、給電位相を少しずつずらすことにより主ビーム方向を傾斜させる構成である。」(2頁右欄23行ないし26行) d「図2は、請求項1に記載の発明の実施例構成を示すブロック図である。図において、基地局20は、ビームチルティングアンテナ21と、各チャネル対応にチルティング角を可変設定できる位相器22,…(略)…位相器22に設定するチルティング角θを制御する位相制御器26とにより構成される。」(3欄46行ないし4欄4行) e「移動局30は、送受信器(TRX)31と、受信レベル検出器32と、基地局20に送信する受信レベル情報を生成する符号器33とにより構成される。」(4欄8行ないし11行) (2)引用刊行物2 ア 同じく、刊行物2として引用した特開平5-37222号公報(甲第2号証刊行物)には、チルト角可変型空中線に関する発明が記載されており、これについて、次の各事項が図面と共に記載されている。 a「本発明は移動通信システムにおいて使用される空中線に関し、特にチルト角を変化調整可能な空中線に関する。」(1欄13行ないし15行) b「本発明の目的は、現場或いは遠隔地においてチルト角の調整を容易に行うことができる空中線を提供することにある。」(1欄36行ないし38行) c「図1は本発明の空中線の一実施例の構成図である。空中線1は複数個の素子2で構成された複数素子空中線として構成される。この空中線1に給電される高周波信号は、給電端子3から分配器4に入力され、ここで前記素子2の数に分配される。この分配器4の後段には位相調整器5が接続され、制御信号入力端子6に入力される制御信号によって分配された各高周波信号の位相が個々に調整される。そして、各高周波信号は接続ケーブル7により各素子2に夫々給電される。」(2欄6行ないし14行) d「この構成によれば、制御信号入力端子6に入力された制御信号により位相調整器5を制御して、分配器4によって分配された複数の高周波信号の各位相を調整することで、各素子2に給電される高周波信号の位相を個々に調整することができる。これにより、各素子2に接続される接続ケーブル7の長さを変化調整することなく空中線1におけるチルト角の調整が可能となる。したがって、空中線1を現場に接地した後においてもチルト角の調整が可能となり、最適なサービスエリアの確保が実現できる。」(2欄15行ないし24行) e「ここで、制御信号入力端子6には制御信号を遠隔地から入力させることができるので、遠隔地から位相調器5を制御して各素子2に給電する高周波信号の位相調整を行うことで、空中線のチルト角を遠隔調整することが可能となる。」(2欄25行ないし29行) f そして、前記aないしeの事項を、この分野の技術常識を加味して総合判断すれば、更に、基地局が移動局と通信を行うサービスエリアを変更するシステムに関するものであること、空中線及び位相調整器は、前記基地局に備えられているものであること、及び、チルト角の調整により前記空中線の垂直面内の指向性を変化させ、それにより、前記サービスエリアを変更するものであることが各読み取れる。 イ 以上aないしfの事項を、請求項1に係る発明の構成に準じて整理すると、引用刊行物2には、次の事項により構成される発明が記載されているということができる。 移動通信において、基地局が移動局と通信を行うサービスエリアを変更するシステムであって、 空中線と、該空中線の垂直面内の指向性を変化させることが可能な位相調整器とを有する基地局と、 前記基地局の位相調整器を制御し、前記空中線の垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のサービスエリアを変更する手段と を備え、前記変更する手段は遠隔地に設置されており、前記位相調整器は、前記空中線に給電する高周波信号の位相調整を行うことで前記空中線の垂直面内の指向性を変化させ、前記変更する手段は、指向性に対応する位相量を前記位相調整器に設定するサービスエリア変更システム。 (3)引用刊行物3 同じく、刊行物3として引用した特開平6-120720号公報(甲第4号証刊行物)には、アレイアンテナ指向性適応送受信装置に関して、【従来の技術】の項に、次の事項が記載されている。 「従来、アレイアンテナの指向性制御は、個々のアンテナ素子の端子に加わる入力高周波電圧(送信の場合)、あるいは個々のアンテナ素子の端子に生じる高周波電圧(受信の場合)の位相を全てのアンテナ素子について何等かの位相調整制御回路方式によって制御し、各アンテナ素子の出力を合成することによって行うことが出来ることが知られている。」(1欄41行ないし47行) (4)引用刊行物4 同じく、刊行物4として引用した「ディジタル移動通信」(甲第5号証刊行物)には、移動通信用の基地局アンテナに関して、次の各事項が図面と共に記載されている。 a「アンテナの指向性を鋭くして利得を高めたり、干渉局方向の放射波を抑圧した指向性を実現することなどは、前節(A)、(B)の半長波素子を一列に沢山配置した構造のアレーアンテナにより達成できる。」(222頁16行ないし18行) b「移動通信用の基地局アンテナでは、垂直偏波を用い垂直面内の指向性をシャープにする場合が多く、このため放射素子を鉛直方向に等間隔で配置したコリニアアレーが用いられる。この種アンテナの構成を図5.1.12(a)、(b)に示す。」(226頁2行ないし8行) (5)甲第3号証 特許異議申立人の提示した甲第3号証刊行物である「自動車電話」には、次の各事項が記載されている。 a「トラヒック,地形,干渉を考慮してある一定の法則に従ってゾーンサイズを決め,そのゾーンをグループ単位で繰り返して(平行移動)サービスエリアをカバーする。」(67頁14行ないし16行) b「(2)フレキシブルチャネルの割当て これは,あらかじめ複数のゾーンに共通の通話チャネルを割り当てておき,これらの周辺ゾーンのトラヒックがピークとなる時間帯が異なることを利用して,ピークとなるゾーンで順次時間的に共通の通話チャネルを使用することにより周波数の利用効率を上げる方法である.」(89頁6行ないし10行) (6)甲第5号証 同じく提示した甲第5号証刊行物である「ディジタル移動通信」には、前記(4)に摘示した他に、更に、次の事項が記載されている。 