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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1041245
異議申立番号 異議2000-72425  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-05-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-13 
確定日 2001-02-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2990706号「活性エネルギー線硬化型樹脂組成物およびグラビア印刷物のオーバーコート方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2990706号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2990706号の請求項1ないし4に係る発明は、平成1年10月16日に特許出願され、平成11年10月15日にその特許権の設定登録がなされ、その後、新井克昌より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成12年12月6日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1及び4の記載について、「ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」とあるのを、「(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」と訂正する。
イ.訂正事項b
平成10年11月24日にした手続補正書の第2頁7行(特許公報第3欄45〜46行)の記載について、「ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」とあるのを、「(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」と訂正する。
ウ.訂正事項c
平成10年11月24日にした手続補正書の第2頁15〜16行(特許公報第4欄37行)の記載について、「(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステル」とあるのを「(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステル」と訂正する。
エ.訂正事項d
平成10年11月24日にした手続補正書の第2頁23行(特許公報第5欄34〜35行)の記載について、「・・・・であることを要し、」とあるのを「光沢及び密着性に優れる点で、ガラス転移温度(Tg)が20〜130℃の範囲のものであることを要し、」と訂正する。
オ.訂正事項e
明細書の第11頁12〜13行(特許公報第5欄39行)の記載について、「アクリル樹脂系」とあるのを「アクリル系コポリマー」と訂正する。
カ.訂正事項f
明細書の第13頁14行(特許公報第6欄27行)の記載について、「添加財」とあるのを「添加剤」と訂正する。
キ.訂正事項g
明細書の第18頁18行(特許公報第8欄25〜26行)の記載について、「実施例1〜8」とあるのを「実施例1〜7」と訂正する。
ク.訂正事項h
明細書第20頁(特許公報第5頁)の表-1の記載について、「塩化ゴム*2)(部)」の欄及び注「*3)塩化ゴム:山陽国策パルプ(株)製スパークロンCR-10」を削除する。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、請求項1及び4に係る発明を特定する事項である「ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」をこれに含まれる事項である「(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」に変更し、しかも、「(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマー(B)」については、願書に添付された明細書の第8頁12〜13行に記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項b、c及びeについては、上記訂正事項aとの整合を図るもの、訂正事項dは、願書に最初に添付された明細書の記載に戻すもの、訂正事項hは不要な記載の削除であるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、さらに、訂正事項f及びgは誤記の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
さらに、
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
申立人新井克昌は、請求項1ないし4に係る発明は、甲第1号証(特開昭52-138215号公報)、甲第2号証(特開昭53-113810号公報)、甲第3号証(特開昭58-25365号公報)、甲第4号証(特開昭59-103793号公報)に記載された発明であるか、あるいは、それらに記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項あるいは第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、請求項1ないし4に係る特許を取り消すべきと主張している。
(2)本件の請求項1ないし4に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件第1ないし第4発明」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「1.重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)と、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)とを、(A)/(B)の重量比で30/70〜70/30と成るように含有することを特徴とするグラビア印刷物オーバーコート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
