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審決分類 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C03C
審判 全部申し立て 2項進歩性  C03C
管理番号 1041402
異議申立番号 異議1999-74843  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-05-14 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-12-21 
確定日 2001-05-25 
異議申立件数
事件の表示 特許第2907031号「歯科用陶材」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2907031号の請求項1ないし7に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2907031号発明は、平成6年10月24日に特許出願され、平成11年4月2日にその特許の設定登録がなされたものである。
これに対して、その後、特許異議申立人株式会社松風より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年7月11日付けで訂正請求がなされたが、この訂正請求に対し訂正拒絶理由通知がなされ、平成13年2月6日付けで特許異議意見書と手続補正書が提出されたものである。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正請求に対する補正の適否
平成13年2月6日付け手続補正書の内容は、平成12年7月11日付け訂正請求書の訂正事項に、少なくとも請求項1の削除等に係る訂正事項を追加することを求めるものである。
しかしながら、上記補正は、訂正請求書に新たな訂正事項を付加するものであるから訂正請求書の要旨を変更するものであり、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであるから、上記手続補正は採用することができない。
(2)訂正事項
特許権者が求める上記手続補正は採用することができないから、平成12年7月11日付け訂正請求書において求める訂正は、訂正請求書に添付された訂正明細書のとおり、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものであるところ、特許請求の範囲の減縮に関する訂正事項a乃至cによって減縮された特許請求の範囲の記載は、次のとおりのものである。
「【請求項1】SiO2:69〜80wt%、Al2O3:3〜14wt%、但しSiO2とAl2O3の合計が83wt%以上、B2O3:0.5〜2.5wt%、アルカリ金属酸化物であるNa2O、K2O、及びLi2Oの一種以上が6〜15wt%の原料組成を有すること、焼結体で曲げ強度6.5kgf/mm2(63.7MPa)以上、破壊靭性3.8kgf(1.18MPam1/2)以上であることを特徴とする歯科用陶材。
【請求項2】SiO2:76〜79wt%、Al2O3:7〜10wt%、但しSiO2とAl2O3の合計が86wt%以上、であることを特徴とする請求項1記載の歯科用陶材。
【請求項3】原料組成で、塩基性酸化物であるMgOを0.2〜6wt%添加したことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用陶材。
【請求項4】原料組成で、アルカリ金属酸化物であるNa2O、K2O、及びLi2Oの一種以上が6〜15wt%、但し、Li2O:0.2〜3wt%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の歯科用陶材。
【請求項5】焼結体で、熱膨張率が6×10‐6〜7×10‐6/℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の歯科用陶材。
【請求項6】焼結体で、破壊靭性4kgf(1.24MPam1/2)以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の歯科用陶材。
【請求項7】オールセラミッククラウンのセラミック質からなるコア部に築盛される、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の歯科用陶材。」
(3)独立特許要件について
(3-1)本件訂正発明
本件訂正発明は、上記(2)に示す特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものである(以下、それぞれ「本件訂正発明1乃至7」という)。
(3-2)引用例の記載内容
当審が平成12年11月21日付け訂正拒絶理由通知において引用した引用例1及び引用例2には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:特開昭59-195551号公報
(a)「本発明は、歯科用セラミックコーピングに使用するのに適した半透明の歯科用釉薬組成物を提供し、・・・それは次の成分から成る。
表I
SiO2:71〜74%、Al2O3:10〜12%、K2O:4〜5%、Na2O:4〜5%、CaO:2〜4.5%、B2O3:3.5〜5.5%」(第2頁上段左欄第17行乃至右欄第10行)
(b)「上記表1に示された成分比率の範囲内で、熱膨張率はSiO2および/又はB2O3の比率を減らすこと、および/又はアルカリ金属酸化物の比率を増やすことによって、大きくなし得る。融解点はB2O3・・・の比率を増やすことによって低下させることができる。」(第2頁下段左欄第16行乃至右欄第2行)
(c)「表II
SiO2:72.5%、Al2O3:11.2%、K2O:4.5%、Na2O:4.5%、CaO:2.8%、B2O3:4.5%」(第3頁下段)
