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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04F
管理番号 1041435
異議申立番号 異議2000-72338  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-11-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-05 
確定日 2001-07-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第2987469号「階段室の構造」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2987469号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕本件発明
本件特許第2987469号の請求項1に係る発明(平成3年4月8日出願、平成11年10月8日設定登録)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1の記載からみて、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】階段の幅方向両側に位置する壁を乾式工法による耐火構造壁
とし、階段の長さ方向両側に位置する壁と該壁に支持された踊り場をコンクリートの現場打ちによるRC造とし、鋼製ささら桁と該鋼製ささら桁によって両側部を支持された鋼製段床とから成るS造階段を前記踊り場間に架設してあることを特徴とする階段室の構造。」
なお、特許請求の範囲の請求項1の「鋼製ささら桁と該鋼製ささら桁によって両側部を支持された鋼製段床とか成るS造階段」における「とか成る」の記載は、「とから成る」の誤記と認められるので、上記のとおり認定した。

〔2〕特許異議の申立ての理由
特許異議申立人山本典弘は、甲第1号証〜甲第3号証を提出するとともに、証人尋問を申し出て、乾式の耐火構造壁とする技術は本件特許の出願前公然知られた技術(甲第1号証-1〜4)であり、鋼階段材(但し踏板はファイバーコンクリート)を現場打ちコンクリート踊り場に架設した階段は、本件特許の出願前公然実施をされた発明(甲第2号証-1〜7、証人)であり、また鋼製階段ユニットをコンクリート踊り場に固定する構造は、本件特許の出願前公然知られた発明(甲第3号証)であり、本件請求項1に係る発明は、上記の本件特許の出願前公然知られた技術(甲第1号証-1〜4)と、公然実施をされた発明(甲第2号証-1〜7、証人)又は公然知られた発明(甲第3号証)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1に係る発明についての特許は取り消されるべきである旨主張している。

甲第1号証-1:鹿島建設技術研究所『スチールファイバーコンクリート (SFRC)間仕切壁(スタッドタイプ)』の表紙の写し
甲第1号証-2:同じく3頁の写し
甲第1号証-3:同じく16頁の写し
甲第1号証-4:同じく18頁の写し
甲第2号証-1:株式会社横森製作所の『SFRC階段』のカタログの表 紙の写し
甲第2号証-2:同じく34頁の写し
甲第2号証-3:同じく裏表紙の写し
甲第2号証-4:社団法人民事法情報センター発行の『住宅表示地番対照 住宅地図(練馬区)』の第156頁及び表紙
甲第2号証-5:「メゾンドール野方」の1階の登記簿謄本
甲第2号証-6:「メゾンドール野方」の公図
甲第2号証-7:「メゾンドール野方」の内部写真
甲第3号証:特開昭53-36930号公報
証人:小笠原 文太郎
門井 由典

〔3〕特許異議の申立てについての判断
1.甲各号証の内容
(1)甲第1号証
a 表紙(甲第1号証-1)に、「昭和54年9月14日」の記載がある。
b 3頁(甲第1号証-2)には、「スチールファイバーコンクリート(SFRC)間仕切壁(スタッドタイプ)」について、「SFRCスタッドタイプ間仕切壁は、共同住宅の界壁、……等に適した”軽量で安く,耐火性,遮音性,施工性に優れた間仕切壁”です。」、「乾式工法システムです。」の記載がある。
c 18頁(甲第1号証-4)の「表-9 SFRC間仕切壁の主な施工実績」と題する表に、現場名として、「サンシティ G棟」が、種類として、「階段室」が記載されている。

(2)甲第2号証
a 表紙(甲第2号証-1)には、「SFRC階段」の表題がある。
b 34頁(甲第2号証-2)には、「メゾンドール野方 其の1」の「仕上り立面図」、「仕上り平面図」が示されている。
c 甲第2号証-7として、「メゾンドール野方」のA:外観、B:入口、C:フロア側踊り場裏面、D:中間踊り場裏面の写真が提出されている。

(3)甲第3号証
同号証には、特許請求の範囲、1頁右下欄18行〜2頁左上欄4行、2頁右上欄3〜9行の記載、及び第1図〜第4図の記載からみて、「階段の長さ方向両側に位置する壁に支持された踊り場間に、アングル状桁材と、該桁材に溶接等により固定された踏板とからなる階段ユニットを架設した階段室の構造」が記載されていると認められる。

