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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B65D
管理番号 1041371
異議申立番号 異議2001-70372  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-07-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-31 
確定日 2001-06-30 
異議申立件数
事件の表示 特許第3072583号「易離解性加工紙」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3072583号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯・本件請求項1〜4に係る発明
本件特許第3072583号(平成4年12月25日出願、平成12年6月2日設定登録)の請求項1〜4に係る発明に対して、押谷泰紀から特許異議の申立がなされた。
本件請求項1〜4に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された下記のとおりのものである。
【請求項1】スチレン・アクリル共重合物に対して、粒径が0.01〜50ミクロンの無機系多孔質剤を2〜200重量%混合して生成されたコート剤を、原紙に1〜50g/m2 塗布したものを、最低造膜温度以上で樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥し表面処理を施こしたことを特徴とする易離解性加工紙。
【請求項2】前記易離解性加工紙は、段ボールシート紙であることを特徴とする請求項1に記載された易離解性加工紙。
【請求項3】前記易離解性加工紙は、ピザパイ・ドーナッツ・フライドチキン・ハンバーガ等の食品を包装する紙容器用の易離解性加工紙であることを特徴とする請求項1に記載された易離解性加工紙。
【請求項4】前記易離解性加工紙は、野菜や果物などの鮮度保持用の易離解性加工紙であることを特徴とする請求項1に記載された易離解性加工紙。
II.特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証として特開昭56-58096号公報、甲第2号証として特開昭55-107597号公報、甲第3号証として特開昭52-103510号公報、甲第4号証として特開昭52-18909号公報、甲第5号証として特開平3-161392号公報、甲第6号証として特開平1-183596号公報及び甲第7号証として特開平1-301245号公報を提示して、次のような主張をしている。
(1)本件請求項1及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
(2)本件請求項1〜4に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
III.甲第1号証〜甲第7号証の記載
甲第1号証には次の記載がなされている。
1-1「エチレン-アクリル酸共重合体又はエチレン-アクリル酸共重合体とエチレン-酢酸ビニル共重合体との混合物100重量部、合成ゴム系ラテックス50〜200重量部(固形分として)並びに有機及び/又は無機の微粉末50〜200重量部を含む組成物を紙又は板紙に塗布し、加熱乾燥して成る耐水撥水紙。」(特許請求の範囲第1項)
1-2「本発明は耐水撥水紙に係り、更に詳しくは、主として冷飲料、冷菓用カップのようなコールドタイプの食品容器に用いられるヒートシール成形用耐水撥水紙に関する。」(第1頁右下欄第2行〜第5行)
1-3「・・・合成ゴムラテックスは単独又は任意の組合せで使用することができ、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス及びメチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックスは造膜性と耐水性を付与する機能を有する。」(第2頁右下欄第5行〜第9行)
1-4「本発明において使用する・・・無機の微粉末としては・・・カオリナイト、パイロフィライト、ハロイサイト、セリサイト、ゼオライト、モンモリロナイト、タルクなどの各種クレーの微粉末・・・・をあげることができる。これらの微粉末は・・・前記共重合体100重量部及び前記合成ゴム系ラテックス50〜200重量部に対し・・・一般には50〜200重量部・・・宛配合される。かかる割合の微粉末の配合によって・・・加熱時の皮膜強度の劣化・・・を解消し、ヒートシール性が良好でブロッキングのない耐水撥水紙が得られる。微粉末の粒度には特に限定はなく・・・平均粒径0.2〜30μの広範囲の微粒子を使用することができる。」(第2頁右下欄第16行〜第3頁左上欄第18行)
1-5「上記各組成物は、・・・・紙又は板紙に、・・・・塗布することができる。・・・紙面への塗布量には、特に制限はないが、一般には・・・固形分として片面に3g/m2 以上、好ましくは5〜10g/m2 程度塗布する。」(第3頁左上欄第19行〜右上欄第7行)
