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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1042680
審判番号 不服2000-14575  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-13 
確定日 2001-07-26 
事件の表示 平成 7年特許願第306299号「コミュニケータ及び該コミュニケータを用いたソフト配信システム」拒絶査定に対する審判事件[平成 8年 9月17日出願公開、特開平 8-242314]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成5年5月10日に出願した特願平5-108303号の一部を平成7年11月24日に新たな特許出願としたものであって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成11年6月21日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、
「配信センタと通信可能なコミュニケータであって、
使用者の希望するゲームのゲーム番号の入力及びゲーム操作の入力を行うための入力装置と、
希望するゲームのゲーム情報の送信を要求するために、前記入力装置から入力されたゲーム番号を前記配信センタに送信し、前記配信センタからゲーム情報が送信されたとき、送信されたゲーム情報を受信する通信手段と、
前記入力装置によりゲームの開始が指令されたとき、前記通信手段の受信したゲーム情報を用いてゲームを実行すると共に、ゲーム情報を受信したときからの経過時間が予め定める時間を越えたとき、上記ゲーム情報によるゲームの実行をできなくするコンピュータと、を備え
前記コンピュータは、前記通信手段がゲーム情報を受信したときからの経過時間を算出し、経過時間が前記予め定める時間を経過しているか否かを判断すると共に、前記予め定める時間よりも短い第二の時間が経過したか否かを判断し、前記第二の時間の経過を判断したとき、上記ゲーム情報によるゲームの実行ができなくなる時間が迫っていることを警告することを特徴とする、コミュニケータ。」(以下、「本願発明」という。)にあるものと認められる。
2.引用文献
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した特開昭62-286489号公報(昭和62年12月12日出願公開。以下、「引用文献1」という。)には、
「センタとセンタにオンラインで結ばれるTVゲーム機とから構成され、
センタが、複数種類のTVゲームのソフト・データが記憶されている第1の記憶手段を備えており、
各TVゲーム機が、ゲーム画面を表示するための表示装置、所望のTVゲームの種類を選択するための入力装置、選択されたTVゲームの種類に対応するソフト・データの転送をセンタに要求する手段、上記転送要求にもとづいてセンタから転送されてくるソフト・データを記憶するための第2の記憶手段、および第2の記憶手段に記憶されているソフト・データにもとづき表示装置を用いてTVゲームを実行する手段を備えている、TVゲーム・システム。」(特許請求の範囲。以下、「事項イ」という。)、
「TVゲームを選択するためにその種類を表わすゲーム番号を入力するためのゲーム種類選択キーおよびメニュー画面表示要求キーを備えたゲーム種類選択用操作部17」(第2頁右下欄第4〜7行。以下、「事項ロ」という。)、
「TVゲーム機2は、CPU20によって制御される。CPU20は、そのプログラムおよび各種データを記憶するメモリ21を備え・・・CPU20には、・・・ゲーム種類選択用操作部17の他・・・センタ1と交信を行うための通信制御装置24が接続されている」(第2頁右下欄第17行〜第3頁左上欄第5行および第2図。以下、「事項ハ」という。)、
と記載されている。
同じく、原査定の拒絶の理由で引用した特開平1-166218号公報(平成1年6月30日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、
