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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C03B |
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管理番号 | 1041366 |
異議申立番号 | 異議2001-70574 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1992-11-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-21 |
確定日 | 2001-06-28 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3079189号「板ガラス切断機の板取り方式」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3079189号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件の経緯 本件特許第3079189号は、平成3年2月6日に出願し、平成12年6月23日に設定登録され、同年8月21日に特許公報に掲載されたところ、平成13年2月21日に旭硝子株式会社から特許異議の申立を受けたものである。 2.本件発明 本件発明は、本件明細書の特許請求の範囲に記載された次のものである。 [請求項1]矩形素板ガラスから複数種類、複数枚数の矩形製品ガラスの板取り計画を自動的に行う板ガラス切断機の板取り方式において、まず、一枚の製品を素板へ配置し、縦か横の製品の配置方向とその製品を切り出すためのカッター線方向の可能な組合せに対して、その製品とその製品を切り出すために素板から分割された複数の余白の位置情報を持つ板取り候補をその組合せの数だけ作成し、次に、それぞれの候補の余白に対して、素板に対する最初の製品の板取り候補作成と同様の方法にて次の製品の板取り候補を作成し、これをそれ以上板取りすることができなくなるまで再帰的に繰り返し、それぞれの余白に対する候補の最終的な歩留りを決定し、その中の最も歩留りの高いものを選択して、最終的に素板に対する最も歩留りの高い板取り候補を作成することを特徴とする板ガラス切断機の板取り方式。 [請求項2]同一種類の製品が1枚の素板に複数個板取りできるとき、この製品群を一枚の製品とみなして板取りする請求項1記載の板ガラス切断機の板取り方式。 [請求項3]板取り候補を作成する際に、製品の種類を変えた候補も同時に作成して板取りをする請求項1記載の板ガラス切断機の板取り方式。 [請求項4]製品の種類を変えて板取り候補を作成する際に、処理時間が余っていれば候補とする製品種類を1から順番に増大させて板取り計画を作成し、それぞれの板取り計画を比較して最も良いものを選択する請求項3記載の板ガラス切断機の板取り方式。 3.特許異議申立人の主張 特許異議申立人旭硝子株式会社は、甲第1〜2号証を提出して次の主張をしている。 「本件請求項1〜4に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。」 4.特許異議申立人の主張についての検討 甲第1号証(IBM J.RES.DEVELOP.1972年9月、p.462-469)には、J.C.Herzの「二次元材料の切り分けのための再帰的計算手順」と題した論文が掲載されており、その第462頁左欄1〜28行には、「序説:基本的計算法」として、「与えられた矩形をいろいろなサイズのより小さな矩形に切断する方法は、しばしば再帰的なものの一つである。それは、一方の縁から反対側の縁に直角に線を引き、そして、それから同様な方法を続けて、Fig.1に示されるような二つの矩形が結果として得られるということである。・・・・・・我々は、参考文献2において、P.C.GilmoreやR.E.Gomoryにより既に充分に検討されてきたところの次の問題を考える:一つの大きな矩形Rと小さな矩形群の一つの有限セットSが与えられたら、ロス、即ち、そのセットSに属さないところの結果として生じた矩形のトータル面積が最小となるところのその大きな矩形の切り開き方を見い出す(上で述べた方法によって)。明らかに、これは、使用可能な矩形のトータル価値を最大にすることと等しい。より一般的には、参考文献2において検討されているように、使用可能な矩形のトータル面積を最大にしなければならないし、セットSの各々のメンバーはそのような価値が与えられている。どんな最適な解法も次の再帰的な特性をもっている:その大きな矩形がSの中に入っているか、または、最初の切り開き線は二つの矩形を与え、その矩形の各々は、最適に切り開かれたものである。ところで、一つの簡単な計算法は、すべての可能な最初の切り開き線を試み(原則1で指示されているように有限の試行数だけ必要)、そして、二つの部分切り出し物が最大のトータル価値を持つところのものを残すことからなる。」と記載されている。 