2.対比・判断
(1)本件請求項1に係る発明は、従来の、四周壁、踊り場、段床の全てがコンクリートの現場打ちによるRC造建物の階段室は、「階段室の施工にあたっては、狭い空間の中で型枠、鉄筋及びコンクリート打設の作業をしなければならない。…段床が傾斜しているため、段床の型枠の組立及び支保工が複雑である。…型枠等の仮設材が多く必要である。……の理由により階段室がRC造建物を施工する際の工程上のネックとなる。」(本件特許の明細書段落【0003】)との認識のもとに、「施工の省力化を可能にした、しかも非常に低コストで施工できる階段室の構造を提供すること」(同段落【0005】)を目的として、請求項1に記載された構成としたものであり、そのことにより、明細書記載の「階段室の四周壁のうち、階段の長さ方向両側に位置するRC造の壁が、構造部材としての耐力を負担する。」(同段落【0007】)、「階段室の幅方向両側の壁は、踊り場や段床を支持していないので、構造部材として性能を要求されない。従って、この壁として、例えば、ALC版、軽鉄下地と珪酸カルシウム板の組合せといった乾式工法による耐火構造壁を採用できるのであり、施工性が良い」(同段落【0008】)、「踊り場もRC造としたので、S造階段の形状がシンプルなものとなり、S造階段を安価なものとすることができる。」(同段落【0009】)との作用効果を奏するものである。

(2)本件請求項1に係る発明と、「メゾンドール野方」において本件特許の出願前公然実施をされたとする発明とを対比する。
発行日の記載がなく、本件特許の出願前に頒布された刊行物とは認められない、甲第2号証-1〜3のカタログには、上記のように「SFRC階段」の記載があるのみで、「メゾンドール野方」の「仕上り立面図」及び「仕上り平面図」からは、踊り場が階段の長さ方向両側に位置する壁と一体に造られ、踊り場間に階段が架設してある階段室の構造が推測できるにすぎず、階段が何の材料で造られているのか、階段室の周囲の壁がどのように造られているのかが明らかではない。そして、甲第2号証-7の「メゾンドール野方」を撮した写真をみても、階段が何の材料で造られているのか、階段室の周囲の壁がどのように造られているのかは明らかではない。また、上記「メゾンドール野方」の建設について申し出られている証人尋問において証明しようとしている事項を具体的に明らかにするよう、異議申立人に対し、平成12年11月9日付けで審尋を行ったところ、平成13年1月22日付けの回答書において、二人の証人は共に、「メゾンドール野方」の階段室の踊り場と周囲の壁については、それらが現場打ち鉄筋コンクリート構造であることを証言しようとしていることが明らかとなった。
そうすると、本件特許の出願前公然実施をされたとする発明は、本件請求項1に係る発明の「幅方向両側に位置する壁を乾式工法による耐火構造壁とし、階段の長さ方向両側に位置する壁と該壁に支持された踊り場をコンクリートの現場打ちによるRC造とし」との構成を備えていないものと認められ、少なくともこの点で、本件請求項1に係る発明とは構成が相違するものである。

(3)次に、本件請求項1に係る発明と甲第3号証記載の発明とを対比すると、甲第3号証記載の発明の「アングル状桁材と、該桁材に溶接等により固定された踏板とからなる階段ユニット」は、本件請求項1に係る発明の「鋼製ささら桁と該鋼製ささら桁によって両側部を支持された鋼製段床とから成るS造階段」に相当するから、両者は、階段の長さ方向両側に位置する壁に支持された踊り場間に、鋼製ささら桁と該鋼製ささら桁によって両側部を支持された鋼製段床とから成るS造階段を架設した階段室の構造、である点で共通するものの、甲第3号証には、本件請求項1に係る発明の「幅方向両側に位置する壁を乾式工法による耐火構造壁とし、階段の長さ方向両側に位置する壁と該壁に支持された踊り場をコンクリートの現場打ちによるRC造とし」との構成については記載されておらず、甲第3号証記載の発明は、この点で本件請求項1に係る発明とは構成が相違するものである。

(4)そこで、上記本件特許の出願前公然実施をされたとする発明又は甲第3号証記載の発明と、本件請求項1に係る発明との上記相違点について検討すると、甲第1号証には、上記のように、スチールファイバーコンクリート(SFRC)間仕切壁が、軽量で安く、耐火性、施工性に優れ、乾式工法システムに用いられることが記載され、そのSFRC間仕切壁が、「サンシティ G棟」の「階段室」において施工されたことを窺わせる記載があるものの、階段室のどの面の壁に施工されたのかは不明であり、上記相違点における本件請求項1に係る発明の「幅方向両側に位置する壁を乾式工法による耐火構造壁とし、階段の長さ方向両側に位置する壁と該壁に支持された踊り場をコンクリートの現場打ちによるRC造とし」との構成については、記載されていないし、示唆もされていない。
そして、本件請求項1に係る発明は、この相違点の構成を備えることにより上記の明細書記載の作用効果を奏するものである。

なお、異議申立人は、本件特許の出願前公然実施をされたとする発明の構成に関して、証人尋問を申し出ているが、本件特許の出願前公然実施をされたとする発明は、上記(2)で述べたように、上記相違点の構成を備えていないので、証人尋問を行う必要を認めない。

(5)したがって、本件請求項1に係る発明は、本件特許の出願前公然実施をされた発明又は甲第3号証記載の発明、及び甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-06-15 
出願番号 特願平3-103914
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 公子
鈴木 憲子
登録日 1999-10-08 
登録番号 特許第2987469号(P2987469)
権利者 株式会社竹中工務店
発明の名称 階段室の構造  
代理人 涌井 謙一  
代理人 鈴木 正次  

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