(d)「本発明の釉薬にはその他の材料も用いられる。例えばMgOおよび/又はBaOをCaOの代りに用いることができる。特に融解点の低下が所望の場合は、Na2Oおよび/又はK2Oの一部の代りに若干のLi2Oを用いることができる。」(第2頁下段右欄第7行乃至第11行)
(e)「この釉薬は約4〜約9×10-6in/in./℃の熱膨張率・・・を有し、それは次の成分から成る。」(第2頁上段左欄第19行乃至右欄第2行)
引用例2:「マクリーンの歯科陶材学;第1巻歯科用陶材の性質と臨床への応用」クインテッセンス出版(株)発行、1980年、第34頁乃至第37頁、第59頁乃至第61頁
(a)「図1-9中溶または低溶ポーセレンの製造に使われるガラスの形成過程。」(第34頁)には、「CaO、K2O、Na2O、Al2O3及びB2O3」の役目について記載されている。
(b)「歯科用ポーセレンのようなアルカリ・ケイ酸塩ガラスに最初にB2O3を添加すると、BO4四面体が形成され、その結果、熱膨張率の低下と化学的安定性の向上が得られる。」(第34頁左欄第18行乃至第22行)
(c)「かなり長い間、メーカーは天然長石に石英を混合し、長石85%と石英15%を標準的歯科用ポーセレンとして用いていたが、この分野で低溶材の需要が高まり、・・・フラックスを添加したガラスに対する関心が日に日に高まってきた。こうして長石は、B2O3のようなフラックス型のガラス形成材やガラス改良材を添加して、改良されるに至った。」(第36頁右欄下から第14行乃至第5行)
(d)「表2-1歯科用ポーセレンの曲げ強さ」(第60頁)が開示されている。
(3-3)当審の判断
引用例1には、「歯科用ポーセレン」(「歯科用陶材」に相当)に関し、その具体的な組成として「SiO2:72.5%、Al2O3:11.2%、K2O:4.5%、Na2O:4.5%、CaO:2.8%、B2O3:4.5%」(上記(c)参照)が記載されているから、そこには、「SiO2:72.5%、Al2O3:11.2%、K2O:4.5%、Na2O:4.5%、CaO:2.8%、B2O3:4.5%の原料を有する歯科用ポーセレン」の発明(以下、「引用例1発明」という)が記載されている。
そこで、本件訂正発明1と上記引用例1発明とを対比すると、本件訂正発明1もその実施例をみれば「CaO」の含有を許容するものであるから、この「CaO」の有無の点では両者に実質的な差異はないと云える。また、引用例1発明の「SiO2:72.5%、Al2O3:11.2%、K2O:4.5%、Na2O:4.5%」の数値も、本件訂正発明1のそれぞれの組成比を満足するから、結局のところ、両者は、次の点で相違しているのみと云える。
(イ)本件訂正発明1の「B2O3」含有量が「0.5〜2.5wt%」であるのに対し、引用例1発明は「4.5wt%」である点、
(ロ)本件訂正発明1はその曲げ強度等が焼結体で「曲げ強度6.5kgf/mm2(63.7MPa)以上、破壊靭性3.8kgf(1.18MPam1/2)以上」であるのに対し、引用例1発明はこれらが不明である点、
次に、これら相違点について検討する。
(i)上記(イ)の点について
本件訂正発明1の「B2O3」の役割は、特許明細書の段落【0031】に「B2O3が0.5〜2.5wt%であることで、熔けやすい化合物を作り、適用量用いることで熱膨脹率を低下させるが、多過ぎると逆に増加させる。」と記載されているから、融点や熱膨張率等に係るものであることが明らかであるところ、このような「B2O3」の役割は、引用例1の上記(b)や引用例2の上記(a)及び(c)の記載にみられる如く、周知の事項である。
してみると、「B2O3」の役割が周知であれば、その含有量をこの成分に期待する効果の程度に応じて加減することは当業者であれば容易になし得ることと云うべきである。
(ii)上記(ロ)の点について
「歯科用陶材」においては、その曲げ強度が「6.5kgf/mm2(63.7MPa)」以上のものは、例えば引用例2の上記(d)の表2-1にもみられる如く通常の「歯科用陶材」である。そして、この「歯科用陶材」の強度に影響する成分は、引用例2の上記(a)の記載に徴すれば主に「SiO2」や「Al2O3」であるから、これら成分の組成比を満足する引用例1発明も、明示的な記載はないもののその曲げ強度が「6.5kgf/mm2(63.7MPa)以上」であることは容易に推測することができると云える。 そうすると、両者は、この曲げ強度の点で実質的な差異はないと云うのが相当であるが、仮に差異があったとしても、この程度の差異に格別の技術的な意味があるとすることはできない。
次に、上記(ロ)の「破壊靭性3.8kgf(1.18MPam1/2)以上」の点について検討すると、特許明細書には、この点について「但しSiO2とAl2O3の一種以上が83wt%未満で、破壊靭性値が約3.8kgf(1.18MPam1/2)に低下するので、SiO2とAl2O3の一種以上が83wt%以上とする。」(段落【0029】参照)と記載されている。
そうすると、本件訂正発明1の破壊靭性については、「SiO2+Al2O3」の条件を満足していれば、その値は「3.8kgf(1.18MPam1/2)以上」であると云えるから、この「SiO2+Al2O3」が「83.7wt%」である引用例1発明も、本件訂正発明1と同様に、その機械的性質として具備していることが明らかであるから、両者は、この破壊靭性値の点でも実質的な差異はないと云える。
してみると、上記(イ)及び(ロ)の点は、いずれも格別の差異と云う程のものではないから、本件訂正発明1は、上記引用例1及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと云うべきである。
したがって、本件訂正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、その余の本件訂正発明2乃至7について検討するまでもなく、本件訂正請求は、認めることができない。