「セルラー方式では、地形、電波伝搬特性、トラヒック量(通信量)の分布、経済性などの各要素を総合的に検討してセルの数、各セルの大きさ等を決める必要がある。」(124頁下2行ないし125頁1行) 4 請求項に係る特許の是非について (1)請求項1に係る特許について ア 請求項1に係る発明と引用刊行物2に記載された発明とを対比する。 (ア)請求項1に係る発明の「ゾーン」、「アンテナ」、「基地局の外」及び「送信信号」は、それぞれ、引用刊行物2に記載された発明の「サービスエリア」、「空中線」、「遠隔地」及び「高周波信号」に相当する。 (イ)また、請求項1に係る発明の「アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局」、「前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置」は、それぞれ、引用刊行物2に記載された発明の「空中線と、該空中線の数直面内の指向性を変化することが可能な位相調整器とを有する基地局」及び「前記基地局の位相調整器を制御し、前記空中線の垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のサービスエリアを変更する手段」に相当する。 (ウ)更に、請求項1に係る発明の「前記制御装置は前記基地局の外に設置されており」及び「前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ」も、それぞれ、引用刊行物3の発明の「前記変更する手段は遠隔地に設置されており」及び「前記位相調整器は、前記空中線に給電する高周波信号の位相調整を行うことで前記空中線の垂直面内の指向性を変化させ」に相当する。 (エ)そして、請求項1に係る発明の「前記制御装置は、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定する」と引用刊行物2に記載された発明の「前記変更する手段は、指向性に対応する位相量を前記位相調整器に設定する」とは、“前記制御装置は、指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定する”点で一致するから、結局、両者は、 移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御装置は、指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定するゾーン変更システム である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉 制御装置が、請求項1に係る発明では、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定するように構成されているのに対して、引用刊行物2に記載された発明では、指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定するように構成されているというに留まる点 イ そこで、前記相違点について検討する。 本件出願前に頒布されたことの明らかな刊行物である特開平4-111502号公報(平成4年4月13日特許庁発行)、同4-345329号公報(平成4年12月1日特許庁発行)或いは同5-110328号公報(平成5年4月30日特許庁発行)に記載された事項によれば、アンテナの垂直面内の指向性と該指向性を実現するために指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しておき、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されたとき、前記記憶された情報に基づいて、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定するように制御することは、本件出願前における当業者の周知ないし慣用手段であるというべきであるから、引用刊行物2に記載された発明において、この相違点に係る構成を、請求項1に係る発明のようにすることは、本件出願前に当業者が容易に想到実施し得たことである。 ウ したがって、請求項1に係る発明は、引用刊行物2に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 以上のとおり、請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、該請求項1に係る特許は、取り消されるべきものである。 (2)請求項2に係る特許について ア 請求項2に係る発明と引用刊行物2に記載された発明とを対比する。 前記(1)における認定から、両者が、 移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御装置は、指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定するゾーン変更システム である点で一致し、次の点で相違することは明らかである。 〈相違点〉 制御装置が、請求項2に係る発明では、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定するように構成されているのに対して、引用刊行物2に記載された発明では、指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定するように構成されているというに留まる点 イ そこで、前記相違点について検討する。 本件出願前に頒布されたことの明らかな刊行物である特開平4-108201号公報(平成4年4月9日特許庁発行)、同4-111502号公報(平成4年4月13日特許庁発行)、同4-248476号公報(平成4年9月3日特許庁発行)、同5-37223号公報(平成5年2月12日特許庁発行)或いは同5-63427号公報(平成5年3月12日特許庁発行)に記載された事項によれば、アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定するように制御することは、本件出願前における当業者の周知ないし慣用手段であるというべきであるから、引用刊行物2に記載された発明において、この相違点に係る構成を、請求項2に係る発明のようにすることは、本件出願前に当業者が容易に想到実施し得たことである。 