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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41L
管理番号 1041410
異議申立番号 異議1999-72928  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-08-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-08-03 
確定日 2001-06-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第2853875号「孔版印刷機のプレスローラ汚れ防止装置」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2853875号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯

特許出願 平成1年12月25日
特許権設定登録 平成10年11月20日
特許異議の申し立て 平成11年8月3日
取消理由通知 平成11年11月9日
訂正請求 平成12年1月28日
訂正拒絶理由通知 平成12年3月24日
手続補正書(訂正請求書)の提出 平成12年5月22日
取消理由通知(再) 平成12年9月11日
訂正請求(再) 平成12年11月21日
訂正拒絶理由通知 平成12年12月15日
意見書の提出 平成13年2月13日

2.訂正の適否について

ア.訂正発明1乃至3
平成12年11月21日付けで提出された訂正明細書の請求項1乃至3に係る発明(以下、訂正発明1乃至3)という。)は、その特許請求の範囲1乃至3に記載された次のとおりのものである。
「(1)製版部と印刷部とを有し、製版部で孔版用マスターに製版を行ない、製版されたマスターを印刷部のドラムに巻回してドラムを回転させ、所定の位置でこれに接して給紙部より用紙を搬送し、該用紙をプレスローラにより上記ドラムに巻回されたマスターに圧接させ、ドラム内面に補充されたインキをドラム表面よりマスターに供給し、上記用紙に印刷を行なう一体型孔版印刷機の上記プレスローラの汚れ防止装置において、
上記給紙部に、該給紙部に載置された用紙のサイズを検知する手段を設け、
原稿のサイズ及び印刷倍率に応じた製版対象画像のうち、上記検知手段により検知された用紙サイズに対応する範囲以外の画像部分はマスターに製版しないように製版部を制御することを特徴とするプレスローラ汚れ防止装置。
(2)上記の用紙サイズ検知手段が用紙搬送方向の用紙の寸法を検知する手段であることを特徴とする請求項1に記載のプレスローラ汚れ防止装置。
(3)上記の用紙サイズ検知手段が用紙搬送方向及びそれに直角方向の用紙の寸法を検知する手段であることを特徴とする請求項1に記載のプレスローラ汚れ防止装置。」

イ.引用刊行物
当審が平成12年9月11日付で通知した再度の取消理由通知において示した刊行物1乃至7にはそれぞれ以下の記載がある。

a.刊行物1(特開平1-293367号公報)
A.複写印刷装置は、・・・製版部5と、印刷部6とより構成される。(第3頁右上欄第6〜7行)
B.製版部5は、・・・画像信号・・・に基づいてサーマルヘッド552を駆動し、原稿画像に対応する穿孔を版用紙に形成する・・・穿孔された版用紙を印刷ベルト531へ・・・巻きつける・・・印刷部6は、・・・用紙収納カセット601、601a・・・から・・・搬送された用紙を所定のタイミングで印刷ベルト531-圧接ローラ605間へ送出する・・・画像を印刷・・・前記用紙カセット601、601aの近傍には、・・・用紙のサイズを検出するためのセンサ・・・が配置されている。(第4頁左上欄第17行〜左下欄第13行)
C.本発明は、演算された原稿サイズ、及び指定されたプリント用紙サイズに基づき、複写または製版のための作像倍率を演算して設定する複写印刷装置である。(第13頁右下欄第12〜15行)

b.刊行物2(特開昭61-186067号公報)
A.転写材の色剤を転写データに応じて駆動される感熱ヘッドによって昇華または溶融し、被転写材に転写する熱転写画像形成装置において、前記被転写材のサイズを検出するサイズ検出手段と、この検出されたサイズに応じて感熱ヘッドの駆動範囲を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする熱転写画像形成装置。(特許請求の範囲第1項)
B.用紙サイズに比べて転写データPDのサイズが大きい場合においても、プラテンにインクを転写することを防止でき(第3頁右下欄第5〜8行)

c.刊行物3(特開昭62-169656号公報)
A.・・・インクを噴出させて被記録部材上に記録する記録装置において、前記被記録部材の大きさに応じて搬送方向と直角方向における被記録材の印字可能エリアを設定する印字可能エリア設定手段と、・・・を有することを特徴とする記録装置。(特許請求の範囲第1項)
B.従って、記録用紙7の大きさに応じてライト・レフトマージンが設定されるので、フィルム1より小さい幅の記録用紙7に対しては用紙幅以外の加熱素子5の駆動は行われない。このため、サーマルヘッド35周辺のガイド部やベルト等をインクで汚すことがなく、次に印字される記録用紙7を汚すおそれがない。(第7頁右上欄末行〜左下欄第6行)