2.重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)がアクリル系モノマーおよび/又はアクリル系プレポリマーである請求項1記載の樹脂組成物。
3.アクリル系コポリマー(B)がスチレン-アクリル系コポリマーである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
4.重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)と、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)とを、(A)/(B)の重量比で30/70〜70/30と成るように含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、グラビア印刷物の印刷面にオーバーコートした後、活性エネルギー線硬化させることを特徴とするグラビア印刷物オーバーコート方法。」
(3)刊行物等
特許異議申立人が証拠として提示した刊行物には、それぞれ以下のような発明が記載されている。
刊行物1:特開昭52-138215号公報(甲第1号証)には、
「(A).エチレン状不飽和化合物を水中で重合してつくった水分散した重合体、(B).前記水分散した重合体に可溶の重合性エチレン状不飽和基を2ケ以上含む化合物、及び(C).光増感剤を混合し、粒径が0.6ミクロン以下の粒子になるように調製してなる水分散体を印刷物に塗布して光の照射により硬化させることを特徴とする印刷物の被覆方法。」(特許請求の範囲)と記載されている。
刊行物2:特開昭52-113810号公報(甲第2号証)には、
「(1)ラジカル重合性化合物と熱可塑性樹脂とを主体とする透明性被覆材を印刷面に塗布し、活性エネルギー線を照射することを特徴とする印刷物品の表面加工方法。
(2)透明性被覆材として分子中に少なくとも(メタ)アクリロイル基を2個以上有する化合物(A)20〜80重量部、熱可塑性樹脂(B)10〜40重量部、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個有するアクリル系モノマー(C)10〜40重量部からなる樹脂組成物をバインダー成分としたもので構成されたものであることを特徴とする特許請求の範囲(1)項記載の印刷物品の表面加工方法。」(特許請求の範囲(1)、(2))と記載されている。
刊行物3:特開昭58-25365号公報(甲第3号証)には、
「1.(a)一般式 (省略)
(R1は水素原子またはメチル基、R2は炭素原子数2〜4のアルキレン基、R3は炭素原子数1〜20のアルキル基、フエニル基またはアルキルフエニル基である)で示される不飽和単量体および
(b)エチレン性不飽和基含有アクリル樹脂を主成分とする活性エネルギー線硬化形塗料組成物。
2.該(a)および(b)成分に、(c)エチレン性不飽和単量体を配合してなるものを主成分とする特許請求の範囲第1項記載の活性エネルギー線硬化形塗料組成物。」(特許請求の範囲1、2)と記載されている。
刊行物4:特開昭59-103793号公報(甲第4号証)には、
「1(a)末端エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー100重量部と(b)このモノマーに可溶な熱可塑性樹脂10〜200重量部と(c)光重合開始剤1〜15重量部からなる紫外線硬化性下塗塗料組成物。
2(a)末端エチレン性不飽和二重結合を有するモノマー100重量部と(b)このモノマーに可溶な熱可塑性樹脂10〜200重量部と(c)光重合開始剤1〜15重量部からなる紫外線硬化性下塗塗料をグラビアまたはオフセット印刷された印刷物に塗布し、紫外線硬化しないまま通常の紫外線硬化性上塗塗料を塗布したのち、下塗塗膜と上塗塗膜を同時に紫外線硬化させることを特徴とする印刷物に対する付着性のすぐれた複層塗膜の形成法。」(特許請求の範囲1、2)と記載されている。
(4)対比・判断
[本件第1発明について]
本件第1発明と上記刊行物1ないし4に記載された発明とを対比すると、刊行物1ないし4には、重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマーと、アクリル系コポリマーとを、含有するグラビア印刷物オーバーコート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が記載されているし、アクリル系コポリマーのガラス転移温度及び重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマーと、アクリル系コポリマーの配合比も本件第1発明程度と認められるから、両者は、「重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)と、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)とを、(A)/(B)の重量比で30/70〜70/30と成るように含有することを特徴とするグラビア印刷物オーバーコート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物」である点で一致するが、本件第1発明の(B)成分が、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであるに対し、刊行物1ないし4に記載されたオーバーコート用樹脂組成物のアクリル系コポリマーには、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなり、カルボキシル基を有するものが記載されていない点で相違する。
その相違する点を検討すると、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーを用いることにより、下地となる印刷物との密着性に優れるという効果を奏することが、明細書の記載、特に実施例7と比較例1の対比から、明らかに認められる。