「出荷する有償ソフトウェアの契約期限を暗号化してディレクトリに書込む手段と、この有償ソフトウェアを扱うオペレーションシステムにおいて、有償ソフトウェアの処理要求が発生した場合、計算機使用日付を計算機より読み契約日付をディレクトリから読んで両者を比較変数に変換後比較を行い比較結果の差によって警告、停止猶予、停止メッセージを処理要求者に出力する手段と、前記メッセージと計算機使用日付を有償ソフトウェア保守管理ファイルに書込み蓄積する手段と、前記蓄積された情報を定期的に有償ソフトウェア提供者に伝達する手段と、提供者が前記伝達された情報を基に契約期限満了後の有償ソフトウェア使用に対する追徴金請求、契約期限満了案内、有償ソフトウェアのセールス等の情報を伝達する手段とからなる・・・有償ソフトウェア保守管理方式」(特許請求の範囲。以下、「事項ニ」という。)、
「比較結果の情報を有償ソフトウェア保守管理ファイルに蓄積して定期的にメーカ側に伝達する」(第2頁左上欄第14〜16行。以下、「事項ホ」という。)
「契約期間満了となる有償ソフトウェアは、期限満了前に警告メッセージを出力し、・・・それによってユーザ側に猶予が与えられるので作業が突然停止したりすることがない。また、前記情報はメーカ側にも伝達される。」(第2頁左上欄第19行〜同頁右上欄第4行。以下、「事項ヘ」という。)
「次にユーザにより有償ソフトウェア処理要求が発生した場合、オペレーションシステムにおいて、契約期限を有償ソフトウェアのディレクトリ部より読み込む(201)」(第2頁左下欄第6〜10行。以下、「事項ト」という。)、
「警告期間内については(206)警告メッセージを(209)停止有余期間内については(207)停止猶予メッセージを出力(210)して、有償ソフトウェア保守管理ファイルに前記メッセージと使用日付を書込み(211)処理を許可する。(212)停止猶予期限を過ぎているものについては処理を却下する(213)。次に、第3図に示すように、メーカ側はユーザ側にある有償ソフトウェア保守管理ファイルの内容を定期的に公衆回線・・・等により回収を行い自動集計する。この集計した情報に基づいて・・・契約期限満了案内等の保守管理を行う」(第2頁左下欄第15行〜同頁右下欄第8行。以下、「事項チ」という。)
と記載されている。
3.対比
上記事項イによれば、引用文献1記載の「センタ」はTVゲームのソフト・データをオンラインで転送しているから「配信センタ」であり、また、本願明細書【0001】記載の「コミュニケータ」の定義によれば、引用文献1記載の「TVゲーム機」は「コミュニケータ」の一種に該当するものである。また、上記事項ロを参酌すれば、引用文献1記載中の「入力装置」が使用者の希望するゲームのゲーム番号の入力行うためののものであることも明らかである。また、上記事項イによれば、TVゲーム機はセンタとオンラインで結ばれており、入力装置で選択されたTVゲームの種類に対応するソフト・データの転送をセンタに要求し、転送要求にもとづいてセンタから転送されおり、併せて、上記事項ハの記載を参酌すれば明らかなように、それらの転送が「通信制御装置」を用いて行われることも実質的に示されているから、この通信制御手段を含む通信のための部位は、通信手段といえるものである。そして、上記事項ハによれば、「TVゲーム機」はコンピュータの構成をなしており、ゲームの実行をする構成となっている。
してみると、「TVゲーム」はゲームであり、「TVゲームのソフト・データ」はゲーム情報であることが明らかな以上、本願発明と上記摘記された事項によって特定される引用文献1記載の発明(以下、「引用発明」という。)は、
「配信センタと通信可能なコミュニケータであって、
使用者の希望するゲームのゲーム番号の入力装置と、
希望するゲームのゲーム情報の送信を要求するために、前記入力装置から入力されたゲーム番号を前記配信センタに送信し、前記配信センタからゲーム情報が送信されたとき、送信されたゲーム情報を受信する通信手段と、
ゲームの開始が指令されたとき、前記通信手段の受信したゲーム情報を用いてゲームを実行するコンピュータとを備えたコミュニケータ」の点で一致し、次の点で相違する。
・相違点1
本願発明では、入力装置で「ゲーム操作の入力を行う」ようにし、しかも「ゲームの開始が指令され」ているのに対し、引用発明では、「TVゲームを実行する手段」でゲーム操作の入力を行っており、また、どこでゲームの開始を指令するのかは明示されていない。
・相違点2