d.刊行物4(特開昭63-163876号公報)
A.(1)像担持体と、この像担持体に電荷を帯電させる帯電手段と、前記像担持体に形成された像を現像する現像手段と、前記帯電手段により帯電された像担持体の電荷を消去する消去手段と、前記像担持体の被画像領域に相当する前記消去手段を駆動し、像担持体の被画像領域に帯電された電荷を消去する制御手段とを具備したことを特徴とする画像形成装置。(2)制御手段は、像を転写する被転写材の大きさに応じた被画像領域に相当する消去手段を駆動し、前記像担持体の被画像領域に帯電された電荷を消去することを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の画像形成装置。(特許請求の範囲第1乃至2項)

e.刊行物5(特開昭59-63882号公報)
A.本発明によれば画像情報の長さと現在使用されている記録用紙の長さとを比較し、記録動作を制御するものであるから記録する画像情報の長さが記録用の長さに等しくなった時点で記録動作を一旦中断し、・・・転写器の汚れも防止できる(第4頁左上欄第1〜10行)

f.刊行物6(特開昭64-24783号公報)
A.ロール状の感熱孔版原紙に製版を行う製版部と、該ロール状原紙を切断する切断部と、製版済の感熱孔版原紙を搬送する原紙給送部と、原紙をその外周に巻きつけて内部よりインクを供給する印刷ドラム部と、印刷用紙を給送する給紙部と、印刷ドラム外周面へ印刷用紙をプレスローラで押圧する印圧部とを備えた孔版式製版印刷装置において、セットされた印刷用紙のサイズを検出するサイズ検出手段と、前記切断部における原紙の切断タイミングを設定するとともに前記印圧部における印刷用紙の押圧長さを設定する制御手段とを設け、前記検出手段からの検出情報に基づき、印刷用紙のサイズに応じて原紙を切断するとともに印刷用紙の押圧長さを設定することを特徴とする製版印刷装置。(特許請求の範囲)
B.〔作用〕このような構成をとれば、プレスローラの印圧長さを印刷用紙の送り方向長さに応じて変化させることになるため、ただ単に原紙切断長さを短くした場合のように、プレスローラは印刷用紙や原紙の存在しない部分でも印刷ドラム外周に押さえつけられてしまい、スクリーンを通過したインクによってプレスローラが汚れ、それ以降の印刷が不可能になるという不具合を生じることがない。(第2頁右上欄第8〜17行)
C.給紙台21には、その上に載置された印刷用紙の搬送方向の大きさを検知するための反射形光センサ40,41,42,43が設けられている。(第3頁左下欄第4〜6行)
D.スキャナーから送られた画像信号に基づいてサーマルヘッド2は孔版原紙1に穿孔製版を行う。(第2頁左下欄第12〜14行)
E.A3印刷の場合・・・原紙の製版長さAは410mmである。印刷長さBは・・・430mmである。・・・原紙長さDは印圧長さBに先頭余白Eと後端余白Fとを加えたものになるが先頭余白Eは大体80mm後端余白Fは大体20mmであるから原紙長さDは約530mmとなる。・・・印刷用紙としてA4サイズを横送りする場合を表している。原稿の方もA4サイズ横送りとすると製版長さAは200mmである。・・・先頭余白Eは上記の場合と変わらず約80mmとなるが後端余白F′はこの場合若干長めにして約30mmとする。円筒状版胴の開孔範囲内に原紙の後端余白が位置する場合には印刷用紙の後端がスクリーン16に直接触れてインキで汚れることを確実に防止するために原紙の後端余白を若干長めにするのである。(第3頁左上欄第17行〜左下欄第1行)
対比のために、上記記載をまとめると、上記刊行物6には次のような発明が記載されている。
製版部と印刷ドラム部とを有し、製版部で感熱孔版原紙に製版を行ない、製版済みの感熱孔版原紙を印刷ドラム部の印刷ドラムに巻回して印刷ドラムを回転させ、所定の位置でこれに接して給紙部より印刷用紙を搬送し、該印刷用紙をプレスローラにより上記印刷ドラムに巻回された製版済みの感熱孔版原紙に圧接させ、ドラム内面に補充されたインキを印刷ドラム表面より感熱孔版原紙に供給し、上記印刷用紙に印刷を行なう孔版式製版印刷装置において、
上記給紙台21に、該給紙台に載置された印刷用紙の搬送方向の大きさを検知する反射形光センサ40,41,42,43を設け、印刷用紙のサイズに応じて原紙を切断するとともに印刷用紙の押圧長さを設定する孔版式製版印刷装置。
原紙の切断長さは、原稿サイズに、所定長さの先端余白とサイズごとに若干異なる後端余白を加えた長さでもあること。

g.刊行物7(特開昭54-77965号公報)
A.第7図に、用紙サイズ検出手段が搬送方向及びそれに直角方向の用紙の寸法を検知する手段であるように配置された図が示されている。

