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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E03D |
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管理番号 | 1041276 |
異議申立番号 | 異議2001-70259 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-05-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-24 |
確定日 | 2001-07-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3068737号「局部洗浄便座機構の操作装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3068737号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
〔1〕本件発明 本件特許第3068737号の請求項1に係る発明(平成5年11月22日出願、平成12年5月19日設定登録)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「【請求項1】便器上に設置された本体装置部と組合わされ、該本体装置部に装備された局部洗浄に関する各機構を操作する局部洗浄便座機構の操作装置であって、ハウジングと、該ハウジング内に保持された絶縁基板と、該絶縁基板上に実装された各スイッチと、該各スイッチを表面側から操作可能に覆った比較的柔らかいフィルム状のベース樹脂と、該ベース樹脂の表面に、印刷、コーティング、塗布、蒸着、膜形成のうちいずれか一つの手段により形成された透明性を有しかつ該ベース樹脂より硬質の抗菌剤入り樹脂層とを具備した局部洗浄便座機構の操作装置。」 〔2〕特許異議の申立ての理由 特許異議申立人原弘光は、甲第1〜甲第7号証を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜甲第7号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1に係る発明についての特許は取り消されるべきである旨主張している。 甲第1号証:特公平5-66450号公報 甲第2号証:実願平2-104714号(実開平4-61827号)のマ イクロフィルム 甲第3号証:特開平4-275142号公報 甲第4号証:実願昭63-59963号(実開平1-164157号)の マイクロフィルム 甲第5号証:特開平5-207941号公報 甲第6号証:特開昭63-189374号公報 甲第7号証:実願昭61-29893号(実開昭62-147222号) のマイクロフィルム 〔3〕特許異議の申立てについての判断 1.甲各号証の記載事項 甲第1号証には、 a「1 便器上に載置された便座と、前記便座を回動自在に支持し内部に人体局部を洗浄する洗浄装置等を有する装置本体と、……前記装置本体は少なくとも肛門洗浄装置と、女性局部洗浄装置を有し、前記操作手段は少なくとも肛門洗浄スイツチと、女性局部洗浄スイツチ……を有し、これらの各スイツチは前記装置本体の表面と略同一面で表面が弾性を有するシートで覆つたトイレ装置。」(特許請求の範囲)、 b「装置本体39は、……便器37への取付具を持つた第1函体部45と、……第2函体部46及び第3函体部47から成り、……。装置本体39の内部には、後述するように肛門洗浄装置、女性局部洗浄装置……が設けられている。第5図は、装置本体39の第2函体部46を示す斜視図である。上面は、前方に向かつて若干傾斜しており、この傾斜面の最も見やすい位置に、使用頻度の高い操作スイツチや表示ランプからなる操作部48が設けられている。」(6欄12〜26行)、 c「操作部48は、第7図のように、表面全体が、弾性のある樹脂製のシート63で覆われており、スイツチ部は、凸状の段部64となつている。この段部64は内部に、ブツシユスイツチ65が設けられており、段部64とプツシユスイツチ65の間にスイツチボタン66が介在している。使用者が凸状の段部64を押した時、シート63が歪んでスイツチボタン66を押し下げ、プツシユスイツチ65がONする。……LED67の上部のシート63は、透明になっており、LED67の明りを外部に透過させる。」(7欄18〜32行) の記載がある。そして、第7図に示された基板は、本件請求項1に係る発明と同様のプッシュスイッチ65の取り付け構造からみて、絶縁基板であると解される。 以上のことから、甲第1号証には、 「便器上に設置された本体装置部と組合わされ、該本体装置部に装備された局部洗浄に関する各機構を操作する局部洗浄便座機構の操作装置であって、函体部と、該函体部内に保持された絶縁基板と、該絶縁基板上に実装された各スイッチと、該各スイッチを表面側から操作可能に覆ったフィルム状の樹脂を具備した局部洗浄便座機構の操作装置」 が記載されていると認める。 