ウ したがって、請求項2に係る発明は、引用刊行物2に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 以上のとおり、請求項2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、該請求項2に係る特許は、取り消されるべきものである。 (3)請求項3に係る特許について ア 特許法第29条第2項について (ア)特許異議申立人は、これについて、特許異議申立書において、甲第2号証刊行物に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するので、この主張に沿って検討を進める。 (イ)そこで、請求項3に係る発明と甲第2号証刊行物に記載された発明とを対比する。 前記(1)における認定から、両者が、 移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備えたゾーン変更システム である点で一致し、次の点で相違することは明らかである。 〈相違点〉 請求項3に係る発明では、基地局が複数であると共に、制御装置が、前記複数の基地局の指向性変更手段を一括して制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記複数の基地局のゾーンを変更するものであるのに対して、甲第2号証刊行物に記載された発明では、基地局が複数であるか否か明確でない共に、制御装置が、基地局の位相調整器を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更するというに留まる点 (ウ)そこで、前記相違点について検討する。 a 甲第1号証ないし同5号証刊行物のいずれにも、請求項3に係る発明の構成に欠くことのできない事項である「複数の基地局と、前記複数の基地局の指向性変更手段を一括して制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記複数の基地局のゾーンを変更する制御装置」を備える点は、記載ないし示唆されていないし、また、本件出願前に当業者が容易に想到実施し得たものでもない。 b 特許異議申立人は、前記の点について、特許異議申立書において、「甲第2号証の空中線は、「制御信号入力端子6には制御信号を遠隔地から入力させることができる」(第8段落参照)ものであるから、本件出願人も認めているように、「基地局以外の都合の良い場所(例えば、基地局の隣のビル)に制御装置を設置し、その場所で制御装置を操作することにより、基地局のゾーンを変更することができる。複数の基地局の制御装置を基地局外の都合のよい集約場所に設置すれば、一か所で複数の基地局のゾーンを変更することができる。」ことは、当業者であれば容易に考えられる。また、甲第2号証の第7段落および第9段落に記載されている、「最適なサービスエリアの確保」とは、複数のサービスエリアの関連において、個々のサービスエリアが最適となるように一括制御することを意味していることは明らかである。」(9頁下4行ないし10頁17行)と主張するが、基地局が複数であることを明記していない引用刊行物2に記載された発明について、「制御信号を遠隔地から入力させる」(2欄25行ないし26行)との記載があることをもって、直ちに、“複数の基地局の指向性変更手段を一括して制御し、アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより複数の基地局のゾーンを変更する”ことが容易に考えられるとすることには無理があり、また、「最適なサービスエリアの確保」(2欄34行ないし35行)との記載についても、同様の理由により、直ちに、“複数のサービスエリアの関連において、個々のサービスエリアが最適となるように一括制御する”ことを意味しているとすることには無理がある。 c また、甲第3号証及び同5号証には、前記3(4)ないし(6)に摘示したとおり、トラヒック、地形、干渉等を総合的に判断してゾーンのサイズを決めるというゾーンサイズ決定の一般論が記載されているに過ぎず、この記載によって、直ちに、請求項3に記載された発明の構成に欠くことのできない事項である前記の点を導出できるということはできない。 (なお、甲第3号証刊行物に記載された“フレキシブルチャネルの割当て”に関する事項は、共通の通話チャネルを複数のゾーンで順次時間的に使用することにより周波数の利用効率を上げるということに関するものであり、ゾーンサイズの変更とは直接関係のないものである。) (ウ)そして、請求項3に係る発明は、前記の点の構成要件を備えることにより、甲第2号証刊行物に記載された発明からは予測し得ない特有の作用効果を奏するものである。 (エ)したがって、請求項3に係る発明は、甲第2号証刊行物に記載された発明に基づいて本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 イ 特許法第36条第4項について (ア)特許異議申立人は、これについて、特許異議申立書において、次の主張をする。 「本件明細書の第34欄には、「相互に隣接する複数の基地局には指向性偏向回路を設置し、これらの制御を一括管理する制御装置により、複数の基地局のゾーンを一元的に管理する。」旨の記載があるが、前記「これらの制御を一括管理する制御装置」は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に記載されていない。 すなわち、第35欄には、「基地局AおよびBで多くの呼が発生し、基地局AおよびBに割り当てられた周波数が不足状態になり、基地局Cに割り当てられた周波数に余裕がある状態が生じる。このとき、制御装置36は、基地局Aに対して、比較的小さいゾーン33に変更するように、基地局Bに対して、比較的小さいゾーン35に変更するように、また、基地局Cに対して、比較的大きいゾーン34に変更するように、各基地局のアンテナの垂直面内の指向性を変化させる制御を一括して行う。」