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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1041372 |
異議申立番号 | 異議2001-70304 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-10-03 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-01-25 |
確定日 | 2001-06-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3072090号「化粧無機質板の製造方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3072090号の請求項1、2に係る特許を維持する。 |
理由 |
1、本件発明 本件特許第3072090号の発明(平成11年3月24日出願 、平成12年5月26日設定登録。請求項の数2)は、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された下記のものと認める。 【請求項1】防水シーラー処理を施した無機質基板上に接着剤を塗布し、接着剤塗膜上に、絵柄層を構成するインクの剥離強度を接着剤の粘着強度未満に調整してなる転写シートを用いて絵柄層を圧着、転写し、絵柄層上に無機塗料を塗布して保護被膜を形成することを特徴とする化粧無機質板の製造方法。 【請求項2】転写シートの絵柄層を構成するインクのインク粒子同志の結合強度をインクの剥離強度未満に調整してなる請求項1記載の化粧無機質板の製造方法。 2、特許異議申立ての理由の概要 特許異議申立人 柳井香子(以下、「申立人」という)は、証拠として甲第1、2号証を提出し、本件請求項1、2に係る発明(以下、「本件発明1」、「本件発明2」という)は、甲第1、2号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1、2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである旨の主張をしている。 3、申立人が提出した甲各号証記載の発明 甲第1号証:特開平4-34173号公報 a.「上記の外装用化粧材を製造する本発明の方法は、板状基材の表面を防水性目止め材で処理して外装用基材を用意し、その上に、プライマーと同種または近縁の合成樹脂の塗料を塗布、乾燥し、表面を研摩して中間層を形成し、プライマー塗料を塗布し加熱して、流動性はないが完全には乾燥してないプライマー層を形成し、そこへ転写シートを当て加熱加圧した後に転写台紙を剥離して絵柄印刷層を転写し、ついで耐候性にすぐれた合成樹脂の塗料を塗布、乾燥して表面保護層を形成することからなる。」(第2頁右上欄第11行〜左下欄1行) b.「本発明に使用する板状基材は、外装材の製造に使用されているものの中から任意にえらぶことができる。例をあげると、石膏ボード、石膏スラグボードなどの石膏系板材、ガラス繊維強化コンクリート板、軽量発泡コンクリート板、中空押し出しセメント板などのセメント系板材、ケイ酸カルシウム板、素焼きの陶磁器板である。」(第2頁左下欄第6〜12行) c.「表面保護層を形成する耐候性にすぐれた合成樹脂とは、たとえばフッ素樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂のような二液硬化型の樹脂である。」(第2頁右下欄19行〜第3頁左上欄2行) d.「2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(中略)を転写台紙とし、その上にアクリル樹脂と塩ビ-酢ビ共重合体との混合物をビヒクルとしたインキで抽象柄を印刷した転写シートを用意し、上記ハーフキュアしたプライマー層に重ね、温度145℃、圧力5Kg/cm2でロール転写し、台紙を剥離して絵柄印刷層を設けた。」(第3頁左下欄16行〜右下欄3行) 甲第2号証:特開平5-330013号公報 e.「外表面に凹凸ないし曲面を有する柱状基材をその長軸方向へ搬送しつつ該外表面に硬化型樹脂接着剤を層状に塗工して接着剤層を形成する一方、予め印刷、乾燥、硬化させた絵柄層を少なくとも有する転写層を剥離性基材シート面に有する帯状の転写シートを該柱状基材の搬送方向に柱状基材と同期する速度で搬送し、該柱状基材の外表面に形成した接着剤層が完全に硬化しない間に、転写シートをその転写層側を該柱状基材の外表面側として該柱状基材の外表面の表面に合致する形状を持つ複数のロールを用いて段階的に貼着し、次いで、該接着剤の接着力が、該転写層と剥離性基材シート間の接着力より該接着剤層と柱状基材間及び転写層間において大きくなった時点以降において、剥離性基材シートを剥離することを特徴とする、柱状基材への絵柄の転写方法。」(特許請求の範囲の【請求項2】) 4、対比・判断 (1)本件発明1に対して 本件発明1(前者)と甲第1号証の発明(後者)とを対比すると、後者のプライマーは接着剤に相当するものと認められるから、両者は共に「防水シーラー処理を施した無機質基板上に接着剤を塗布し、接着剤塗膜上に、絵柄層を有する転写シートを用いて絵柄層を転写し、絵柄層上に保護被膜を形成することからなる化粧無機質板の製造方法。」である点で軌を一にすると認められる。 しかしながら、前者は「絵柄層を構成するインクの剥離強度を接着剤の粘着強度未満に調整してなる転写シート」を用いて特に加熱することなく絵柄層を無機質基板上に圧着して転写するものであるのに対して、後者においては絵柄層を転写する際に加熱、圧着する(上記dの記載参照)ものである点(相違点1)、及び、前者は絵柄層上に「無機塗料」を塗布して保護被膜を形成するものであるのに対して、後者においては「合成樹脂の塗料」(上記a及びcの記載参照)を用いるものである点(相違点2)で相違していると認められる。 そこで、これら相違点について検討する。 相違点1に関して申立人が提出した甲第2号証には、特に加熱することなく転写シートを接着剤層を塗工した柱状基材上に圧着する発明が記載されているけれども、絵柄層は接着剤層の接着力が充分発現した後に剥離性基材シートから剥離されて柱状基材に転写されるものであるから(上記dの記載参照)、この転写シートは前者(本件発明1)における、圧着後直ちに基材シートを剥離する「絵柄層を構成するインクの剥離強度を接着剤の粘着強度未満に調整してなる転写シート」とは明らかに異なる構成のものであり、後者に甲第2号証の発明を適用しても前者が構成されることはない。 また、前者において絵柄層上に「無機塗料」を塗布して保護被膜を形成する相違点2点については、甲第2号証には記載されていない。 この相違点2に関して申立人は、甲第1号証の上記cの記載「表面保護層を形成する耐候性にすぐれた合成樹脂とは、たとえばフッ素樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂のような二液硬化型の樹脂である。」を指摘した上で、「アクリルシリコーン樹脂はシリコン(硅素)を分子の骨格に有し、実質的に無機塗料と同じものである」と主張(特許異議申立書第5頁下から4〜3行)している。 しかしながら、アクリルシリコーン樹脂は有機化合物であって、「無機塗料」ではないことは自明であるから、上記申立人の主張は採用できない。 そして、本件発明1は、本件特許請求の範囲の請求項1記載のとおりの構成を具備することにより、本件明細書記載の効果を奏し得ているものと認められる。 よって、本件発明1は、甲第1、2号証記載の発明から当業者が容易に想到しうるものであるとはいえない。 (2)本件発明2に対して 本件発明2は、本件発明1における化粧無機質板の製造方法に対して、さらに技術的特定事項を付加したものであるから、「本件発明1に対して」において記載した理由と同じ理由により、甲第1、2号証記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 5、むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1、2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 |
異議決定日 | 2001-05-29 |
出願番号 | 特願平11-80566 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B32B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 鴨野 研一 |
特許庁審判長 |
小林 正巳 |
特許庁審判官 |
仁木 由美子 喜納 稔 |
登録日 | 2000-05-26 |
登録番号 | 特許第3072090号(P3072090) |
権利者 | 松下電工株式会社 |
発明の名称 | 化粧無機質板の製造方法 |