したがって、本件第1発明は、刊行物1ないし4に記載されたアクリル系コポリマーとその成分が相違し、それにより格別の効果を奏するものであるから、本件第1発明が上記刊行物1ないし4に記載された発明であるとも、あるいは、刊行物1ないし4に記載された発明に基き当業者が容易にその発明をすることができたものとも認められない。
[本件第2発明について]
本件第2発明は、本件第1発明の構成をさらに限定し、重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)をアクリル系モノマーおよび/又はアクリル系プレポリマーとするものであるから、本件第1発明と同じ理由が成立する。
したがって、本件第2発明が上記刊行物1ないし4に記載された発明であるとも、あるいは、刊行物1ないし4に記載された発明に基き当業者が容易にその発明をすることができたものとも認められない。
[本件第3発明について]
本件第3発明は、本件第1又は第2発明の構成をさらに限定し、アクリル系コポリマー(B)をスチレン-アクリル系コポリマーとするものであるから、本件第1又は第2発明と同じ理由が成立する。
したがって、本件第3発明が上記刊行物1ないし4に記載された発明であるとも、あるいは、刊行物1ないし4に記載された発明に基き当業者が容易にその発明をすることができたものとも認められない。
[本件第4発明について]
本件第4発明は、実質的に、本件第1発明の樹脂組成物を用いたグラビア印刷物オーバーコート方法の発明であるから、本件第1発明と同じ理由が成立する。
したがって、本件第4発明が上記刊行物1ないし4に記載された発明であるとも、あるいは、刊行物1ないし4に記載された発明に基き当業者が容易にその発明をすることができたものとも認められない。
(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物およびグラビア印刷物のオーバーコート方法
(57)【特許請求の範囲】
1.重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)と、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)とを、(A)/(B)の重量比で30/70〜70/30と成るように含有することを特徴とするグラビア印刷物オーバーコート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
2.重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)がアクリル系モノマーおよび/又はアクリル系プレポリマーである請求項1記載の樹脂組成物。
3.アクリル系コポリマー(B)がスチレン-アクリル系コポリマーである請求項1又は2記載の樹脂組成物。
4.重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)と、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)とを、(A)/(B)の重量比で30/70〜70/30と成るように含有する活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、グラビア印刷物の印刷面にオーバーコートした後、活性エネルギー線硬化させることを特徴とするグラビア印刷物オーバーコート方法。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、グラビア印刷物のオーバーコート用の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物とこれを用いたグラビア印刷物のオーバーコート方法に関するものである。更に詳しくは、グラビア印刷物の上にアンカーコートをせずにオーバーコート、印刷物表面の光沢を高めることを可能にする活性エネルギー線硬化型組成物とこれをアンカーコートのなしで用いるグラビア印刷物のオーバーコート方法に関する。
(従来の技術)
近年、印刷物の美粧化、高級化指向から、印刷物の上に樹脂溶液を塗布し、乾燥せしめた後、鏡面板を用いてホットプレスをすることにより印刷物に光沢を付与する方法が広く行なわれている。しかしこのプレスコート加工は処理速度が30m/分ほどと遅い。これに対してグラビア印刷の処理速度は一般に100m/分以上であり、グラビア印刷後、直ちに、インラインで処理速度の遅いプレスコート加工をすることは難しく、オフラインでプレスコート加工をしなくてはならないため、光沢を付与することは、効率の悪い作業であった。そこで、従来、グラビア印刷した後、直ちにインラインで、アクリル系モノマーおよび/又はアクリル系プレポリマー等を含有してなる溶剤型又は無溶剤型の紫外線硬化性ニスを塗布し、紫外線硬化させる試みがなされている。
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、グラビア印刷物の上に直接紫外線硬化性ニスを塗布、硬化させた場合、下地の紙面あるいはインキ面にモノマー等の低分子量化合物が浸透し、黒ずみなどが発生したり、浸透した低分子化合物が未硬化状態で残り、日数が経過すると塗膜表面にブリードしてきたりするし、又、紫外線硬化性ニスは硬化が瞬時に進行するため、塗膜中に硬化収縮が残りやすく、下地のグラビアインキ及び紙との密着がよくない。さらに、グラビア印刷面は凹凸があるため、オーバーコート層を厚くしないと、印刷面の凹凸の影響をうけ、表面の光沢が不充分になってしまうという欠点がある。そこで、印刷面の上に、アクリル系樹脂等からなるアンカーコート層を設けた後、紫外線硬化性ニスをコートしているのが現状であり、工程数が増え、作業効率上好ましくない。
(課題を解決するための手段)