と記載されているが、(1)具体的に基地局AおよびBに割り当てられた周波数が不足状態になったことをどのようにして検出するか、(2)該周波数が不足状態の検出結果を、制御装置はどのような信号として入力あるいは伝達するのか、また、(3)制御装置は、基地局AおよびBの周波数が不足状態にあるという検出結果を受けて、具体的にどのように各基地局A,B,Cのアンテナの垂直面内の指向性を変化させる制御を一括して行い、該基地局AおよびBに割り当てられた周波数の不足状態を解消するのか等について、具体的に、あるいはベストモードの実施形態が何ら開示されていないから、本件発明を当業者が容易に実施することができない。 換言すれば、本件特許明細書には、発明の願望あるいは希望事項が記載されているのみであり、当業者が容易に実施することができる程度に発明の構成が何ら記載されていない。」(10頁下4行ないし11頁19行) (イ)そこで、前記主張について検討する。 a この技術分野において、基地局に割り当てられた周波数の使用状態を検出する技術は、本件出願前に当業者によく知られている事項である。 b また、該周波数の使用状態を制御装置にどのように入力或いは伝達するかは、請求項3に係る発明にとって本質的なことではない。 c 更に、制御装置において、複数の基地局のゾーンをどのように変更するかは、該複数の基地局の周波数の使用状態に応じて適宜に為し得る設計事項の範疇に属する事項であると言うべきところ、願書に添付した明細書には、少なくとも、制御装置から基地局の指向性変更手段へ位相量を設定することにより該指向性変更手段による送信信号の位相変化によってアンテナの垂直面内の指向性を変化させることについては、当業者が容易に実施することができる程度に記載されているから、これによれば、各基地局のアンテナの垂直面内の指向性を変化させる制御を一括して行うとは、まず、複数の基地局の周波数の使用状態に応じて各基地局毎に変更すべきゾーンに相応する指向性を決定し、次いで、該決定された各基地局毎の指向性を実現するために各基地局毎に設定する位相量を求め、最後に、各基地局毎に求められた位相量を各基地局の指向性変更手段に設定することを、1つの制御装置で行うことであると解することは、当業者にとって容易に察知し得る程度のことと言うべきである。 (ウ)したがって、願書に添付した明細書には、異議申立人の主張するような不備はないと言うしかない。 ウ 以上ア及びイのとおりであるから、請求項3に係る特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできない。 エ また、他に、請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 (4)請求項4に係る特許について ア 特許法第29条第2項について (ア)請求項4は、請求項3を引用するものである。 (イ)そして、請求項3に係る発明については、前記(3)に認定したとおりである。 (ウ)したがって、請求項4に係る発明は、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 イ 特許法第36条第4項について 特許異議申立人の主張する記載不備については、前記(3)に認定したとおりである。 ウ 以上ア及びイのとおりであるから、請求項4に係る特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできない。 エ また、他に、請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 (5)請求項5に係る特許について ア 特許法第29条第2項について (ア)請求項5は、請求項3または4を引用するものである。 (イ)そして、請求項3及び4に係る発明については、それぞれ、前記(3)及び(4)に認定したとおりである。 (ウ)したがって、請求項5に係る発明は、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 イ 特許法第36条第4項について 特許異議申立人の主張する記載不備については、前記(3)に認定したとおりである。 ウ 以上ア及びイのとおりであるから、請求項5に係る特許は、特許異議申立ての理由及び証拠によっては取り消すことはできない。 エ また、他に、請求項5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 第4 結び 以上のとおりであって、平成12年11月20日付け訂正請求に係る訂正については認め、該訂正された請求項1及び2に係る特許については、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものに相当するから、取り消すものとし、同請求項3ないし5に係る特許については、特許異議の理由及び証拠によっては取り消すことはできず、また、他に取り消すべき理由を発見しないから、維持するものとし、よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 移動通信におけるゾーン変更システム (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とするゾーン変更システム。 【請求項2】 移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とするゾーン変更システム。 【請求項3】 移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する複数の基地局と、 前記複数の基地局の指向性変更手段を一括して制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記複数の基地局のゾーンを変更する制御装置と を備えたことを特徴とするゾーン変更システム。 【請求項4】 前記制御装置は、前記複数の基地局のトラヒックを考慮して、前記複数の基地局のゾーンを変更することを特徴とする請求項3に記載のゾーン変更システム。 【請求項5】 前記アンテナはアレイアンテナであり、前記指向性変更手段は、アレイアンテナへ給電する送信信号の位相を変えることで、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることを特徴とする請求項3または4に記載のゾーン変更システム。