本願発明では、「コンピュータ」が、「ゲーム情報を受信したときからの経過時間が予め定める時間を越えたとき、上記ゲーム情報によるゲームの実行をできなく」し、また、「通信手段がゲーム情報を受信したときからの経過時間を算出し、経過時間が前記予め定める時間を経過しているか否かを判断すると共に、前記予め定める時間よりも短い第二の時間が経過したか否かを判断し、前記第二の時間の経過を判断したとき、ゲーム情報によるゲームの実行ができなくなる時間が迫っていることを警告」しているのに対して、引用発明には、それらの構成がない。
4.当審の判断
そこでこれら相違点1、2について検討する。
・相違点1について
引用発明では、ゲーム操作の入力において、専用の「TVゲームを実行する手段」を用いているが、ゲームの種類によって、そのような専用の実行のための手段が不要なものもよく知られているところであるから、「入力装置」にゲーム実行のための操作機能を持たせる程度のことは単なる設計的事項である。また、ゲームの開始の指令にしても、ゲームをする以上、開始の指令が必要であること、開始のための指令を適当な入力手段でおこなえばよいことからして、その機能を「入力装置」に持たせる程度のことも、当業者が容易になしえた事項にすぎない。
・相違点2について
引用文献2に記載された事項ニ、ヘによれば、引用文献2には、有償ソフトウェアの処理要求者に、有償ソフトウェアの契約期間満了前の警告期間内には警告メッセージを出力し、当該ソフトウェアが突然停止したりすることがないようにするものが示されている。さらに、記載された事項ホ、チを参酌すれば、ソフトウェアの提供者(メーカ)は公衆回線等を用いて、有償ソフトウェア保守管理ファイルに書込まれた警告メッセージを、上記警告メッセージの出力とは別途、(伝達)回収しており、しかも、記載された事項トにより、有償ソフトウェアの処理要求とは、当該ソフトウェアの実行要求であるから、その警告メッセージが向けられる「処理要求者」とは、有償ソフトウェアの利用者則ちユーザであることも明らかである。そして、この有償ソフトウェアを実行するのは、ユーザのコンピュータであり、ソフトウェアの停止がソフトウェアの実行をできなくすることの意味であることも明らかである。したがって、引用文献2には、コンピュータが、契約発効日からの経過日数が、予め定める契約期間を越えたとき、ソフトウェアの実行をできなくし、また、予め定める契約期間を経過しているか否かを判断すると共に、契約期間より短い期間が経過したとき、ソフトウェアの実行をできなくなる期限が迫っていることを警告する発明が示されているということができる。
ところで、ゲームソフト(ウェア)もソフトウェアの一種であり、特にゲームと限定することによって格別な効果はないし、また、契約期間のあるソフトウェアの実行をできなくする期間の単位(年、月、日、時等)はソフトウェアの性質、種類、契約内容等によって決められる事項であって、そのうち時間を選択する程度のことは、単なる設計的事項(事実、例えば、特開平4-158441号公報、特開平3-62222号公報等では、時間を基準とする旨の例示がある。)にすぎないし、契約期間のあるソフトウェアの契約期間算出の基準日時、すなわち契約発効日時の決め方として、契約時点、購入時点、インスト-ル時点、受信時点等とすることが周知(必要ならば、特開平2-267628号公報、特開平4-158441号公報等を参照されたい。)であるから、ソフトウェアが、通信を用いて提供される場合に、期間算出の基準日時を受信時とすることも、単なる設計的事項でしかない。
したがって、この相違点2は、引用発明に引用文献2記載の発明を付加することによって、容易に想到できたものと認められる。
5.むすび
以上のとおりであるから、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は引用文献1、2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明について特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-05-09 
結審通知日 2001-05-15 
審決日 2001-06-11 
出願番号 特願平7-306299
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 洋一奥村 元宏  
特許庁審判長 大日方 和幸
特許庁審判官 矢頭 尚之
山本 春樹
発明の名称 コミュニケータ及び該コミュニケータを用いたソフト配信システム  
代理人 足立 勉  
代理人 田中 敏博  

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