本発明者等は、この様な状況に鑑み、鋭意研究した結果、重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマーを含んでなる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に、更に特定コポリマーを溶解又は分散させてなるものは、グラビア印刷物の上にアンカーコートをせずにオーバーコートしても、下地に浸透して黒ずみなどを生ずることがなく、下地との密着性が良く、且つ高光沢な表面を形成できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)と、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)とを、(A)/(B)の重量比で30/70〜70/30と成るように含有することを特徴とするグラビア印刷物オーバーコート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、および
その様な活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を、グラビア印刷物の印刷面にオーバーコートした後、活性エネルギー線硬化させることを特徴とするグラビア印刷物のオーバーコート方法を提供するものである。
本発明で用いる重合性不飽和基含有モノマーおよび/又は重合性不飽和基含有プレポリマー(A)としては、分子内に(メタ)アクリル基、アリル基、ビニル基などを有するモノマーおよび/又はプレポリマーが挙げられる。
上記モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシブチル、(メタ)アクリル酸エトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ラリウル、(メタ)アクリル酸フェニル、などの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルアミドなどのような不飽和カルボン酸アミド類;(メタ)アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルなどのような不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどのような多官能(メタ)アクリレート等がある。又、プレポリマーとしては例えば、不飽和ポリエステル類、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリレート類等があり、通常重量平均分子量1,000〜5,000のものを用いる。これらモノマーおよび/又はプレポリマー(A)なかでも光沢に優れるオーバーコート層が得易い点で多官能(メタ)アタリレートを含有させたものが特に好ましい。
本発明で用いるアクリル系コポリマー(B)としては、高光沢で密着性に優れるオーバーコート層が得られる点で、(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなる典型的なアクリル系コポリマーおよびスチレン系モノマーと(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるスチレン-アクリル系コポリマーである。尚、これらコポリマーは、上記必須成分と共に必要に応じて共重合可能な他のモノマーを共重合成分として含んでいてもよい。
ここで用いる(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチル(メタ)アタリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、スチレン系モノマーとしては、例えばスチレン、α-メチルスチレン、α-クロルスチレン等が挙げられる。
また、共重合可能な他のモノマーとしては、クロトン酸などの不飽和カルボン酸;イタコン酸・フマール酸などのα,β-不飽和ジカルボン酸;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどの少なくとも1個のN-置換メチロール基を含有する(メタ)アクリルアミド誘導体;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのジグリコール類の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸のグリシジルエーテル、アクリロニトリル、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニリデンなどのビニルモノマーを共重合させたもの等が挙げられる。
又、メチロール基、エーテル化メチロール基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、イソシアネート基、シラノール基、アルコキシシラノール基などの反応性可能基を分子中に持つコポリマーが印刷面との密着性に優れる点で好ましい。これらのモノマーを用いて上記コポリマーを得るには、一般に知られている、溶液重合法、乳化重合法で合成すれば良い。
乳化重合法で水性アクリル系樹脂分散物を得る場合、前述したビニルモノマーを過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過酸化水素水などの親水性触媒あるいはレドックス系触媒を用いて、一般公知の方法で安定に分散させればよく、必要に応じて乳化剤を用いてよい。乳化剤としてはアニオンあるいはノニオン系界面活性剤を用いればよいが、低分子量界面活性剤は形成した塗膜の耐水性などに悪影響を及ぼすため高分子量界面活性剤を用いると好ましい。高分子量界面活性剤としては、シエラック、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系又はマレイン酸系共重合体など、従来のアルカリ可溶性樹脂の水溶液を用いるとよい。
この様なアクリル系コポリマーは、光沢及び密着性に優れる点で、ガラス転移湿度(Tg)が20〜130℃の範囲のものであることを要し、特に40〜120℃の範囲のものが好ましい。ガラス転移温度は、各ビニルモノマーのホモポリマーのガラス転移温度から従来公知の近似式に基づき、それぞれ使用するビニルモノマーの重合割合を設定することによって、目的とするガラス転移温度のアクリル系コポリマーを得ることができる。