1-6「本発明の耐水撥水紙は各種印刷方式に対する印刷適性の点において全く問題は無く、むしろ前記組成物塗布前よりも良好となり、また各種印刷を施した後もその耐水性及び撥水性には全く変化がみられない。」(第3頁左下欄第1行〜第5行)
甲第2号証には次の記載がなされている。
2-1「粒径0.5〜20μのシリカ粉末20〜40部、コロイダルシリカ20〜40部、軟質バインダー30〜50部の分散液を紙表面に0.05〜15g/m2 塗布し、乾燥した防滑紙。」(特許請求の範囲)
2-2「・・・0.5μ〜20μのシリカ粉末(1)と、その固着剤として、固着性、防滑性、耐水性を考慮してソフトタイプのアクリル系バインダー(2)を用いた塗工液を作った。このまま原紙(3)に塗布しても、大きな防滑性が得られるが、摩擦によって表面のシリカが脱落すると、バインダーの粘着性が現われ、ブロッキングする様になる。そこで、この塗工液にコロイダルシリカ(粒径10〜20mμ)(4)を適量加えることによって、数百回の強い摩擦でも防滑効果が殆ど低下せずブロッキングもしない紙を得ることが出来た。」(第1頁左下欄末行〜右下欄第14行)
2-3「実施例 粒径2〜5μのシリカ粉末固形分28部、粒径10〜20 mμのコロイダルシリカ、固形分80部、ソフトタイプアクリルエマルジョン、固形分42部の塗工液を作り、クラフト紙に0.2〜4g/m2 塗工、乾燥し・・・た。」(第1頁右下欄第16行〜第2頁左上欄第4行)
甲第3号証には次の記載がなされている。
3-1「スチレンまたはスチレン誘導体約40〜80重量%と、これと共重合し得るかつ30℃における水への溶解度が1重量%以下である他のビニル系モノマー約60〜20重量%とを、乳化剤としてカチオン型乳化剤のみを使用して乳化共重合せしめて得たものでありしかも共重合体のガラス転移温度が0〜40℃の範囲内にある乳化分散液からなる紙の撥水剤。」(特許請求の範囲第1項)
3-2「今般、本発明者等は・・・スチレンまたはスチレン誘導体と他の水不溶性ビニル系モノマ-とをカチオン型乳化剤のみを用いて乳化共重合して得られる・・・乳化分散液が・・・従来の撥水剤と比較して撥水性は同等で、その防滑性が飛躍的に向上されたものであることを認めた。」(第2頁左上欄第2行〜第9行)
3-3「スチレンまたはスチレン誘導体と共重合し得る・・・他のビニル系モノマーの例としては・・・メタクリル酸エステル、・・・アクリル酸エステル・・・等があげられる。特にアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル・・・等の使用が経済上有利である。」(第2頁右上欄末行〜左下欄第9行)
3-4 実施例として、カチオン型乳化剤を用いる乳化重合により、スチレンとアクリル酸ブチルの共重合体または、スチレンとアクリル酸2-エチルヘキシルの共重合体の乳化分散液を得たこと、得られた乳化分散液を水で不揮発分濃度4%に希釈したものを、ライナー紙K-200の表面に有効成分が0.5g/m2 となるようにロールコーターで塗布し、これを180℃で5分、さらに80℃で30分間熱処理したこと。
甲第4号証には次の記載がなされている。
4-1「アクリルアマイド、メタクリルアマイド及びジアセトンアクリルアマイドよりなる群からえらばれたアクリルアマイド系親水性単量体の少なくとも一種の10〜90重量%と、・・・スチレンよりなる群からえらばれた疎水性単量体の少なくとも一種の90〜10重量%との乳化共重合樹脂を含有する共重合樹脂エマルジョンを、板紙類に施したのち乾燥することを特徴とする板紙類の圧縮強度向上方法。」(特許請求の範囲)
4-2「本発明は、最も好適には、例えば段ボール紙製造用のライナーや中芯としている板紙類として、未処理板紙に匹敵する澱粉系糊剤による好ましい接着強度及び廃板紙再生利用時の好ましい離解性を兼備し、しかも、たとえば段ボール紙製容器類などにした際に、著るしく改善された圧縮強度を示す板紙類を提供することのできる板紙類の圧縮強度の向上方法に関する。」(第1頁右下欄第2行〜第9行)
4-3 製造例では、アクリルアマイド及びスチレンの乳化共重合樹脂エマルジョンを得たこと、実施例では、製造例で得た乳化共重合樹脂エマルジョンを用いて、段ボール用中芯板紙(セミ芯:米坪125 g/m2 )にエマルジョンを施したのち、乾燥したこと、乾燥後、20℃、65RH(相対湿度)の条件下に24時間静置し、圧縮強度(リングクラッシュ:JISP8126)、澱粉系糊剤による接着強度(JIS Z0402)及び離解性を測定したこと
甲第5号証には次の記載がなされている。
5-1「(a)アクリル酸と式(I)で表されるカチオンの塩30〜70重量%と、(b)メタクリル酸と式(I)で表されるカチオンの塩30〜70重量%と、(c)スチレン及び/又はα-メチルスチレン1〜5重量%とからなる(但し(a)〜(c)成分の合計100重量%)共重合体を有効成分とする感熱記録紙の表面保護層形成剤。」(特許請求の範囲請求項1、式(I)とその置換基の定義の記載は省略。)
5-2「本発明の表面保護層形成剤は、本質的に水溶性であるが、感熱層上に塗工、乾燥されると、その一成分であるアミンまたはアンモニアの全部又は一部が蒸散して疎水化皮膜を形成する。ここに生成した皮膜は、基本となる共重合体の組成、分子量が、感熱紙用表面保護層として適度の硬さ、柔らかさ、耐水性、耐油性及び強度を有するため、優れた耐水性、耐油性及び耐薬品性能を発揮する。」(第4頁右上欄第18行〜左下欄第6行)