しかし、甲第1号証では、「すべての可能な最初の切り開き線を試み、二つの部分切り出し物が最大のトータル価値を持つところのものを残す」ことは示されているものの、本件請求項1に係る発明における手順、即ち、「(a),まず、一枚の製品を素板へ配置し、縦か横の製品の配置方向とその製品を切り出すためのカッター線方向の可能な組合せに対して、その製品とその製品を切り出すために素板から分割された複数の余白の位置情報を持つ板取り候補をその組合せの数だけ作成し、(b)、次に、それぞれの候補の余白に対して、素板に対する最初の製品の板取り候補作成と同様の方法にて次の製品の板取り候補を作成し、(c)、これをそれ以上板取りすることができなくなるまで再帰的に繰り返し、(d)、それぞれの余白に対する候補の最終的な歩留りを決定し、(e),その中の最も歩留りの高いものを選択して、最終的に素板に対する最も歩留りの高い板取り候補を作成する」という手順について示すところはない。 また、甲第2号証(The Journal of the Operations Research Society of America、1965年1-2月号、Vol.13、No.1、p.94-120)には、甲第1号証において挙げられているP.C.GilmoreおよびR.E.Gomoryの「二次元以上の多段階の材料の切り出しの問題点」と題した論文が掲載されているが、前記事項について具体的に示すところはない。 そして、本件請求項1に係る発明における前記事項について検討すると、現実に需要のある多種形状の製品ガラス群が、素板ガラスの形状を予定して都合よくセットされるものではないことから、切り余りのロスが生じることは避けられない。そのロスを減少させようとして、その板取方法の可能性の全てを算出すれば常に最小のロスを達成できるとしてもその計算は膨大となる。一方、具体的に如何なる点に着目するべきかはともかく、板取に関する何らか特性に着目して簡単な方法で板取候補を決定したときでも、その簡便さの割には、それぞれの製品ガラスセットに応じて、最小ロスの一例である「ロス=素板ガラスの面積-セット中の全製品ガラスの総面積」の場合やそれに準じた効率的歩留まりを達成できる場合が生じ得ることが考えられる。 これらを考慮すると、その簡単で一定程度の効率的な歩留まりを達成できる板取方法を具体的に提示できたときに、上記簡便化の着想を具現化したといえるし、この場合の方法が容易に想到し得るか否かについては、具現化した方法が、単に、可能性のある全ての板取方法の一部の方法として想定できるというのみでは足りず、板取方法の簡便化についてのそれまでの事実関係をも考慮して、具体的に検討されるべきである。 この点から、本件請求項1に記載の発明をみると、上記手順の、(a)まず、作る予定のある種類の製品の一枚を素板に配置してみて、縦か横の製品の配置方向とその製品を切り出すためのカッター線方向の可能な組合せを調べ、その組合せに対して、その製品とその製品を切り出すために素板から分割された複数の余白の位置情報を持つ板取り候補をその組合せの数だけ作成する、すなわち、本件特許の図1や図4に示されている4例の組合せに対応する四つの板取り候補を作成し、(b)次に、それぞれの候補の余白各二つに対して、素板に対する最初の製品の板取り候補作成と同様の方法にて次の製品の板取り候補を作成する、すなわち、4例の組合せに対応する四つの板取り候補の余白各二つに対して、本件特許の図1や図4に示されている4例の組合せに対応する四つの板取り候補を作成し、(c)予め決められた順序の次製品以降の製品についても上記(b)の方法をそれ以上板取りすることができなくなるまで再帰的に繰り返し、(d)それぞれの余白に対する候補の最終的な歩留りを決定し、(e)その中の最も歩留りの高いものを選択して、最終的に素板に対する歩留りが相対的に高い板取り候補を作成するというものであり、結局、本件請求項1に係る発明は、現実に需要があり、予定された製品の種類を設定して、比較的簡単な手法により、歩留まりの高い板取り候補が選定できるという技術的意義を有するものであるといえる。 してみると、本件請求項1に係る発明でいう前記(a)〜(e)の手順について具体的に示すところがなく、その板取方法の簡便化についても具体的に言及していない甲第1〜2号証の記載を総合しても、本件請求項1に係る発明は、それらの記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることはできない。 また、本件請求項2〜4に係る発明は、請求項1を直接または間接的に引用しているものであるから、上述の理由と同様の理由により、甲第1〜2号証の記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることがてきない。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由および証拠によっては本件請求項1〜4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-06-11 |
出願番号 | 特願平3-15527 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C03B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 徳永 英男 |
特許庁審判長 |
加藤 孔一 |
特許庁審判官 |
唐戸 光雄 西村 和美 |
登録日 | 2000-06-23 |
登録番号 | 特許第3079189号(P3079189) |
権利者 | 株式会社安川電機 |
発明の名称 | 板ガラス切断機の板取り方式 |