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 この発明は、移動通信において基地局が形成するゾーンの大きさを制御するゾーン変更システムに関する。 【0002】 【従来の技術】 移動通信において、1つの基地局がカバーする範囲即ち1つの基地局と移動局との通信範囲をゾーンと呼んでいる。また、このゾーンは、セルとも呼ばれている。このゾーンは、基地局のアンテナの指向性等により定まる。 【0003】 図1は、基地局が形成するゾーンを説明する図である。図1において、1は基地局、2は電力分配器、3はアンテナ、4および5はゾーンである。またR1は基地局1からゾーン5のエリア端までの距離、R2は基地局1からゾーン4のエリア端までの距離を表す。アンテナ3には、送信機から、電力分配器2から送信電力が供給されている。 【0004】 この基地局1のゾーン4,5は、アンテナ3の垂直面内の指向性をしめす角度α1、α2で定まる。指向性が角度α1のときは、ゾーン5が基地局1の通信範囲、指向性が角度α2のときは、ゾーン4が基地局1の通信範囲である。 【0005】 基地局1がゾーン4を形成する場合、基地局1のアンテナ3は基地局1からR2の距離をゾーン端とするように垂直面内の指向性を示す角度α2を設定する。次に、基地局1が形成するゾーンをゾーン5に示す範囲に狭める必要がある場合には、基地局1のアンテナ3の垂直面内の指向性を角度α2に変化させて、基地局1からR1の距離がゾーン端となるようにする。 【0006】 さて、従来から、移動通信において、基地局の増設等をおこなった場合、既設の基地局のゾーンを変更していた。これは、同一の周波数を使用する基地局同士の電波の干渉を防止し、周波数を有効に利用するためである。 【0007】 図2は、基地局を増設する場合を説明する図である。図2において、左側に示すように、2つの基地局Aおよび基地局Bによりゾーンを変更している。この場合、基地局Aは基地局Aから距離RAの地点を、また基地局Bは基地局Bから距離RBの地点をゾーン端とするように基地局のアンテナの垂直面内の指向性を設定している。基地局Aおよび基地局Bが形成するゾーン内の移動局の増加等に対応するため、同図右側に示すごとく基地局Cを新たに設置する必要がある。基地局Aおよび基地局Bでは、基地局Aおよび基地局Bと同一の周波数を使用する他の基地局との電波の干渉を防止し周波数の有効利用を行うため、距離RA′および距離RB′をそれぞれのゾーン端とするように基地局のアンテナの垂直面内の指向性を変化させなければならない。 【0008】 図3は、従来のアンテナの垂直面内の指向性を形成する構成を示すブロック図である。図3において、3-1はアレイアンテナ、6は基地局に設置した送受信機を接続する給電点、7は電力分配器、8,9,10および11は電力分配器7とアンテナ3を接続する給電線、12,13,14および15はアレイアンテナ3-1の給電点、16はアレイアンテナ3-1の内部にアレー状に配置されたアンテナ素子であり、17および18はアンテナの垂直面内の指向性を表す。また、φは給電点6に給電される送信信号の位相、φ-φ1はアレイアンテナ3-1の給電点12に給電される送信信号の位相、φ-φ2はアレイアンテナ3-1の給電点13に給電される送信信号の位相、φ-φ3はアレイアンテナ3-1の給電点14に給電される送信信号の位相、φ-φ4はアレイアンテナ3-1の給電点15に給電される送信信号の位相、θ1はアンテナ指向性17のアンテナ水平方向からの角度、θ2はアンテナ指向性18のアンテナ水平方向からの角度を表す。 【0009】 図3の給電点6に給電された送信信号は、電力分配器7により分配される、この分配された送信信号はそれぞれ給電線8,9,10および11を介してアレイアンテナ3-1の給電点12,13,14および15に給電される。このとき給電線8,9,10および11による遅延量を異ならせることにより、給電点12,13,14および15に給電される送信信号は給電点6に給電された送信信号の位相φに対してそれぞれφ-φ1,φ-φ2,φ-φ3,φ-φ4だけ位相が変化して給電されている。アレイアンテナ3-1内部で給電点12,13,14および15から給電された送信信号は、アレイアンテナ3-1内部にアレー状に配置されたアンテナ素子16から放射される。アレイアンテナの指向性は、アレイアンテナを構成しているアンテナ素子に給電されている送信信号の位相によって定まる。この位相差を変化させることによりアンテナの垂直面内の指向性を指向性17や18に示すように変化させることができる。 【0010】 アンテナ3の垂直面内の指向性は、給電線8,9,10および11による遅延量を変化させることにより、給電点12,13,14および15に給電される送信信号の位相量を変化させて行うことができる。したがって、指向性を変化させる場合は、給電線8,9,10および11をそれらに対応した遅延を生じさせる給電線と交換することによりアンテナの垂直面内の指向性を変化させていた。 【0011】 【発明が解決しようとする課題】 基地局において、図3に示すアレイアンテナを用いて基地局のゾーンを定める方法においては、図2に示すような基地局の増設時にアンテナ3が接続される給電線8,9,10および11を変更のつど交換する必要が生じる。これらの作業においては、アンテナの給電線を交換するため屋外での作業を行う必要があり、天候や作業環境により作業には危険が伴うといった問題点や給電線交換時にサービスが中断されるという問題点があった。 【0012】 また、隣接する2つの基地局において、一方の基地局の形成するゾーン内に存在する移動局が増大すると、その基地局に割り当てられた周波数をすべて使いつくしてしまい、基地局の周波数が不足したことが生じる。そのとき、隣接する基地局に割り当てられた周波数に余裕があることがある。この場合、基地局のアンテナの垂直面の指向性を速やかに変化させることができると、ゾーンを動的に変化させることができるので、基地局同士で動的にこれらの移動局が使用する周波数を分散することができ、移動局との間の通信を確保することが可能となる。