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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G06F
管理番号 1041509
異議申立番号 異議1999-73770  
総通号数 20 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-05 
確定日 2001-06-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第2879547号「電子メールシステムおよび電子メールの処理方法」の請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2879547号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由
1.手続の経緯
本件特許第2879547号の請求項1〜請求項7に係る発明は、平成8年8月26日に特許出願され、平成11年1月29日にその特許権の設定登録がなされ、その後、中島光子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成12年5月16日に特許異議意見書が提出され、平成13年4月9日に特許権者より上申書が提出されたものである。

2.本件発明
特許第2879547号の請求項1〜請求項7に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1〜請求項7に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】 ハイパテキストによって構成される画面情報を表示するとともに、その画面情報に対応する情報を入力する表示入力手段と、
前記表示入力手段によって入力された情報に応じて画面情報を生成する第一の生成手段と、
前記表示入力手段によって入力された情報に基づき、ハイパテキストによって構成される電子メールを生成する第二の生成手段と、
ネットワークを介した電子メールの転送をハイパテキスト転送プロトコルを用いて行う転送手段とを備え、
前記転送手段は、前記第二の生成手段により生成された電子メールを前記ネットワークへ送信するとともに、前記ネットワークから受信した電子メールを前記第一の生成手段へ送ることを特徴とする電子メールシステム。
【請求項2】 前記表示入力手段は、受信された電子メールに添付されたデータから動画を含む画像および/またはサウンドを再生することを特徴とする請求項1に記載された電子メールシステム。
【請求項3】 前記第一の生成手段は、受信した電子メールを保存する記憶手段を備え、前記表示入力手段から電子メールのリードを指示された場合、指示された電子メールを前記記憶手段から読出し、読出した電子メールに基づき画面情報を生成することを特徴とする請求項1に記載された電子メールシステム。
【請求項4】 前記第一の生成手段は、前記表示入力手段へ送る画面情報の少なくとも一つにパスワードを埋め込み、以降、前記表示入力手段から送られてくる情報に前記パスワードまたは前記パスワードに関連する文字列が含まれているか否かを検査することを特徴とする請求項1に記載された電子メールシステム。
【請求項5】 前記第一の生成手段は、ユーザを管理するための記憶手段を備え、前記表示入力手段からの指示に基づき、前記記憶手段から抽出したユーザのリストに基づく画面情報を生成することを特徴とする請求項1に記載された電子メールシステム。
【請求項6】 前記第二の生成手段は、電子メールに添付するファイルが指示された場合、そのファイルへのリンク情報を、生成する電子メールに添付することを特徴とする請求項1に記載された電子メールシステム。
【請求項7】 ハイパテキストによって構成される画面情報を表示する表示ステップと、
前記表示ステップで表示した画面情報に対応する情報が入力される入力ステップと、
前記表示入力ステップで入力された情報に応じて画面情報を生成する第一の生成ステップと、
前記入力ステップで入力された情報に基づき、ハイパテキストによって構成される電子メールを生成する第二の生成ステップと、
ハイパテキスト転送プロトコルを用いて、前記第二の生成ステップで生成した電子メールをネットワークへ送信し、前記ネットワークから電子メールを受信する転送ステップと、前記転送ステップで受信した電子メールに基づく画面情報を生成する第三の生成ステップとを有することを特徴とする電子メールの処理方法。」

3.申立ての理由の概要
特許異議申立人中島光子は、甲第1号証(日経オープンシステム、no.37 1996年4月号、1996-4-15 p.326-327)、甲第2号証(日経ネットナビ 1996年7月29日)、甲第3号証(日経コミュニケーション別冊「最新インターネットテクノロジ」(1996-4-25) 日経BP社 p.186-201)、甲第4号証(日経オープンシステム、no.40 1996年7月号、1996-7-15 p.299-314 )、及び、甲第5号証(日経データプロ「WWW-データベース連携システム構築法」(1996-3-4) 日経BP社 p.92-99)を提出して、本件請求項1〜7に係る発明は甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件請求項1〜7に係る発明の特許は特許法第113条第1項第2号の規定により取り消すべきものである旨主張する。