ウ.対比・判断

(1)訂正発明1について、
訂正発明1と刊行物6に記載された発明とを比較する。
a.刊行物6に記載された発明の「製版部」、「印刷ドラム部」、「印刷ドラム」、「感熱孔版原紙」、「印刷用紙」、「給紙部」、「プレスローラ」、および「孔版式製版印刷装置」は、それぞれ、訂正発明1の「製版部」、「印刷部」、「ドラム」、「孔版用マスター」、「用紙」、「給紙部」、「プレスローラ」および「一体型孔版印刷機」に相当している。
b.刊行物6に記載された発明の「給紙台21」は、給紙部の一構成要素であるから、給紙部ともいえる。
c.刊行物6に記載された発明における原紙の切断長さは、原稿サイズに、所定長さの先端余白とサイズごとに若干異なる後端余白を加えた長さでもあることから、切断される原紙に製版される製版対象画像は、原稿サイズに応じたものであるといえる。
d.刊行物6に記載された発明の「孔版式製版印刷装置」は、上記イ.f.B.の記載からみて、プレスローラの汚れを防止する機能を発揮するものであるから、プレスローラの汚れ防止装置といえる。
以上のことから、次の一致点と相違点がある。
[一致点]
製版部と印刷部とを有し、製版部で孔版用マスターに製版を行ない、製版されたマスターを印刷部のドラムに巻回してドラムを回転させ、所定の位置でこれに接して給紙部より用紙を搬送し、該用紙をプレスローラにより上記ドラムに巻回されたマスターに圧接させ、ドラム内面に補充されたインキをドラム表面よりマスターに供給し、上記用紙に印刷を行なう一体型孔版印刷機の上記プレスローラの汚れ防止装置において、
上記給紙部に、該給紙部に載置された用紙のサイズを検知する手段を設けたプレスローラの汚れ防止装置。
[相違点]
A.製版対象画像が、訂正発明1では、原稿のサイズ及び印刷倍率に応じたものとしているのに対して、刊行物6に記載された発明では、原稿のサイズに応じたものである点、
B.訂正発明1では、製版対象画像のうち、用紙サイズに対応する範囲以外の画像部分はマスターに製版しないように製版部を制御するものであるのに対して、刊行物6に記載された発明では、印刷用紙のサイズに応じて原紙を切断し、印圧長さを設定する点。
[相違点の検討]
相違点Aについて、
刊行物1に記載された複写印刷装置(製版印刷装置)では、記録用紙(用紙)に印刷される画像は、版用紙に作成される像に対応するものであるから、刊行物1に記載された発明における製版のための作像倍率とは、印刷倍率ともいえるから、刊行物1には、製版部と印刷部とを有した印刷機において、製版対象画像を、原稿サイズ及び印刷倍率に応じたものとすることが記載されている。
したがって、刊行物6に記載された発明に、同一技術分野の刊行物1に記載の製版対象画像を原稿サイズ及び印刷倍率に応じたものとすることを採用することは、当業者が容易に想到できる。
相違点Bについて、
刊行物6には、「プレスローラの印圧長さを印刷用紙の送り方向長さに応じて変化させることになるため、ただ単に原紙切断長さを短くした場合のように、プレスローラは印刷用紙や原紙の存在しない部分でも印刷ドラム外周に押さえつけられてしまい、スクリーンを通過したインクによってプレスローラが汚れ、」(上記イ.f.B.参照。)と記載されており、該記載は、プレスローラの印圧長さを印刷用紙の送り方向長さに応じて変化させない製版印刷装置では、印刷用紙や原紙(製版済みの感熱孔版原紙)が存在しない場合、プレスローラの印圧時に、印刷ドラム内面に補充されたインクが、印刷ドラム表面を通過して、プレスローラが汚れてしまうことを示唆している。
また、刊行物2乃至5には、画像形成装置において、画像形成材料であるインクやトナーが記録用紙以外の部分に付着しないように、画像形成対象画像のうち、記録用紙のサイズに対応する範囲以外の画像部分を記録しないように記録部を制御することが記載されている。
してみると、プレスローラの印圧長さを印刷用の送り方向長さに応じて変化させない製版印刷装置において、プレスローラの汚れを防止するためには、プレスローラの印圧時には、製版済みの熱孔版原紙(マスター)のインクが通過する部分すなわち画像部分を、印刷用紙に対応する範囲以外の部分にまで及ばないようにすべく、上記製版印刷装置における画像形成対象画像である製版対象画像のうち、記録用紙である印刷用紙のサイズに対応する範囲以外の画像部分を熱孔版原紙(マスター)に製版しないように、記録部である製版部を制御することは当業者が容易に想到しうることである。
そして、そのように構成すれば、当然に、特許権者が、平成13年2月13日付意見書で主張する、「マスターを利用するものなので、縁なし画像を用紙に形成するにあたって、画像部分をカットした部分より下が依然としてマスターで覆われていてプレスローラに写る事態が生じ」ないという作用効果を奏するものである。
したがって、訂正発明1は、刊行物1乃至6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)訂正発明2乃至3について、
上記刊行物6には、給紙部に載置された用紙の用紙サイズ検知手段が用紙搬送方向の用紙の寸法を検知する手段とすることが記載されているから、訂正発明2は、上記訂正発明1と同様な理由で、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、上記刊行物7には、給紙部に載置された用紙の用紙サイズ検知手段が用紙搬送方向およびそれに直角方向の用紙の寸法を検知する手段とすることが記載されているから、これを、訂正発明3のように、刊行物6に記載された発明の用紙サイズ検知手段に代えて使用することも当業者が容易に想到し得ることであり、その作用効果も格別顕著でない。
したがって、訂正発明2は、刊行物1乃至6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、訂正発明3は、刊行物1乃至7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
よって、訂正発明1乃至3は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