甲第2号証には、 a「本考案はソフトな触感を有し且つ耐擦傷性に優れたメンブレンスイッチに関する。」(明細書2頁2〜3行)、 b「従来のメンブレンスイッチに用いられていた上記プラスチックフィルム表面は、耐擦傷性が低いために、メンブレンスイッチ使用中に表面に傷がつきやすく……不具合いがあった。……上記の耐擦傷性が低い点を改良したメンブレンスイッチとして、プラスチックフィルムの表面にシリコーンやメラミン等の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等の表面硬度の高い樹脂からなる保護層を設けたものが知られている。」(同3頁9行〜4頁4行)、 c「しかしながら、保護層を熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂を用いて形成したメンブレンスイッチは、耐擦傷性については改良されているが、プラスチックフィルム表面に設けた保護層は通常硬度の高い樹脂を用いているために、従来の保護層を設けないプチスチックシート単体に比べ、さらに感触がハードになってしまいソフトな感触という点では保護層を設けないものよりも低下してしまうという問題があった。本考案は上記従来技術の欠点を解消するもので、表面の耐擦傷性に優れ且つソフトな感触を有するメンブレンスイッチを提供しようとするものである。」(同4頁5〜16行)、 d「第1図及び第2図に示すように、本考案メンブレンスイッチ1は表面側のプラスチックフィルム2の最表面にウレタンアクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂を硬化させてなる表面保護層3を有する」(同5頁13〜18行)、 e「該プラスチックフィルム2の表面に接点部7に対応した意匠等を印刷して設けられた印刷層8」(同6頁3〜5行) の記載があり、第2図が示されている。 甲第3号証には、 「結晶性熱可塑性樹脂(A)100重量部に抗菌作用を有する金属イオンを保持したゼオライト系固体粒子0.05〜5重量部を含有する樹脂層が結晶性熱可塑性樹脂(B)からなる樹脂層の少なくとも片面に積層され、その曇り度が5%以下であることを特徴とする高透明抗菌性多層シート状物。」(【請求項1】) の記載がある。 甲第4号証には、嵌合式パック容器について、 「容器本体1と蓋体3の抗菌性素材は、第4図に示すように、熱可塑性樹脂6’の総重量に対して抗菌性ゼオライト7が0.1〜5重量%の範囲にあって、かつ0.03mm〜0.1mm厚みのシート8に、少なくとも一枚の熱可塑性樹脂シート9を融着若しくは接着した多層シート10であっても良い。この多層シート10の抗菌性ゼオライト7を含んだシート8を内側にしてパック容器本体1及びその蓋体3を成型する。このように多層シート10を使用する理由は、容器本体1及びその蓋体3の内側に抗菌性を付与すれば良く、抗菌性ゼオライト7の使用量を減らしてコストダウンを図るためである。」 の記載がある。 甲第5号証には、 a「便座、便座取り付け部材、洗浄部材等の便器部材の少なくとも一部に、抗菌材を添加した抗菌性便器。」(【請求項1】)、 b「図2は、上記抗菌性便器部材の構成部品である暖房便座本体1の説明断面図である。5は暖房便座本体1の表面樹脂体、6は暖房便座本体1の裏面樹脂体、……10は銀シリカゲル系抗菌剤粒子で、前記表面樹脂体5および裏面樹脂体6成型時に混練添加されたものである。」(段落【0010】) の記載がある。 甲第6号証には、 a「エレベータ乗場のかご呼びやかご室内操作盤の階床登録及びドア開閉用等の押しボタンにおいて、殺菌性のある無機系抗菌剤を成形材料に混入して成形したことを特徴とするエレベータ用押しボタン。」(特許請求の範囲)、 b「各押しボタン3,4,5は殺菌性のある無機系抗菌剤を合成樹脂等の成形材料に予め混入して成形されている。」(2頁右上欄18〜20行) の記載がある。 甲第7号証には、 「(1)クロール化されたフェノール系化合物が0.1乃至5.0重量%添加配合して成る抗菌剤入り電話器、コンピュータ等のキー」(実用新案登録請求の範囲) の記載がある。 2.対比・判断 (1)本件請求項1に係る発明は、「操作面に設けられる樹脂の表面にだけ抗菌剤を混入した特別の樹脂層を形成することにより、抗菌剤の無駄をなくし衛生的な環境を維持する局部洗浄便座機構の操作装置の提供を目的」(本件特許の明細書段落【0007】)として、請求項1に記載された構成としたものであり、そのことにより、明細書記載の「各スイッチを覆ったフィルム状のベース樹脂の表面に、印刷等の手段により透明性を有する硬質の抗菌剤入り樹脂層を形成したので、操作面が清潔となり、衛生的に局部洗浄便座装置を使用することができる。 また、本発明の操作装置は、ベース樹脂の表面近傍にだけ抗菌剤入り樹脂層を形成するものであるから、抗菌剤の無駄な使用がない。」(同段落【0010】)、「各スイッチの内容を意味する文字をベース樹脂の表面に表示しても、その表示面が硬質の抗菌剤入り樹脂層で保護されるので、ベース樹脂に透明素材を使い、かつ、裏面印刷等の文字消え対策を採る必要がないばかりか、抗菌剤入り樹脂層が硬質であるため、ベース樹脂に柔らかい透明樹脂を用いた場合に避けられない表面傷による曇りが解消され、外観品位を半永久的に保つことができる。」