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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H03F |
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管理番号 | 1042645 |
審判番号 | 審判1999-19384 |
総通号数 | 21 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-04-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-12-09 |
確定日 | 2001-07-23 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第291306号「マイクロ波高出力電力増幅器の設計方法」拒絶査定に対する審判事件[平成10年 4月10日出願公開、特開平10- 93364]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は平成8年9月10日の出願であって、平成10年9月17日付で拒絶理由が通知され、この通知に対して、平成10年11月19日付で意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成11年5月24日付で、「平成10年11月19日付でした手続補正(以下「第1補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではない」ことを理由とした最後の拒絶理由通知がなされ、この通知に対して、平成11年7月28日付で、再度意見書及び手続補正書が提出されたが、平成11年10月29日付で、平成11年7月28日付でした補正(以下「第2補正」という。)は、依然として、当社明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではない」ことを理由として補正の却下の決定が成されると共に、第1補正は「当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでない」ことを理由として拒絶査定がなされたものである。 2.補正却下の決定の当否 そこで、まず平成11年10月29日付補正の却下の決定の当否について検討する。 第2補正は、当初明細書の段落11を補正するものであるが、その記載中の 「大信号動作時のドレイン電流の最大スイング幅はIds(max)(正のVgに対する飽和電流、すなわち最大ドレイン電流)で決まる。一方、大信号動作時のドレイン電圧の最大スイング幅は図7のIds-Vd特性より求められ、該ドレイン電流のスイング幅を決定するものとして、ニー電圧(Vk)とブレイクダウン電圧(Vbr)がある。Vkはドレイン電流の立ち上がり特性、Vbrはドレイン電流の降伏(破壊)特性を示すものである。 本願発明に戻ると、図2におけるAやB点が上記ブレイクダウン電圧で、5,6に相当する電圧がニー電圧である。また、同図における6,7が上記Ids(max)になる。図2における、5,6,7の点を通る曲線は飽和曲線であって、ゲート電圧をいくら上げても動作点がこの曲線より上方に行くことはない。・・・ 図3に示される如く、あるいは図2を見ても分かるように最大出力の得られる負荷線は「最大ドレイン電流(Ids(max))のIds-Vd特性における飽和開始点(6)とドレイン電流が流れなくなるゲートバイアス(ピンチオフ電圧)時の最大ドレイン電圧(ブレークダウン電圧)点(A)とを結ぶ負荷線2」となることが明らかである・・・結局、上記ドレイン電流が流れなくなるゲートバイアス(ピンチオフ電圧)時の最大ドレイン電圧(ブレークダウン電圧)点(A)とI-V曲線のコーナー6を結ぶ負荷線が、最もダイナミックレンジも広く電力効率が最大となるのである。」によれば、負荷線は、最大ドレイン電流の飽和開始(ニー電圧)点とドレイン電流が流れなくなる最大ドレイン電圧(ブレークダウン電圧)点により、決定されることになるが、当初明細書には、「1、2、3」は負荷線、「4」はFET(半導体素子)の動作点(バイアス点)、「5,6,7」はFET(半導体素子)の最大電流(の飽和)点であり、動作点4とI-V曲線のコーナー6を結ぶ負荷線が最もダイナミックレンジも広く電力効率が最大となる旨の記載しか示されておらず、且つ、これに関連して図2を見ても、動作点4が予め決まっていることを前提とした負荷線2を開示するにとどまっているから、負荷線2が「ニー電圧点6とブレークダウン電圧点によって決定されること」は、当初明細書等に記載した事項の範囲内ということはできない。また、図7の補正についても、当初明細書等に記載されていない具体的数値の記載などがあるから、当初明細書等に記載した事項の範囲内ということはできない。 