エ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.特許異議の申し立てについて、

ア.本件発明
特許第2853875号の請求項1乃至3に係る発明(以下、本件発明1乃至3という。)は、特許請求の範囲1乃至3に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】製版部と印刷部とを有し、製版部において原稿のサイズ及び印刷倍率に応じて孔版用マスターに製版を行ない、製版されたマスターを印刷部のドラムに巻回してドラムを回転させ、所定の位置でこれに接して給紙部より用紙を搬送し、該用紙をプレスローラにより上記ドラムに巻回されたマスターに圧接させ、ドラム内面に補充されたインキをドラム表面よりマスターに供給し、上記用紙に印刷を行なう一体型孔版印刷機の上記プレスローラの汚れ防止装置において、
上記給紙部に、該給紙部に載置された用紙のサイズを検知する手段を設け、
上記マスターの、上記検知手段により検知された用紙サイズに対応する範囲以外の部分には製版が行なわれないように制御するようにしたことを特徴とするプレスローラ汚れ防止装置。
【請求項2】上記の用紙サイズ検知手段が用紙搬送方向の用紙の寸法を検知する手段であることを特徴とする請求項1に記載のプレスローラ汚れ防止装置。
【請求項3】上記の用紙サイズ検知手段が用紙搬送方向及びそれに直角方向の用紙の寸法を検知する手段であることを特徴とする請求項1に記載のプレスローラ汚れ防止装置。」

イ.引用刊行物
当審が平成12年9月11日付で通知した取消理由に引用した刊行物1乃至7(=上記刊行物1乃至7=甲第1乃至7号証)には、それぞれ、上記のとおりのことが記載されている。