甲第6号証には次の記載がなされている。
6-1「シリカ微粉末とアルミニウム化合物と水溶性セルロース誘導体を含有する水系分散剤からなる紙及び板紙の防滑剤。」(特許請求の範囲第1項)
6-2「本発明は紙及び板紙の滑りを防止する防滑剤に関する。」(第1頁右下欄第8行〜第9行)
6-3「クラフト紙、ライナー原紙等はそのままの形で、あるいは包装袋や段ボール箱に加工された形で物品の包装材料として広く使用されている。」(第1頁右下欄第11行〜第13行)
6-4「本発明に於いて、シリカ微粉末としては平均粒子径が0.5〜50μの範囲に入るものがいずれも使用可能である。なかでも吸油度が大きく、粒度が細かく、紙用、特に新聞紙用充填剤として使われている・・・ホワイトカーボンと呼ばれているものが好ましい。」(第2頁左下欄第17行〜右下欄第6行)
甲第7号証には次の記載がなされている。
7-1「ゼオライト及び高吸収性樹脂が塗布されていることを特徴とする青果物・切花の鮮度保持用フィルム又はシート。」(特許請求の範囲)
7-2「従来より青果物・切花包装用として使用されている内側にポリスチレンフィルム、ポリエチレンフィルム又はポリプロピレンフィルムなどのプラスチックフィルムをラミネートした段ボール箱もその1つであり、包装作業性が良好で、青果物・切花の鮮度保持に効果があるといわれている。」(第1頁右下欄第2行〜第7行)
7-3「本発明に使用される高吸水性樹脂としては一般に高吸収性樹脂として用いられているものならいずれも使用できる。例えばポリアクリル酸系、デンプン-アクリル酸塩系、酢酸ビニール系、マレイン酸共重合体系等の高吸水性ポリマーであるが、これらのなかでポリアクリル酸高吸収水性ポリマーであるポリアクリル酸塩架橋体が特に好ましい。」(第2頁右上欄第4行〜第10行)
IV.当審の判断
1.申立人の主張(1)について
(1)請求項1に係る発明について
甲第1号証に記載された耐水撥水紙は、紙又は板紙に組成物を塗布し、加熱乾燥することによって耐水撥水性が発現するので、最低造膜温度以上で樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥し表面処理を施こしたものであることは明らかである。
本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明は、重合体に対して、粒径が0.01〜50ミクロンの無機系多孔質剤を2〜200重量%混合して生成されたコート剤を、原紙に1〜50g/m2 塗布したものを、最低造膜温度以上で樹脂の分解温度よりも低い温度で乾燥し表面処理を施こした加工紙の発明である点で軌を一にするものであるが、次の点で相違する。
重合体として、請求項1に係る発明は、スチレン・アクリル共重合体を用いることを規定しているのに対して、甲第1号証に記載された発明は、エチレン-アクリル酸共重合体又はエチレン-アクリル酸共重合体とエチレン-酢酸ビニル共重合体との混合物、及び合成ゴムを成分とする重合体組成物を用いており、スチレン・アクリル共重合体を用いることを明らかにしていない点。
そこで、この相違点について検討する。
本件請求項1に係る発明は、合成ゴムラテックス等を用いるときに生ずる不都合を回避して、種々の性質の改良された易解離性加工紙を提供する発明(本件明細書段落0005〜0008)である。
そして、本件請求項1に係る発明で用いるスチレン・アクリル共重合体は、スチレン系単量体とアクリル系単量体からなり(本件明細書段落0011〜0012等)、ゴムの性質を有しない。
一方、甲第1号証に記載された発明で用いる合成ゴムは、スチレン・アクリル共重合体であることはない。
そのため、本件請求項1に係る発明は、スチレン・アクリル共重合体を用いることで、甲第1号証に記載された発明とは、異なる発明を構成している。
したがって、本件請求項1に係る発明が、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。
(2)本件請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明は、請求項1を引用して、易離解性加工紙の用途を、ピザパイ・ドーナッツ・フライドチキン・ハンバーガ等の食品を包装する紙容器用と限定するものであるから、本件請求項1に係る発明で述べた理由と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。
2.申立人の主張(2)について
(1)本件請求項1に係る発明について
(1)-1.本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明との対比
本件請求項1に係る発明と甲第1号証に記載された発明を対比すると、上記した相違点があることが認められる。
この相違点について、検討する。
甲第2号証には、粒径0.5〜20μのシリカ粉末20〜40部、コロイダルシリカ20〜40部、軟質バインダー30〜50部の分散液を紙表面に0.05〜15g/m2 塗布し、乾燥した防滑紙の発明が記載され、軟質バインダーの例としてソフトタイプアクリルエマルジョンが説明されている。
