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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G05B
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G05B
審判 全部申し立て 原文新規事項追加の訂正  G05B
管理番号 1041300
異議申立番号 異議1999-70719  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-09-03 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-03-01 
確定日 2001-06-15 
異議申立件数
事件の表示 特許第2791302号「ロボットの制御方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2791302号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.本件特許第2791302号は、昭和57年8月9日にされた特許出願を原出願としてされた特許法第44条第1項の規定による平成3年7月29日の特許出願を、さらに原出願として平成7年12月4日に特許法第44条第1項の規定による特許出願として出願されたものであって、平成10年6月12日にその特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社安川電機より特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年1月5日に、意見書の提出とともに訂正請求がなされ、この訂正請求に対して訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成13年4月6日に、意見書の提出と共に前記訂正請求に対する手続補正がされたものである。

2.本件特許に対し、異議申立人株式会社安川電機は、甲第1号証として、Richard P.Paul著”Robot Manipulators”The MIT Press 1981年発行、第65-84頁及び第119-155頁(以下、「引用刊行物」という。)を提示し、本件特許の特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下、「本件特許発明」という。)は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明に係る特許は取り消されるべきものである旨主張する。

3.上記取消理由は、前記引用刊行物甲第1号証を引用し、本件特許発明は、本件特許の出願前に米国内において頒布された刊行物に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に掲げられた発明に該当し、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反して特許されたものであり、また、本件特許発明は、本件特許の出願前に米国内において頒布された刊行物に記載されたものに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。当該特許を取り消すべきというものである。

4.上記訂正請求書に対する手続補正の適否について判断する。
上記手続補正は、訂正請求書に添付された明細書の特許請求の範囲の「前記ロボットの移動を任意の回転軸に対する回転角により規定し」を、「前記ロボットの移動動作中の連続的な姿勢制御を所定の回転軸に対する回転角により規定し」と補正するものである。ところで、訂正請求において、その趣旨は、願書に添付した明細書を添付した全文訂正明細書のとおり訂正するということにあるから、全文訂正明細書の内容を実質的に変更することは、訂正請求書の要旨を変更するものである。
そして、上記手続補正は、特許請求の範囲を上記のとおり補正することによって、全文訂正明細書の内容が実質的に変更されることとなったから、上記手続補正は、訂正請求の要旨を変更するものと認められ、採用できない。

5.上記訂正請求は、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲を、
「1.複数種の最終作用器のうち任意の最終作用器が取付可能で、最終作用器取付部位又は手先の位置、姿勢に対してロボットの各アクチュエータの回転角に変換し移動させる機能を有するロボットの制御方法において、
前記最終作用器が取り付けられるロボットの最終作用器取付部位又は手先に対して位置および姿勢を異にする最終作用器座標系を各々の最終作用器について定義し、その定義された各々の最終作用器座標系とロボットの最終作用器取付部位又は手先の座標系とを相互に一次的に関係づける位置および姿勢変換を有する座標系変換マトリクスを備え、
前記ロボットの移動を任意の回転軸に対する回転角により規定しかつ前記ロボットの最終作用器取付部位又は手先とロボットのアクチュエータの回転角を関係づけている座標変換演算に前記座標系変換マトリクスの演算を加えることにより、選択された各々の最終作用器座標系に基づいて与える位置、姿勢の動作命令に対し、ロボットを動作可能にしたことを特徴とするロボットの制御方法。」と訂正するものである。

6.上記訂正拒絶理由の概要は、以下、(1)〜(3)のとおりである。
(1)訂正された特許請求の範囲の「前記ロボットの移動を任意の回転軸に対する回転角により規定し」は、その技術的意義が不明であるから、本件訂正請求は、特許法第120条の4第2項ただし書きのいずれの目的にも該当しない。

(2)本件訂正請求の特許明細書の特許請求の範囲について、「前記ロボットの移動を任意の回転軸に対する回転角により規定しかつ」を加入する訂正は、特許明細書に記載された事項に記載された事項の範囲内のものとは認められないから、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項の規定に適合しない。

(3)訂正された明細書に係る発明は、本件特許の出願前に国内において頒布された前記引用刊行物に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するから、当該発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、この訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する特許法第126条第4項の規定に適合しない。

7.訂正請求の適否について判断する。
(1)本件訂正請求の訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲について、「前記ロボットの移動を任意の回転軸に対する回転角により規定しかつ」を加入するものであるが、ロボットは、手先位置を3次元の任意の位置に移動させ、かつ、任意の姿勢をとるように移動させるものである。そして、任意の回転軸に対する回転角の規定のみによっては、ロボットの手先位置と姿勢を任意に移動するように制御することはできないから、「前記ロボットの移動を任意の回転軸に対する回転角により規定し」は、その技術的意義が不明である。したがって、訂正事項aは、特許法第120条の4第2項ただし書きのいずれの目的にも該当しない。

(2)本件訂正請求の訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲について、「前記ロボットの移動を任意の回転軸に対する回転角により規定しかつ」を加入するものであるが、特許明細書の段落【0010】には、「ここで、位置と方向を合わせて記号化してマトリックス〔L〕を
→ → → →
〔L〕={P,XR,YR,ZR}
と定義すると、ロボットの位置教示はこのマトリックス〔L〕を求めることに他ならない。すなわち、ロボットの動作は、このデータであるマトリックス〔L〕の成分を他のマトリックス〔L〕の成分とで補間し、時間的に連続に動かして他のマトリックス〔L〕の位置に移動させることであり、ロボットの動作機能は、究極的に前記補間とどのマトリックス〔L〕の成分を選択的に変化させるかで決定される。