これは、移動局が増大した基地局ではアンテナの垂直面内に指向性を変化させてその基地局が形成するゾーンを小さくし、隣接する基地局ではアンテナの垂直面内に指向性を変化させて隣接する基地局が形成するゾーンを大きくするという操作を行うことで実現できる。 【0013】 しかし、図3に示すようなアンテナを使用しているため、アンテナの垂直面内の指向性を変化させるには、該当基地局のアンテナに接続されている給電線を交換する必要がある。このため、これらの状況に対して、随時速やかな対応を行うことができないといった問題点があった。 【0014】 本発明の目的は、移動通信において、基地局のアンテナの指向性を速やかに変化させることができるような構成とすることにより、基地局が形成するゾーンの大きさを任意に変更できるようにすることである。 【0015】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置とを備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とする。 【0016】 請求項2に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置とを備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とする。 【0017】 請求項3に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する複数の基地局と、前記複数の基地局の指向性変更手段を一括して制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記複数の基地局のゾーンを変更する制御装置とを備えたことを特徴とする。 【0018】 請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のゾーン変更システムであって、前記制御装置は、前記複数の基地局のトラヒックを考慮して、前記複数の基地局のゾーンを変更することを特徴とする。 請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載のゾーン変更システムであって、前記アンテナはアレイアンテナであり、前記指向性変更手段は、アレイアンテナへ給電する送信信号の位相を変えることで、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることを特徴とする。 【0019】 【作用】 移動通信において、基地局にアンテナの垂直面内の指向性を任意に変化させることが可能な指向性変更手段と、指向性変更手段を制御する制御装置とを設けることにより、基地局が移動局と通信できるゾーンの大きさを必要時に容易に変更することができる。 【0020】 また、複数の基地局のゾーンを一括に制御することにより、多数の呼が発生した場合、呼の発生に応じたゾーンの設定の制御を動的に行うことができる。 【0021】 【実施例】 以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。 【0022】 図4は本発明の一実施例の構成を示すブロック図であり、図5は、本発明で使用する垂直面内の指向性を任意に変化させることが可能なアンテナの一実施例の構成を示すブロック図である。 【0023】 図4において、1は基地局、3はアンテナ、19はアンテナ3の垂直面内の指向性を変化させる指向性変更回路、29は指向性変更回路19を制御する制御装置、4および5は基地局1が形成するゾーンを表す。またR1は基地局1からゾーン5のエリア端までの距離、R2は基地局1からゾーン4のエリア端までの距離を表す。 【0024】 図4において、基地局1がゾーン4を形成し、移動通信サービスを行っている状態では、アンテナ3から放射された電波が形成するゾーン4のエリア端までの基地局1からの距離はR1である。基地局1が形成するゾーンを基地局1から距離R2をエリア端とするゾーン5に変更するときは、制御装置29からの制御により、指向性変更回路19を動作させアンテナ3の垂直面内の指向性を変化させることにより実現できる。 【0025】 制御装置29は基地局1の内部、たとえば屋内に設置すれば天候やアンテナ3の設置場所に関わらず容易にゾーンを変化させることが可能となる。さらに、制御線を延長し、複数の基地局の制御装置を当該基地局外に集約して設置することにより、一ケ所で複数の基地局のゾーンを変更することが可能となる。 【0026】 上記の指向性変更回路19の構成、および制御装置29がどの様な制御を行ってアンテナ3の指向性を変化させ、基地局のゾーンの制御を行っているのかを図5を用いて説明する。 【0027】 図5において、3-1はアレイアンテナ、16はアレイアンテナ3-1の内部にアレー状に配置されるアンテナ素子、19はアンテナ3の垂直面内の指向性を変化させる指向性変更回路である。24,25,26および27は指向性変更回路19内部に設置された位相を変化させる可変移相器、29は可変移相器24,25,26および27を制御する制御装置、28は可変移相器24,25,26および27と制御装置29を結ぶ制御線である。37は指向性変更回路19の内部に設置される電力分配器、20,21,22および23は指向性変更回路19とアレイアンテナ3-1を接続する給電線、12,13,14および15はアレイアンテナ3-1の給電点、16はアレイアンテナ3-1を構成するアンテナ素子であり、17および18はアンテナの垂直面内の指向性を表す。また、φは給電点6に給電される送信信号の位相、φ-φ1はアンテナの給電点12に給電される送信信号の位相、φ-φ2はアンテナの給電点13に給電13に送信信号の位相、φ-φ3はアンテナの給電点14に給電される送信信号の位相、φ-φ4はアンテナの給電点15に給電される送信信号の位相、θ1はアンテナ指向性17のアンテナ水平方向からの角度、θ2はアンテナ指向性18のアンテナ水平方向からの角度を表す。 