(同段落【0011】)との作用効果を奏するものである。 (2)本件請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「函体部」は、本件請求項1に係る発明の「ハウジング」に相当するから、両者は、 「便器上に設置された本体装置部と組合わされ、該本体装置部に装備された局部洗浄に関する各機構を操作する局部洗浄便座機構の操作装置であって、ハウジングと、該ハウジング内に保持された絶縁基板と、該絶縁基板上に実装された各スイッチと、該各スイッチを表面側から操作可能に覆ったフィルム状の樹脂を具備した局部洗浄便座機構の操作装置」 である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点 フィルム状の樹脂が、本件請求項1に係る発明では、比較的柔らかいベース樹脂と、該ベース樹脂の表面に、印刷、コーティング、塗布、蒸着、膜形成のうちいずれか一つの手段により形成された透明性を有しかつ該ベース樹脂より硬質の抗菌剤入り樹脂層とから成るのに対し、甲第1号証記載の発明は、そのような構成を有していない。 (3)そこで、上記相違点について検討する。 甲第2号証には、メンブレンスイッチの表面側に用いられるプラスチックフィルムにおいて、傷がつきやすいにプラスチックフィルムの表面にシリコーンやメラミン等の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等の表面硬度の高い樹脂からなる保護層を設け、耐擦傷性を良くすることが記載されており(bの記載参照)、上記相違点における本件請求項1に係る発明の構成の一部が示唆されているが、表面の樹脂層に抗菌剤を入れることについては何も記載されていない。なお、同号証には、表面側のプラスチックフィルムの最表面にウレタンアクリレートオリゴマーを含有する電離放射線硬化性樹脂を硬化させてなる表面保護層を設け、表面の耐擦傷性に優れ且つソフトな感触を有するメンブレンスイッチが記載されている(c、dの記載参照)が、該表面保護層がプラスチックフィルムより硬質であるのか否か不明であり、また、表面保護層に抗菌剤を入れることについても何ら記載されていない。 甲第3号証には、抗菌剤を含有する樹脂の層を他の樹脂の層に積層した高透明抗菌性シート状物が記載され、甲第4号証には、抗菌性ゼオライトを含む樹脂シートを他の樹脂シートと積層したパック容器に用いる多層シートが記載され、抗菌性ゼオライトを含んだシートを内側になるように用いること、多層シートとすることにより抗菌性ゼオライトの使用量を減らしてコストダウンを図ることが記載されている。しかしながら、甲第3及び甲第4号証には、高透明抗菌性シート状物又は多層シートを、スイッチを表面側から操作可能に覆うフィルム状の樹脂として使用することを示唆する記載は見あたらない。 甲第5号証には、便座、便座取り付け部材、洗浄部材等の便器部材の少なくとも一部を、抗菌材を混練添加した樹脂で成型することが記載されているにすぎず、操作装置のスイッチを表面側から操作可能に覆うフィルム状の樹脂の抗菌性については何ら記載されていない。 甲第6号証には、抗菌剤を混入した成形材料で成形したエレベータ用押しボタンが、甲第7号証に、抗菌剤を添加配合した電話器、コンピュータ等のキーが記載されているにすぎず、便器の操作装置のスイッチについては何も記載されていないし、スイッチを表面側から操作可能に覆うフィルム状の樹脂の抗菌性についても何ら記載されていない。 以上のように、甲第2〜甲第7号証にも、相違点における本件請求項1に係る発明の構成のうち、「フィルム状の樹脂が、比較的柔らかいベース樹脂と、該ベース樹脂の表面に形成された透明性を有しかつ該ベース樹脂より硬質の抗菌剤入り樹脂層とから成る」点が記載されておらず、示唆もされていない。 (4)したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜甲第7号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 〔4〕むすび 以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-06-04 |
出願番号 | 特願平5-292198 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E03D)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 河本 明彦 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 青山 敏 |
登録日 | 2000-05-19 |
登録番号 | 特許第3068737号(P3068737) |
権利者 | 株式会社イナックス アイシン精機株式会社 |
発明の名称 | 局部洗浄便座機構の操作装置 |
代理人 | 大川 宏 |
代理人 | 大川 宏 |