4.甲各号証
上記甲各号証には、それぞれ次の事項が記載ないし開示されている。
(1) 「メール」と書かれた羽の生えた封書および「WWWブラウザ」が、「WWWサーバー」を介して線で結ばれていること。(第326頁の図を参照。)
(2) WWWサーバーとDBMSなどとの連携を取る場合、CGI(Common Gateway Interface)を利用すること。(第327頁左欄第20〜23行目を参照。)
(1) WWWブラウザからメールを利用すること。
(1) あらゆるアプリケーションをWWWブラウザ上から利用できるようになること。(第190頁左欄第4〜6行目を参照。)
(2) WWWブラウザからRDBやホストにアクセスする仕組みについて、WWWサーバーとデータベースなどを連携させる方法では、WWWサーバーに搭載したゲートウェイ・ソフトがRDBやホストへのアクセスを代行してくれる。このため、クライアント側にはWWWブラウザ機能以外は必要ないこと。(第193頁中欄第16行目〜同頁右欄第11行目を参照。)
(3) 電子メールをインターネット・メールと相互接続する場合、SMTP、POP、独自プロトコルが用いられること。電子メールの統合の仕方として融合型とWWW応用型とがあること。(第197頁左欄〜同頁右欄、及び図7を参照。)
(4) WWWサーバーとRDBなどを連携させる場合、ゲートウェイ・ソフトを稼働させる。このWWWサーバーとゲートウェイ・ソフトをつなぐAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)として標準的なのがCGI(common gateway interface)であること。(第197頁右欄第18行目〜第198頁左欄第7行目を参照。)
(5) WWWブラウザ上でユーザ名とパスワードを入力すること。(第191頁の写真2を参照。)
(6) ジャストシステムの Just Office Serverも WWWサーバーを利用したグループウェア・ソフトである(写真2)こと。(第191頁中欄第1行目〜同頁右欄第3行目を参照。)
(7) 情報の書込みを実現するために、WWWのプロトコルであるHTTP(hyper text transfer protocol)を独自に拡張したこと。(第191頁右欄第3〜6行目を参照。)
(1) イントラネットのサービス、およびその連携の特徴が第307頁表1に記載されている。そのうち、第5欄に「メール→WWW(特定のアドレスに送られたメールをHTML化してWWWに掲載する)」、その適用例・応用例として「電子掲示板への書込み、社内広報など」、その特徴として「WWWの情報発信に手間が掛かるという問題を解決。HTMLを書かなくてもよい」という連携が記載されている。また、前記表1の第8欄には「WWW→メール(アクセスした人からCGIによってアンケートや申し込みを受け付け、その結果をメールで管理者に配信する)」、その応用例として「社内セミナーの受け付けなど」、その特徴として「仕掛けに手間が掛かるが、一度作ってしまえば作り手側も楽で、ユーザー側(WWWをアクセスする側)にとっても親切」という連携が記載されている。
(2) 第307頁表1の最下欄に、「WWW→データベース→WWW (CGIによりデータベースと連携)」、その応用例として「社内情報の検索、メールアドレス検索、社員データベース検索など」、その特徴として「仕掛けに手間が掛かるが、掲示板アクセスと同一のインタフェースでデータベースをアクセスできる。」と記載されている。
(3) 第309頁表2の最下欄に、メールクライアントのMIMEファイル添付に関し、「Netscape Mail」の欄に「マルチパート対応〔送信パート数〕上限なし、URL指定も可能」と記載されている。
(4) 同頁同欄に、「〔受信データを開く〕GIFなどNetscapeブラウザがインライン表示できるデータは、メール画面内でもインライン表示可能。その他添付ファイルの取り扱いはNetscapeブラウザのヘルパー・アプリの設定に準拠」と記載されている。
(5) 第312頁左欄下より第5行目〜同頁右欄第23行目に、「全社メールがスタートすると、情報交換が活発になり大量のメールが利用者に届くようになった。通達のための同報メールは部・事業部・・・などを対象に一方向に送られるが、大量のお知らせメールのために、実際の業務に関わる重要なメールが埋もれてしまうという問題が表面化してきた。そこで、通知、通達は内容をWWWサーバーに時系列順に蓄積していくことで、同報メール処理の負担を軽減できるようにした。
そのためにMHonARCと呼ばれるフリーウェアを導入した。・・・採用のポイントはプレーン・テキストによるメールをWWWサーバーに蓄積するツールであり、情報発信者がHTMLを習得したり、WWWサーバーにログインすることなくコンテンツを作成できる。・・・
情報を掲載したい人が内容を所定アドレスに送ると、ツールが起動されて決められたWWWのページに表示される(写真4)。」と記載されている。
(1) 「WWWサーバーとブラウザの間でセッションIDをやりとりするためには、HTTPのリクエストとレスポンスの中のどこかに情報を埋め込む必要がある。埋め込む方法は3種類ある。(i)サーバーからブラウザへはHTML文書に埋め込み、ブラウザからはURLと一緒に送る方法、(ii)サーバーからブラウザへはHTML文書に埋め込み、ブラウザからはURLとは別に送る方法、(iii)ブラウザ、サーバーのいずれからもHTTPヘッダーの中に埋め込む方法である。」(第94頁右欄第11行目〜第95頁左欄第1行目を参照。)