例えば手先座標系2でXR軸回りにロボットの手先をθ度回転させよ
→ → → → →
うとすれば、新しい姿勢をXRn,YRn,ZRnとしたときXRn=XRであり、X軸についてはデータは変化させず、次式
→ → → → → → →
YRn=cosθYR+(1-cosθ)(XR・YR)YR+sinθXR×YR……(1)
→ → →
ZRn=XR×YR……………………(2)
により他の成分を変化させればよい。」の記載は、与えられたロボットの手先の移動が特定の軸の回りの回転運動である場合に、マトリックス〔L〕をどのように求められるかを記載したものであって、ロボットの移動を任意の回転軸に対する回転角で規定することを意味するものではないから、訂正事項aは、特許明細書に記載された事項に記載された事項の範囲内のものとは認められない。
したがって、訂正事項aは、特許法第120条の4第3項で準用する同法第126条第2項の規定に適合しない。
なお、平成13年4月6日付け意見書における特許権者の主張は、平成13年4月6日付けで補正された訂正請求書に基づく主張であって、前記4のとおり、当該手続補正は、訂正請求書の要旨を変更するものであって、採用することができないから、当該補正に基づく特許権者の主張も採用できない。

8.本件特許の取消理由について判断する。
(1)本件特許発明は、願書に添付した明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載されたとおりの
「1.複数種の最終作用器のうち任意の最終作用器が取付可能で、最終作用器取付部位又は手先の位置、姿勢に対してロボットの各アクチュエータの回転角に変換し移動させる機能を有するロボットの制御方法において、
前記最終作用器が取り付けられるロボットの最終作用器取付部位又は手先に対して位置および姿勢を異にする最終作用器座標系を各々の最終作用器について定義し、
その定義された各々の最終作用器座標系とロボットの最終作用器取付部位又は手先の座標系とを相互に一次的に関係づける位置および姿勢変換を有する座標系変換マトリクスを備え、
前記ロボットの最終作用器取付部位又は手先とロボットのアクチュエータの回転角を関係づけている座標変換演算に前記座標系変換マトリクスの演算を加えることにより、選択された各々の最終作用器座標系に基づいて与える位置、姿勢の動作命令に対し、ロボットを動作可能にしたことを特徴とするロボットの制御方法。」

(2)これに対して、取消理由通知に引用した、前記引用刊行物の第119頁-第132頁には、「複数種の工具のうち任意の工具が取付可能で、マニピュレータの先端の位置、姿勢に対してマニピュレータの各アクチュエータの回転角に変換し移動させる機能を有するマニピュレータの制御方法において、前記工具が取り付けられるマニピュレータの先端に対して位置および姿勢を
│ 1 0 0 0│
E=│ 0 1 0 0│
│ 0 0 1 10│
│ 0 0 0 1│
と定義し、その定義された工具座標系とマニピュレータの先端の座標系とを相互に一次的に関係づける位置および姿勢変換を有する座標系変換マトリクスを備え、前記マニピュレータの先端とマニピュレータのアクチュエータの回転角を関係づけている座標変換演算に前記座標系変換マトリクスの演算を加えることにより、選択された工具座標系に基づいて与える位置、姿勢の動作命令に対し、マニピュレータを動作可能にしたマニピュレータの制御方法。」の発明が記載されていると認められる。
本件特許発明と前記引用刊行物に記載されたものとを対比すると、前記引用刊行物に記載された「工具」、「マニピュレータ」及び「マニピュレータの先端」は、本件特許発明の「最終作用器」、「ロボット」及び「最終作用器取付部位又は手先」に相当するから、両者は、「複数種の最終作用器のうち任意の最終作用器が取付可能で、最終作用器取付部位又は手先の位置、姿勢に対してロボットの各アクチュエータの回転角に変換し移動させる機能を有するロボットの制御方法において、定義された最終作用器座標系とロボットの最終作用器取付部位又は手先の座標系とを相互に一次的に関係づける位置および姿勢変換を有する座標系変換マトリクスを備え、前記ロボットの最終作用器取付部位又は手先とロボットのアクチュエータの回転角を関係づけている座標変換演算に前記座標系変換マトリクスの演算を加えることにより、選択された各々の最終作用器座標系に基づいて与える位置、姿勢の動作命令に対し、ロボットを動作可能にしたロボットの制御方法」の点で一致し、本件特許発明が「最終作用器が取り付けられるロボットの最終作用器取付部位又は手先に対して位置および姿勢を異にする最終作用器座標系を各々の最終作用器について定義」するのに対し、前記引用刊行物に記載された発明は、「前記工具が取り付けられるマニピュレータの先端に対して位置および姿勢を
│ 1 0 0 0│
E=│ 0 1 0 0│
│ 0 0 1 10│
│ 0 0 0 1│
と定義」した点において相違する。
そこで、上記相違点について検討すると、前記引用刊行物には、「もし工具を交換して作業するなら、Eのみを変更すればよい。」旨の記載があることから、前記引用刊行物に記載されたEの定義は、交換される工具の一つの定義を例示したものに過ぎず、また、本件特許発明の最終作用器が前記引用例に記載されたような特定の姿勢のものを排除するものでもないことからすれば、本件特許発明は、前記引用刊行物に記載された発明を包含することとなるから、本件特許発明は、前記引用刊行物に記載されていると認められる。

9.したがって、本件特許発明は、前記引用刊行物に記載されているから、特許法第29条第1項第3号に掲げられた発明に該当し、本件特許発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-04-23 
出願番号 特願平7-315077
審決分類 P 1 651・ 842- ZB (G05B)
P 1 651・ 113- ZB (G05B)
P 1 651・ 841- ZB (G05B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 高松 猛北島 健次牧 初  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 中村 達之
桐本 勲
登録日 1998-06-12 
登録番号 特許第2791302号(P2791302)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 ロボットの制御方法  
代理人 作田 康夫  
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