【0028】 さて、アレイアンテナ3-1の給電点12,13,14および15に給電される送信信号の位相を、給電点6に給電された送信信号の位相φに対してそれぞれφ-φ1,φ-φ2,φ-φ3およびφ-φ4となるように可変移相器24,25,26および27で位相を変化させることができる。この送信信号の位相の変化により、アンテナの指向性を制御している。なお、このとき、給電線による遅延を考慮している。 【0029】 各可変移送器が、アンテナ素子に給電する送信信号の位相をどの程度移相するかは、制御装置29で制御する。アレイアンテナ3-1から放射される電波の指向性をθ1とするために、可変移相器24,25,26および27に設定する各位相量、アレイアンテナ3-1から放射される電波の指向性をθ2を得るための可変移相器24,25,26および27に設定する各位相量等は、制御装置29に記憶させて置く。制御装置29へアンテナの指向性を入力すると、制御装置29は入力された指向性に対応する可変移相器24,25,26および27に設定する各位相量を選択して、アンテナに給電する送信信号の位相を変化させ、所望の指向性を得ることができる。 【0030】 このような発明の構成では、サービスを継続したままアンテナの垂直面内の指向性を、すなわちゾーンの大きさを変化させることが可能となる。 【0031】 制御装置29は、可変移相器24,25,26および27に設定する各位相量の組を記憶し、それを単に出力するばかりではなく、可変移相器24,25,26および27に設定する各位相量を演算で求める構成とすることもできる。この場合は、制御装置29は、可変移相器24,25,26および27の位相を連続的に変化させることが可能となる。 【0032】 図6は、複数の基地局のゾーンを一括して制御することを説明する図である。 【0033】 図6において、30および33は基地局Aが変更するゾーン、31および34は基地局Cが変更するゾーン、32および35は基地局Bが変更するゾーンを表しており、36は各基地局のアンテナ指向性を一括管理および制御する制御装置である。 【0034】 図6は、相互に隣接する複数の基地局に、図4に示す構成の指向性変更回路を設置し、これらの制御を一括管理する制御装置により複数の基地局のゾーンを一元的に管理することを示している。 【0035】 図6において、基地局Aはゾーン30を、基地局Cはゾーン31を、基地局Bはゾーン35を変更して移動通信サービスを提供している。このとき、基地局Aおよび基地局Bで多くの呼が発生し、基地局Aおよび基地局Bに割り当てられた周波数が不足状態になり、基地局Cに割り当てられた周波数に余裕がある状態が生じる。このとき、制御装置36は、基地局Aに対して比較的小さいゾーン33に変更するように、基地局Bに対して比較的小さいゾーン35に変更するように、また、基地局Cに対して比較的大きいゾーン34に変更するように、各基地局のアンテナの垂直面内の指向性を変化させる制御を一括して行う。これにより、基地局Aおよび基地局Bのゾーンを小さくし、基地局Cではゾーンを大きくすることになり、今まで、基地局Aおよび基地局Bと通信していた移動局の一部が、基地局Cと通信することになる。このように、基地局Aおよび基地局Bのトラヒックを基地局Cに分散することが可能となる。この変更は、各基地局A,B,Cがサービスを継続したままで、行うことができる。 【0036】 また、本発明のゾーン変更システムにおいて、基地局Cのゾーンが大きくなることから基地局Cに割り当てられた周波数と同一の周波数を使用する他の基地局との電波の干渉の問題が発生することが考えられる。しかし、このようなことは、基地局Cがゾーン34に変更した状態においても電波の干渉が発生しないように、周波数を割り当てることにより避けることができる。これにより、必要最低限の周波数を各基地局に配置すればサービスの提供が可能となり、周波数の有効利用が可能となる。 【0037】 以上説明したように、本発明によれば、基地局において、指向性変更回路を制御し、アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより、ゾーンの大きさを容易に制御することが可能となる。さらに、給電線の交換の必要もないため、天候やアンテナの設置場所に左右されることなしにゾーンの大きさを変更することが可能となる。 【0038】 さらに、複数の基地局を一元的に一括管理する制御装置を用いることにより、ある基地局に集中するトラヒックの分散を図ることも可能となる。 【0039】 なお、本実施例の説明において、基地局のゾーンが変更するためのアンテナの垂直面内の指向性を電気的に変化させる指向性変更回路を使用して説明した。しかし、本発明はこのような指向性変更回路を使用することに限定したものではない。たとえば、アンテナの取り付け角度を機械的に傾けることにより、アンテナの指向性を垂直方向に変化させる指向性変更回路を用いることもできる。この場合は、その取り付け角度を変更させる指向性変更回路を制御することによりゾーンの大きさを変化させることも可能である。 【0040】 【発明の効果】 本発明によれば、基地局において、ゾーンの大きさを、指向性変更回路を制御することにより、容易にアンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより、容易に制御することが可能となる。さらに、給電線の交換の必要もないため、天候やアンテナの設置場所に左右されることなしにゾーンの大きさを変更することが可能となる。 【0041】 さらに、複数の基地局を一元的に一括管理する制御装置を用いることによりある基地局に集中するトラヒックの分散を図ることも可能となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 基地局が形成するゾーンを説明する図である。 【図2】 基地局を増設する場合を説明する図である。 【図3】 従来のアンテナの垂直面内の指向性を形成する構成を示すブロック図である。 【図4】 本発明の一実施例の構成を示すブロック図である。 【図5】 本発明で使用する垂直面内の指向性を任意に変化させることが可能なアンテナの一実施例の構成を示すブロック図である。 【図6】 本発明の複数の基地局のゾーンを一括して制御することを説明する図である。 【符号の説明】 1 基地局 2,7,37 電力分配器 3 アンテナ 3-1 アレイアンテナ 4,5,30,31,32,33,34,35 ゾーン 6 送信機を接続する給電点 8,9,10,11 給電線 12,13,14,15 アレイアンテナの給電点 16 アンテナ素子 17,18 アンテナの垂直面内の指向性 19 指向性変更回路 20,21,22,23 指向性変更回路とアレイアンテナを接続する給電線 28 制御線 29 制御装置 36 複数基地局を一括管理する制御装置 φ,φ-φ1,φ-φ2,φ-φ3,φ-φ4 送信信号の位相 θ1,θ2 アンテナの垂直面内の指向性のアンテナ水平方向からの角度 R1,R2,RA,RA´,RB,RB´ 基地局からのゾーン端までの距離 |