(4)むすび
以上のとおり、上記訂正は、平成6年改正法附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
3.特許異議申立てについて
(1)本件発明
特許権者が求める上記訂正請求は認めることができないから、本件請求項1乃至7に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1乃至7」という)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】SiO2:67〜80wt%、Al2O3:3〜14wt%、但しSiO2とAl2O3の合計が83wt%以上、B2O3:0.5〜2.5wt%、アルカリ金属酸化物であるNa2O、K2O、及びLi2Oの一種以上が6〜15wt%の原料組成を有することを特徴とする歯科用陶材。
【請求項2】SiO2:76〜79wt%、Al2O3:7〜10wt%、但しSiO2とAl2O3の合計が86wt%以上、であることを特徴とする請求項1記載の歯科用陶材。
【請求項3】原料組成で、塩基性酸化物であるMgOを0.2〜6wt%添加したことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯科用陶材。
【請求項4】原料組成で、アルカリ金属酸化物であるNa2O、K2O、及びLi2Oの一種以上が6〜15wt%、但し、Li2O:0.2〜3wt%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一に記載の歯科用陶材。
【請求項5】焼結体で、熱膨張率が6×10‐6〜7×10‐6/℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一に記載の歯科用陶材。
【請求項6】焼結体で、曲げ強度6.5kgf/mm2(63.7MPa)以上、破壊靭性4kgf(1.24MPam1/2)以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一に記載の歯科用陶材。
【請求項7】オールセラミッククラウンのセラミック質からなるコア部に築盛される、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一に記載の歯科用陶材。」
(2)取消理由の概要
当審が平成12年4月21日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(イ)本件発明1乃至7は、引用例1乃至引用例4に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(ロ)請求項1の記載は、その記載中に数値限定に係る不備があるから特許法第36条第4項乃至第6項に規定する要件を満たしていない。
(3)引用例の記載内容
取消理由において引用された引用例1乃至4には、それぞれ次の事項が記載されている。
引用例1:上記2.(3-2)に示す引用例1と同じ。
引用例2:上記2.(3-2)に示す引用例2と同じ。
引用例3:「カラーアトラス ザ・メタルセラミックス」クインテッセンス出版(株)発行、1982年、第171頁乃至第173頁
(a)「石英
シリカ(無水ケイ酸)の多形の1つで、珪石や硅砂が用いられる。溶融温度は非常に高く(1685℃)、焼成によって溶解されにくいので石英は陶材中で耐火性の骨組みともなる。陶材の強度を上げるが、石英が多量に混入されると透明性は少なくなる。」(第171頁左欄第15行乃至右欄第4行)
(b)「陶磁器、歯科用陶材は上述のように構成成分はほとんど同じである。しかし、歯科用陶材の組成は表1-16aに示す通り、陶磁器とははっきり区別できる。陶材の組成を分かり易くするため長石、石英、陶土の凝3元組成図として示すと表1-16bのようになり、可塑性材料であって陶材として最も重要な成分である陶土は4%以下であり、皆無か、ごく微量しか配合されていないことが分かる。これとは逆に長石が非常に大量に配合され、75〜81%にも達している。これは陶材をガラス化して、自然歯のような透明性をもたせるためである。」(第172頁左欄第2行乃至第13行)
(c)表1-16aの「陶磁器用素地の調合範囲wt%」には「歯科用陶材:粘度物質カオリンなど0〜4wt%、石英15〜25wt%、長石75〜81wt%」が開示されている。
引用例4:特開平2-45048号公報
(a)「一方、シェーディング組成物は、既に述べた通り、ケイ酸ソーダガラスと着色剤とを含有する組成物から成る。用いるケイ酸ソーダガラスは、・・・一般に下記組成のガラスが使用される。
一般的範囲(重量基準)SiO2:55〜80%、Na2O:2〜15%、K2O:0〜10%、B2O3:0〜15%、Al2O3:0〜10%、ZnO:2〜25%」(第7頁上段左欄第15行乃至右欄第9行)
(4)当審の判断
(i)本件発明1について
「取消理由(イ)」について
引用例1には、上記2.(3-3)(当審の判断)の項で摘示したとおりの引用例1発明が記載されていると云える。
ところで、本件訂正発明1は、本件発明1に「焼結体で曲げ強度6.5kgf/mm2(63.7MPa)以上、破壊靭性3.8kgf(1.18MPam1/2)以上である」という限定を付すと共に、本件発明1の「67wt%」を誤記の訂正を目的として「69wt%」にそれぞれ訂正したものであるから、これら限定がない本件発明1と上記引用例1発明とを対比すると、両者は、上記2.(3-3)で摘示した上記(イ)の相違点、すなわち「B2O3」の含有量の点で相違するのみであると云える。
してみると、この点については、上記2.(3-3)(当審の判断)の項で既に判断したとおりであるから、本件発明1の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
