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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B29C |
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管理番号 | 1042602 |
審判番号 | 不服2000-8749 |
総通号数 | 21 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-06-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-05-10 |
確定日 | 2001-08-08 |
事件の表示 | 平成 2年特許願第152701号「ハロゲン化ポリカーボネート成形品の製造法」拒絶査定に対する審判事件〔平成 4年 6月29日出願公開、特開平 4-182110、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成2年6月13日の出願であって、原審において平成11年5月27日付け拒絶理由通知に記載した理由1により、平成12年3月29日付けで拒絶査定されたものである。 2.本願発明 本願発明は、平成9年6月10日付け、平成11年8月12日付け及び平成12年6月7日付けの各手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 【請求項1】ハロゲン化ポリカーボネート樹脂又はその組成物のペレットを用いて射出成形によりポリカーボネート成形品を製造する方法において、射出成形機として内周面を下記合金成分(1)、(2)又は(3)からなる耐食、耐摩耗性合金で形成してなるシリンダーと、該射出成形機のスクリュー本体が、鋼に硬質クロームメッキまたは硬質ニッケルメッキしてなる材質からなり、逆流防止リング及び該リングに接触する部位並びにスクリュー先端部がSUS420、SUS440、ハステロイC又は下記合金成分(4)からなる鋼材のいずれかの材質を使用してなる、射出成形機を用いることを特徴とするハロゲン化ポリカーボネート成形品の製造法。 合金成分(1); C : 0.5〜 1.5 重量% Si: 1.0〜 2.0 重量% B : 0.5〜 2.5 重量% Ni:10.0〜20.0 重量% Cr:20.0〜30.0 重量% W :10.0〜20.0 重量% Cu: 0.5〜 2.0 重量% 残部:Co及び不可避不純物. 合金成分(2); Si: 0.2〜 4.0 重量% Mn: 0.l〜 2.0 重量% Cr: 5.0〜15.0 重量% B : 2.0〜 4.0 重量% Fe: 0.0〜 1.0 重量% Ni: 0.0〜 2.0 重量% 残部:Co及び不可避不純物. 合金成分(3); Si: 2.0〜10.0 重量% Mn: 0.2〜 2.0 重量% Cr: 5.0〜10.0 重量% Co: 5.0〜40.0 重量% B : 2.0〜 4.0 重量% Fe: 0.0〜10.0 重量% 残部:Ni及び不可避不純物. 合金成分(4); C : 0.5〜 1.5 重量% Cr:l0.0〜20.0 重量% Mo: 1.5〜 2.5 重量% V : 0.5〜 1.5 重量% 残部:Fe及び不可避不純物. 【請求項2】該ペレット中のハロゲンが、Brの場合0.05〜20重量%又はClの場合0.01〜15重量%の範囲である請求項1記載のハロゲン化ポリカーボネート成形品の製造法。 【請求項3】ポリカーボネート製の射出成形品が、難燃用、光学用又は医療用製品である請求項1記載のハロゲン化ポリカーボネート成形品の製造法。 (以下、上記請求項1〜3に係る発明を、順次本願発明1、本願発明2などという) 3.引用文献記載の発明 これに対して、原審で平成11年5月27日付けで通知した拒絶理由で引用した引用文献1及び引用文献2には、次の記載が認められる。 引用文献1:特開平1-192528号公報 a.「ポリカーボネート樹脂の素材粉末を用いて溶融押出する光学用ポリカーボネート成形材料の製造法において、該ポリカーボネート樹脂の素材粉末として0.5〜1.0μmのダスト数が1.0×104個/g以下であるを用い、押出機として内周面を下記合金成分(1)からなる耐食、耐摩耗性合金で形成してなるシリンダーとSKD鋼に硬質クロームメッキ或いはNiカニゼンメッキしてなる部材、SUS440又は下記合金成分(2)からなる鋼材をスクリュー部材として用いてなるベント付押出機を用いることを特徴とする0.5〜1.0μmのダスト数が1.0×104個/g以下である光学用ポリカーボネート成形材料の製造法。 合金成分(1); C : 0.5〜 1.5 重量% Si: 1.0〜 2.0 重量% B : 0.5〜 2.5 重量% Ni:10.0〜20.0 重量% Cr:20.0〜30.0 重量% W :10.0〜20.0 重量% Cu: 0.5〜 2.0 重量% 残部:Co及び不可避不純物. 合金成分(2); C : 0.5〜 1.5 重量% Cr:l0.0〜20.0 重量% Mo: 1.5〜 2.5 重量% V : 0.5〜 1.5 重量% Fe:75.0〜85.0 重量%.」(特許請求の範囲) b.「[発明の作用および効果] 以上、本発明の樹脂との接触部に特定の耐食、耐摩耗性合金を用いたシリンダーと特定のスクリューとを用いた押出機を使用する光学用ポリカーボネート樹脂成形材料の製造法によれば、押出工程に於けるダストの増加が大幅に低減されるものであることが明白である。