訂正の要旨 |
<訂正の要旨> 平成12年11月20日付け訂正請求に係る訂正の要旨は、同訂正請求書の訂正の要旨の欄の記載から見て、次のものと認められる。 (1)訂正1 願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1を、 「【請求項1】移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とするゾーン変更システム。」及び 「【請求項2】移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、 アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、 前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置と を備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とするゾーン変更システム。」と訂正する。 (2)訂正2 同じく、請求項2を請求項3に繰り下げる。 (3)訂正3 同じく、請求項3を請求項4に繰り下げると共に、被引用請求項の番号を2から3に訂正する。 (4)訂正4 同じく、請求項4を請求項5に繰り下げると共に、該請求項4を、 「【請求項5】前記アンテナはアレイアンテナであり、前記指向性変更手段は、アレイアンテナへ給電する送信信号の位相を変えることで、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることを特徴とする請求項3または4に記載のゾーン変更システム。」と訂正する。 (5)訂正5 願書に添付した明細書の段落番号【0015】〜【0018】を、 「【0015】 【課題を解決するための手段】 上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置とを備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性と、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量との関係を記憶しており、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性に対応する位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とする。 【0016】 請求項2に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する基地局と、前記基地局の指向性変更手段を制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記基地局のゾーンを変更する制御装置とを備え、前記制御装置は前記基地局の外に設置されており、前記指向性変更手段は、前記アンテナに給電する送信信号の位相を変化させて前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させ、前記制御手段は、前記アンテナの垂直面内の指向性が入力されると、該指向性を実現するために前記指向性変更手段に設定すべき位相量を演算により求め、該位相量を前記指向性変更手段に設定することを特徴とする。 【0017】 請求項3に記載の発明は、移動通信において、基地局が移動局と通信を行うゾーンを変更するシステムであって、アンテナと、該アンテナの垂直面内の指向性を変化させることが可能な指向性変更手段とを有する複数の基地局と、前記複数の基地局の指向性変更手段を一括して制御し、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることにより前記複数の基地局のゾーンを変更する制御装置とを備えたことを特徴とする。 【0018】 請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のゾーン変更システムであって、前記制御装置は、前記複数の基地局のトラヒックを考慮して、前記複数の基地局のゾーンを変更することを特徴とする。 請求項5に記載の発明は、請求項3または4に記載のゾーン変更システムであって、前記アンテナはアレイアンテナであり、前記指向性変更手段は、アレイアンテナへ給電する送信信号の位相を変えることで、前記アンテナの垂直面内の指向性を変化させることを特徴とする。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2000-12-04 |
出願番号 | 特願平6-180297 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZD
(H04B)
P 1 651・ 531- ZD (H04B) |
最終処分 | 一部取消 |
前審関与審査官 | 望月 章俊 |
特許庁審判長 |
松野 高尚 |
特許庁審判官 |
大橋 隆夫 日下 善之 |
登録日 | 1999-10-22 |
登録番号 | 特許第2993551号(P2993551) |
権利者 | 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ |
発明の名称 | 移動通信におけるゾーン変更システム |
代理人 | 阿部 和夫 |
代理人 | 谷 義一 |
代理人 | 阿部 和夫 |
代理人 | 谷 義一 |