「取消理由(ロ)」について
請求項1の記載の「SiO2:67〜80wt%」と「Al2O3:3〜14wt%」と「但しSiO2とAl2O3の合計が83wt%以上」との三者の関係についてみると、少なくとも「SiO2:67wt%」の場合には、「Al2O3:3〜14wt%」としても「但しSiO2とAl2O3の合計が83wt%以上」という条件を満足することができない。
したがって、請求項1の記載は、特許法第36条第4項乃至第6項に規定する要件を満たしていないから、本件発明1の特許は、特許法第36条第4項乃至第6項の規定にも違反してされたものである。
(ii)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1と比べ「SiO2」の含有量と「Al2O3」の含有量さらにはこの両成分の合計量の点が若干相違するが、その主な相違点は「SiO2」の含有量を多めにして機械的強度を高くした点にあると認められる(本件特許明細書段落【0030】参照)ところ、「歯科用陶材」において、「SiO2」がその基本的な骨格を形成し機械的強度に影響を与える主要な成分であることは、例えば引用例2の上記(a)の記載の「図1-9」や引用例3の上記(a)の記載でも示唆されている如く周知の事項であり、また、引用例4にも上限80wt%の「SiO2」の含有量が示唆されているから、80wt%近くまで含有させることも格別新規なことではない。
してみると、「Al2O3」や「B2O3」等他の成分の役割も周知であると云えるから、これら成分の役割との兼ね合いで機械的強度等の向上のためにその含有量を若干多めの「76〜79wt%」に限定することも、当業者にとって容易になし得ることと云うべきである。
したがって、本件発明2は、上記引用例1乃至引用例4に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明2の特許も、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(iii)本件発明3及び4について
これら発明は、「MgO:0.2〜6wt%」や「Li2O:0.2〜3wt%」の点を限定するものであるが、引用例1の上記(d)には、引用例1発明も、「MgO」や「Li2O」を含有することができると明示されている。
したがって、本件発明3及び4は、少なくとも請求項1を引用した場合には、上記引用例1及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明3及び4の特許も、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(iv)本件発明5について
この発明は、「熱膨張率が6×10‐6〜7×10‐6/℃」の点を限定するものであるが、この数値は、引用例1の上記(e)の記載にもみられる如く「歯科用陶材」においては通常のものである。
もっとも、引用例1発明の「熱膨張率5.3×10‐6」(引用例1第3頁表II参照)と比べれば、その数値が若干相違するが、「歯科用陶材」の成分の何れが「熱膨張率」に影響を与えるものであるかは周知であるから、その成分含有量の加減により適宜調整することも当業者であれば容易になし得ることである。
したがって、本件発明5は、少なくとも請求項1を引用した場合には、上記引用例1及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明5の特許も、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(v)本件発明6について
この発明は、焼結体の曲げ強度値や破壊靭性値の点を限定するものであるが、これら数値は本件訂正発明1のものと殆ど変わらないから、上記2.(3-3)(当審の判断)の項で既に判断したとおりである。
したがって、本件発明6は、少なくとも請求項1を引用した場合には、上記引用例1及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明6の特許も、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(vi)本件発明7について
この発明は、「オールセラミッククラウンのセラミック質からなるコア部に築盛される」の点を限定するものであるが、引用例1発明の「歯科用陶材」も「セラミック基体」の「コア部」等をその対象とするものである。
したがって、本件発明7は、少なくとも請求項1を引用した場合には、上記引用例1及び引用例2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明7の特許も、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
4.むすび
以上のとおり、本件請求項1乃至7に係る発明の特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-04-09 
出願番号 特願平6-282421
審決分類 P 1 651・ 531- ZB (C03C)
P 1 651・ 121- ZB (C03C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 平田 和男  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
山田 充
登録日 1999-04-02 
登録番号 特許第2907031号(P2907031)
権利者 株式会社ノリタケカンパニーリミテド
発明の名称 歯科用陶材  
代理人 青山 葆  
代理人 北原 康廣  
代理人 皆崎 英士  
代理人 加藤 朝道  

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