ウ.対比・判断

(1)本件発明1について、
本件発明1と刊行物6に記載された発明とを比較する。
a.刊行物6に記載された発明の「製版部」、「印刷ドラム部」、「印刷ドラム」、「感熱孔版原紙」、「印刷用紙」、「給紙部」、「プレスローラ」、および「孔版式製版印刷装置」は、それぞれ、本件発明1の「製版部」、「印刷部」、「ドラム」、「孔版用マスター」、「用紙」、「給紙部」、「プレスローラ」および「一体型孔版印刷機」に相当している。
b.刊行物6に記載された発明の「給紙台21」は、給紙部の一構成要素であるから、給紙部ともいえる。
c.刊行物6に記載された発明における原紙の切断長さは、原稿サイズに、所定長さの先端余白とサイズごとに若干異なる後端余白を加えた長さでもあることから、刊行物に記載された発明孔版式製版印刷装置は、製版部において、感熱孔版原紙(マスター)に原稿サイズに応じて製版するものといえる。
d.刊行物6に記載された発明の「孔版式製版印刷装置」は、上記イ.f.B.の記載からみて、プレスローラの汚れを防止する機能を発揮するものであるから、プレスローラの汚れ防止装置といえる。
以上のことから、次の一致点と相違点がある。
[一致点]
製版部と印刷部とを有し、製版部において孔版用マスターに製版を行ない、製版されたマスターを印刷部のドラムに巻回してドラムを回転させ、所定の位置でこれに接して給紙部より用紙を搬送し、該用紙をプレスローラにより上記ドラムに巻回されたマスターに圧接させ、ドラム内面に補充されたインキをドラム表面よりマスターに供給し、上記用紙に印刷を行なう一体型孔版印刷機の上記プレスローラの汚れ防止装置において、
上記給紙部に、該給紙部に載置された用紙のサイズを検知する手段を設けたプレスローラ汚れ防止装置。
[相違点]
A.製版部における孔版用マスターに製版を行う際に、本件発明1では、原稿のサイズ及び印刷倍率に応じているのに対して、刊行物6に記載された発明では、原稿のサイズに応じている点。
B.本件発明1では、マスターの、用紙サイズに対応する範囲以外の部分には製版しないように制御するものであるのに対して、刊行物6に記載された発明では、印刷用紙のサイズに応じて原紙を切断し、印圧長さを設定する点。
[相違点の検討]
相違点Aについて、
刊行物1に記載された複写印刷装置(製版印刷装置)では、記録用紙(用紙)に印刷される画像は、版用紙に作成される像に対応するものであるから、刊行物1に記載された発明における製版のための作像倍率とは、印刷倍率ともいえるから、刊行物1には、製版部と印刷部とを有した印刷機において、製版対象画像を、原稿サイズ及び印刷倍率に応じたものとすることが記載されている。
したがって、刊行物6に記載された発明に、同一技術分野の刊行物1に記載の製版対象画像を原稿サイズ及び印刷倍率に応じたものとすることを採用することは、当業者が容易に想到できる。
相違点Bについて、
刊行物6には、「プレスローラの印圧長さを印刷用紙の送り方向長さに応じて変化させることになるため、ただ単に原紙切断長さを短くした場合のように、プレスローラは印刷用紙や原紙の存在しない部分でも印刷ドラム外周に押さえつけられてしまい、スクリーンを通過したインクによってプレスローラが汚れ、」(上記イ.f.B.参照。)と記載されており、該記載は、プレスローラの印圧長さを印刷用紙の送り方向長さに応じて変化させない製版印刷装置では、印刷用紙や原紙(製版済みの感熱孔版原紙)が存在しない場合、プレスローラの印圧時に、印刷ドラム内面に補充されたインクが、印刷ドラム表面を通過して、プレスローラが汚れてしまうことを示唆している。
してみると、プレスローラの印圧長さを印刷用の送り方向長さに応じて変化させない製版印刷装置において、プレスローラの汚れを防止するためには、プレスローラの印圧時には、製版済みの熱孔版原紙(マスター)のインクが通過する部分を、印刷用紙に対応する範囲以外の部分にまで及ばないようにすべく、熱孔版原紙(マスター)の、印刷用紙のサイズに対応する範囲以外の部分には製版が行なわれないように制御することは、当業者が容易に想到しうることである。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載された発明と刊行物6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2乃至3について、
上記刊行物6には、給紙部に載置された用紙の用紙サイズ検知手段が用紙搬送方向の用紙の寸法を検知する手段とすることが記載されているから、本件発明2は、上記本件発明1と同様な理由で、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、上記刊行物7には、給紙部に載置された用紙の用紙サイズ検知手段が用紙搬送方向およびそれに直角方向の用紙の寸法を検知する手段とすることが記載されているから、これを、本件発明3のように、刊行物6に記載された発明の用紙サイズ検知手段に代えて使用することも当業者が容易に想到し得ることであり、その作用効果も格別顕著でない。
したがって、本件発明2は、刊行物1に記載された発明と刊行物6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができ、また、本件発明3は、刊行物1に記載された発明、刊行物6に記載された発明および刊行物7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1乃至3に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件請求項1乃至3に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-04-18 
出願番号 特願平1-332850
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (B41L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 南 宏輔  
特許庁審判長 砂川 克
特許庁審判官 六車 江一
番場 得造
登録日 1998-11-20 
登録番号 特許第2853875号(P2853875)
権利者 株式会社リコー
発明の名称 孔版印刷機のプレスローラ汚れ防止装置  
代理人 伊藤 武久  
代理人 藤田 アキラ  
代理人 村田 実  

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