本発明のオーバーコート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としては、前記(A)および(B)成分を含有するものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリマー(B)、更に必要により重合性不飽和基含有プレポリマー(以下、重合性プレポリマーと略す)を重合性不飽和基含有モノマー(以下、重合性モノマーと略す)中に溶解又は分散させたもの、重合性モノマーおよび/又は重合性プレポリマー(A)とポリマー(B)とを溶剤(C)又は水(D)中に溶解又は分散させたもの(ただし、水と水可溶性溶剤とを併用してもよい)等が挙げられる。
ここで用いる溶剤(C)としては、例えば、n-ヘキサン、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのようなエステル類;エチルエーテル、カルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルカルビトール、ブチルセロソルブ、ジエチルセロソルブなどのようなエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイゾブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのようなケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、イゾブタノールなどのようなアルコール類;クロロホルム、トリクロロエチレン、1,1-ジクロロエタンなどのようなハロゲン化炭化水素類;その他アクリロニトリル、ニトロプロパン、アセトニトリル、ジメチルホルムアルデヒト、ジメチルスルフォキサイドなどが挙げられる。
前記重合性モノマーおよび/又は重合性ポリマー(A)とポリマー(B)は、(A)/(B)の重量比が30/70〜70/30となる範囲であることを要する。
また、溶剤(C)又は水(D)はオーバーコート可能となる範囲で適宜用いればよく、その使用量は特に限定されないが、通常(A)および(B)成分の合計〔(A)+(B)〕100重量部に対して0〜120重量部の範囲で用いる。
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、この他に、必要に応じて、可塑剤、安定剤、ワックス、増粘剤、界面活性剤、分散剤、充填剤などの公知の添加剤を任意に添加してよく、又、染料、顔料などにより着色してもよい。又この本発明の組成物を得るには、各成分を三本ロール、アトライター、ボールミル等の混練機を用いて混練すればよい。
このようにして得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を用いてオーバーコート層を形成する方法は、特に限定されないが、例えばロールコーター、カーテンフローコーター、ミヤバーコーター、グラビアロールコーター、エアーナイフコーターなどの公知のコーティング法により該組成物を印刷面上にコーティングした後、必要により乾燥を行い、次いで活性エネルギー線の照射を行えばよい。塗布量は硬化後の膜厚が0.1〜100μmとなる範囲が好ましく、なかでも1〜200μmとなる範囲が特に好ましい。
コーティングされた組成物の硬化に用いる活性エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線などがある。紫外線を照射するには、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプを使用して、波長200〜800nm、好ましくは、200〜400nmの光線を空気中あるいは窒素雰囲気下で照射すればよい。照射時間は、例えば120W/cm高圧水銀灯(集光型、オゾン発生タイプ)で、15cmのランプ高さの条件で照射し、0.1〜1秒間でよい。
電子線を照射するには、例えば50〜1000keV、好ましくは100〜400keVのエネルギーをもつコックロフトワルトン型、パンデグラフ型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、吸収線量が0.1〜10Mredになるように照射すれぱよい。
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物において、硬化させるエネルギー源として、紫外線を用いる場合には、例えばクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、α-アミノアセトフェノン、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、α-アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3-ケトクマリン、2-エチルアンスラキノン、カンファーキノン、ベンジル、ミヒラーケトン、テトラメチルチウラムモノサルファイド、3,3′,4,4′-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの光開始剤、必要により更にトリエタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルなどの光開始助剤などを加えなければならない。光開始剤の使用量は、前記(A)および(B)成分の合計〔(A)+(B)〕100重量部に対して通常0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜15重量部の範囲である。なお、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノンなどの重合禁止剤を更に添加してもよい。
(実施例)
以下に参考例、実施例および比較例を示して本発明を更に具体的に説明する。尚、例中の部および%は重量基準である(ただし、光沢の値は除く。)
参考例1(水系樹脂分散体の製造)
メタクリル酸40%、メチルメタアクリレート40%およびスチレン20%からなるアルカリ可溶性樹脂のアンモニア水溶液を分散剤として用い、この分散剤の樹脂分65部に対してスチレン30部および2-エチルヘキシルアクリレート5部を添加し、常法により乳化重合して水系樹脂分散体(I)を得た。分散体(I)は固形分40%、ガラス転移温度114℃であった。