したがって、上記第2補正は、当初明細書等の範囲内での補正とは認められないので、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものであるから、原審において審査官のした補正の却下の決定は妥当なものである。 3.拒絶査定の当否 上記2.に記載したように、第2補正についての補正の却下は妥当なものであるので、次に、「第1補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内の補正とは認められない」ことを理由とした拒絶査定の当否について検討する。 第1補正は、当初明細書等の段落11を補正するものであるが、その記載中の 「第7図によってFETの大信号動作時のドレイン電流、ドレイン電圧の最大スイング幅は直流測定により求めることができる。図7に示すが如く、大信号動作時のドレイン電流の最大スイング幅はIds(max)(正のVgに対する飽和電流、すなわち最大ドレイン電流)で決まる。一方、大信号動作時のドレイン電圧の最大スイング幅は図8のIds-Vd特性より求められ、該ドレイン電流のスイング幅を決定するものとして、ニー電圧(Vk)とブレイクダウン電圧(Vbr)がある。Vkはドレイン電流の立ち上がり特性、Vbrはドレイン電流の降伏(破壊)特性を示すものである。 本願発明に戻ると、図2におけるAやB点が上記ブレイクダウン電圧で、5,6に相当する電圧がニー電圧である。また、同図における6,7が上記Ids(max)になる。最大出力電力は(ドレイン電圧×ドレイン電流)となるので、図2において負荷線を変えて上記最大出力電力を測定すると図3の如くなる。なお、この場合、バイアス点はドレイン電流が上記取り得るIds(max) の1/2の点でかつドレイン電圧が(Vbr+Vk )/2となるゲートバイアスとなる。(バイアス点を中間点に設定すれば電流にしろ、電圧にしろ上下に最大の振幅(ダイナミック・レンジ)を確保でるので、最大出力を得るためバイアス点を中間点に設定することは当業者に自明の事項である。) 図3に示される如く、あるいは図2を見ても分かるように最大出力の得られる負荷線は「最大ドレイン電流(Ids(max))のIds-Vd特性における飽和開始点(6)とドレイン電流が流れなくなるゲートバイアス(ピンチオフ電圧)時の最大ドレイン電圧(ブレークダウン電圧)点(A)とを結ぶ負荷線2」となることが明らかである。・・・結局、上記ドレイン電流が流れなくなるゲートバイアス(ピンチオフ電圧)時の最大ドレイン電圧(ブレークダウン電圧)点(A)とI-V曲線のコーナー6を結ぶ負荷線が、その中間の動作点4に対して最もダイナミックレンジも広く電力効率が最大となるのである。」によれば、負荷線は、最大ドレイン電流の飽和開始(ニー電圧)点とドレイン電流が流れなくなる最大ドレイン電圧(ブレークダウン電圧)点により、決定されることになるが、当初明細書には、「1、2、3」は負荷線、「4」はFET(半導体素子)の動作点(バイアス点)、「5,6,7」はFET(半導体素子)の最大電流(の飽和)点であり、動作点4とI-V曲線のコーナー6を結ぶ負荷線が最もダイナミックレンジも広く電力効率が最大となる旨の記載しか示されておらず、且つ、これに関連して図2を見ても、動作点4が予め決まっていることを前提とした負荷線2を開示するにとどまっているから、負荷線2が「ニー電圧点6とブレークダウン電圧点によって決定されること」は、当初明細書等に記載した事項の範囲内ということはできない。また、図6、8の補正についても、当初明細書等に記載されていない具体的数値の記載などがあるから、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内ということはできない。 したがって、「第1補正は、当初明細書等の範囲内での補正とは認められない」ことを理由とした、原審において審査官のした拒絶査定は妥当なものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、上記第1補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、本願は、同法第49条の規定により拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-04-26 |
結審通知日 | 2001-05-15 |
審決日 | 2001-06-07 |
出願番号 | 特願平8-291306 |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(H03F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岸田 伸太郎 |
特許庁審判長 |
佐藤 秀一 |
特許庁審判官 |
山本 春樹 武井 袈裟彦 |
発明の名称 | マイクロ波高出力電力増幅器の設計方法 |
代理人 | 野村 泰久 |
代理人 | 野村 泰久 |