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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01T
管理番号 1042768
審判番号 不服2000-20080  
総通号数 21 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-03-19 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-12-20 
確定日 2001-08-21 
事件の表示 平成 2年特許願第203200号「ECT装置」拒絶査定に対する審判事件〔平成 4年 3月19日出願公開、特開平 4- 86585、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年7月30日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成12年1月31日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載によれば、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる(以下、「本願発明」という)。
「検出面への放射線入射に応じてその入射位置を表す位置信号を生じる検出器と、該検出器を回転させるとともにその検出器の回転角度を表す角度信号を生じる回転装置と、上記検出器に装着された、上記の回転方向には1つの焦点に集束しており、回転軸方向には平行なファンビームコリメータと、上記検出面から回転中心軸までとファンビームコリメータ焦点までの既知の距離を用いてあらかじめ求めておいた回転方向での入射位置と検出器中心軸に対する入射角度との関係およびその入射角度と平行コリメータを装着したと仮定したときの回転方向での入射位置との関係を表すテーブルが記憶されているメモリを有し、上記の検出器からの回転方向の位置信号により該メモリのアドレスを指定することにより入射角度信号を読み出すとともに平行コリメータを装着したと仮定したときの回転方向での入射位置を表す位置信号を読み出し、かつ読み出された入射角度信号と上記の回転装置からの検出器の回転角度信号とにより平行コリメータを装着したと仮定したときの検出器の角度信号を得る変換回路と、該変換回路によって得た回転方向の位置信号及び角度信号と、上記の検出器からの回転軸方向の位置信号とによって指定されるアドレスに放射線カウントを行ってデータを収集するデータ収集メモリとを備えることを特徴とするECT装置。」

2.原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
本願発明は、その出願前に日本国内で頒布された刊行物である特開昭63-226342号公報(以下、「引用例1」という)及び特開昭63-300984号公報(以下、「引用例2」という)に記載された発明、並びにデータの高速処理のためにあらかじめ計算してテーブル化しておくという例えば特開昭63-85480号公報(以下、「周知例1」という)にみられる周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
ファンビームコリメータを装着したECT装置は周知(必要であれば特開昭61-159179号公報(以下、「周知例2」という)、実願昭59-117593号(実開昭61-32999号)のマイクロフィルム(以下、「周知例3」という)、特開昭62-167490号公報(以下、「周知例4」という)参照)であって、このようなECT装置において、ファンビームデータを平行ビームデータに高速に変換処理する必要があることは当業者において自明であり、データの高速処理のためにあらかじめ計算してテーブル化しておくことが知られている以上、ファンビームデータを平行ビームデータに変換する処理をテーブルを用いて高速に行うことが当業者において格別の困難性を有すると認められない。

3.当審の判断
上記引用例1には、「X線源を被検査体の周りに回転運動を行い、この回転運動中にX線源からファンビームX線を照射し被検査体を透過したX線を多素子X線検出器で計測することによって複数の投影データの収集を行うスキャナと、この投影データから計測断面における被検査体のX線の吸収係数に関する分布画像を計算によって再構成する像再構成演算手段と、この分布画像を表示する表示手段と、を有するX線断層撮影装置において、上記像再構成演算手段は、上記計測された投影データから不均一平行ビーム投影データを発生させる第1の手段と、この不均一平行ビーム投影データのデータ点数を拡張することにより投影データの見掛け上の周波数帯域を広げる第2の手段と、この第2の手段により得られたデータ拡張された不均一平行ビーム投影データにフィルタ処理を行う第3の手段と、このフィルタ補正された投影データを用いて上記不均一平行ビーム投影データの不均一性を補正すると共に分布画像を逆投影する第4の手段と、より成るX線断層撮影装置。」(特許請求の範囲、請求項1)と記載されているから、ファンビームX線を用いたX線断層撮影装置において、計測したファンビーム投影データを平行ビームへ並び換えた後、平行ビームの逆投影演算を施すことによって断層像を再構成することが記載されていると認められる。しかし、上記引用例1には、第2図の処理フロー及びその説明個所にみられるように、多チャンネルX線検出器で被検査体透過X線を検出し、この検出値をAD変換して、投影データの収集を行い(111)、次に不均一平行ビームの並べ換え処理(116)を行うことが記載されているのみであるから、変換テーブルを用いてファンビームデータを平行ビームデータに変換し、所定の位置信号に基づきデータ収集メモリをカウントアップしてデータを収集する構成は記載も示唆もされていない。
また、上記引用例2には、ポジトロンECTにおけるデータ収集回路が、上記周知例1には、データの高速処理のために予め計算してテーブル化しておくことが、上記周知例2〜4には、ファンビームコリメータを装着したECT装置がそれぞれ記載されているが、その何れにも、変換テーブルを用いてファンビームデータを平行ビームデータに変換し、所定の位置信号に基づきデータ収集メモリをカウントアップしてデータを収集する構成は記載も示唆もされていない。
したがって、上記各引用例及び各周知例には、変換テーブルを用いてファンビームデータを平行ビームデータに変換し、所定の位置信号に基づきデータ収集メモリをカウントアップしてデータを収集する構成、すなわち、本願発明の「上記検出面から回転中心軸までとファンビームコリメータ焦点までの既知の距離を用いてあらかじめ求めておいた回転方向での入射位置と検出器中心軸に対する入射角度との関係およびその入射角度と平行コリメータを装着したと仮定したときの回転方向での入射位置との関係を表すテーブルが記憶されているメモリを有し、上記の検出器からの回転方向の位置信号により該メモリのアドレスを指定することにより入射角度信号を読み出すとともに平行コリメータを装着したと仮定したときの回転方向での入射位置を表す位置信号を読み出し、かつ読み出された入射角度信号と上記の回転装置からの検出器の回転角度信号とにより平行コリメータを装着したと仮定したときの検出器の角度信号を得る変換回路」及び「該変換回路によって得た回転方向の位置信号及び角度信号と、上記の検出器からの回転軸方向の位置信号とによって指定されるアドレスに放射線カウントを行ってデータを収集するデータ収集メモリ」は記載も示唆もされていない。
してみれば、上記引用例1及び引用例2に記載された発明並びに上記周知技術をどのように組み合わせても、本願発明を当業者が容易に発明をすることができたものである、とすることはできない。
そして、本願発明は、この構成により、「この発明によるECT装置では、ファンビームコリメータを使用して分解能を高めるようにし、かつ、データの並べ換え処理をメモリに格納した変換テーブルを利用して行っているのでその処理をリアルタイムで行うことができ、分解能の高い再構成画像を短時間に得ることができる。」(「発明の効果」の欄)という明細書記載の効果を奏すると認められる。

4.結び
以上のとおりであるから、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-07-31 
出願番号 特願平2-203200
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01T)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長井 真一岡▲崎▼ 輝雄  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 高橋 泰史
山川 雅也
発明の名称 ECT装置  
代理人 西岡 義明  

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