参考例2(同上)
アクリル酸30%、スチレン15%およびα-メチルスチレン55%からなるアルカリ可溶性樹脂のアンモニア水溶液を分散剤として用い、この分散剤の樹脂分30部に対してメチルメタアクリレート40部および2-エチルヘキシルアクリレート30部を添加し、常法により乳化重合して水系樹脂分散体(II)を得た。分散体(II)は、固形分45%、ガラス転移温度46℃であった。
参考例3(アクリル樹脂の製造)
メチルメタアクリレート30部とn-ブチルメタアクリレート60部とアクリル酸10部とを、キシレン中、140〜150℃の温度条件で重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いて常法により溶液重合した。重合終了後、キシレンを除去し、ガラス転移温度49℃、平均分子量30,000のアクリル樹脂(III)を得た。
参考例4(同上)
メチルメタアクリレート75部とn-ブチルメタアクリレート15部とアクリル酸10重量部とを用いた以外は参考例3と同様にしてガラス転移温度89℃、平均分子量35,000のアクリル樹脂(IV)を得た。
実施例1〜7および比較例1〜3
参考例1〜4で得た水系樹脂分散体(I)、(II)、アクリル樹脂(III)、(IV)および表-1に示す各種化合物を表-1に示した組成に基づいて配合し、グラビア印刷物オーバーコート用樹脂組成物を調製し、以下の評価試験を行った。結果を表-1に示す。
評価試験
段ボールライナー印刷用の2色印刷機を使用し、本州製紙製UFコート紙に溶剤型グラビアインキ(ゴム系)又は水系グラビアインキを第一色目として、次いで実施例1〜7および比較例1〜3のそれぞれのオーバーコート用樹脂組成物を2色目として連続印刷を行ない、乾燥後、オンラインで160W/cm高圧水銀灯により紫外線照射を行なった。得られたオーバーコート処理印刷物の光沢、下地の黒ずみ及び下地との密着性を以下の様にして評価した。
・印刷物の光沢:村上色彩技術研究所製デジタル光沢計GMX-101を用い、角度60°で測定した。
・下地の黒ずみ:オーバーコートのないものを基準として下記基準で評価した。
○:全く差のないもの
△:少し黒ずみのあるもの
×:黒ずみが著しいもの
・下地との密着性:セロハンテープによる剥離テストを行い、下記基準で評価した。
○:オーバーコート層の剥離なし
×: 〃 剥離あり

*1)ポリエチレングリコールジアクリレート:ポリエチレングリコール(分子量600)のジアクリレート
*2)ウレタンアクリレート:トリメチロールプロパン・ポリプロピレングリコール6モル付加物/トリレンジイソシアネート/2-ヒドロキシエチルアクリレート=1モル/3モル/3モル反応液
*4)光重合開始剤:メルク社製 ダロキュアー1173
(本発明の効果)
本発明のグラビア印刷物オーバーコート用活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、グラビア印刷物上にアンカーコートせずにオーバーコートしても、下地の黒ずみが生じることがなく、下地との密着性も良好で、しかも光沢の良好なオーバーコート層を形成できる。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1及び4の記載について、「ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」とあるのを、「(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」と訂正する。
イ.訂正事項b
平成10年11月24日にした手続補正書の第2頁7行(特許公報第3欄45〜46行)の記載について、「ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」とあるのを、「(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステルとを必須成分として共重合させてなるカルボキシル基を有するアクリル系コポリマーであって、ガラス転移温度が20〜130℃であるアクリル系コポリマー(B)」と訂正する。
ウ.訂正事項c
平成10年11月24日にした手続補正書の第2頁15〜16行(特許公報第4欄37行)の記載について、「(メタ)アクリル酸とそのアルキルエステル」とあるのを「(メタ)アクリル酸およびそのアルキルエステル」と訂正する。
エ.訂正事項d
平成10年11月24日にした手続補正書の第2頁23行(特許公報第5欄34〜35行)の記載について、「・・・・であることを要し、」とあるのを「光沢及び密着性に優れる点で、ガラス転移温度(Tg)が20〜130℃の範囲のものであることを要し、」と訂正する。
オ.訂正事項e
明細書の第11頁12〜13行(特許公報第5欄39行)の記載について、「アクリル樹脂系」とあるのを「アクリル系コポリマー」と訂正する。
カ.訂正事項f
明細書の第13頁14行(特許公報第6欄27行)の記載について、「添加財」とあるのを「添加剤」と訂正する。
キ.訂正事項g
明細書の第18頁18行(特許公報第8欄25〜26行)の記載について、「実施例1〜8」とあるのを「実施例1〜7」と訂正する。
ク.訂正事項h
明細書第20頁(特許公報第5頁)の表-1の記載について、「塩化ゴム*2)(部)」の欄及び注「*3)塩化ゴム:山陽国策パルプ(株)製スパークロンCR-10」を削除する。
異議決定日 2001-02-01 
出願番号 特願平1-266317
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C09D)
P 1 651・ 113- YA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 佐藤 修
後藤 圭次
登録日 1999-10-15 
登録番号 特許第2990706号(P2990706)
権利者 大日本インキ化学工業株式会社
発明の名称 活性エネルギー線硬化型樹脂組成物およびグラビア印刷物のオーバーコート方法  
代理人 高橋 勝利  
代理人 高橋 勝利  
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