しかしながら、このソフトタイプアクリルエマルジョンは、本件請求項1に係る発明のスチレン・アクリル共重合体に相当すると解釈できるような説明はなされていない。
甲第3〜5号証には、スチレン・アクリル共重合物を含むコート剤を紙に塗布した加工紙が記載されている。
しかしながら、甲第3〜5号証には、無機系多孔質剤を混合したコート剤において、スチレン・アクリル共重合物を用いることは示唆されていない。
甲第6号証には、シリカ微粉末とアルミニウム化合物を含有する紙及び板紙の防滑剤が記載され、甲第7号証には、ゼオライトが塗布された青果物・切花の鮮度保持用フィルム又はシートが記載されているが、スチレン・アクリル共重合物を含むコート剤は記載されていない。
そのため、甲第1号証における、重合体組成物の成分として、甲第2号証〜甲第7号証の記載に基づいて、スチレン・アクリル共重合体を用いることは、当業者が容易にできたこととはいえない。
(1)-2.本件請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明との対比
甲第2号証に記載された発明で用いる粒径0.5〜20μのシリカ粉末は、本件請求項1に係る発明で用いる無機多孔質剤に相当するといえるものの、甲第2号証に記載された発明で必須の成分として用いる、コロイダルシリカは、粒径は10〜20mμであるから、粒径からみて、本件請求項1に係る発明で用いる無機多孔質剤に相当するものではない。
本件請求項1に係る発明と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、これらの発明は、アクリル重合物に対して、粒径が0.01〜50ミクロンの無機系多孔質剤を混合して生成されたコート剤を、原紙に1〜50g/m2 塗布したものを、乾燥し表面処理を施こした加工紙の発明である点で軌を一にするものであるが、本件請求項1に係る発明では、コロイダルシリカを用いることなく、スチレン・アクリル共重合物を用いているのに対して、甲第2号証に記載された発明は、コロイダルシリカを用いており、スチレン・アクリル共重合物を用いることを明らかにしていない点で相違する。
そこで、この相違点について検討する。
甲第1号証及び甲第3号証〜甲第7号証には、スチレン・アクリル共重合物を用いると、コロイダルシリカを成分として要することなく、シリカ粉末のような無機系多孔質剤の脱落がなくなることを示唆する記載はなされていない。
そのため、コロイダルシリカを用いることなく、スチレン・アクリル共重合物を用いることは、当業者が容易にできたこととはいえない。
そして、本件請求項1に係る発明は、明細書記載の効果、即ち、この発明に係る易離解性加工紙にあっては、重合物としてスチレン・アクリル共重合物を用いたので、皮膜に強靭性と造膜性を付与し、かつ、耐熱性を付与することができ、また、無機系多孔質剤として粒径が0.01〜50ミクロンのものを用いたので、塗工面に筋が入らず均一な皮膜を得ることができると共に、優れた防滑性・防湿性・防水性を得ることができ、さらに、無機系多孔質剤をスチレン・アクリル共重合物に対して2〜200重量%混合することで、優れた防滑性・防湿性・防水性に加え、優れた水性印刷インキの乾燥性能を得ることができ、しかも、このようにして生成されたコート剤を、原紙に1〜50g/m2 塗布することで、優れた防湿性・防水性は勿論、非常に優れた容器成型時の折り加工性を得ることができ、加えて、コート剤塗工後の乾燥温度を最低造膜温度以上で樹脂の分解温度よりも低い温度で行うことで、コート剤を高分子化させないためコート剤自体の易離解性に向上させることができ、また、防湿性・防水性にも優れた造膜を容易に得ることができるという効果を奏したものと認められる。
したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件請求項2〜4に係る発明について
本件請求項2〜4に係る発明は、本件請求項1に係る発明の構成をさらに限定する発明であるから、本件請求項1に係る発明と同様、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
V.結び
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張及び挙証によって本件請求項1〜4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-06-12 
出願番号 特願平4-357910
審決分類 P 1 651・ 113- Y (B65D)
P 1 651・ 121- Y (B65D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 溝渕 良一  
特許庁審判長 高梨 操
特許庁審判官 石井 克彦
仁木 由美子
登録日 2000-06-02 
登録番号 特許第3072583号(P3072583)
権利者 東海パルプ株式会社
発明の名称 易離解性加工紙  

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