このことから、ハイレベルの低ダスト化を要求される光学製品用の成形材料の製造に極めて有効な方法であることが理解されるものである。」(第4頁右下欄下から8行〜第5頁左上欄2行) 引用文献2:特開昭61-143547号公報 c.「(1)内周面を下記化学成分からなる耐食・耐摩耗性合金で形成してなることを特徴とするプラスチック成形装置用シリンダ。 C : 0.5〜 1.5 重量% Si: 1.0〜 2.0 重量% B : 0.5〜 2.5 重量% Ni:10.0〜20.0 重量% Cr:20.0〜30.0 重量% W :10.0〜20.0 重量% Cu: 0.5〜 2.0 重量% 残部:Co及び不可避不純物」(特許請求の範囲) d.「本発明はエポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート、ふっ素樹脂等のプラスチック材の射出成形或いは押出成形等に使用される、耐食性及び耐摩耗性の優れたシリンダに関するものである。(中略)特に難燃化を期してハロゲン含有化合物を配合した場合には大量のハロゲン含有ガスが発生する。その後シリンダ内部は常時腐食環境に曝らされることとなり、シリンダには高レベルの耐食性が要求される。」(第1頁左下欄下から3行〜同右下欄12行) e.「本発明は以上の様に構成されており、プラスチック材の射出、押出成形における苛酷な条件にも十分に耐える耐食性、耐摩耗性及び靱性を備えた複合シリンダを提供し得ることになった。」(第8頁左上欄12〜15行) 4.対比・判断 (1)本願発明1に対して 本願発明1(前者)と引用文献1記載の発明(後者)とを対比すると、下記ア〜ウの点で相違が認められる。 ア.前者は射出成形機を用いた成形品の製造法に係る発明であるに対して、後者は押出機を用いた成形材料の製造法に係る発明である点。 イ.前者は射出成形機のスクリュー本体の材質を「鋼に硬質クロームメッキまたは硬質ニッケルメッキしてなる材質」とし、逆流防止リング及び該リングに接触する部位並びにスクリュー先端部の材質を「SUS420、SUS440、ハステロイC又は上記合金成分(4)からなる鋼材のいずれかの材質」としている点。 (後者の押出機には「逆流防止リング、該リングに接触する部位」は存在しない) ウ.前者は材料が「ハロゲン化ポリカーボネート」であるのに対して、後者の材料は「ポリカーボネート」ある点。 そこで、上記各相違点について検討する。 (相違点アについて) 射出成形機と押出成形機とは、プラスチックの成形装置として技術的に共通するものが多くあると認められ、押出成型機の材質に係る技術を射出成形機に適用することは、当業者において特に困難なことであるとはいえない。 引用文献2には、プラスチック成形装置用シリンダの材質に係る発明において「プラスチック材の射出、押出成形における」との記載がなされていることからもそのようにいえる。(上記eの記載参照) (相違点イについて) 前者における、「スクリュー本体の材質」と「逆流防止リング及び該リングに接触する部位並びにスクリュー先端部の材質」とを別々に特定している点は、そのことによる効果が本件明細書の記載からは確認できないので、適宜なし得る程度のことであると認められる。 (相違点ウについて) 引用文献2には、樹脂材料として「難燃化を期してハロゲン含有化合物を配合したポリカーボネート」を用いるプラスチック成形装置用シリンダに係る発明が記載されているが、この「難燃化を期してハロゲン含有化合物を配合したポリカーボネート」と前者(本件発明1)の「ハロゲン化ポリカーボネート」とは明らかに異なる物質であるから、かかる記載をもって、直ちに前者の「ポリカーボネート」を「ハロゲン化ポリカーボネート」に換えることを当業者が容易に想到しうることであるとはいえない。 そして、本願発明1の「ハロゲン化ポリカーボネート成形品のヤケ、変色の低減が達成される」という効果は、引用文献1及び2の記載(b及びeの記載参照)からは、特に予測しがたいものであるといえる。 したがって、本願発明1は、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 (2)本願発明2及び3に対して 本願発明2及び3は、本願発明1を引用して、さらに技術的な限定を付加したものであるから、これらの発明は上記「本願発明1に対して」において記載した理由と同様の理由により、引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明1〜3は、前記引用文献1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえないから、本願発明1〜3が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした原審の判断は妥当なものではない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2001-07-25 |
出願番号 | 特願平2-152701 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B29C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 野村 康秀、中田 とし子、中村 浩 |
特許庁審判長 |
小林 正巳 |
特許庁審判官 |
喜納 稔 石井 克彦 |
発明の名称 | ハロゲン化ポリカーボネート成形品の製造法 |