5.対比・判断
【請求項1に係る発明について】
請求項1に係る発明と各甲号証に記載されたものとを対比する。
甲第1号証はWWWを社内で文書情報の共有等に利用するイントラネット技術に関するものである。甲第1号証の記載事項(1)は、メールおよびWWWブラウザがWWWサーバーを介して線で結ばれていることを示すものであるが、WWWサーバーに接続されたWWWブラウザがWWWサーバーに接続されたメールをどのように扱うかは何ら開示されていない。また、甲第1号証の第326頁左欄には、インターネット・メールを社内利用する場合もあると記載されているが、これは、インターネット・メールを単に社内用のメールシステムとして利用する場合があることを示しているに過ぎず、請求項1に係る発明のように電子メールの送受信をハイパテキスト転送プロトコルを用いて行うことを開示するものではない。甲第1号証の記載事項(2)は、WWWサーバーとDBMS等とのインターフェースとしてCGIが利用されることを示しているに過ぎず、このCGIは、画面情報やデータを生成したり、生成したデータをネットワークを介して転送するものではない。結局、甲第1号証には、請求項1に係る発明における「ネットワークを介した電子メールの転送をハイパテキスト転送プロトコルを用いて行う転送手段」は、記載もしくは示唆されていない。
甲第2号証に記載のものは、WWWブラウザからメールを利用するものであり、WWWブラウザから電子メールを受信することは示されているとしてもWWWブラウザから電子メールを送信することは何ら開示されていない。つまり、請求項1に係る発明のようにWWWブラウザから電子メールを送受信するものではない。
甲第3号証に記載のものは、企業内で使用するグループウェアのユーザインターフェースをWWWブラウザのユーザインターフェースに統合することに関するものである。甲第3号証の記載事項(1)に関し、同号証の記載事項(2)はデータベースにアクセスする場合のことであって、請求項1に係る発明のようなハイパテキストプロトコルを用いて処理される電子メールに関するものではない。甲第3号証の記載事項(3)は、同号証の第197頁図7を参照すると、電子メールの統合方法としての融合型はグループウェアのクライアントソフトにWWWブラウザの機能を組み込んだものであり、グループウェアの機能を用いて電子メールを処理するものに過ぎず、また、WWW応用型はWWWブラウザに追加されたPOP機能を用いて電子メールを処理するものである。ここで、電子メール送受信プロトコルは、融合型においてはLAN用の独自のプロトコルが、WWW応用型においてはSMTP/POPのプロトコルがそれぞれ使用されており、いずれも請求項1に係る発明のようなハイパーテキスト転送プロトコルではない。甲第3号証の記載事項(4)〜(7)は、WWWサーバーを利用したグループウェアであるJust Office Serverの単なる説明に過ぎず、請求項1に係る発明のようなハイパテキストプロトコルを用いて処理される電子メールに関するものではない。
甲第4号証の記載事項(1)は、メールで受信した文書をHTML化して電子掲示板や社内広報のWWWに記載すること、HTMLを利用して取得した情報を管理者あてにメールすることを示しているに過ぎず、請求項1に係る発明のような電子メールシステムを開示するものではない。言い換えると、WWWを利用した電子掲示板、社内広報及び社内セミナの受け付けなどは通常公開性の強いアプリケーションであり、個人間の通信アプリケーションである電子メールとは異なるものである。
甲第1号証〜甲第4号証に記載されたものを組み合わせても、請求項1に係る発明における電子メールの送受信をハイパテキスト転送プロトコルを用いて行うことは導出されない。
したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

【請求項2に係る発明について】
請求項2に係る発明は請求項1に係る発明を前提とするものであるので、請求項2において新たに特定された事項について検討する。甲第4号証の記載事項(4)は、Netscape MailがGIFデータの画像をインライン表示することができ、その他の添付ファイルはNetscapeブラウザのヘルパアプリの設定に準拠して取り扱うことを示すものであるが、請求項2に係る発明のように(ヘルパアプリの設定に頼ることなく)表示入力手段自体が受信された電子メールに添付されたデータから、動画を含む画像および/またはサウンドを再生するものではない。
したがって、請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

【請求項3に係る発明について】
請求項3に係る発明は請求項1に係る発明を前提とするものであるので、請求項3において新たに特定された事項について検討する。甲第4号証の記載事項(5)は、同報メールの代わりにメールの内容をWWWに掲載する電子掲示板についてのものであり、メールを蓄積することは示されているものの、請求項3に係る発明における第一の生成手段に関し、表示入力手段から電子メールのリードを指示された場合、指示された電子メールを(受信した電子メールを保存する)記憶手段から読出し、読出した電子メールに基づき画面情報を生成することは何ら開示されていない。
したがって、請求項3に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

【請求項4に係る発明について】
請求項4に係る発明は請求項1に係る発明を前提とするものであるので、請求項4において新たに特定された事項について検討する。甲第5号証の記載事項(1)は、WWWのセッションの維持のためにセッションIDをHTML文書に組み込むことが示されており、セッションの開始時にはパスワードによって認証が行われることは当然であるとしても、甲第5号証はデータベースに関するシステムについてのものであって、請求項4に係る発明のような電子メールシステムのユーザを認証するためのものではない。
したがって、請求項4に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

【請求項5に係る発明について】
請求項5に係る発明は請求項1に係る発明を前提とするものであるので、請求項5において新たに特定された事項について検討する。甲第4号証の記載事項(2)は、WWWの環境で社内情報の検索、メールアドレスの検索、社員データベース検索を行うことが示されているが、このデータベースは請求項5に係る発明のような電子メールシステムにおけるユーザを管理するためのものではなく、上記記載事項(2)は請求項5に係る発明における第一の生成手段に関し、表示入力手段からの指示に基づき、(ユーザを管理するための)記憶手段から抽出したユーザのリストに基づく画面情報を生成することを何ら開示するものではない。
したがって、請求項5に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

【請求項6に係る発明について】
請求項6に係る発明は請求項1に係る発明を前提とするものであるので、請求項6において新たに特定された事項について検討する。甲第4号証の記載事項(3)は、添付するファイルとしてURL(リンク情報)が指定可能であることを示すものであるが、請求項6に係る発明のように添付するファイルが指示されるとそのファイルへのリンク情報を電子メールに添付するものではない。
したがって、請求項6に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

【請求項7に係る発明について】
請求項7に係る発明は請求項1に係る発明において「手段」に代えて「ステップ」としたものに「転送ステップで受信した電子メールに基づく画面情報を生成する第三の生成ステップ」を付加したものであり、「第三のステップ」を除いた事項は請求項1に係る発明と実質的に同一であるから、請求項1に係る発明が甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない以上、請求項7に係る発明は甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない。

7.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1〜請求項7に係る発明の特許を取り消すことができない。
また、他に請求項1〜請求項7に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-05-23 
出願番号 特願平8-223740
審決分類 P 1 651・ 121- Y (G06F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 吉村 宅衛
今井 義男
登録日 1999-01-29 
登録番号 特許第2879547号(P2879547)
権利者 富士ソフトエービーシ株式会社 中村 尚五
発明の名称 電子メールシステムおよび電子メールの処理方法  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  
代理人 大塚 康徳  
代理人 西脇 民雄  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  

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